魔王(の子ども)育成記録 の小説カバー

魔王(の子ども)育成記録

9.2 / 10.0
長きにわたる激闘の末、ついに世界を救った最強の勇者。しかし、倒すべき宿敵であった魔王が、息を引き取る直前に遺した最後の願いは、あまりにも意外なものだった。それは、自らの血を引く幼き子供を育ててほしいという、切実な託託であった。かつての仇敵との約束を果たすため、世界最強の力を誇る勇者は、剣を振るう戦いの日々から一転、不慣れな育児に奮闘することになる。魔王の子という宿命を背負った幼子を抱え、勇者は新たな冒険の旅へと踏み出す。血の繋がりを超えた絆、そして魔王の遺志を継ぐ子供の成長を軸に描かれる、異世界子育てファンタジー。最強の守護者として、時に厳しく、時に優しく子供を導く勇者の姿は、周囲の人間や世界にどのような影響を与えていくのか。剣と魔法が交錯する王道のアクション要素と、心温まる育成ストーリーが融合した、これまでにない新たな冒険譚が幕を開ける。勇者と魔王の子、数奇な運命に導かれた二人の行く末には、果たしてどのような未来が待ち受けているのだろうか。

魔王(の子ども)育成記録 第1章

ついにたどり着いた。魔王城!

 かつて日本で何もない日常を送っていた俺だが、この世界に勇者として呼び出され、ついに魔王城に来ることができた。

 この世界に呼び出された時は驚いたけど、RPGと思ってしまえば、すんなりと理解できた。

 特殊能力とかは一切なく、強いて言えば、地球にあるありとあらゆる情報が見れてしまうようになったこのスマホだけ。地球の情報が見れるだけなので、実践向きでもなく、銃なども、作成方法なども見れてしまうわけだが、作成や素材収集の手間を考えたら、この世界にあるものでレベルアップしていったほうが速いし、はっきりいってしまえば、地球以外の世界にいる限り、あってもなくてもいい情報たちだ。なので、完全にレベル1からのスタートだった。が、今はレベルMAX。1からでもやればできるんだなぁ。

 さすが魔王城。魔物たちの攻撃が激しいな。しかし、1ヶ月くらい前に倒したドラゴンに比べれば弱すぎる。ま、あのドラゴン級の魔物が出てきてはほしくないんだけど。

 さて、魔王の部屋はどこかな。たぶん1番豪華な扉とかの部屋に居そうだけど。

 ん?あった!多分この部屋だな。よしっ!

 ガチャ

「よ・・くぞゴホッここまゴホッでゴホッたどりゴホッついたな」

・・・・・・へ?ちょっと待って。俺まだ部屋に入っただけだよ。なにもしてないよ。あっ、そうか。誰かが先にここまで魔王を追い詰めたのかな。でも、それにしては魔王に戦いの傷とかが見えないけど。自動回復か?それは厄介だな。って、それもないだろうな。なぜなら、

「あの、大丈夫ですか?体調物凄く悪そうですけど」

勇者なのに魔王の心配ってなんか変な感じだな。

「すまんゴホッ わしもゴホッそろそろゴホッ寿命なんじゃろうなゴホッ」

あれ?誰か来た。というかまだ倒していないやついたんだ。魔王の側近ってあたりか?

「大丈夫ですか魔王様?薬になります」

「すまないゴホッ」

あっ、この間に攻撃しかければよかったのでは?いや、魔王戦の前には魔王とのトークタイムが定番だ。やっぱり現実で勇者になれたのだからちょっとやってみたいし、会話できるまでそっとしておくか。これで魔王から襲ってこなければいいけど。

「ありがとう。助かった。下がっておいてくれ」

「分かりました」

あ、帰っていった。

「すまない。寿命が近いんじゃろう。どうもここ3、400年近く体調が悪くての。しかもどんどん悪化していっておるんじゃ」

魔界に病院とか回復系の魔法が使えるやつってないの?

