飾り物の妻、禁欲御曹司に拾われました の小説カバー

飾り物の妻、禁欲御曹司に拾われました

8.2 / 10.0
交際して一年、藤原晟成に一度も触れられないまま、月岡蘭は心身に不調をきたしていた。ある夜、晟成が自分の姉の写真に口づけする姿を偶然目撃した蘭は、自身が姉の代用品に過ぎなかったという残酷な事実に直面する。ショックで体調を崩した彼女は病院を訪れるが、そこで診察にあたった若きエリート医師に強く惹かれ、理性を揺さぶられてしまう。翌日、出社した蘭を待っていたのは驚きの再会だった。昨日の医師がグループ本社の新社長として現れたのだ。さらに、蘭は彼の専属秘書に任命されてしまう。動揺を隠せない蘭は「略奪するつもり?」と詰め寄るが、やがて過去を断ち切り、自分を大切にしない晟成を捨てて新たな恋へと踏み出す決意を固める。別れを突きつけられた晟成は、目を赤く腫らして必死に復縁を懇願するが、蘭の決意は揺るがない。冷酷な態度で突き放し、彼女は自分を愛してくれる存在と共に歩み始める。かつての「飾り物の妻」という立場を脱ぎ捨て、蘭は真実の愛を掴むために力強く前を向く。後悔に沈む元恋人を背に、彼女の新しい人生が幕を開ける。

飾り物の妻、禁欲御曹司に拾われました 第1章

「ズボンを脱いで、診察台に上がってください」

低く冷たい男の声が響いた。

月岡蘭の心臓が大きく跳ねた。

いつからか、彼女は口にするのもはばかられる奇妙な病を患っていた。

発作が起きると、無性に「したく」なるのだ。

時間も場所も選ばず襲い来るその症状は、彼女の仕事と生活に深刻な影響を与えていた。

耐えかねた蘭は、勇気を振り絞って、高いプライバシー保護で知られるこの私立病院の産婦人科を予約した。

診察費は通常の病院の何倍もするが、秘密を守るためなら惜しくはない。

しかし、予約したのは四十代の女性主任医師だったはずだ。 なぜ今、彼女を診察しているのは、若く長身の男性医師に変わっているのだろうか。

「脱がなきゃ……ダメですか?」

蘭は極度の緊張に包まれ、おずおずと尋ねた。

見知らぬ男の前で下着を脱ぐなど、相手が医師だと分かっていても、この上なく気まずい。

高遠怜は真面目な口調で言った。 「脱がなければ、どうやって診察できる?」

「でも、私……」

蘭は顔を真っ赤にし、もじもじと指を捻り、はにかみながら身をよじった。

目の前の男はマスクを着けているが、その鋭い眼差しは、底知れぬ深みを湛え、何を考えているのか読み取れない。

ふと、彼に診察台に押し倒され、好きにされてしまうのではないかという錯覚に、ふと囚われた。

蘭は慌てて首を横に振った。

(なんてこと!)

(どうしてそんなことを考えてしまうのだろう?)

彼はただの医師だ。 毎日、彼女のような患者を何十人も診察している。

これは彼の日常業務に過ぎない。

蘭はそう自分に言い聞かせ、羞恥心を必死に抑え込みながら、ゆっくりとズボンを脱ぎ、診察台に横たわった。

「どこが具合悪い?」

怜は消毒器具を準備しながら尋ねた。

蘭は再び顔を赤らめた。 「私、その、あそこが……」

彼女がどうしても口にできないのを見て、怜は平静を装って問い返した。 「性生活が過剰なことによる炎症か?」

彼女のような若い女性が産婦人科に来る場合、大抵はその問題だ。

しかし、蘭は顔を赤らめて首を横に振った。 「いいえ、私……性生活はありません」

怜は手を止め、振り返って、わずかに驚いたような眼差しで彼女を見つめた。

目の前の女性は、整った顔立ちに、白く潤いのある肌、か弱さと妖艶さを兼ね備えた、清純さとセクシーさが同居する顔立ちをしていた。

その容姿は、一度見たら忘れられないほど印象的だ。

彼女ほどの美女なら、周りに言い寄る男はいくらでもいるはずなのに、性生活がないとは?

