捨てられ妻、今は大物に抱かれています の小説カバー

捨てられ妻、今は大物に抱かれています

9.4 / 10.0
夫に裏切られ、屈辱の中で離婚を突きつけられた柴田友子。どん底を味わった彼女だったが、その苦難を糧に再び自らの足で立ち上がる。かつては平凡な主婦に過ぎなかった彼女は、類まれなる才能を開花させ、今や世界中から熱い視線を浴びる人気画家へと華麗な転身を遂げていた。名声と輝かしい日々を手にした彼女の前に、かつて自分を捨てた元夫が「もう一度やり直したい」と身勝手な未練を抱いて現れる。しかし、彼の前に立ちはだかったのは、友子を優しく腕に抱く謎めいた大物実業家の姿だった。「彼女は俺の大切な人だ」という力強い宣言が響き渡る。自分を卑下していた過去を脱ぎ捨て、真実の愛と成功を掴み取った女性の物語。かつての夫の嫉妬や後悔が交差する中で、新たなパートナーとの絆が深まっていく。どん底からの鮮やかな飛躍を描き、真の幸福を問いかける、痛快な大人の逆転ラブロマンスが幕を開ける。

捨てられ妻、今は大物に抱かれています 第1章

広々としたプライベートシアターのスクリーンには、今もっとも話題の宝石オークションの現場が映し出されていた。

「2000万円、初回入札…」

オークショニアの響く声と同時に、柴田友子の身体は下の男に深く貫かれた。

あまりの激しさに耐えきれず、目の前のたくましい肩に噛みついてしまう。

男は喉奥でくぐもった声を漏らした。

「…少し、力を抜け」 男は彼女の腰をさらに強く抱き締め、しわがれた声で喘ぐように言った。

柴田友子は、自分の噛みつきが痛かったことをわかっていた。

ようやく少し落ち着いて、そっと歯を離す。

謝ろうとしたその瞬間、男の低くくぐもった笑いが耳に届いた。「言ったのは…そっちの口じゃない」

友子は一瞬きょとんとした。

次の瞬間、謝りの気持ちは羞恥の炎に姿を変え、一気に身体の隅々まで燃え上がる。

そのあとも、熱を帯びた戦いはますます激しくなっていった。

やがて、オークショニアの槌が静かに打ち下ろされた。「2億円!」

「では皆さま、伊藤友征様に盛大な拍手を!」

その名前を耳にした瞬間、柴田友子の身体はびくりと強張った。

あまりにも露骨な反応に、男の動きがふと止まる。重たいまぶたを持ち上げ、スクリーンへと目を向けた。

ちょうどそのタイミングで、カメラが伊藤友征の顔を映し出す。

「伊藤家の次男坊か…知り合いか?」男はくすりと笑みを浮かべながら、友子の耳たぶに唇を寄せる。

柴田友子は眉をひそめ、その話題に強い拒絶を示した。

「噂話を探るのも…あなたたちの『サービス』に含まれてるの?」

そう言うと、男はふっと小さく笑った。

サービス、か。

否定はしなかった。ただ無言のまま、彼女の腰をさらに強く掴み、突然に激しさを増す。

周囲は薄暗く、欲望が満ちていく。

肌と肌がぶつかる音が、乱れた鼓動と重なり合い、空気を灼き尽くすほどの熱を帯びていた。

そしてふたりは、ついに頂きへと駆け上がる──

……

すべてが終わったあと──柴田友子は男がシャワーを浴びている隙を見計らい、財布から十数枚の紙幣を取り出して椅子の上に置いた。

そして腰を押さえながら、静かにその場を後にした。

久野斯年がバスルームから出てきたとき、椅子の上の現金に気づいて、唇の端をわずかに持ち上げる。

ゆっくりとタバコに火をつけ、ソファに腰を下ろすと、札束を拾い上げ、手のひらで弄び始めた。

間もなくして、助手の萩原崎が慌ただしく駆け込んできた。

室内には、未だに情欲の名残が微かに漂っていた。その空気に触れた途端、萩原崎は背筋が凍るような感覚を覚え、思わず身をすくめた。「申し訳ありません、久野社長。私の不注意です。少しだけ時間をください、すぐに彼女を連れ戻します!」

