牢獄で四年──偽りの令嬢、ついに無双モード突入! の小説カバー

牢獄で四年──偽りの令嬢、ついに無双モード突入!

8.4 / 10.0
佐久間家の令嬢として17年を過ごした小林美咲は、ある日突然、本物の令嬢が現れたことで偽物として追放されてしまう。周囲の裏切りにより無実の罪を着せられた彼女は、4年間の刑務所生活を余儀なくされた。出所後、彼女は東條グループの放蕩息子・東條幸雄と結婚。誰もが美咲の没落を確信したが、彼女の正体は世界を揺るがす天才たちだった。高級ジュエリーブランドの創設者、伝説の料理人、トップハッカー、そしてゲームデザイナー。かつて自分を捨てた佐久間家が窮地に陥り、掌を返して復縁を乞う中、名門・長野家の御曹司までもが彼女に跪き愛を請う。一方、世間から「ヒモ」と揶揄されながらも美咲を支える夫の幸雄だったが、彼にもまた、商界を支配する神秘的な伝説の男という裏の顔があった。頼りないはずの夫が密かに企てていた真実とは。偽りの令嬢から一転、多才なスキルで世界を圧倒する美咲の華麗なる逆転劇と、愛に隠された策略が交錯する現代ロマンス。

牢獄で四年──偽りの令嬢、ついに無双モード突入! 第1章

七月、滝川刑務所の高い塀に囲まれた一室。

佐久間美咲が、無意識に袖口を下げて腕に刻まれた痛々しい傷跡を隠した、まさにその時だった。 耳慣れた刑務官の声が、静寂を破るように響いた。 「佐久間美咲、佐久間家がお迎えに来たぞ!」

その言葉に、美咲の手はぴたりと動きを止めた。

佐久間家。 かつては血肉のように馴染み深かったその名が、今や、はるか遠い幻のように響く。

かつて、彼女は確かに、佐久間家の令嬢だったのだ。

四年前のある日、警察が突然佐久間家を訪れ、佐久間勝政と妻である智子の実の娘が見つかったと告げた。

その一夜にして、美咲は、偽りの令嬢へと転落したのだ!

美咲の実の両親はすでに他界していた。 体面と世間体を何よりも重んじる佐久間家は、対外的には彼女を実の娘として扱い続けると、建前だけを公言した。

しかし、その実態は……

それまでの十七年間、多忙を極める事業にかまけ、勝政も智子も美咲に目を向けることもなく、ただ放任してきた。

だが、美月が戻ってきてからは、まるで人が変わったように彼女を気遣い、掌の上の宝物のように扱った。

美月が瑞梵詩の秘宝を盗み、その罪を美咲に巧妙になすりつけた時も、佐久間家の面々は皆、美月の味方につき、彼女を庇うためだけに、自らの口で美咲を犯人だと断定した。

美月の嘘が、どれほど幼稚で、一目でわかるようなものであったとしても、彼らはそれを信じ込んだふりをしたのだ。

瑞梵詩は東條グループ最大の宝飾店であり、東條グループは滝川市で最も有力な一族。 佐久間家と彼らとでは、まさに雲泥の差がある。

佐久間家は、たった一人の養女のために東條グループを敵に回すなど、毛頭望まなかった。 彼らは瞬く間に態度を豹変させ、美咲は佐久間家の人間ではないと公言し、その手で彼女を刑務所へと突き落としたのだ。

そこまで思い至った美咲の指先は、冷たく、無意識に縮こまった。

彼女は、美月の仕掛けた罠と、その罪を一身に背負い、暗い四年間を過ごした。

そして今日、ようやく、その出所の日を迎えたのだ。

……

刑務所の正門前には、すでに大勢の記者たちが、まるで獲物を待つかのように群がっていた。

熱気が波のように押し寄せ、彼らの顔には、獲物を逃すまいとする焦燥と、興奮が入り混じった表情が浮かんでいた。

重々しい音を立てて、門がゆっくりと開く。

中から現れたのは、入所した時と寸分違わない、何の変哲もないカジュアルな服装の美咲だった。

佐久間智子は美咲の姿を認めると、瞬時に目を輝かせ、まるで待ち焦がれていたかのように慌てて駆け寄る。

その傍らには、メディアのマイクとカメラが、彼女の一挙手一投足を見逃すまいと殺到していた。

美咲はその光景を冷めた目で見つめ、心の中で静かに鼻を鳴らした。

「シャオシャオ、ママが迎えに来たわよ」 智子は目にわざとらしい涙を浮かべ、声を詰まらせてみせた。

その芝居がかった様子は、傍らの記者たちの同情を、いとも簡単に誘った。

しかし、美咲は智子を真っ直ぐに見据え、その感情のこもらない瞳の奥に冷たい光を宿して言い放った。 「佐久間智子、人違いではありませんか?」

智子は一瞬、 面食らったように呆然とした。 だがすぐに、

痛ましげな表情を取り繕い、 懇願するように言った。 「シャオシャオ、何を言っているの?あなたはママが十数年、大切に育てた娘よ。 どんな姿になっても、ママが間違うはずがないじゃない」

