ゴミ夫に捨てられた3秒後、世界最強のシスコン・ロイヤルファミリーに拾われました。 の小説カバー

ゴミ夫に捨てられた3秒後、世界最強のシスコン・ロイヤルファミリーに拾われました。

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結婚から3年、安藤咲良を待っていたのは愛のない孤独な日々だった。夫の伊藤景丞からは家柄を蔑まれ、義母からは心ない言葉を浴びせられる。さらに愛人の妊娠を機に離婚を突きつけられた彼女は、未練を断ち切り家を出る決意をした。しかし、離婚した瞬間に彼女の運命は激変する。実は彼女、世界最強の王室の血を引く令嬢だったのだ。再会した国王夫妻からは王位継承権を託され、規格外な兄たちからも過保護なほどの寵愛を受ける。武器商人の長男は莫大な富を、天才外科医の次男は復讐の技術を、そしてアクションスターの三男は圧倒的な武力で彼女を守り抜く。立場が逆転し、咲良の真の価値を知った元夫が必死に復縁を迫るが、時すでに遅し。女王として君臨する彼女の傍らには、王室が認めた完璧な騎士が控えていた。冷遇された過去を捨て、最強の家族と共に最高の人生を切り拓く、華麗なる逆転劇が幕を開ける。

ゴミ夫に捨てられた3秒後、世界最強のシスコン・ロイヤルファミリーに拾われました。 第1章

「5番ベッドの方、ご主人はまだいらっしゃいませんか?」

若い助手医師が、手術同意書の束を手にしたまま、家族のサインを待っていた。

咲良はベッドの上で身体を丸め、顔色は紙のように白い。痛みに耐えるのがやっとで、スマートフォンすらまともに握っていられない。 急性虫垂炎と診断され、すぐに手術が必要な状態だった。何度も電話をかけたのに、夫は一向に出ない。

手術室の準備はすでに整っている。それなのに、サインをしてくれる人がまだ来ていないのだ。

「……仕事が忙しくて」かすれた声で、咲良はそう答えた。 彼女の夫、伊藤景丞は現職の大統領。朝から晩まで公務に追われ、彼女だけのものになる時間など、ほとんどない。

「忙しいからって、家族の命なんて知ったことないってことですか?」

医師は思わず声を荒げた。「いくら忙しくても、大統領より忙しい人なんていませんよ! その大統領閣下でさえ、婚約者の妊婦健診には付き添っているんですから!」

その言葉は、まるで雷に打たれたような衝撃だった。咲良の声が震える。

「……誰のこと、ですか?誰が……付き添って……?」

「婚約者の妊婦健診」という言葉が、重くのしかかり、息が詰まりそうになった。

そのとき、廊下の外が急に騒がしくなった。

医師が顎で外を示した。「ほら、あそこですよ。世界で一番忙しい男、大統領閣下です」

咲良は腹の痛みに耐えながら、必死に身体を起こし、ドアの方へと目を向けた。――そこには。大統領府の警護官たちに囲まれながら、背の高い、端正なスーツ姿の男が歩いている。

胸が、見えない手に強く掴まれたように痛んだ。

伊藤景丞。八年間、愛し続けた人。三年間、陰から支え続けてきた夫。その彼は――車椅子を押しながら、別の女性を優しく連れて、妊婦健診へと向かっていた。

しかも、その女は――学生時代、咲良をいじめていた相手。しかも大財閥の令嬢、山本美咲だった。

見えない手に、心を少しずつ握り潰されていく。それなのに――伊藤景丞は、あの女に向かって優しく声をかけていた。「美咲、怖がらなくていい。俺がついている」と。

……じゃあ、自分は? 自分は、一体なんなの?

怒りが一気にこみ上げ、咲良は掛け布団を乱暴に払いのけた。病室を飛び出し、問いただしたかった。

――美咲のお腹の子は、誰の子なのか。 大統領閣下ともあろう方が、自分の妻を差し置いて、あの女の健診に付き添うなんて!

だが――激しい腹痛が、彼女の身体を容赦なく引き戻した。そのまま、ベッドに崩れ落ちた。もう、起き上がる力すら残っていなかった。

「ちょっと、動かないでください!」医師が慌てて制止する。その目には、同情の色が浮かんでいた。「……ご主人の会社に電話してみたらどうですか?」

大統領府の連中に?

