君を奪う計画は、3年前から始まっていた の小説カバー

君を奪う計画は、3年前から始まっていた

7.8 / 10.0
『君を奪う計画は、3年前から始まっていた』は、夫の裏切りにより全てを失った写真家・清水瑠衣が、自らの名誉を取り戻すため再起する姿を描く現代的なromance novelです。才能を奪われ、離婚を決意した彼女の前に現れたのは、元夫の宿敵である若き実業家でした。復讐と野心が渦巻くbillionaireの世界で、瑠衣は執着心に満ちた新たな誘惑に直面します。これは、長年仕組まれた策略に翻弄される女性の運命を描いた、愛と再生の物語です。
「君を奪う計画は、3年前から始まっていた」のあらすじ
清水瑠衣は三年間、立川蒼空へ献身的な愛を捧げてきた。しかし、命懸けで撮影した野生動物の写真は、蒼空が自身の愛人をコンテストで優勝させるための道具として奪われてしまう。彼の非情な裏切りを目の当たりにし、瑠衣は愛の終焉を悟った。彼女は離婚届を残して去り、奪われた名誉を自らの手で取り戻すことを決意する。そんな失意の彼女の前に現れたのは、元夫の宿敵である男だった。「才能ある者が正当に評価されるべきだ」と語る彼は、卑劣な手段で貶められた瑠衣に救いの手を差し伸べる。突然の接近に戸惑い拒絶しようとする瑠衣だったが、男は逃げ場を塞ぐように距離を詰め、執着を露わにしていく。彼が差し出した手は単なる慈悲か、それとも別の意図があるのか。追い詰められた彼女に、男は静かに告げる。この出会いは偶然ではなく、三年前から彼女を奪うために仕組まれた計画だったのだと。復讐と執着が交錯するなか、瑠衣の新たな運命が動き出す。
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君を奪う計画は、3年前から始まっていた 第1章

清水瑠衣は、手術の麻酔が抜けていく感覚の中で、重たい瞼をなんとか持ち上げた。

視界がぼやける中、少し離れた場所に置かれたテレビでは、野生動物写真コンテストの受賞結果がちょうど流れていた。

何度も死にかけながら、それでも諦めずに追い続けてきた末の吉報――本来なら胸が弾むはずだった。

だが、その喜びは一瞬で凍りついた。

受賞作の署名に映し出されたのは、陸奥陽菜の名前だった。立川蒼空が心の底から愛し続けている、あの女の名だ。

瑠衣の胸に、信じたくないという思いだけが広がっていった。

ふと、必死に撮影を続けたこの2ヶ月の間、送っても返事が一度も来なかったメッセージや、蒼空の絶えないゴシップ記事が脳裏をよぎった。

混乱するより早く、枕元のスマホが甲高く鳴り響いた。

画面には「旦那」の文字が何度も点滅している。

高熱で倒れる直前まで何度もかけ続けたのに、繋がることはなかったあの番号だ。

瑠衣は震える指で通話ボタンを押し、かすれた声を絞り出した。

『どうして……私の作品が、陸奥陽菜の名前になっているの?』

通話口の向こうからは、主と同じく凍りつくような冷たい声が響いた。蒼空の黒い瞳には、いつだって温度というものが存在しない。

『これは、君の代わりに陽菜へ償うための判断だ』

その言葉で、瑠衣の胸に抑えきれない怒りが一気にせり上がった。『何度も説明したわよ。あの時あなたを救ったのは、私だって』

『俺は、自分の目で見たものしか信じない』

蒼空の声は穏やかなのに、底が凍りついていた。

瑠衣は、冷たい水を頭から浴びせられたような衝撃に息を呑んだ。唇に浮いた笑みは苦く、胸の奥では大きな空洞が風を呼び込み、骨の奥まで冷え切っていくようだった。

彼女は深く息を吸い、静かに、しかし凍えるほど冷たい声で言った。『蒼空、この写真は私が命を懸けて撮ったもの。血の滲むような想いを込めた作品よ。陽菜に渡すなんて、絶対に許さない』

蒼空の声には、隠そうともしない軽蔑が滲んでいた。『君に母親の治療費が払えるのか?』

あまりに突然で、意味のつながらない言葉に、瑠衣はスマホを強く握りしめた。手の甲には青い筋が浮かび上がる。

『陽菜を守るために、そんなことで私を脅すの?』

『ただ教えているだけだ。君が俺に逆らう資格なんて持っていないってことを』

胸の奥に、鋭い痛みが走った。

陽菜が現れる前、蒼空はあんなに優しく、思いやりのある人だったのに。今ではもう、その面影すらない。

瑠衣は静かに口を開いた。『私たち、離婚しましょう』

蒼空の声が重く低く変わった。『瑠衣、お前の茶番に付き合う気はない』

『違う、本気だ……』

だが、その言葉が終わる前に、ツーツーツーという無機質な音が耳元で鳴り響いた。

切れた通話画面を見つめながら、瑠衣は必死に口角を上げようとした。だが、抑えきれず、苦い涙がそっと目尻を伝い、手の甲に落ちていった。

離婚する。

そして――陽菜が自分の作品で栄誉を得ることは、絶対に許さない。

瑠衣は最速で退院手続きを済ませた。

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君を奪う計画は、3年前から始まっていた 目次一覧

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