美咲は冷ややかに口角を上げ、嘲笑を浮かべた。

「そうですか? でも四年前、 あなた方が私を陥れて刑務所へと突き落とした時、 『佐久間家の人間ではない』 と、公言しましたよね。 とっくに佐久間家の人間ではない私が、どうしてあなたの娘だというのですか?」

「陥れた?」

「佐久間家の人間ではない?」

わずか数言に込められた衝撃的な情報量に、記者たちは一瞬沈黙した後、互いに顔を見合わせ、堰を切ったように一斉に騒ぎ出した。

情報を一言も聞き漏らすまいと、我先にとマイクを争って美咲に突き出す。

智子は完全に面目を失ったが、これほど多くのメディアの目が光る前で、怒りを露わにするわけにはいかない。 屈辱に顔を歪めながらも、怒りを必死で押し殺すしかなかった。

その時、張り詰めた空気を切り裂くように、一つの鋭い声が響き渡った。

「佐久間美咲! 何を言うかと思えば! あの時、 瑞梵詩の品はお前のバッグから見つかったんだぞ! 現行犯だ、 どこが冤罪だと言うんだ?! お前は四年も刑務所にいたというのに、俺たちはこんな炎天下の中、嫌がる素振りも見せずにわざわざ迎えに来てやったのに、お前はそんな恩知らずなことを言うのか!白眼狼と何が違うんだ!」

話したのは、佐久間家の長男――佐久間浩志だった。

美咲が十七年間、「お兄ちゃん」と慕い呼んできたその人は、彼女が罠に陥れられたまさにその時、美月を背後にかばい、美咲を無情にも地面に突き飛ばした。

その際、 腕をテーブルの角に打ち付けた美咲の傷口からは、 どす黒い血が滲み出し、 今もなお、

醜い痕となって残っている。

あのコレクションについては、美咲はよく覚えている。

美月が、美咲がトイレに立った、ほんのわずかな隙に、こっそりとバッグに忍ばせたものだったのだ!

あの時、美咲は美月が善良で純粋であり、心から自分と仲良くしたいのだと、疑うことなく信じきっていた。

だからこそ、美月が手伝いを申し出た時も、何の疑いもなく、安心して自分のバッグを預けたのだ。

まさか、 表向きはか弱く清純に見える美月が、 その内心ではあれほど悪辣で嫉妬深く、 美咲の存在が佐久間家での自分の地位を脅かすことを恐れ、 周到な罠を仕掛けてくるとは、

夢にも思わなかった。

あの日、美咲は佐久間家の人間たちの、醜く捻じ曲がった本性を、完全に、そして決定的に見限った。

その時、彼女の心もまた、共に死んだのだ。

「お姉ちゃん、 きっとまだ私のこと恨んでるんだよね…… だから、 あんなひどいことを言うんだ…… お姉ちゃん、 私、

本当に佐久間家のお嬢様の座を奪うつもりで、 ここに戻ってきたわけじゃないの…… どうか、 怒らないで……」

浩志の隣に立つ美月は、目を赤く腫らし、か弱い体は小刻みに震え、今にも大粒の涙がこぼれ落ちそうだった。

浩志は痛ましげに美月の肩を抱き寄せ、優しく慰めた。 「美月、お前のせいじゃない。 悪いのはあいつだ。 十七年も本来お前のものだった栄華を独り占めしてたんだからな。 あいつがお前に悪いんだ!今になって自分の間違いを認めないなんて、もう一度刑務所に送って、あと何年か反省させるべきだ!」

「浩志、黙りなさい!」智子は浩志を鋭く睨みつけ、すぐに視線を記者たちへと向けた。

これほど多くの目が光る前では、感情を露わにするわけにはいかない。

必死に表情を取り繕い、メディアに向き直って言った。 「四年ぶりのことで、シャオシャオもまだ慣れないのかもしれません。 彼女の気持ちは理解できます。 もし過ちを認め、心を改心してくれるのなら、彼女は依然として私たち佐久間家の大切な娘です」

佐久間家の令嬢、だと?

美咲は思わず鼻で吹き出し、嘲るように眉を上げて言った。 「佐久間智子、あなた方は、もう私と縁を切る書類にサインしたことをお忘れですか? まさか、この『佐久間家の人間ではない』私が、あなた方佐久間家のお嬢様になれるとでも思っているのですか?」

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