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狂犬令嬢の極上ざまぁ の小説カバー

狂犬令嬢の極上ざまぁ

国家が極秘裏に育成した最高傑作であり、圧倒的な武力を誇る天才少女・藤原涼音。七年間の任務を終え、最愛の双子の妹と再会するために故郷へ帰還した彼女を待っていたのは、あまりにも残酷な現実だった。亡き両親の遺産を強奪した強欲な叔母によって、妹は犬小屋で家畜同然の扱いを受けていたのだ。静かな怒りを爆発させた涼音は、冷徹な手腕で叔母の会社を瞬時に崩壊させ、妹を虐げる者たちを次々と地獄へ突き落とす。学園の陰湿なイジメには、妹になりすまして潜入し、暴力には圧倒的な暴力で対抗。加害者の醜態を全世界に晒し上げ、徹底的な復讐を遂行していく。正体を隠し「一般人」を装う彼女だが、その背後には名門旧家の継承権と国家機関という最強の後盾が控えていた。そんな涼音の前に現れたのは、冷酷無比と恐れられる謎の名家当主・北村凌也。血生臭い噂の絶えない彼だが、涼音に対してだけは執着に満ちた熱い視線を向ける。ビジネス上の協力関係だったはずが、凌也は強引に彼女を追い詰め、その唇を奪う。「まだ他人行儀か?」――最強の狂犬令嬢と孤独な支配者、二人の危険な恋と復讐劇が幕を開ける。
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「長年、本当にお疲れ様でした。 ボス、ご帰国おめでとうございます」

祝賀会の席で、上質なオーダーメイドのスーツに身を包んだ青年が、名残惜しそうに藤原涼音を見つめていた。

彼女の整った顔立ちには、いかなる感情も浮かんでいない。冷ややかに澄んだ切れ長の瞳は、ただ目の前の青年を映すのみ。紡がれた声もまた、硝子の欠片のように冷たかった。「ええ。先に行くわ」

「ボス、お送りしますよ」三浦優一が間髪入れずに申し出た。

涼音は拒まなかった。

車に乗り込むと、三浦が口を開く。「ボス、今回はいつ頃、会社に復帰されますか? おかげさまで業績は絶好調ですよ」

二人はとあるプロジェクトで出会った。わずか19歳の藤原涼音がどれほど恐るべき実力を秘めているか、共に戦場を駆け抜けた三浦が一番よく知っている。だからこそ彼女を誘い、共同で会社を興したのだ。今やその会社は、業界の頂点に君臨している。

涼音は淡々と唇を開いた。「考えがまとまったら連絡するわ。今はただ、家に帰りたいの」

「はいはい、妹さんに会いたいんですよね。ご安心ください、きっとお元気にされてますよ。 ここ数年、良い案件はすべて叔父様に回しておきましたから」三浦は、どこか褒めてほしそうな顔でそう言った。

涼音と妹は6歳の時に両親を亡くし、その後、叔母一家が越してきて姉妹の面倒を見ることになった。

涼音は静かに頷く。「……感謝するわ」

細い指先が、胸元の桜のペンダントに触れる。慣れた手つきで留め金を外し、そっと開くと、中には色褪せた二人の写真が収められていた。

彼女と、妹。

写っている涼音は無表情だが、隣の妹は満面の笑みを浮かべている。 その屈託のない笑顔を見つめるうち、涼音の氷のように張り詰めた表情が、ほんのわずかに緩んだ。自覚のないまま、口元に淡い微笑が浮かぶ。

両親が逝ってから、姉妹は互いだけを頼りに生きてきた。妹は小さな太陽のように、いつも周りを明るく照らす存在だった。

12歳の時、涼音は国にその才能を見出され、極秘プロジェクトから離れられない日々が始まった。あれから7年ーープロジェクトを完遂した今、ようやく家に帰り、妹に会える。

国から支給された給与は、そのほとんどを妹に送金してきた。妹は今頃、何不自由ない暮らしをしているはずだ。

涼音の口元に浮かんだ微かな笑みを見て、三浦は思わず息を呑んだ。

(あの氷の美貌が、笑っているーー? マジかよ。俺もその妹さんに一度会ってみてえな)

車は閑静な住宅街の入り口に停まった。

どの家にも手入れの行き届いた庭があり、見るからに高級住宅地だ。

ここは涼音の両親が遺した家で、現在は叔母一家と妹が暮らしている。

登録のない車両は入れない規則のため、涼音は警備員を煩わせることなく車を降り、住宅街へと足を踏み入れた。

自宅の玄関からは暖かな光が溢れ、楽しげな笑い声が夜の静寂に響き渡っている。

ーーどうやら妹は、元気に暮らしているようだ。

涼音は安堵の笑みを浮かべたまま、庭の門をくぐった。

庭の隅に、犬小屋がある。

その傍らに、うずくまる人影があるのを涼音は鋭く捉えた。

家の明かりが届かない薄暗がりで顔ははっきりと見えないが、椀のようなものから何かを口に運んでいるのが見える。

なぜ、こんな場所に人が?

