エリュフィシア・ヒストリオ の小説カバー

エリュフィシア・ヒストリオ

9.1 / 10.0
異世界エリュフィシアは、本来その地には存在しないはずの異端なる技術「アルコーン」の台頭により、果てなき戦乱の渦へと飲み込まれていった。加速し続ける争いの歴史の中で、小国ウェルギス王国もまた存亡の危機に立たされている。この動乱の時代を背景に、次期国王としての宿命を背負う青年アラステアは、自ら剣を手に取り最前線へと赴く決意を固めた。戦場に吹き荒れるのは、敗者の慟哭、強者の憤怒、そして己の信念を懸けて戦う者たちの誇り。混沌がすべてを支配する過酷な戦場において、彼は何を信じ、何を守り抜くのか。凄惨な戦いの中で、揺るぎない覚悟を胸に秘めた者だけが生き残ることを許される。国家の命運と個人の誇りが複雑に絡み合う中、アラステアは自らの正義を貫くために、終わりなき戦いへとその身を投じていく。これは、異質な技術がもたらした動乱の歴史に抗い、激動の時代を駆け抜ける王子の足跡を描いた壮大なファンタジー戦記である。彼が歩む道の先には、果たしてどのような結末が待ち受けているのだろうか。

エリュフィシア・ヒストリオ 第1章

 超大国の侵略戦争は、小国ウェルギス王国にも拡大していた。

「アラステア様!ソルモール軍が最終防衛ラインを突破しました!」

 慌ただしく報告したのは、ウェルギスの王室騎士団団長ヴァルナス・ニールだった。

「そうですか。もう来たのですか…」

 報告受けたアラステアもまた、焦っていた。何故なら相手はエリュフィシア最大の超大国、ソルモール帝国。圧倒的な軍事力を背景に、エリュフィシア全土を支配せんとしていた。

 アラステアの心には、恐怖心と憤りが混在していた。

「もしや出陣なされるおつもりか…!?」

 ヴァルナスは別の意味で焦った顔をした。アラステアはいずれこの国を治める存在。戦死させるわけにはいかない。

「あなたの、この国を思う気持ちは分かります。しかし、あなたは…」

「ヴァルナス!私の身を案じてくれるのは、ありがたく思います。ですが」

 アラステアは、ひざまずくヴァルナスに歩み寄り、彼の肩に手を置いた。

「ですがこの国が滅んでは、意味がありません!私のサーレーンを出して下さい!」

「…ならば、死は許されませぬぞ」

 アラステアの後ろ姿は、窓から降り注ぐ光の中へと消えていった。

 アラステアは、王室用の地下格納庫へと向かった。城の中は慌ただしい。それでも家臣や兵士たちは、アラステアに敬礼した。もちろんアラステアも気付いていたが、それにかまっている場合では無かった。

 地下格納庫へ向かう螺旋階段を降っていた時、アラステアは大きな揺れにバランスを崩した。

「まさか……!」

 ついに敵軍が、城の間近まで侵攻したのだと、直感した。

「急がないと……!」

 再び階段を降った。やがて最後の段を踏み終えたとき、格納庫の扉が見えた。アラステアはそれを蹴り飛ばし、格納庫の中に入った。

 そこには巨人型の兵器、アルコーンがずらっと遠くまで並んでいた。本来これらは予備の戦力であるが、これを見たアラステアは最前線に投入することを決めた。

「マノアス!お願いがあります。至急、搭乗騎士を集めてください!」

 格納庫の管理責任者であるマノアスは、その言葉に、顔をゆがめた。予備戦力を使うということは、訓練生や民兵も、いよいよ駆り出されることを意味する。

「いやしかし、これらは予備の…」

「それにまだ、陛下よりのご命令が…」

「知っています!ですが、四の五の言っている時ではありません!とにかく急いで!」

 アラステアはその命令を下すと、自身も専用のアルコーンへと急いだ。

 アラステアは、自分専用の金とピンクのサーレーンへと到達した。アルコーンに乗る際、本来ならば鎧を着なければならない。だが時間的な猶予はない。アラステアはサーレーンの横にある階段をのぼり、乗りこむための足場に立つ。すると人間で言う肩甲骨の部分にある、扉が開いた。アラステアはそこからコックピットに入った。アラステアはまず、操縦席中央の透明の水晶に手をかざした。透明だった水晶は薄紫色に変わった。そして連鎖するように、コックピット内にあるすべての水晶が光り出した。

 その輝きを見たアラステアは、両脇にある操縦用の水晶を手で掴む。その瞬間、サーレーンは地上へと転送された。

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