「私……その……あそこが……ちょっと……辛くて……」

男の深い眼差しに晒され、彼女は顔を赤らめ、しどろもどろに言った。

怜は消毒綿棒を握る指に、無意識に力を込めた。

だが、表面上は何も変わらず、彼女に視線を固定した。 「どう辛いんだ?」

蘭:「……」

この感覚を、どう表現すればいいのだろうか。

「その、だから……」

彼女は赤い唇を噛み、言葉を濁した。

怜は、完全に羞恥で染まった彼女の頬を見つめ、喉仏がわずかに上下した。

身体の奥底から、抑えきれない熱がこみ上げてくる。

彼はその感情を押し殺し、尋ね続けた。 「何がきっかけで?」

蘭は口ごもり、どうしても口に出すことができなかった。 「その、だから……私……」

自分が実は欲望が非常に強く、とても欲しているからだ、などと言えるだろうか。

しかし、夫の藤堂景吾と結婚して一年以上になるが、彼は一度も彼女に触れたことがない。

しかも、彼女の欲望はどんどん膨らみ、欲求不満は募るばかりだ。

翔太は逆に彼女を避けるようになった。

彼女がそっちの要求をしてくるのを、極端に恐れているのだ。

仕方なく、 蘭は自分でどうにかするしかなかったが、

それでは明らかに満たされない。

彼女は欲していた。

もっと、もっと欲していた。

怜は彼女の反応を観察し、尋ねた。 「結婚しているのか?」

蘭は無意識に頷いた。

なぜか、その答えを聞いて、怜はわずかな喪失感を覚えた。

怜の眼差しが暗くなった。 「まず横になってくれ。 診察する!」

蘭は素直に横たわった。

華奢な指で拳を固く握りしめている。

頬が火照るように熱い。

怜は彼女を見つめ、声がなぜか低くかすれた。 「動くな!」

「……」

蘭は羞恥心が頂点に達していた。

それに、この病が身体を無意識に……どうして落ち着いていられるだろうか。

「その……女性の先生に代わってもらえませんか?」

彼女は気まずそうに頼んだ。

怜の眼差しがさらに深くなった。 「俺が気に入らないのか?」

「い、いえ……そんなことは……」蘭は慌てて説明した。

しかし、彼女が言い終わる前に、彼は冷たい声で拒絶した。 「今日の予約は俺の診察だ。 治療を受けたくないなら、今すぐ帰っていい」

(なんて横暴な男だろう)

病気が治ったら、必ず彼を訴えてやる。

しかし、彼女の病気はもうこれ以上放っておけない。

とりあえず、今回は彼を信じてみよう。

「他意はありません、先生。 どうか、私を治してください」蘭は懇願した。

怜が代理で診察をするのはこれが初めてだった。

まさか、こんな特別な女性患者に巡り合うとは。

彼女の病はもともと……それに、こんなに美しいなんて……

これは、 男としての彼の自制心を試しているとしか思えない。

「無駄口を叩くな!」

彼は低く叱責し、再び喉仏が上下した。

彼は医療用手袋をはめ、消毒綿棒を手に取り、ゆっくりと彼女に近づいていく……

蘭は羞恥に顔を歪め、目を閉じた。

この場所は、夫の景吾でさえ見たことがない。

今、それが他の男に見られようとしている。

相手が医師だと分かっていても、心理的に受け入れることができなかった。

「あっ!」

蘭は思わず声を上げた。

その声は、か弱くも、どこか妖艶さを帯びていた。

怜は頭皮がぞくりとし、全身の筋肉が瞬時に緊張するのを感じ、無意識に手を止めた。

「痛かったか?」

蘭の美しい瞳は、潤んだ水膜に覆われていた。

彼女は赤い唇を開いたが、どう表現すればいいのか分からなかった。

理性が自制を呼びかけるが、彼女の病は身体を無意識に……

彼女のこのか弱く無力な様子は、実に見る者の自制心を揺さぶる。

「では、もう少し優しくする」

怜は軽く咳払いし、視線を逸らして、診察に集中した……

診察が終わると、蘭はかえって虚しさと辛さを感じた。

「先生、私の病状は、とても重いのでしょうか?」

彼女の声はわずかに震えていた。

怜は感情を抑え、ゆっくりと手袋を外した。

「「ホルモンバランスの乱れからくるヒステリー症状だ。長期間、行為をしていないことが関係しているね」」

ーー行為をしていない?