「は、はぁ」

「はっきり言って、わしはもうお主と戦う力も残ってはおらん。せめて今回の騒動の責任をわしの命をもって取らせてはくれぬか」

「責任って、そもそもあなたは、魔物以外の生物を征服するために各地を魔物が襲わせているのではないのですか?」

「それは人間の勘違いじゃ。わしが眠りから覚めたという噂がどこからか流れての、その時既にわしは人間と戦える力もなかったのじゃ。じゃから、わしは、全ての魔物に命令・・・いや、お願いをしたのじゃ。わしの命が尽きるまで、魔物たちには暴れないでおくれ、そしてできればわしの命が尽きた後も暴れないでくれと。魔物が他の種族に害を与えなければわしのところまで誰かが来ることはないじゃろうしな」

「だったらなぜ魔物が暴れているんですか?」

「それは、どこかの国の人間たちが、わしを倒そうとパーティを組んで静かに暮らしている魔物を殺したのじゃ。そのことはすぐにわしの耳にも届いた。そして、魔王軍のさしずめ四天王と言ったもんか、そいつらがわしのことを守ろうと独断で警備を強化したのじゃ。それが人間にとっては魔物の進軍とでも見えたのか知らんが人間の攻撃が激しくなったのじゃ。そして、もちろん魔物たちも戦闘態勢になっていったのじゃ。そして、気がつけばわしが支配のために進軍させたことになってて、もう止められなかったのじゃ」

「そうだったのですか・・・」

「そうじゃ、お主、わしの願いを1つだけ聞いてくれぬか?」

「なんですか?世界の半分をもらってくれとかなら聞きませんよ」

「何だそれは?わしは世界の半分を与えられるほど領地はもっとらんぞ。そんなのじゃなく、わしの子どもを育ててくれぬか」

「・・・・・・え?今なんて?」

「じゃから、わしの子どもを育ててくれぬかと言ったのじゃ。わしは何もしなくともあとはもう短い。まだ生まれたばかりで、わしのことを父親とも認識していないと思う。なら、わしのことを父親と認識する前にお主を父親と認識させ、お主の子供として育ててくれぬか」

「なにか裏がありそうなんですけど」

「裏なんてなにもないぞ。もしわしが嘘をついてたとして、それをお主が気づいたら、いつでもわしを殺してくれて構わない」

いや、魔王さん、僕、あなたを殺しに来たやつやんですけど。

「は、はぁ。ちなみにいくつか聞きたいことがあるんですけど、魔物はあとどのくらい残っているのですか?」

仮に魔王の子どもを育てて魔王を支配し、世界も支配しようとなんでしだしたら困る。

「わしとさっきいた側近の2人だけじゃ。他はもうおらん」

「そうですか」

しかし、子育てには費用がむちゃくちゃかかるって日本にいた頃にTVで見たことあるな。あっ、魔王を倒すなり静めるなりした報酬に何かもらえるかな。それでどうにかなるか。しかし、魔王の子どもだろ・・・

「うーん、分かりました。魔王を信じるということはしたくありませんが、私の持ってるスキルに嘘かどうかを判別できるというものがありますが、それを使ってあなたを見てみましたが、どうやら嘘をついている様子はないですし、信じることにします」

「おぉ!願いを聞き入れてくれるか」

「はい」

「ありがとう。本当にありがとう」

魔王に感謝されるって変な感覚だな。

「礼として、わしの側近を手伝いとして向かわせよう」

「いや、いいですよ、あなたの側近が居なくなってしまうではないですか」

もう、魔王を倒そうなんて頭にはない。気配察知(スキル)を最大まで広げてみたが、魔物のどころか生物の反応は一切しなかった。仮にどうにかひて侵攻してきたら倒しに行けばいいだけだし。

「何を言っている。お主は今からわしを倒すんじゃよ。それにもう側近には話してある。わしはもういいのじゃ。さっき側近に下がらせたのは出発の準備と子どもたちを運ぶ準備をさせるためじゃ」

「本当にいいのですか?例え相手が魔王とはいえ、本当に病人で後も少ない方を殺すというのはさすがに気が引けてしまいます」

これは勇者としては訳わからん言動だな都自分でも思った。

「金縛りの病人をいつまでも生かしておく、わしは拷問だと思うのじゃが。それにお主はわしを倒しに来たんじゃ。無駄なことは考えんでいい。ただ、1つだけ頼みを聞いてくれればいいのじゃ」

「分かりました」

今の魔王は異常状態のようなもんだ。なら、恐らくだが、すべての攻撃が通常より高くなるはず。なら、痛む時間も短いはず。

「行くぞぉぉぉぉ」

━━━━魔王戦から1時間後

「確か側近さんがいろいろ準備してるって言ってたし、ここで待ってるか」

側近さんは、頭まで服をかぶっていたから、どんな顔をしているかとかは分からないけど、声の感じからして女の人かな?

