新婚初夜、車椅子の御曹司がいきなり立ち上がってキス!? の小説カバー

新婚初夜、車椅子の御曹司がいきなり立ち上がってキス!?

9.2 / 10.0
結婚式当日、バージンロードで婚約者に裏切られた星川理緒。隣の式場でも、車椅子の御曹司・一之瀬悠介が花嫁に逃げ出されるという悲劇に見舞われていた。互いに伴侶を失った最悪の状況下、理緒は廊下で出会った悠介に「私たちで結婚しない?」と大胆な提案を持ちかける。世間の嘲笑を背に始まったのは、利害が一致しただけの“契約結婚”だった。悠介は彼女を金目当てのスペアだと蔑み、「足に触れるな、用が済めば即離婚だ」と冷淡に突き放す。しかし、献身的な理緒と過ごすうちに、彼の心には冷徹な態度とは裏腹な感情が芽生え始めていた。ある日、悠介が枕元の離婚届を見つけ、彼女を失う恐怖に焦りを感じた瞬間、物語は急展開を迎える。新婚初夜、動かないはずの足で車椅子を蹴り捨てて立ち上がった悠介は、驚く理緒を強引に抱き寄せた。足の麻痺はすでに完治していたのだ。「離婚なんて認めない。この契約は一生有効だ」と、彼は満面の笑みで宣言する。嘘から始まった二人の関係は、甘く執着に満ちた真実の愛へと変貌していく。

新婚初夜、車椅子の御曹司がいきなり立ち上がってキス!? 第1章

「どこへ行くの?」

荘厳な結婚式場に、星川理緒の悲痛な声が響く。 背を向けた神宮寺涼介の腕を掴むその瞳には、切なる願いが宿っていた。

祭壇の前では、両家の親族や友人が固唾を飲んで見守り、神父が新郎への誓いの言葉を問い終えたばかり。 だが、新郎である神宮寺涼介はそれを無視して電話に出ると、あろうことか、誓いの儀式の最中に踵を返したのだ。

「桜庭ひなたが、俺たちの結婚を知って鬱の発作を起こした。 今から飛び降りるかもしれない。 俺が行かなきゃ、あいつは……!」

涼介は隠そうともしない苛立ちを声に乗せ、理緒の腕を容赦なく振り払った。

突き放された勢いで理緒は足首を捻り、床に崩れ落ちる。 それでもなお、縋るように彼へと手を伸ばした。

「今日は私たちの結婚式なのよ!あなたが行ってしまったら、私はどうなるの?それに忘れたの?桜庭ひなたはあなたを裏切った女でしょう。 あれほど傷つけられたのに、まだ彼女に未練が?そこまでして、彼女の元へ行くというの?」

涼介の眼差しは、氷のように冷え切っていた。 「俺とひなたのことに、お前が口を挟むな。 たとえ彼女が過ちを犯して俺を傷つけたとしても、お前など彼女の足元にも及ばない」

涼介の言葉は氷の刃となって、理緒の胸を深く抉った。

やはり、神宮寺涼介は桜庭ひなたを忘れられない。 自分は永遠に、あの女の代わりにはなれないのだ。

「私が何をしたっていうの!どうしてこんな酷いことができるの!」

「お願い、せめて式が終わるまで……!指輪の交換さえ済めば、すぐに行ってもいいから!」

涼介はその手を煩わしげに避け、剥き出しの嫌悪を込めて言い放つ。 「人の命が懸かっているんだぞ。 お前が心配なのは自分の結婚式だけか。 星川理緒、お前は底知れず冷酷な女だな」

「結婚式は中止だ。 延期する」

彼は青ざめる理緒に一瞥もくれず、歩きながら胸元のブートニアを無造作に引き千切り、投げ捨てた。 周囲から突き刺さる奇異の視線など意にも介さず、ただひたすらに歩み去っていく。

主役を失った式場は、一瞬の静寂の後、大きな混乱に包まれた。

「嫌……行かないで、涼介!」

「あなたがいなくなったら、私は、どうすれば……!」

花嫁衣装のまま床に座り込む理緒の体は、屈辱に細かく震えていた。 丹精込めて施されたメイクの上を、大粒の涙が筋状に溶かしていく。

三年間、その愛を信じ続けた男は、彼女の尊厳も、二人の誓いも、何もかもを置き去りにして別の女を選んだ。

神宮寺涼介の脳裏に浮かぶのは、助けを求める桜庭ひなたの可憐な姿だけ。 今この瞬間、祭壇の前で独り晒し者にされている花嫁が、どれほど惨めで途方に暮れているかなど、想像すらしないのだろう。

