THE END OF THE WORLD ー世界の果てにて…ある少年の物語ー の小説カバー

THE END OF THE WORLD ー世界の果てにて…ある少年の物語ー

9.5 / 10.0
2110年、第三次世界大戦を経た大日本帝国は、4大財閥が権力を独占する極端な格差社会と化していた。戦争で両親を失い、施設で育った15歳の少年シーナは、戦争遺児への差別や暴力にさらされる過酷な日々を送っていた。ある日、暴行を受け絶望の淵にいた彼は、謎の男ヒデとの出会いを機に、世界中の若者が熱狂する仮想空間オンラインゲーム『FRONTIER』へと導かれる。端末を通して脳神経をシンクロさせる「ダイブ」により、仮想世界での戦いに身を投じるシーナ。仲間との絆や恋を知る中で、彼は自身の不遇な運命と向き合い、少年から大人へと成長を遂げていく。そして彼は仲間と共に、未だ誰も踏破したことのない最終フィールド「虐殺の門」の攻略という壮大な目標を掲げ、過酷な現実に立ち向かう。しかし、その虚構の世界の裏側には、現実をも揺るがす恐るべき秘密が隠されていた。シーナの視点から描かれる、葛藤と希望に満ちた未来型青春群像劇が幕を開ける。現実と仮想の狭間で、彼は生きる意味を見出していく。

THE END OF THE WORLD ー世界の果てにて…ある少年の物語ー 第1章

プロローグ

2120年

もう何年このステーションに通っているだろうか…。ほぼ毎日といっていいほど、ここから仮想空間へダイブしている。近代的なビルの中にある無数のブース。このブースは約2メートル四方の小さな薄暗い部屋。空調の静かな音しか聞こえない。その真ん中にリクライニングシートがあり、その横にはモニターが光る端末機器が繋がっている。俺はその端末にIDカードを差し込む。するとブースのドアから『カチッ』と音がし、ロックされたことを確認する。これで外の世界とは一切遮断された空間が出来上がった。羽織っていた上着を壁にあるフックにかけ、リクライニングに横たわる。俺は一連の作業を当たり前のようにこなして、仮想空間へ飛ぶために、端末からコードが伸びるヘッドギアとリストバンドを体に装着し目を閉じる。一瞬の混濁が襲い、体が宙に浮くような錯覚を感じる。そして目を開けると、そこは・・・戦場だ。俺がダイブした場所は、FRONTIER(フロンティア)。仮想空間のオンラインゲームだ。

『ヘイ!!シーナ!!退路の確保は大丈夫だろうな!?』

インカムから自動通訳で聞こえてくるフランス人の怒号。

俺は、本来いるべきフォワード、いわゆる前衛ではなく最後方で退路の確保にあたっていた。3年間雇用されていたパーティーが解散。フリーの傭兵で生計をたて始めてから、最近はこんな仕事ばかりだった。

『シーナ!!撤退だ!!フォワードが二人ともリタイアしちまった!!セーブポイントまで誘導を頼む!!』

今回招聘されたパーティーのリーダーの焦った声が再びインカムから聞こえてきた。俺は暇潰しに『ニホントウ』でザコキャラを倒しながら、細かいポイント稼ぎをしていたが、パーティーリーダーの声でやっと本来のミッションタイムがやってきた事を知り、背中のに刀を納めた。

(R-Bフィールドでこのザマとは…。)

R(ランク)がB(B級)であるこのフィールド。

(フラッグにもたどり着けずに撤退か…。)

ため息をひとつ漏らした俺は肩に掛けていたM4を構え、撤退してくる今日だけのパーティーの援護に回った。

R-BフィールドNO24。

200年前のポーランドの市街戦をモチーフにしたフィールド。フィールド内には第二次世界大戦時に占領していたナチス軍が、パーティー達を待ち構えていた。もちろんそのナチス軍の兵士達は、ゲーム内の敵キャラである事は言うまでもない。ざっと見る限りフィールドには我らの他に7パーティー程が接続しているようだ。この規模のフィールドであれば接続の上限は20パーティー。

フラッグ(最終目的)はフィールドの1番奥にある敵陣営の征圧であるが、我がパーティーは途中の機関銃部隊によってフォワード二人を同時にリタイアする事態に陥ったようだ。M4を連射しながら帰還してくるリベロと、パーティーリーダーであるスナイパーの退路確保作業を始めた。二人と合流して、しばらく撤退すると、突然辺りが暗くなり、すぐに新たなフィールドが現れた。フィールドチェンジ。このゲームは幾つものフィールドを繋ぎ合わせてひとつのステージを造っている。ここまでくればセーブポイントは近い。ミッションが成功しようが失敗であろうがセーブしなければ、今回のミッションはまったく無意味となってしまう。だからリタイアした二人はセーブができないから経験値すべてをもらう事ができず、ミッション途中で撤退した二人は個人の経験値のみでコンプリートした時に発生するパーティーポイントは獲得できない。ただ俺のような傭兵は、あらかじめパーティーと契約したミッションをこなせばそれでいい。今回の契約は、パーティーをセーブポイントに誘導すること。すなわちパーティーリーダーと共にセーブポイントに入る事で、その条件は満たされ、端末に差してある俺のIDカードに自動的にミッションボーナス(報酬)が入る。フラッグを達成する事が最終目的ならば俺のような役割はいらないが、フラッグを達成してセーブポイントに戻る事が最終目的である以上、退路確保と言うのは極めて重要なポジションと言える。フラッグとの戦いで深いダメージを負ったパーティーをスムーズにセーブポイントへと導く事がミッション・コンプリートへの近道なのだパーティーリーダーが俺に詫びる。

