アルファの隠し子、奪われた私の特効薬 の小説カバー

アルファの隠し子、奪われた私の特効薬

8.2 / 10.0
毒に侵され、三年にわたり死の淵を彷徨っていた私にとって、夫である首領・城島譲は唯一の希望だった。献身的な伴侶を演じる彼を信じ、解毒薬「月華の霊薬」を待っていたが、運命の絆を通じて残酷な真相を知ってしまう。譲は群れの癒し手に、貴重な霊薬を愛人の母親へ与えるよう命じていたのだ。「玲奈が息子を産んでくれた」――彼には隠し子がおり、私への看護はすべて、死を待つための偽装に過ぎなかった。彼は私の両親が遺した神聖な家を愛人との生活で穢し、群れには霊薬が盗まれたと嘘をつき、私の死を自らの利益に利用しようと画策していた。病に伏す私を「病気の雌狼」と蔑み、使い古しのスープを差し出す夫。しかし、彼は気づいていない。虐げられた私がどれほどの怒りを宿したかを。その夜、私は身を引き裂くような痛みに耐え、彼との運命の絆を自ら断ち切った。結婚指輪を捨て、嘘に満ちた家を後にする。私は決して屈しない。裏切り者の世界が燃え尽きるその日まで、執念で生き抜いてみせる。

アルファの隠し子、奪われた私の特効薬 第1章

三年間、私は毒に侵され、死の淵を彷徨っていた。唯一の希望は、一服分の解毒薬「月華の霊薬」。夫である首領、城島譲は献身的な伴侶を演じ続け、私は彼が必ず私を救ってくれると信じきっていた。

しかし、薄れゆく運命の絆を通して、私は彼が群れの癒し手に下した秘密の命令を耳にしてしまった。

「月華の霊薬は、江良玲奈の母親に与えろ」

その理由が、私の世界を粉々に砕いた。「玲奈が俺に息子を産んでくれた。健康で、強い息子を」。彼には秘密の家族がいたのだ。過去三年間、彼の愛情に満ちた看病はすべて嘘だった。彼はただ、私が死ぬのを待っていただけだった。

彼は私に、彼らの食べ残しのスープを「病気の雌狼」と呼びながら差し出し、私の両親が遺した神聖な家を、愛人とその子供で穢した。群れには解毒薬が盗まれたと説明し、私の死を自らの利益のための悲劇に仕立て上げるつもりだったのだ。

彼は私を、弱く、死にゆく狼だと思っていた。自分がどんな嵐を呼び覚ましたのか、彼は知る由もなかった。

その夜、私は最後の力を振り絞り、私たちの運命の絆を断ち切った。痛みは身を引き裂かれるようだったが、私は嘘で塗り固められたあの家から歩き出し、結婚指輪だけを置いてきた。私は死なない。彼の世界が燃え尽きるのを見届けるまで、生き抜いてみせる。

第1章

KAZUKI POV:

三年間、「狼殺しの毒」が私の血の中をゆっくりと、冷たく巡っていた。それは私の内なる狼を眠らせ、意識の奥でか細く鳴くだけの亡霊へと変え、私の体をこのベッドに縫い付けていた。しかし今日、希望の光が差した。唯一の解毒薬として知られる月華の花が、ついに完璧な一輪を咲かせたのだ。群れの癒し手は、日暮れまでには霊薬が完成すると言った。

希望とは、脆く、慣れないものだった。

私は浅い呼吸を繰り返しながら横たわり、毒が断ち切ることのできない唯一の繋がり、運命の絆に意識を集中させた。それは私と夫、首領である城島譲とを結ぶ、微かで、擦り切れた糸。いつもは安らぎの源だった。だが今日は、私を破滅へと導く管となった。

思念感応は、群れの仲間全員が共有する、言葉なくして意思を疎通させる手段だ。しかし、運命の番同士のそれは、神聖で、二人だけの特別な繋がりであるはずだった。譲との絆は弱まっていたが、時折、彼の感情が昂ぶると、その思考の残響を捉えることができた。

今、彼の思考は、私に向けられたものではない、耳を聾するほどの轟音となっていた。彼は群れの筆頭医師である氷川先生に、思念を送っていた。

「月華の霊薬は、江良玲奈の母親に与えろ」

譲の精神的な声は、鋭く、絶対的だった。

言葉の意味が理解できない。私の意識は霧がかかったように、鈍い。何かの間違いに違いない。

氷川先生の返答はためらいがちで、困惑が滲んでいた。「しかし首領…霊薬は奥方様である佳月様のためのものです。あれが唯一の機会なのです」

毒そのものよりも重い、冷たい絶望が私を襲った。普段は弱々しくしか打たない心臓が、肋骨を激しく打ち始めた。

譲の返答は氷のようだった。だがその下に、一瞬の揺らぎを感じた。青白い私の顔のイメージが、一瞬浮かび、すぐに押しやられた。「玲奈が俺に息子を産んでくれた。健康で、強い息子を。彼女の母親に霊薬を与える。これが最終命令だ」