あの人たちが、いつ自分を“ファーストレディ”として扱ったことがあった? 今日だって、倒れた彼女に救急車を呼んでくれたのは、たまたま通りかかった親切な人だった。

「……未亡人だと思ってください」

絶望に沈みながら呟いた、その直後。激痛が走り、咲良はベッドの上でのたうち回った。シーツを握りしめ、指で破いてしまうほどに。

「……くそっ!」思わず悪態をつき、残された力を振り絞って、医師の袖を掴んだ。「私が……自分で署名すれば、だめですか……?」

――腹腔鏡手術は、無事に終わった。咲良は二日間の入院が必要とされた。

だが、付き添う者は誰もいない。痛みでほとんど眠れないまま、ただ一人、病室で夜を過ごした。

深夜一時半。ようやく、うとうとと浅い眠りに落ちかけた、そのとき――けたたましい着信音が、静寂を切り裂いた。

――電話の相手は、景丞だった。

「咲良、いつから外泊なんてするようになった? 昼に電話に出なかったくらいでさ、いつまで拗ねてるつもりだ」

開口一番、浴びせられたのは不満と非難だけ。そこに、夫としての気遣いは一切なかった。

それどころか、平然と彼は言った。「少しは分別を持てないのか。 美咲の十分の一でもいいから見習え」

傷口がまだ疼いている咲良には、言い返す気力すら残っていなかった。

だが景丞は構わず命じた。「すぐ戻って来い。話がある」

拒む余地など与えない口調で、さらに冷たく付け加えた。「来ないなら、こちらから"お迎え"をやるぞ」

一時間後。咲良はタクシーで、あの冷え切った奥枢邸へと戻っていた。

本館二階のリビングには灯りがついている。ソファに腰掛けた男は、脚を組み、まるで人を寄せつけない神像のように気高く、近寄りがたい。 けれど――照明のせいか、その輪郭にはわずかに柔らかな色が差していた。

胸の奥が、かすかに揺れた。結婚して三年。夫が、こうして自分を待っていたことなど――初めてだった。

「……遅いな。 どこで遊んでいた」物音に気づいても顔を上げず、景丞はこめかみを押さえたまま吐き捨てた。

彼は何度も言ってきた。求めているのは、従順で分別のある“ファーストレディ”だと。

どうして咲良は、大人しくしていられないのか、と。

胸がきゅっと締めつけられた。咲良は、皮肉っぽく息を漏らした。「そうね、ホストを呼んで遊んでたの。八人まとめて指名したわ」 そして、ゆっくりと視線を向けた。「……この答えで満足ですか、大統領閣下?」

もし景丞が、ほんの一瞬でも彼女をちゃんと見ていれば――咲良がどれほど弱りきっているか、気づかないはずがなかった。

「咲良!」苛立ちを滲ませて、景丞は手にしていた書類を机に叩きつけ、ようやく妻へ視線を向けた。

鋭い目が、彼女の血の気のない顔をなぞった。その瞬間、わずかに息を呑んだ。「……どうした? 具合が悪いのか?」声が、ほんの少しだけ和らいだ。

――けれど。咲良は答えなかった。 本当に必要だったとき、彼はいなかった。今さら、そんな優しさを向けられても――意味がない。

ただ静かに問い返した。「……私を呼び戻した理由は?」

景丞は眉をひそめ、じっと彼女を見つめたまま、長い沈黙を落とした。やがて、手元の書類を押し出した。「――離婚しよう」

その一言が、静かな室内に落ちた。「美咲が妊娠した。だが検診の結果がよくない。産前うつを発症していて、自殺傾向も強いらしい」 淡々とした説明。「医者が言うには……夫の支えが必要だと」

言葉が一瞬途切れる。その瞳の奥に、本人すら気づいていない微かな痛みが宿った。

そして――「咲良、少しだけ我慢してくれ」低く、言い聞かせるように続けた。「形式だけの離婚だ。美咲が子どもを産むまでの間だけ、夫婦関係を解消する」 「子どもに正当な立場を与えたら、彼女とは離婚する。そのあと、お前と復縁する」

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