『すまない。お前程のハイプレイヤーを招聘するからにはコンプリートしたかったんだが…。』

俺は軽く頷いてセーブポイントへ駆け込んだ。

目覚めた俺は、すぐにヘッドギアを取り、手首のリストバンドを無造作に外し、リクライニングシートから起き上がった。わずか2メートル四方の薄暗い個室にリクライニングシートがひとつ。現実の世界への帰還である。シート横のモニターには今回のミッションの経験値と報酬が映し出されていた。それを確認して端末機からIDカードを抜く。すると扉のロックが解除される。そして、掛けていた上着を羽織り外へ出た。まだ夜明け前の『ステーション』だが人がごった返している。俺の出た個室もすぐに端末待ちのプレイヤーが入り、扉の上にある接続中の意味の赤いランプが光っていた。FRONTIERの端末は

仮想空間へとダイブするのだ。海外のパーティーと組む時は、大概この深夜の時間にステーションで過ごす事になる。

ロビー奥の何台も並ぶ銀行のATMのようなキャッシャーにIDカードを入れ、パスワードを入力。今回の経験値はパラメーターにはあてず、の弾の補給にあてる。

ミッション成功時のパーティーポイント25%が今回のミッションの報酬だ。だがフランスのパーティーはミッション失敗に終わっているから、俺への報酬分がパーティーの資産からマイナスされるのだろう。このパーティーポイントは経験値化にも現金化にもでき、パーティーリーダーがメンバーに経験値を振り分けたり、次回の端末使用料など、その時々の判断で活用される。俺はキャッシャーから出てくる紙幣を無造作にジーンズのポケットに突っ込み、足早にステーションを後にした。

まだ薄暗い午前4時。帝都の電気街はまだ人通りはほとんどない。

むしろこの時間にこの辺りをうろついているのはFRONTIERのプレイヤーか路上生活者しかいないだろう。俺は始発まで少し時間があるのを確認し、駅前の牛丼屋に入った。俺はいつからこんな生活を送るようになったのか…。

今から10年前に終結した第三次世界大戦。事の発端は、大韓民国と北朝鮮の第二次朝鮮戦争である。

戦時中、母を病気で亡くし、父は軍医として沖縄基地に派遣されていたが死亡が伝えられ、姉と俺は戦争遺児の集まる施設へと送られた。

2110年1月。アメリカが中国主要都市に核爆弾を5発投下。結果的に16年にも及んだ第三次世界大戦は北朝鮮と中国の降伏により終結した。

俺は一般高等学校に進み、この春、三流ながら大学に入学した。戦争遺児は成人(修学)するまであらゆる免除があり、学費や医療費は無料。月々給付金の恩恵も受けられる。俺がFRONTIERと出会ったのは中学を出てすぐだった。

続きを読む

THE END OF THE WORLD ー世界の果てにて…ある少年の物語ー 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