蘭は目を伏せ、美しい顔に一瞬、気まずさがよぎった。

欠如しているのではない。 まったくないのだ。

夫の景吾は重度の潔癖症で、二人は恋愛から結婚に至るまで、親密な接触はほとんどなかった。

しかし、そうであればあるほど、彼女はかえって渇望した。

まるで全身の細胞の一つ一つが、抱擁と触れ合いを求めているかのようだ……

「消炎剤と、ホルモンバランスを整える薬を処方しよう」

怜はパソコンの前に座り、処方箋を書き始めた。

「ただし、家に帰ったら夫と……親密な行為の頻度を増やすことを勧める。 そうすれば、症状はかなり軽減するはずだ」

蘭の顔は、今にも血が滴り落ちそうなほど真っ赤になっていた。

彼女はズボンをはき、診察台から降りた。

怜から処方箋を受け取った。 「ありがとうございます、先生」

彼女が診察室を出た途端、白衣を着た女性医師が、診察室のもう一つのドアから入ってきた。

「高遠怜、私がいない間に、私の患者を診察したの?」

間一髪で駆けつけた高遠優奈は、怒って弟を問い詰めた。怜は慌てる様子もなく答えた。

「忘れるな。 医大時代、俺の成績は常にトップで、お前は二位だった。 今、俺が無料で診察してやっているんだ。 お前の患者は運がいい!それに、今や病院全体が俺のものだ!」

「あなた!」優奈は彼を睨みつけた。

この弟は、まったく屁理屈をこねるばかりだ。

しかし、この弟は昔から女性を敬遠し、潔癖症でもある。 今日に限って、自ら女性患者を診察するとは、奇妙なことだ!

「そんなに歓迎されないなら、 もう帰るよ!」 怜は片手をポケットに突っ込み、蘭が消えた方向を見つめた。

優奈は慌てて弟を呼び止め、猛プッシュした。「帰るってどこへ? 今日あなたを呼んだのは、病院に新しく来た心臓外科の大友先生に会わせたかったからよ。 若くて綺麗で、腕もいい。 病院で一番人気の先生の一人よ。 何より、まだ独身……」

