元婚約者の叔父と秘密の契約結婚 の小説カバー

元婚約者の叔父と秘密の契約結婚

8.2 / 10.0
母の遺品を探すため車載カメラを確認した安紀は、婚約者の雅彦と実妹・美咲の不貞を知る。だが、家族の前で裏切りを告発した彼女を待っていたのは、父からの冷酷な拒絶だった。父は雅彦と妹の婚約を認め、安紀を別の政略結婚の道具として扱うと宣言。継母も妹を庇い、安紀を家の恥と罵る。幼少期から病弱な妹のために犠牲を強いられてきた彼女は、自分を蔑む者たちへの復讐を決意した。安紀は家を飛び出し、ある大胆な賭けに出る。それは、雅彦の叔父であり、一族の絶対権力者である鷹司暁と契約結婚を結ぶこと。かつての婚約者の「叔母」という立場を手に入れ、自分を裏切った家族と男に、受けた屈辱のすべてを倍返しにするための壮絶な反撃が今、幕を開ける。

元婚約者の叔父と秘密の契約結婚 第1章

高石安紀は最後の荷物をスーツケースに詰め終え、満足げに息をついた。

パスポート。ニューヨーク支社との契約書類。

すべて準備万端だ。

それから彼女は化粧台の方へ視線を向けた。そこには母の遺した記念品――一箱の宝石が置かれている。

安紀は蓋を開け、お守りのように大切にしてきたサファイアのイヤリングを取り出そうとした。

しかし、安紀が指で匣を開けてみると、中のイヤリングは一つだけしか残っておらず、もう片方はどこへともなく消え去っていた。

心臓が不吉な鼓動を立てて激しく躍り、胃が鈍く疼いた。このイヤリングは彼女にとって単なる装身具ではない。これは母そのものだった。

安紀は気が狂ったように部屋中を探し回った。

カーペットの下、ベッドの裏、クローゼットの隅。どこを探しても見つからない。

安紀は関連する詳細を思い出そうと努めた。彼女は今日、婚約者の鷹司雅彦に会った後、自ら車を運転して家に帰った。もしかすると——ある可能性が頭をよぎった。車の中でうっかり落としてしまったのかもしれない。