涼音は眉をひそめ、静かに歩み寄った。

その人影はビクリと肩を震わせ、怯えた小動物のように素早く犬小屋の中へと身を隠す。

訝しむ涼音の耳に、次の瞬間ーー中から、か細く震える声が届いた。「もう、ぶたないで……っ。わ、私、ちゃんとしますから……もっと気をつけるから……」

この声はーー妹!

涼音は瞬時に目を見張り、怒りと衝撃に息を呑んだ。そして躊躇なく、小屋の中にいたその人を引きずり出した。間近で見れば、乏しい光の中でも、その顔ははっきりと判ったーー目に焼きつくほどに。

彼女の妹、藤原杏奈ーー!

「あ……」杏奈もまた、目の前の相手に見覚えがあるかのように、呆然と涼音を見つめている。信じられない、とでも言うように。

「杏奈……あなたなの?」涼音の言葉は、一語一語が刃となって自らの胸を抉る。杏奈がこくりと頷いた、その瞬間ーー

涼音の全身から放たれたのは、世界そのものを凍てつかせるような絶対零度の殺気だった。その瞳に宿った破壊衝動は、街一つを容易に瓦礫へと変えてしまいそうなほど、昏く燃えている。

「お姉……ちゃん……?」杏奈は信じられないといった様子で、震える唇を動かした。

「お姉ちゃん……帰って……きたの……?」

まるで夢でも見ているかのような虚ろな様子に、涼音は我に返り、心配そうにその額に触れたーー熱い。指先に伝わる異常な熱さに驚いたのも束の間、杏奈は糸が切れたように涼音の腕の中で意識を失った。

額は焼けるように熱いのに、身体は氷のように冷たい。

涼音の心も、それにつられるように急速に冷えていく。

その時、屋敷のドアが乱暴に開け放たれた。

「藤原杏奈! このグズ! 何分かかってんのよ、まだ食い終わらないの!? さっさと来て皿洗いしなさい!」 現れた叔母が、甲高い声で罵り立てている。

涼音はゆっくりと振り返り、その女を見据えた。

数年ぶりに見る叔母は、かつてのやつれた面影もなく、高価そうなコートを羽織り、翡翠の装飾品で身を飾り、まるで貴婦人のような佇まいだった。

恵美は、涼音の目に宿る凄まじい殺気に怯み、言葉を失う。「あ、あんた……涼音? い、いつ帰ってきたのよ……」

「お前たち……この子に、何をした」 一歩、また一歩と近づいてくる涼音は、死神そのものだった。

恵美は無意識に後ずさる。その目に宿る昏い光に、本能的な恐怖を感じたのだ。だが、すぐに気を取り直す。ーー目の前にいるのは、まだ十代のガキじゃないのよ!

恵美は嘲るように笑った。「あの子が皿を割ったから、躾けてやっただけよ。あんたがいない間、うちがどれだけ苦労したと思ってんの? それでも住む場所も食事もちゃんと与えてやったわ。兄さんの娘じゃなきゃ、とっくに追い出してるわよ」

ーー次の瞬間。恵美の喉が、氷のように冷たい指に鷲掴みにされた。目の前に突きつけられた、感情の凍りついた美貌。息が、できない。「ぐ……っ、は、放しなさいよ……っ」

涼音の表情は凍てつき、その瞳は塵でも見るかのようだった。「ここは私の家よ。私の妹に皿洗いをさせて、犬小屋で寝かせる……?いい度胸ね!」

屋内から漏れる明かりが、杏奈が食べていたものを照らし出す。ーー正体不明の、どろりとした塊。豚の餌と見紛うばかりの代物。

腕の中の妹は紙のように軽く、その顔はやつれ果て、血の気も失せている。

涼音の心は、鈍い刃でじわじわと抉られるように、血を流していた。

掌中の珠のように慈しんできた妹がーーこんな仕打ちを受けていたとは。

「高橋恵美……! この家に住む時、妹の面倒は必ず見ると約束したはずだ」 涼音の瞳に、明確な殺意が灯った。

呼び捨てにされたことに恵美は憤慨したが、その殺気を前に全身が竦み上がる。

涼音は幼い頃から、どこか常人離れした冷酷さを纏っていた。だからこそ、彼女がいた数年間、恵美も迂闊なことはできず、かろうじて叔母の仮面を被っていたのだ。

ーーまさか涼音が、突然いなくなるとは思わなかったわ。

家に残されたのが気弱な杏奈一人になったのをいいことに、恵美は次第にこの家を我が物顔で使い、杏奈を追い詰めていった。

まさか、涼音が帰ってくる日が来るなんてーー夢にも思わなかった!

「ちゃんと面倒は見てたわよ! 悪いことしたから罰を与えて、何が悪いっていうのーーぐぅっ!」 言い終わらぬうちに、恵美の喉が再び締め上げられた。完全に呼吸を奪われ、死神がすぐそこで手招きしているかのような錯覚に陥る。

「涼音……!?」騒ぎに気づき、屋敷の中から従妹たちが様子を見に出てきた。

涼音の目に映るのはーー広々とした豪華な内装、テーブルに並んだご馳走、そして高価な服に身を包んだ叔父と従妹たち。

その一方で、彼女の妹は犬小屋で寝かされ、豚の餌を食べさせられていた。涼音の目尻が、再び紅く染まった。

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