誘われて溺れる──禁欲冷徹社長からの独占愛 の小説カバー

誘われて溺れる──禁欲冷徹社長からの独占愛

9.4 / 10.0
結婚3年目を迎えた如月璃奈と時任悠真の夫婦。平穏な日々は、璃奈の元恋人が現れたことで一変する。執拗に付きまとう男は「復縁する予定だ」という嘘を世間に流布し、璃奈は記者会見の場で窮地に立たされてしまう。非難の目が向けられたその時、会場に現れたのは冷徹な社長として知られる夫の悠真だった。彼は毅然とした態度で璃奈を抱き寄せ、結婚指輪を誇示しながら「彼女は私の妻だ」と宣言する。激昂する元恋人を前に、悠真は衆人環視の中で璃奈に深い口づけを落とし、彼女への独占欲を露わにした。璃奈はこの振る舞いを窮地を脱するための演技だと思い込もうとするが、高鳴る鼓動を抑えきれない。さらに親族から跡継ぎについて問い詰められた悠真は、璃奈の手を強く握り「すぐに作ります」と宣言し、彼女を翻弄していく。冷徹な仮面の裏に隠されていたのは、悠真が長年抱き続けてきたあまりにも熱烈な純愛だった。契約に近い関係だと思っていた夫の、甘く危険な本性を知った璃奈の運命は大きく動き出す。

誘われて溺れる──禁欲冷徹社長からの独占愛 第1章

「璃奈、蓮司が帰ってきたって、聞いている?」

賑やかな個室で、如月璃奈の隣に座る女子が、満面の笑みで口を開いた。

今夜は大学の同窓会だ。それなりに盛り上がっていたが、佐伯蓮司の名前が出た途端、場がぴたりと静かになった。みんな、璃奈が笑い者になるのを待っているのだ。

大きな円卓を囲む人波の中でも、璃奈の姿は一際目を引いた。最上級の白磁のように透き通った小さな顔は、どこを見ても艶やかな光を放っている。

璃奈は美しい瞳は微動だにせず、目の前の水を一口含んだ。「知らないわ」

別の誰かが口を挟んだ。「あの時の二人の恋愛、すごかったよな。みんなずっと一緒だと思ってたのに、まさか璃奈が他の人と結婚するなんてね。今や蓮司はスターライト・メディアの社長だぞ。正直、めちゃくちゃ後悔してるんじゃないの?」

元クラスメイトの女子がからかうように言った。「旦那さんも小金持ちとは聞くけど、蓮司ほどじゃないでしょ。新しい男より元カレの方が良かったんじゃない?ねえ?」

みんながくすくすと口元を覆って笑った。

璃奈は少し酒が入っていて、頭がぼんやりしていた。彼らの声がただうるさく感じられるだけだった。彼女はバッグを手に取って立ち上がった。「みんなは続けて。私、体調が悪いから先に帰るわ」

「そんな急いでどこ行くんだよ。旦那に早く帰ってこいって言われてんの?」

いたずらっぽい男の声が響き、個室のドアから二つの人影が入ってきた。

璃奈が顔を上げると、後ろにいたのは佐伯蓮司だった。

三年の月日が経ち、彼は黒のタイトスーツに身を包み、渾身に鋭い気迫を纏っていた。その視線は、まっすぐ璃奈の身上に釘付けだった。

さっき声を上げたのは、彼の大学時代のルームメイト、須藤明彦だ。

蓮司が現れると、個室にいた女性陣の目が一瞬で輝いた。彼のルックスは悪くない。在学中も学内トップクラスのイケメンとして有名だったからだ。

明彦は異様な眼差しで璃奈を見ると、口の端を歪めて嘲笑った。「璃奈、せっかくだし旦那も呼んで一緒に遊ぼうぜ?」

「彼は忙しいの。私ももう帰るわ」 璃奈は蓮司の視線を無視し、明彦に軽く会釈をして歩き出した。

彼女が出て行くと、明彦は蓮司を見て言った。「見たかよ。合わせる顔がないんだろ。金に目がくらんでお前を捨てた女だ、ここに来る資格もねえよ」

蓮司はその言葉に反応することなく、きびすを返して璃奈が去った方向へ走り出した。

明彦は眉をひそめて訳が分からないと叫んだ。「おい、どこ行くんだよ!」

璃奈はエレベーターを降り、エントランスの外へ向かっていた。

「璃奈!」蓮司がいきなり駆け寄り、彼女の腕を掴んで問い詰めた。「俺に会ったのがそんなに気まずいか? 後ろめたいことがあるから急いで逃げるんだろ?」

璃奈はよろめいて転びそうになりながら、冷ややかな目で彼を見上げた。「離して」

蓮司は手を離すどころか、さらに彼女を引き寄せた。身長差を利用して上から見下ろす。「俺を捨ててあいつと結婚したくせに、まともなアクセサリー一つ買ってもらえないのか。それがお前の選んだ道か?」

「私の勝手でしょ、あなたに関係ない」 璃奈は彼に触れられるのを嫌がり、力任せに手を振りほどこうとした。

二人は入り口で揉み合いになる。

その時、一台の黒いランボルギーニがゆっくりと入り口に止まった。

見慣れたナンバープレートを目にして、璃奈の瞳がわずかに揺れた。

蓮司も彼女の反応に気づいて振り返った。その瞳の奥が、知らず知らずのうちに暗く沈む。

ドアが開き、長身の男が姿を現した。彼が降り立った瞬間、周囲の温度が数度下がったような威圧感が漂う。

璃奈はその隙に蓮司の手を振りほどき、彼のもとへ駆け寄った。「明後日帰るって言ってなかった?」

時任悠真は近づいてくると、自然な動作で彼女の腰を抱き寄せた。低く、磁石のように人を惹きつける声で言った。「仕事が片付いたから、早めに戻った」

その親密な仕草を見て、蓮司の瞳から光が消えた。

悠真は冷ややかな目で蓮司を一瞥したが、言葉は璃奈に向けた。「君の同級生か?」

璃奈は驚きに目を瞬かせ、無言で頷いた。彼は蓮司との関係を知っているはずだ。場の空気が一気に気まずくなった。

悠真は軽く顎を引くと、蓮司をじっと見据えて言った。「どうも。璃奈の夫です」

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