静まり返った空間で、安紀は車に設置されたドライブレコーダーのことを思い出した。スマホで録画映像を確認すれば、いつ、どこで落としたか分かるかもしれない。

微かな希望にすがり、彼女は専用アプリを起動し、本日の映像を再生した。

画面には、先ほど雅彦の会社へ向かう見慣れた道のりが映し出された。特に異変はない。安紀は少しずつ映像を巻き戻して確認していく。

突如、画面が切り替わり、車が雅彦の会社の駐車場に停車した場面が映し出された。

運転席のドアが開き、二つの人影が車内に侵入してきた。

鷹司雅彦。そして彼女の妹、高石美咲だ。

安紀の呼吸が完全に止まった。

なぜ美咲が、雅彦と一緒に私の車にいるのか。

録画された映像と音声が、スマホの画面とスピーカーから流れ出す。

「雅彦さん、お姉様の車、いい匂いがする。お姉様の匂いだね」

美咲の甘ったるい声が安紀の鼓膜を揺らした。

「美咲は、姉さんの匂いと俺の匂い、どっちが好きだ?」

雅彦の低い笑い声が響いた。

「もちろん雅彦さんの匂いよ。お姉様なんて、いつも仕事ばっかりで女らしさもなく、堅苦しくてつまらない、大嫌い」

美咲は嘲るように言い放った。

「その通り。安紀は融通が利かなくて、一緒にいても全然楽しくない。それに、ベッドの上でも冷めきっている。可愛らしい美咲とは全然違う」

雅彦は吐き捨てるように続けた。

「あんな女、婚約破棄されて当然よ。雅彦さんに似合うのは私なの」

美咲の声には抑えきれない得意さが滲んでいた。

その直後、狭い車内には、耳を塞ぎたくなるような喘ぎ声と生々しいキスの音が響き渡った。

安紀の顔から急速に血の気が引いた。

指先は氷のように冷たくなり、胃が激しく痙攣した。

映像の中の美咲は、泣き出しそうな声で囁いた。

「雅彦さん、お姉様がもうすぐ戻ってくるわ。こんなことしてたら……殺されちゃう」

「何を怖がることがある。どうせすぐ婚約を破棄するんだ。安紀みたいな勝気な女より、君のほうがずっと可愛い」

雅彦の言葉は、まるで刃のように安紀の心臓を突き刺した。

彼女は無意識にスマホの縁を強く握りしめ、指関節が白くなるほど力を込めた。画面には、血色を失った自分の顔が映り込んでいた。

安紀は震える手で動画ファイルをスマートフォンに保存した。一滴の涙も流さない。瞳には、すべてを凍らせるような冷たい光だけが宿っていた。

彼女はスマホを持ち、110番をダイヤルした。

「もしもし、警察ですか。通報します。他人が私の車に無断で侵入し、車内でわいせつ行為を行っています。至急、車両の移動と捜査をお願いします。場所は——」

安紀は冷静に雅彦の会社の住所を告げた。

通話を終えると、彼女はスーツケースを引き、無表情でタクシーを拾って成田空港へ向かった。

空港のVIPラウンジで、乱れた心を落ち着けようとコーヒーを汲みに行った。

その時、考え事に気を取られ、曲がり角で一人の男性とぶつかってしまった。

コーヒーが相手の高級スーツに飛び散った。

「大変申し訳ございません!」

安紀は慌てて頭を下げ、顔を上げた瞬間、言葉を失った。

目の前の男は身長が高く、圧倒的な存在感を放っていた。

隣に立つアシスタントらしき青年、天野潤貴が大げさに叫んだ。

「暁!お前、公共の場でこんなものを見てるのかよ!」

安紀の視線は男が落としたタブレットに落ちた。画面には、男女が大胆に絡み合う芸術映画のワンシーンが映し出されていた。

暁と呼ばれた男、鷹司暁はただ静かに彼女を一瞥した。

その瞳はあらゆるものを見透かすように深く、瞬く間に安紀の心の奥底を射抜いた。

続きを読む

元婚約者の叔父と秘密の契約結婚 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

運命の番アルファの隠し子――私を打ち砕く拒絶 の小説カバー
8.4
聖なる白狼の血を引く私は、一族を統べるルナとなるべく育てられた。運命の番であるアルファの戒は、私の魂の片割れ。そう信じて疑わなかったが、彼には五年間隠し続けてきた別の家族がいた。皮肉にも、彼の息子の誕生日は私と同じ日。ガラス越しに見たのは、見知らぬ女と愛を囁き、私が憧れた遊園地へ行く約束を交わす番の姿だった。さらに残酷なことに、私の両親もこの裏切りの共犯者だった。彼らは一族の金を横領して戒の二重生活を支え、私の誕生日には薬で私を眠らせ、密かに彼らだけの祝宴を開こうと企んでいたのだ。私という存在は娘でも番でもなく、ただ純血の後継者を産むための便利な道具に過ぎなかった。絶望の淵に立たされた十八歳の朝、私は母が差し出した毒入りのお茶を飲み干し、死を偽装して彼らの前から姿を消す決意をする。もちろん、ただでは去らない。戒たちの息子の誕生会に、彼らがひた隠しにしてきた醜悪な真実をすべて詰め込んだ、特別な「贈り物」を届けさせてから。偽りの愛に満ちた世界を、私は自ら壊して自由を手に入れる。