ようやく帰国したばかりだというのに、どれだけ備えても、たった一人の女にすら手を焼くとは…

久野斯年は煙をふっと吐き出し、ぼんやりとした目元で天井を仰ぐ。

「いいさ。自分から望んだことだ」

その一言に、萩原崎は一瞬、呆けたように目を見開いた。

そしてふと目をやると、久野斯年の鍛えられた胸元には、生々しく残る指の痕が幾筋も刻まれていた。その瞬間、萩原崎の頭は真っ白になった。

これまで長く付き添ってきたが、久野斯年が女性に触れたところなど、一度たりとも見たことがなかった。いや、それどころか人と肌を重ねること自体、徹底的に避けていた。

外では何か言えない病気を抱えているのでは、とまことしやかに噂されていたほどだ。

なのに今——あっさりと、その一線が破られていた。

萩原崎が思考を巡らせる間もなく、久野斯年の低く深い声が静かに響いた。「伊藤友征の私生活を洗え。30分以内に、やつのすべての情報を出せ」

あの女が、ふらふらとこの部屋に転がり込んできたときのことを思い返す。

身体は火照り、目も虚ろで、まともな意識があるようには見えなかった——あれは、明らかに薬を盛られていた。

長年、欲望を抑え続けてきた彼だったが――彼女の不器用な誘惑に、ついに理性が崩された。

ただ——彼女を抱いたその瞬間、久野斯年ははっきりとわかった。そこに、抗いようのない“壁”があったのだ。

彼女は…初めてだった。

あの伊藤友征と、結婚して2年も経っているというのに。

なのに、初めて?

久野斯年は、あの甘く痺れるような感触を思い返しながら、ふっと唇をゆがめて笑った。

思いがけないご褒美に、心の奥から満たされるのを感じていた。

——ただひとつ、惜しいのは。彼女が、自分の正体に気づいていなかったこと。

……

柴田友子が帰宅したとき、すでに夜は明けていた。

小さく歯を食いしばる。

後半、何度も身体が動かなくなるほど疲れ切っていたのに、それでもあの男は彼女を腕に閉じ込めたまま、執拗に欲を求め続けた。

一体どっちが客なのか、わからない——本当に

考える間もなく、スマートフォンが鳴り響いた。画面には、親友・咲耶衣夢の名前。

「とも〜っ!」電話越しに、まるでプレーリードッグのような高い叫び声が飛び込んできた。「いま、平気なの?大丈夫?」

柴田友子はぐったりとした様子で靴を脱ぎながら答える。「…もう、だいぶマシ」

その弱々しい声を聞いた途端、咲耶衣夢の口調が鋭くなった。「友征のクソ野郎、マジで最低すぎ!別れたいなら離婚すりゃいいのに、薬まで使って計画的にハメるなんて、男の風上にも置けないクズじゃん!?」

その言葉に、柴田友子の胸がきゅっと締めつけられた。

昨日は、結婚二周年の記念日だった。伊藤友征から「お祝いしよう」とメッセージが届き、彼女は丁寧に身支度を整え、心を躍らせて待ち合わせの場所へ向かった——なのに、彼は現れなかった。代わりに差し出された一杯の水。何の警戒もせず口にしたそれは、薬が仕込まれていた。そして、あの夜の狂おしい出来事へと繋がった。

本当に——あれは彼の仕業なのだろうか?

胸の奥に湧き上がる皮肉と苦味を押し殺し、柴田友子はゆっくりと階段を上がっていく。「もう大丈夫、衣夢。この件は…私がきっちりケリをつける」

咲耶衣夢は、友子の性格をよくわかっていた。だからこそ、こんなふうに言う。「何かあったらすぐ言ってよ!一番尖ったヒール履いて、そのクソ男のタマぶっ潰しに行ってやるから!」

その勢いに、柴田友子はわずかに唇を引きつらせるように笑った。

「でもさ、そういえばなんだけど、友子」 どこか好奇心に満ちた声。「昨日の夜、あんたが連れ込んだ男って…誰なの?」

友子の足が止まる。胸の奥に、じわりと嫌な予感が広がった。「…あれ、あんたが呼んだ『相手』じゃなかったの?」

「呼んだよ?でもあんた来なかったじゃん。今朝さ、あの人から電話あって、『一晩中待ってたけど誰も来なかった』って言われたんだよ?だから心配になって電話したの」

「……」

呆然としたその瞬間。目の前の寝室のドアが、突然音を立てて開いた。

反射的に顔を上げる。

そこに立っていたのは、シャワーを浴びたばかりの伊藤友征だった。腰に巻いた一枚のバスタオルだけの姿で、彼女を上から見下ろす。

「…相手って、何の話だ?」

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