「また今度な」

怜は興味なさげにそう言い残し、去っていった。

続きを読む

飾り物の妻、禁欲御曹司に拾われました 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

クズ夫に捨てられた彼女は、京の大御所の溺愛花嫁となった の小説カバー
9.4
結婚式を三日後に控えた曽根明里に突きつけられたのは、愛の誓いではなく冷徹な離婚協議書だった。婚約者は「命の恩人への責任を取る」という身勝手な理由で、彼女に一時的な別れと我慢を強いる。三年間献身的に尽くしてきた明里だったが、その傲慢な態度に愛想を尽かし、未練を断ち切るように婚約書を破り捨てて彼の前から去った。後悔に苛まれた元夫が必死に彼女を捜し出したとき、明里の隣には実業界の帝王として恐れられる圧倒的な権力者の姿があった。独占欲を隠そうともせず彼女を抱き寄せるその男は、元夫を「ただのゴミ」と切り捨て、彼女の薬指に輝く指輪を愛おしげに撫でる。かつての惨めな立場から、大御所の最愛の妻へと生まれ変わった明里。彼女は冷徹な眼差しで元夫を一瞥すると、格の違いを見せつけるように優雅に微笑み、二度と関わらないよう最後通牒を突きつける。裏切りから始まった絶望の淵で、彼女は真に自分を慈しむ至高の愛を手に入れたのだ。
清水さん、お元気でしたか。元夫の天敵に三年越しで溺愛されています の小説カバー
8.0
結婚生活を送った三年間、清水瑠衣は冷徹な夫・立川蒼空の心を愛で溶かせると信じていた。しかし、その期待は土砂降りの夜に打ち砕かれる。彼女が命懸けで撮影したユキヒョウの写真は、夫が新恋人を写真界の頂点へ導くための道具に利用されたのだ。夫が別の女を抱き表彰台に立つ影で、瑠衣はアフリカの病院で生死の境を彷徨っていた。絶望した彼女は離婚届を残して失踪し、自らの力で栄光を掴むと誓う。月日が流れ、セレンゲティでカメラを構える彼女の前に現れたのは、元夫の宿敵であり、巨大資本を操る極東グループの支配者だった。彼は瑠衣を車との間に追い詰め、独占欲を孕んだ声で囁く。「同情ではない。立川が手放した至宝を愛おしんでいるだけだ」と。逃げ場を失った彼女は、その掠れた告白から真実を知る。彼は三年前から、密かに彼女を我が物にしたいという情熱を燃やし続けていたのだ。元夫の天敵による、執着と溺愛に満ちた逆転劇が幕を開ける。
元妻の究極の復讐 の小説カバー
8.7
二十年連れ添った夫・神宮寺朔也が自ら命を絶ち、遺した言葉は妻の私ではなく、義妹の鈴原凛に向けられたものだった。夫は最期に、私が心血を注いだIT帝国の全てを、かつて我が子を間接的に死に追いやった憎き凛へと譲り渡したのだ。絶望の淵で人生を終えたはずの私は、気づけば十代の頃、神宮寺家の養子に選ばれる運命の日へと回帰していた。児童養護施設の喧騒の中、私はかつての夫である朔也と再会する。しかし、目の前の彼は驚愕に顔を歪め、私の名を呼んだ。彼もまた、あの凄惨な結末の記憶を抱えたまま過去に戻っていたのだ。「今度こそ君を救う」と、罪悪感に満ちた瞳で誓う朔也。だが、その言葉は空虚に響く。前世で彼の「救済」を信じた結果、私は愛する息子を失い、人生の全てを奪われたのだから。裏切りと後悔に彩られた過去を背負い、二人の二度目の人生が幕を開ける。これは、愛憎の果てに全てを失った女が、運命の歯車を狂わせる男と対峙し、己の矜持を取り戻すための物語である。復讐か、それとも決別か。交錯する記憶の中で、真実の愛の形を問うサスペンス・ロマンス。
婚約破棄当日、彼女は帝都の御曹司の禁断の花嫁となった の小説カバー
9.4
結婚式を目前に控えた宮沢沙織は、婚約者と実姉の不貞を映した映像を突きつけられ、残酷な破局を迎える。参列者からの嘲笑を浴び、ワインで汚れたドレスを脱ぎ捨てて激しい雨の中へ飛び出した彼女は、偶然通りかかった高級車を止め、車内にいた見知らぬ男に復讐心から強引なキスを仕掛けた。その場限りの過ちで終わるはずだったが、相手は帝都で強大な権力を誇る上田家の御曹司、上田拓海であった。翌朝、沙織のアパートを訪れた元婚約者は、冷酷無慈悲と恐れられる拓海がエプロンを纏い、献身的に朝食を作る姿を目撃し愕然とする。拓海は沙織の腰を力強く引き寄せ、逃がさないと言わんばかりにその首筋に顔を埋めた。そして独占欲に満ちた瞳で、冷徹かつ官能的に囁く。「選べ、俺かあいつか。もし選択を間違えれば……一生檻に閉じ込めて、俺だけを見続けることになるぞ」。最悪の裏切りから始まった運命は、帝都の支配者による執着と狂愛に満ちた新生活へと塗り替えられていく。
二度目の人生、姉の踏み台にはならない の小説カバー
8.8
実家の破産をきっかけに、私は姉の学費を捻出するため芸能界へと身を投じた。過酷な接待や不本意な仕事に耐え、心身を削りながら金を稼ぐ日々。しかし、清廉潔白を装う姉は、私の献身を「名誉欲に駆られた卑しい行為」と蔑み、私が苦労して得た金を他人の支援に充てて善人面をした。姉を画壇の寵児にするため、私は泥を被りライバルの醜聞を暴いたが、彼女はその恩恵を享受しながらも私を「心根の腐った人間」と非難し続けた。やがて私は姉の宿敵から報復を受け、全てを失い巨額の負債を抱える。絶望の中で姉に助けを求めたが、彼女は「自業自得の報いだ」と冷酷に突き放した。姉の踏み台として利用され、絶望の果てにビルから身を投げた私。だが、目を覚ますとそこは芸能界に入ったばかりの過去だった。自分を犠牲にしてまで姉を支える道はもう選ばない。二度目の人生、私は自分の尊厳を守り、偽善に満ちた姉に依存される未来を拒絶することを誓う。今度こそ、私は私自身のために生きる。
舞い降りた最強の妹!3人の大物兄による溺愛計画 の小説カバー
8.6
鈴木瑠香は5年間、家族の愛を求めて尽くし続けてきた。しかし、妹のついた嘘によって「偽の令嬢」の烙印を押され、婚約破棄と追放という非情な運命を辿る。罵声を浴びせられながら家を去った彼女は、ついに未練を断ち切り、自らが与えていた恩恵をすべて回収することを決意した。だが、誰もが予想だにしない真実が隠されていた。「田舎の百姓」と蔑まれていた彼女の実の両親は、実はY国の富を支配する超大富豪一族だったのだ。一夜にして本物の令嬢へと返り咲いた瑠香を待っていたのは、三人の兄たちによる過保護なまでの溺愛。CEOの長兄、世界的科学者の次兄、そして天才音楽家の三兄は、すべての仕事を投げ打って妹のもとへと駆けつける。かつての家族が後悔に震え、元婚約者が復縁を迫るなか、社交界にはさらなる衝撃が走る。名門・加藤家の御曹司であり海軍大将の称号を持つ男が、彼女に婚姻届を突きつけたのだ。どん底から頂点へと登り詰める、華麗なる逆転劇が幕を開ける。
今すぐ読む
共有