無数の視線が、まるで鋭い針のように理緒の全身を突き刺す。 嘲笑、憐憫、そして他人の不幸を蜜の味とする好奇の目。

これほどの屈辱は、生まれて初めてだった。

そこへ、父の星川健太が足早にやってくる。 慰めの言葉を期待した理緒に、彼は怒りに目を吊り上げて怒鳴りつけた。 「男一人繋ぎ止められんとは!なぜ俺に、お前のような娘ができてしまったんだ!」

健太はよほど腹の虫が収まらなかったのか、罵詈雑言を二言三言吐き捨てると、妻の小林颯を伴い、振り返りもせずに去った。人混みの中から、妹の星川結愛が姿を現す。

その口元には、歪んだ笑みが浮かんでいた。 「お姉ちゃん、本当に役立たず!結婚式で花婿に逃げられるなんて、大勢の前で笑いものじゃない。 パパとママが怒るのも無理ないわ。 私も恥ずかしいもの!」

結愛もまた、そう言い捨てて背を向けた。

……

理緒の家族は、誰一人として彼女の味方にはならなかった。 花嫁姿で取り残された理緒を、遠巻きに見ていた新郎側の招待客たちが、ここぞとばかりに態度を変える。

「新郎が逃げたのに、親まで花嫁を置いていくのか。 あの花嫁自身に何か問題があるんじゃないか?涼介くんがああなるのも分かる気がするな」

「そうよね、まともな女なら、花婿に捨てられたりしないもの」 「浮気でもしてたのかしら?でなければ、あんな風に置き去りにされるはずがないわ!」

囁き声は次第に大きくなり、それはやがて、道化師を嘲るような罵声となって容赦なく理緒の耳に届いた。

その時、隣の式場から微かな喧騒が聞こえてきた。

虚ろな視線をそちらへ向けると、ぽつんと置かれた車椅子に座る一人の新郎の姿が目に映った。 そばでは司会らしき神父が、狼狽した様子で問いかけている。 「花嫁はまだ到着なさらんのですか?」

理緒は涙を乱暴に拭うと、通りかかったスタッフを呼び止め、尋ねた。 「すみません、あちらの式ですが……花嫁さんは、どうされたのですか?」

スタッフは彼女の姿を値踏みするように一瞥し、ありのままを告げた。 「新婦様は、いらっしゃいませんでした。 お相手がご病気で足が不自由だと知り、耐えられずに逃げてしまわれた、と……」

「それで、あの方はここでずっと……?」

スタッフが頷くのを見て、理緒は小さく礼を言った。

車椅子の新郎は背を向けており、距離もあるため表情までは窺えない。 だが、最も大切な日に、最も信じた人間に見捨てられる痛みを、今の理緒は痛いほど理解できた。

私たちは、なんて似ているのだろう。 どちらも、捨てられた哀れな人間だ。

しばしの沈黙の後、絶望の底で、理緒の瞳に不意に強い光が宿った。

三年間愛したから何だというのだ。 神宮寺涼介が先に裏切った。 なぜ自分だけが貞節を守らなければならない?

私の世界の全てが、神宮寺涼介だったわけじゃない!

彼女がすっくと立ち上がった瞬間、嘲笑の囁きがぴたりと止んだ。

すべての視線が、彼女の一挙手一投足に吸い寄せられる。 理緒はドレスの裾を拾い上げると、迷いのない足取りで、まっすぐ隣の式場へと向かった。

純白のウェディングドレスをまとった花嫁がこちらへ歩いてくるのを見て、新郎側の賓客たちも息を飲む。

その気配に気づいたのか、男が車椅子をゆっくりと回転させ、振り返った。理緒は歩みを止め、目の前の、彫刻のように整った顔立ちの男をじっと見つめる。その瞳に一瞬驚きがよぎったが、すぐに彼女は手を差し伸べた。

「初めまして。 花嫁がおらず、お困りだと伺いました。 奇遇ですね、私の花婿も、たった今逃げたところなんです。 もしよろしければ……いっそ、私たち結婚しませんか?」

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