十世の恋は血に染まりて の小説カバー

十世の恋は血に染まりて

8.7 / 10.0
戦神が「情劫」という試練を乗り越え神へと至るには、十度の輪廻を繰り返さねばならなかった。そのすべての転生において、彼は私を愛の相手として選び出した。司命仙君の加護により前世の記憶を保持したまま生まれ変わる彼に対し、私はただ愛の試練に供される生贄として、九つの人生で彼の手によって命を奪われ続けてきた。そして迎えた最後の十回目。彼は私の一族を無残に皆殺しにし、ついには私の胸をも貫いた。死の間際、冷徹な瞳で私を見下ろした彼は、人間など神の修行のための道具に過ぎないと吐き捨てる。魂となり九洲を彷徨う私の前に現れたのは、神剣に封印された黒衣の男だった。彼は私に、剣を抜く代償として蘇生と復讐の機会を与えると告げる。私は迷うことなく剣の柄を握り締めた。再び生まれ変わる平穏な未来など、もはや望みはしない。私の願いはただ一つ、愛という名の虐殺を繰り返したあの男に、この手で永遠の終焉をもたらすことだけなのだ。裏切りと憎悪に満ちた十世の因縁が、今、血塗られた復讐劇へと変貌する。

十世の恋は血に染まりて 第1章

戦神が情劫《じょうごう》を渡るには、十世の輪廻が必要であった。

その全ての世において、相手は私だった。

彼は司命仙君《しめいせんくん》と誼みを通じ、記憶を宿したまま転生を繰り返す。

だが私は、どの世でも彼の手にかかって命を落とし、情劫の苦しみをなめ尽くした。

最後の世、彼は私の家族を皆殺しにし、最後に私を手にかけた。

その眼には愧じらいの色が浮かんでいたが、紡がれた言葉は骨の髄まで凍らせるほどに冷酷だった。

「定命の者は、我ら神仙が劫を渡るための道具に過ぎぬ。この私に選ばれたこと、光栄に思うがいい」

やがて、私の魂は九洲へと流れ着き、ひとりの玄衣の男と相見えた。

男は一本の神剣によって封じられており、私を見るなり、その瞳を輝かせた。

「お前がこの剣を引き抜けるのなら、余がお前を蘇らせ、復讐を遂げさせてやろう」

私は剣の柄に手を置き、凍てつくような声で応じる。

「蘇りなど望まぬ。ただ、奴を……この世で生かしてはおかぬ!」

01

封印されし魔の名は、玄淵《げんえん》。

その身を貫く神剣は、おそろしく抜き難い。

玄淵が言うには、私のように深い怨念を抱いて死んだ、執着の塊のような魂でなければこの剣は抜けぬのだと。

彼は千年もの間、ひたすらに私を待ち続けていた。

柄に手を触れた瞬間、氷のごとき冷気を帯びた剣気が、我が身を引き裂かんばかりに襲いかかる。

それでも私は柄を強く握りしめ、一歩も引かなかった。

玄淵の顔は禍々しい符文に覆われ、その貌は窺い知れない。ただ、一対の墨色の鳳眼だけが見えた。

「そうだ、その調子だ。さらに力を込めよ!」

私は唇を固く結び、胸に燃える憎悪を、十世にわたる無惨な死を想う。すると、どこからか力が湧き上がり、ついに剣をわずかに引き抜くことができた。

この剣は、玄淵を千年封じてきた代物。

剣身が微かに動いただけだというのに、彼の体からは黒々とした魔気《まき》が流れ出す。

魔気が漏れ出すのは、定命の者が血を流すのと同じようなものだろう。しかし玄淵は苦痛の色も見せず、むしろ愉快げに言った。

「孟涼歌、お前の恨みはその程度か?」

「どうやら、心ではまだあの葉黎初を愛しているとみえる」

私を煽っていると分かっていた。だが、私は眉をひそめ、顔を曇らせずにはいられない。

「あの男の名を、二度と口にするな!」

言うが早いか、私は両手で柄を握り、片足を玄淵の体にかけ、ありったけの力を込めて一息に引き抜く!

「抜けろ――ッ!」

我が絶叫に応えるかのように、剣は肉を裂く音を立て、玄淵の体から完全に解き放たれた。

その瞬間、天地は鳴動した。

頭上で黒雲が渦を巻き、天を引き裂くかのように雷霆が降り注ぐ。

玄淵の胸からは未だ魔気が流れ出ていたが、剣が抜かれたことで封印は解かれ、これまで符文に隠されていた素顔が露わになる。

それは、葉黎初をも凌ぐほどの美貌であった。

精緻に整った目鼻立ちに、雪のような白い肌。濃い墨のごとき瞳は妖しい光彩を放っている。

しかし、その美しさに感嘆している暇はなかった。

天の雷が、私めがけて落ちてくる!

私は剣を投げ捨て、その場から逃れようとした。

だがその刹那、玄淵が私をぐいと腕の中へ抱き寄せた。

「あの神仙どもを、いかにして始末するか知りたくはないか?」

彼は私を見下ろしながら、中指を立て、無造作に天へと弾いた。

一条の青い閃光が迸る。

すると、天を覆っていた雷霆も黒雲も、彼の一指しで、たちまち霧散してしまった。

九洲の風がその漆黒の髪をなぶる。玄淵は口の端を吊り上げ、地の底から響くような声で言った。

「力こそが、唯一の理だ」

「我がそばに来い。九重天《きゅうちょうてん》へお前を導き、あの葉黎初を八つ裂きにしてくれよう」

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