アルファ・キングの消されたメイト の小説カバー

アルファ・キングの消されたメイト

8.9 / 10.0
運命の番であるアルファ・キング、リアムに裏切られた主人公。妊娠した愛人の存在と群れの冷遇に直面した彼女は、記念日に離縁状を叩きつけ姿を消すことを決意する。本作はWerewolf Storiesの中でも、宿命に抗う女性の自立と愛憎を描いたファンタジー要素満載のromance novel。裏切りから始まる新たな運命と、隠された真実を追う物語が今始まる。オンラインで人気のfree web novelとして、予測不能な展開が続く。
「アルファ・キングの消されたメイト」のあらすじ
最強のアルファであるリアムは、かつて私との絆を「月の女神が授けた至高の愛」と謳った。しかし、その言葉が残酷な虚飾に過ぎなかったことを私は知る。彼にはすでに身ごもった愛人が存在し、あろうことか公衆の面前で彼女を自らの女王として遇していたのだ。愛人は、私に贈られたはずの神聖な番いの証である首飾りを誇示する写真を送りつけ、執拗に私を追い詰める。群れの者たちも、愛人が世継ぎを産めば、血統に問題のある私は排除される運命だと冷酷に囁き合っていた。裏切りに満ちた日々に終止符を打つため、私は二人の記念日に特別な贈り物を用意する。箱の中に収めたのは、署名済みの離婚届と、運命の絆を断ち切る公式な離縁状。愛という名の幻想を捨て去った私は、彼らの前から永遠に姿を消す決意を固めた。信じていた番いへの未練を断ち切り、自分自身の尊厳を取り戻すための逃避行が今始まる。裏切りのアルファ・キングと、運命に抗い自由を求めたメイトの愛憎劇。
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アルファ・キングの消されたメイト 第1章

運命の番(つがい)であるアルファ、リアムは、私たちの愛を「月の女神に祝福されたおとぎ話」だと言った。

でも、おとぎ話なんて、すべて嘘っぱちだ。彼には妊娠した愛人がいて、公の場で彼女を「俺の女王(クイーン)」と呼んでいたのだから。

その女は、リアムが私に贈った神聖な「番いの首飾り」を身に着けた自撮り写真を送りつけてきた。群れの仲間たちは、彼の本当の跡継ぎが生まれれば、私は用済みの「血統の問題児」として処理されるだけだと囁き合った。

だから、私たちの記念日に、私は彼に贈り物を渡した。

箱の中身は、離婚届と、私からの公式な「離縁状」。

そして私は、姿を消した。

第1章

マヤ POV:

首筋に触れるネックレスが、氷のように冷たかった。

リアムが「月の女神の涙」と呼んだそれは、夜空をそのまま閉じ込めたかのような、深く青いティアドロップ型のサファイアだった。

「番い」の儀式の日、彼は感情に震える声で私の首にそれをかけ、こう宣言した。「君は俺のものだ」と。誰もがただの人間だと思っていた孤児の私こそ、女神が彼に与えた最大の奇跡なのだと。

初めて会ったときの記憶が、不意に蘇る。もう存在しないはずの腕が、まだ疼くように。彼を見た瞬間、私の世界はぐらりと傾いた。

真冬の嵐が、鬱蒼とした針葉樹林を薙ぎ倒すような香りが感覚を支配し、膝から力が抜けていく。

心臓が肋骨を内側から激しく打ち鳴らし、原始的なリズムを刻んだ。そして私の中で、それまで一度も聞いたことのなかった声――眠っていた私自身の狼の声が、たった一言、所有欲に満ちた言葉を叫んだのだ。

――私のものだ!

世界にとって、私たちはまさにおとぎ話だった。

でも、おとぎ話なんて、すべて嘘っぱちだ。

宝石を親指でなぞりながら、私はクローゼットの床板の下に隠した二台目の携帯に目をやった。彼が追跡できない、安物のプリペイド携帯。彼がその存在すら知らない、人間用のデバイス。

「精神感応(マインドリンク)」。それは「番い」となった者たちの魂を直接つなぐ、神聖で無防備な架け橋。思考や感情が絶え間なく流れ込み、ルナが常にアルファの心を知るための絶対的な信頼の証のはずだった。

けれど、リアムとの間には壁があった。決して突き破ることのできない、滑らかで、丁寧な壁が。彼はそれを、アルファとしての非情な仕事から、人間として育った私の「繊細な心」を守るためだと言った。

今ならわかる。それは、彼に染みついた別の女の匂いを隠すためだったのだ。その匂いはいつも微かで、必死に洗い流されていたけれど、私の狼――十八歳の誕生日に爆発的に目覚めた私の一部――は、それを嗅ぎ分けることができた。安っぽいチェリーブロッサムの香水と、焦燥感の匂い。