「お待たせー」

えっ、誰?

「えっと、魔王の側近の方でしょうか?」

「そだよー」

マジかよ。さっきと態度が全然違うな。

「もしかして私の態度の変わりように驚いてるー?」

「う、うん」

「君、地球から来たでしょ」

「何でそれを!?」

僕をこの世界に呼び出した奴らには地球出身だってことは伏せておいてくれって言っておいたのに。

「何でって君がこの世界じゃ通用しない言葉を発していたじゃないか」

えっ、何だっけ?そんな発言したかな?

「・・・気づいてないみたいだね」

「何ですか?全くわかりません」

「『世界の半分をもらってくれとかなら聞きませんよ』これ、DQのラスボス戦で出てくるメッセージだよね」

「あっ、確かに。というかどうしてそれを?その時あなたは居なかったはず」

「魔王に【感覚同期】を使って聞いていたんですよ」

「感覚同期とは?」

初めて聞くものだな。

「感覚同期はね、面識のある1人の相手の五感を全て自分のものかのように感じることができる魔法だよ。極めれば、五感全てではなく、五感の内1つだけ同期させるということもできるよ。また、これは聞いた話だけど、さらに極めれば、1人ではなく複数相手の五感を同期させることも可能らしいよ。あなたが知らなかったのは当然だと思うよ。だってこれレアスキルだもん」

レアスキルだと!?レアスキルって世界でも使い手が非常に少ない魔法のことじゃん。

「まー、態度が変わったのはそれだけじゃないんだけどねー。君、私が態度変えても怒らなさそうだしー、なにより同郷の人に会えるなんて思ってもなかったからねー」

「同郷!?地球からってこと?」

「そーだよー。東京に住んでたよー」

本物だ。地球から来たことは何らかの理由で情報が漏れてたのかもしれないと思ってたけど、この世界に連れてきた奴らも日本から来たってことも知らないし、なにより、「東京」という地名まで出てきちゃったからな。これは本当に日本出身の人だ。

「今、何で魔王側についてるか疑問に思ったでしょー。それはね、私がこの世界に来たときに一番はじめにいた場所がこの魔王城だったからだよー」

「なるほど。そりゃ敵対できるわけもないか」

「直接危害を加えるところには就きたくなかったので、魔王の側近としていることにしたんだよ。と言っても、魔王のイメージと違ったけどね」

それは激しく同意するな。

「ちなみに、君はどんなレアスキルを手に入れたの?」

「・・・・・・は?」

「いや、レアスキルだよレアスキル。転生又は転移者には何か1つはランダムで付与されるらしいよ」

「そんなこと言われても、完全にレベル1からの冒険だったし・・・もしかして、これかな?」

「えっ、ちょっスマホ!?なんで使えるの??」

「えっと、多分これがレアスキルかな?地球のありとあらゆる情報を見ることができるようになってたし」

「えー、いいなー。私、スマホ持ってたけど使えないからずっと片付けたまんまだよ。時間も合わないし」

「と言われましても、これを使うことはまったくなかったんだけどね」

「えー、もったいない。銃とか作ったらもっと簡単にここまで来れたんじゃないのー?」

「弾丸の補充どうするんだよ。手間かかりすぎるだろ」

「それもそうかー」

「それで、魔王の子どもは・・・こんなに幼いのかよ!?確かに親として認識していない内にとか言ってたけど完全に赤子じゃん」

「あー、それですが、このアイテムを使えば、5年分の成長を一気にできるらしいよー。ゲームで言ってしまえば強化アイテム?」

まてまてまて、強化アイテム強すぎだろ。1つで5年分ってどんなのだよ。

「確か、この2人を預けてもいい奴が来るまで赤子のままおいておくって魔王言ってた」

「なーるほど」

「そういや、あなたの名前、なんて言うんですが?」

「俺か?俺は横谷 大空[よこや そら]だよ」

「大空かー。ん、覚えた。私はね、竹山 かれんって言うよ」

「じゃあ、かれんって呼んでもいいか?」

「いいよー」

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