妊娠八ヶ月、夫のパイプカットが暴く残酷な真実 の小説カバー
9.0
妊娠8ヶ月の幸せな生活は、夫が結婚前にパイプカットを受けていたという衝撃の事実で崩れ去ります。問い詰めるべく夫の職場を訪れた私は、彼が仲間と私の胎児の父親を当てる賭けをし、薬で私を眠らせては友人たちに共有させていたという戦慄の計画を耳にします。さらに彼は私を流産させる陰謀まで企てていました。パーティーの夜、薬で意識を奪われた私は激痛の中で最愛の子を失います。血の海で絶望した心は冷徹な復讐心へと変わり、私は隠しカメラの映像や録音データなどの証拠を揃えて警察へ向かいました。卑劣な男たちが法の裁きを受ける中、私は過去を断ち切り、自分だけの新しい人生を歩み始めます。
顧さん、土下座は今更?奥さんは子連れで“新パパ”と挙式秒前 の小説カバー
9.1
結婚から二年、本江安澄が授かった新しい命を顧に告げた瞬間、彼から突きつけられたのは非情な「離婚」の二文字だった。仕組まれた罠によって絶望の淵に立たされ、鮮血に染まりながらも、彼女は必死の思いで夫の番号を呼び出す。しかし、無機質な音声ガイダンスが繰り返されるだけで、最愛の人の声が届くことはなかった。彼への未練を断ち切る決意を固めた安澄は、過去をすべて置き去りにして異国の地へと旅立つ。三年後、彼女はかつての自分とは違う別の顔を持ち、堂々たる帰還を果たした。その傍らには、顧の面影を色濃く残す冷徹な眼差しを宿した幼い息子の姿があった。華々しい再デビューを飾った安澄は、再会した顧に対し、嘲笑を浮かべながら左手の指輪を誇示する。「もう遅すぎるわ。この子はすでに、別の人をパパと呼んでいるのよ」。かつての愛憎を塗り替えるように、彼女は自らの手で掴み取った幸せを見せつける。復讐と再生、そして新たな親子としての人生が、華やかな社交界を舞台に今、幕を開ける。
婚約破棄当日、彼女は帝都の御曹司の禁断の花嫁となった の小説カバー
9.4
結婚式を目前に控えた宮沢沙織は、婚約者と実姉の不貞を映した映像を突きつけられ、残酷な破局を迎える。参列者からの嘲笑を浴び、ワインで汚れたドレスを脱ぎ捨てて激しい雨の中へ飛び出した彼女は、偶然通りかかった高級車を止め、車内にいた見知らぬ男に復讐心から強引なキスを仕掛けた。その場限りの過ちで終わるはずだったが、相手は帝都で強大な権力を誇る上田家の御曹司、上田拓海であった。翌朝、沙織のアパートを訪れた元婚約者は、冷酷無慈悲と恐れられる拓海がエプロンを纏い、献身的に朝食を作る姿を目撃し愕然とする。拓海は沙織の腰を力強く引き寄せ、逃がさないと言わんばかりにその首筋に顔を埋めた。そして独占欲に満ちた瞳で、冷徹かつ官能的に囁く。「選べ、俺かあいつか。もし選択を間違えれば……一生檻に閉じ込めて、俺だけを見続けることになるぞ」。最悪の裏切りから始まった運命は、帝都の支配者による執着と狂愛に満ちた新生活へと塗り替えられていく。
高温末世、私だけが生き延びる理由 の小説カバー
9.2
養子として育った私は、育ての親への恩義から実の両親の遺産を拒み、家族に尽くしてきた。しかし、未曾有の酷暑が世界を襲う中、私の善意は最悪の形で裏切られる。弟の妻が「跡継ぎを産むための薬」を捨てるきっかけを作ったとして、家族から家系を絶やした元凶だと激しく非難されたのだ。灼熱の地獄へと無慈悲に追い出された私は、焼けつくような暑さの中で孤独に命を落とした。ところが、目を覚ますと終末が訪れる前の過去に遡っていた。二度目の人生では、かつて辞退した莫大な遺産をすべて受け取り、最新鋭の設備を備えた完璧なシェルターを建設。来るべき酷暑への備えを万全に整える。冷房が完璧に効いた快適な部屋で、贅を尽くした料理を堪能しながら、私はただ静かにその時を待つ。自分を死に追いやった身勝手な家族たちが、外の世界で灼熱に喘ぎ、絶望の淵に沈んでいく姿を特等席で見届けるために。今度は私が彼らを突き放し、冷徹にその最期を見送る番なのだ。
私は、億万長者の後継者を一晩で手に入れました の小説カバー
8.9
婚約者の拓海に弁当を届けに向かった先で、私が目にしたのは親友の千夕と密通する彼の姿だった。裏切りに絶望した私は、自棄になってバーで出会った見知らぬ男を一夜の相手として買い、鬱憤を晴らす。しかし、その正体は勤務先である航空会社の親会社を統べるCEOだった。彼との情事は終わらず、フライト中の機内という密室で屈辱的な行為を強いられた上、その様子を隠し撮りされてしまう。「清純派CAの機内売春」という事実無根のスキャンダルが社内に拡散され、私は弁明も叶わず無期限の乗務停止処分を下された。愛も友情も失い、三年間心血を注いだ夢の仕事さえも理不尽に奪われた私は、荷物を抱え絶望の中で会社を去ろうとする。そんな私の前に、突如として四人の黒服の男たちが立ちはだかった。彼らは、あの「悪魔」のようなCEOが地下駐車場で待っていると告げる。私の窮地を救う方法があるという彼の真意とは。全てを失ったどん底の地で、新たな運命の歯車が回り始める。
籠の中の身重な鳥、冷酷な御曹司の甘い束縛 の小説カバー
9.5
秘書として、そして妻として二年間、三谷美月は冷徹な夫・鷹司彰のために尽くし続けてきた。しかし、彼が心に抱くのは初恋の女性・佐野佳世への想いだけであり、美月の献身が報われることはなかった。佳世の帰国を機に二人は離婚。その半年後、美月は予期せぬ妊娠に気づく。彼女は長年の片思いに終止符を打ち、お腹の子を守るために誰にも告げず遠くへ姿を消した。彰と佳世の幸福な知らせを耳にするたび、美月は静かに彼らの幸せを願っていた。ところが、平穏な日々は出産という人生の転機に一変する。佳世と再婚するはずだった彰が、突如として美月の産室の前に現れたのだ。彼は再び共に歩みたいと切実に訴えかける。美月は「この子はあなたとは無関係」と拒絶するが、彰は「たとえ誰の子であろうと、二度と離さない」と強引なまでの執着を見せる。一度は壊れたはずの絆が、赤ん坊の誕生をきっかけに歪んだ愛へと形を変え、美月を再び甘く冷酷な束縛の中へと引き戻していく。
今すぐ読む
共有