息子。

その二文字が、私の胸の空洞に響き渡った。息子。彼は他の女との間に息子をもうけていた。その事実は、涙の洪水ではなく、恐ろしく、魂を押し潰すような静寂と共にもたらされた。

何年もその存在を真に感じることのなかった私の内なる狼が、心の奥で長く、悲痛な遠吠えを上げた。純粋な苦悶の叫びだった。

三年間、譲は献身的な夫を演じてきた。食事を運び、本を読み聞かせ、熱に震える私の手を握ってくれた。彼は群れに、運命の番を救うために全力を尽くしていると語っていた。すべて嘘だった。美しく、残酷な嘘。

それを裏付けるかのように、別の思念が私の意識に触れた。今度はもっと柔らかく、女の笑い声と、子供の楽しそうな声に満ちていた。譲が、彼の愛人である玲奈と話している。

「大雅がパパに会いたがってるわ」玲奈の声が甘く響く。「いつ帰ってくるの?」

「もうすぐだ、愛しい人」譲の声は温かく、ここ何年も私に向けられたことのない響きだった。「こっちの…用事を片付けたらな。今夜にはそっちへ行く」

思念はぷつりと途絶えた。部屋の静寂が耳を聾するようだった。

数分後、ドアが軋んで開いた。譲が入ってきて、その顔は完璧なまでに愛情深い憂いの仮面を被っていた。彼は黒髪に、嵐の空色の瞳を持つ、端正な顔立ちをしていた。私の首領、私の番。そして、見知らぬ他人だった。

「気分はどうだ、愛しい人?」彼は蜂蜜のように滑らかな声で尋ねた。

彼はベッドに腰掛けようとしたが、私は身をすくめて避けた。彼の匂いが、まず私を襲った。それは群れの仕事の匂いでも、書類や戦士の汗の匂いでもなかった。甘く、まとわりつくような、別の雌の匂い。玲奈の匂いだった。

「彼女と一緒だったのね」私は囁いた。その言葉は、荒れた喉をひっかいた。

彼は凍りついた。「何を言っているんだ?幹部と会議をしていた」

「嘘をつかないで、譲」私の声に、ほんのわずかな力が宿った。「あなたの体に、彼女の匂いが染み付いているわ」

彼の目に一瞬のパニックがよぎり、すぐに覆い隠された。彼は私の感覚が、体と同じくらい鈍っていると思っていたのだ。彼は間違っていた。

彼は答えなかった。ただそこに立ち、彼の嘘が私たちの間に漂っていた。私は目を閉じ、別の繋がりに意識を集中させた。私の両親、先代の首領夫妻は、この首領の本邸に強力な力を築き上げていた。その一人娘である私の血は、この建物の礎そのものに結びついている。それはまるで心を氷水に突っ込むような、消耗の激しい、苦痛を伴う試みだったが、私は感覚をそこへ押しやり、彼を探した。

そして、私は彼を見つけた。

現在ではなく、過去の中に。本邸の魔力は、残響、記憶を留めていた。父がかつて評議会を開いていた壮麗な居間で、譲が黒髪の小さな男の子を膝の上で跳ねさせている幻視を見た。大雅。玲奈が彼の隣で輝くような笑みを浮かべ、その首には美しいムーンストーンを留めた銀の鎖がかかっていた。私のムーンストーン。譲が、もうすぐ来る私の誕生日のために特別に作らせていると言っていた、あの石。

幻視が切り替わり、私は息を呑んだ。彼らは、私の両親の寝室にいた。彼らのベッドの上に。その場所の神聖さは穢され、彼らの情事は私の家族の記憶への汚点となっていた。

痛みは計り知れず、私を押し潰そうとする物理的な重みとなった。しかし痛みの下に、何かが蠢いた。冷たく、硬い憤怒が。

彼は私を裏切っただけではない。私の両親が遺したものを、 dishonor したのだ。

私の指は震えながら、ベッドサイドテーブルの上の小さな、彫刻が施された印に手を伸ばした。通信用のルーン石だ。私は親指をそれに押し当て、最後の力を注ぎ込んだ。

「恵理子叔母様」私は古代の魔術を通して、必死のメッセージを送った。隣接する黒曜団にいる母の妹に。「彼が私の解毒薬を渡してしまう。彼は他の女との間に子供がいる。私は死にかけているわ」

一瞬の間があった後、彼女の声が、憤怒と悲しみに満ちて、私の心に響き返ってきた。「持ちこたえるのよ、佳月。今、迎えに行くから」

繋がりは薄れていった。私はルーン石を指から落とし、決意を固めた。私はここで、この嘘のベッドの上で死ぬつもりはない。黒曜団へ行く。そして、生き延びる方法を見つける。自分のためでなくとも、譲の世界が燃え尽きるのを見る機会のために。

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