アヴァ・新堂の匂いだ。

証拠は、幻視や彼の失言からではなかった。けばけばしく点滅するSNSアプリの画面からだった。私たちの金狼院(きんろういん)一族の中でも人気のインフルエンサーであるアヴァが、ライブ配信をしていた。彼女はスマホに向かって瞬きを繰り返し、フォロワーからのプレゼントに感謝していた。

その時、画面を横切ったユーザーネームが、彼女に数十万円もするバーチャルな「王冠」を贈った。

EmpireWolf。

「あら、私のアルファ」

彼女は勝ち誇った笑みを浮かべ、猫なで声で言った。

「ありがとう。本当に、女王様(クイーン)の扱いをよく分かってる」

全身の血が凍りついた。私の女王(クイーン)。

その数週間後、私は定期検診のために群れのクリニックにいた。私の「特異な血統の脆弱性」を監視するための、リアムが課した儀式の一つだ。待合室にいると、アヴァが産科病棟から出てきた。彼女は、少し膨らんだお腹に所有者のように手を当てていた。

だが、私の息を止めたのは、そのお腹ではなかった。彼女の手首にはめられたブレスレット。銀と月長石でできた繊細なチェーン。金狼院家に代々ルナからルナへと受け継がれてきた古い家宝。リアムが、私たちの公式な記念日のために「修復中」だと言っていた、あのブレスレットだった。

決定的な確証は、一族の晩餐会で得られた。リアムのベータであるマーク・陳が、わざとらしく呂律を回しながらグラスを掲げた。

「我らがアルファに」

マークはしたり顔で言った。

「ご自身の……資産をうまく処理する術を知るお方に。真のアルファとは、務めと愉しみの両立ができるものだ」

何人かの戦士たちがくすくすと笑い、私と、アヴァのために空けられた席とを、面白そうに交互に見ていた。みんな知っていたのだ。彼らは皆、この茶番に加担していて、私だけが笑いものだった。

彼に恋をした瞬間を思い返す。初めての「変身」の夜、骨が砕け、再構成される苦痛の中で、彼は私を抱きしめてくれた。彼の力強いアルファの存在は、私の砕かれた魂を癒す軟膏のようだった。「君は俺が守る」と囁きながら。

はぐれ狼(ローグ)の銀を塗った短剣に斬られ、呪われた金属が血管を焼き、狼の治癒力を妨げた時、彼は長老たちに逆らってまで、自らの掌を切り裂き、命を与える心臓の血を私の唇に流し込んで救ってくれた。

彼は私を救ってくれたんじゃない。

ただ、手懐けていただけだったのだ。

目を閉じると、儀式での誓いの言葉が心に響く。月の女神の前で交わした約束。「もしあなたが私に嘘をついたら、リアム・金狼院」私は彼の手を取り、そう囁いた。「この絆の心を壊すような、本当の嘘をついたら、私は月の女神に私たちの繋がりを断ち切ってくれるよう願います。そして、あなたの人生から、まるで存在しなかったかのように消え去ります」

カッと目を見開く。決心はついた。

私はプリペイド携帯を手に取り、記憶していた番号に電話をかけた。電話の向こうの声は、電子的に歪められていた。

「フェニックスだ」

「こちらナイチンゲール」

私は落ち着いた声で言った。

「計画を発動する。金狼院一族の次期ルナ、マヤ・金狼院を消してほしい」

一時間後、リアムが帰ってきた。彼の体からは、松と冬の香り、そして、微かに残る別の女の匂いがした。

「はぐれ狼(ローグ)との小競り合いがあった」

彼は低い、疲れた声で言った。私と目を合わせようとはしない。彼は私の化粧台にあるものと同じベルベットの箱を開けた。中には「月の女神の涙」が入っていた。「記念日のために、長老たちに改めて魔法をかけてもらった。君を守るためだ」

嘘。完璧で、美しい嘘。

私は脆い微笑みを浮かべた。その夜、彼が眠っている間に、私は同じ形の空箱を用意した。その中に、二つの書類を入れた。一つは、人間の裁判所に提出するための、署名済みの離婚届。もう一つは、私たちの一族の古いインクで書かれた、正式な「離縁状」。

この紙は、彼にとってはただの象徴に過ぎない。

本当の離縁には、彼の顔を見て古代の言葉を告げる必要があることを知っていた。その最後の、耐え難い儀式をやり遂げる力があるかどうか、私には分からなかった。でも、これは……これが最初の一撃になる。

翌朝、私はそれを彼に手渡した。

「記念日おめでとう、愛しい人」

私は甘い声で言った。

「二週間は開けないでね。サプライズにしたいから」

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