裏切られた妻の覚醒:天才研究者の華麗なる復讐 の小説カバー
8.1
夫の親族が集まる法事の最中、私は夫の暁と未亡人・絢子の不貞を目の当たりにする。私は研究者としての輝かしいキャリアを捨て、妻として彼を支え続けてきた。しかし夫は、私の研究成果を絢子の手柄として横流しし、心臓病を患う娘が発作で苦しむ夜さえも、嘘をつく絢子を優先したのだ。献身を裏切られた絶望と、愛する娘をないがしろにされた怒りが私を突き動かす。降りしきる雨の中、私は決意した。奪われた研究データと娘の親権を必ず取り戻し、二人には相応の報いを受けさせると。どん底に突き落とされた天才研究者による、冷徹で華麗な復讐劇がいま幕を開ける。
元妻の究極の復讐 の小説カバー
8.7
二十年連れ添った夫・神宮寺朔也が自ら命を絶ち、遺した言葉は妻の私ではなく、義妹の鈴原凛に向けられたものだった。夫は最期に、私が心血を注いだIT帝国の全てを、かつて我が子を間接的に死に追いやった憎き凛へと譲り渡したのだ。絶望の淵で人生を終えたはずの私は、気づけば十代の頃、神宮寺家の養子に選ばれる運命の日へと回帰していた。児童養護施設の喧騒の中、私はかつての夫である朔也と再会する。しかし、目の前の彼は驚愕に顔を歪め、私の名を呼んだ。彼もまた、あの凄惨な結末の記憶を抱えたまま過去に戻っていたのだ。「今度こそ君を救う」と、罪悪感に満ちた瞳で誓う朔也。だが、その言葉は空虚に響く。前世で彼の「救済」を信じた結果、私は愛する息子を失い、人生の全てを奪われたのだから。裏切りと後悔に彩られた過去を背負い、二人の二度目の人生が幕を開ける。これは、愛憎の果てに全てを失った女が、運命の歯車を狂わせる男と対峙し、己の矜持を取り戻すための物語である。復讐か、それとも決別か。交錯する記憶の中で、真実の愛の形を問うサスペンス・ロマンス。
私は、億万長者の後継者を一晩で手に入れました の小説カバー
8.9
婚約者の拓海に弁当を届けに向かった先で、私が目にしたのは親友の千夕と密通する彼の姿だった。裏切りに絶望した私は、自棄になってバーで出会った見知らぬ男を一夜の相手として買い、鬱憤を晴らす。しかし、その正体は勤務先である航空会社の親会社を統べるCEOだった。彼との情事は終わらず、フライト中の機内という密室で屈辱的な行為を強いられた上、その様子を隠し撮りされてしまう。「清純派CAの機内売春」という事実無根のスキャンダルが社内に拡散され、私は弁明も叶わず無期限の乗務停止処分を下された。愛も友情も失い、三年間心血を注いだ夢の仕事さえも理不尽に奪われた私は、荷物を抱え絶望の中で会社を去ろうとする。そんな私の前に、突如として四人の黒服の男たちが立ちはだかった。彼らは、あの「悪魔」のようなCEOが地下駐車場で待っていると告げる。私の窮地を救う方法があるという彼の真意とは。全てを失ったどん底の地で、新たな運命の歯車が回り始める。
二度目の人生、私は義母を売り飛ばした の小説カバー
8.6
不妊が発覚した途端、夫は私に離婚を突きつけた。しかし、非情な義母がその提案を遮る。「高い結納金を払ったのだから、タダで返すわけにはいかない。売って元を取るべきだ」と。その言葉通り、私は山奥の施設へと売り飛ばされてしまった。そこで待っていたのは、想像を絶する屈辱と苦痛の日々。抗う術もなく、私は無念のうちにその短い生涯を閉じたはずだった。ところが、次に意識を取り戻すと、そこはまだ地獄へ送られる前の過去の世界だった。運命を変える機会を得た私は、もはや誰に対しても慈悲など持たない。かつての自分を襲った絶望を、今度は復讐の糧にする。自分を道具のように扱った義母に対し、私は同じ末路を辿らせるべく、冷徹な計画を実行に移した。私の人生を狂わせた者たちへの反撃が始まる。今度は私が、あの強欲な義母を売り飛ばしてやる番だ。二度目の人生、私は自分の尊厳を取り戻すため、容赦なく牙を剥く。
二度目の人生、姉の踏み台にはならない の小説カバー
8.8
実家の破産をきっかけに、私は姉の学費を捻出するため芸能界へと身を投じた。過酷な接待や不本意な仕事に耐え、心身を削りながら金を稼ぐ日々。しかし、清廉潔白を装う姉は、私の献身を「名誉欲に駆られた卑しい行為」と蔑み、私が苦労して得た金を他人の支援に充てて善人面をした。姉を画壇の寵児にするため、私は泥を被りライバルの醜聞を暴いたが、彼女はその恩恵を享受しながらも私を「心根の腐った人間」と非難し続けた。やがて私は姉の宿敵から報復を受け、全てを失い巨額の負債を抱える。絶望の中で姉に助けを求めたが、彼女は「自業自得の報いだ」と冷酷に突き放した。姉の踏み台として利用され、絶望の果てにビルから身を投げた私。だが、目を覚ますとそこは芸能界に入ったばかりの過去だった。自分を犠牲にしてまで姉を支える道はもう選ばない。二度目の人生、私は自分の尊厳を守り、偽善に満ちた姉に依存される未来を拒絶することを誓う。今度こそ、私は私自身のために生きる。
今すぐ読む
共有