アルファに捨てられ、王冠に抱かれた の小説カバー

アルファに捨てられ、王冠に抱かれた

9.2 / 10.0
アルファであるダミアンとの間に真の番としての絆を持ち、その正当な後継者を身籠っていた私。しかし彼は、群れに招き入れたはぐれ者の女・リラと、彼女との間に生まれた仔を優先し、妊娠四ヶ月の私を命名式から排除した。リラが自作自演で負った傷を私のせいにすると、ダミアンは真実を確かめることもなく、私にアルファの絶対命令を下して追い払った。その後、リラの卑劣な襲撃によって私は重傷を負い、お腹の子供の命も危うい状況に陥る。リラはさらに自身の仔を投げ捨てて私が殺そうとしたと叫び、駆けつけたダミアンは、血を流し倒れる私を冷酷に見捨てて彼女たちの元へ去った。死を覚悟したその時、私の心に母の声が届く。縄張りのすぐ外には、私を救うための迎えが来ているという。ダミアンはまだ知らない。彼が身勝手に捨て去ったオメガの正体が、実は世界最強の一族に連なる高貴な姫君であったことを。裏切りに満ちた過去を捨て、私は真の運命へと歩み出す。

アルファに捨てられ、王冠に抱かれた 第1章

私の番(つがい)、アルファのダミアンは、彼自身の後継者のための神聖な命名式を執り行っていた。

唯一の問題?

それは、彼が祝っているのが、自分の群れに引き入れたはぐれ者の女、リラとの間に生まれた仔だということ。

そして、彼の真の番であり、正当な後継者を妊娠四ヶ月の私が、ただ一人、招待されていないということ。

私が彼女を問い詰めると、彼女は自らの腕を爪で引き裂き、血を流し、私が襲ってきたと叫んだ。

ダミアンはその芝居を見て、私に一瞥もくれなかった。

彼は唸り声をあげ、アルファの絶対命令(コマンド)を使い、私を強制的に立ち去らせた。私たちの絆の力が、私を傷つける武器へと歪められて。

その後、彼女は本気で私を襲い、突き飛ばした。

ドレスに血の花が咲き、お腹の子の命が脅かされる中、彼女は自分の仔を絨毯の上に放り投げ、私がその子を殺そうとしたと絶叫した。

ダミアンが駆け込んできて、床で血を流す私を見た。

彼はためらわなかった。

リラの叫ぶ仔を腕に抱き上げると、治癒師を探しに走り去った。

私と、彼の真の後継者を、死ぬために置き去りにして。

でも、そこで倒れていた私の心に、母の声が独自の回線を通じて響いた。

私の家族が手配した迎えが、縄張りの境界線のすぐ外で待っている、と。

彼が捨てたオメガが、実は世界最強の一族の姫君だったということを、彼はもうすぐ知ることになる。

第1章

エレナ視点:

冷たいスマホを耳に当てながら、私の指は震えていた。

無意味な人間の道具。

本当の会話は、私の頭の中で行われていた。何百キロも離れた母と私を繋ぐ、静かで、きらめく思考の糸。

「やるわ、お母様。彼のもとを去る」

その思いは、私たちの思念感応(テレパシー)という広大な空間の中で、痛みを伴う囁きとなった。

月の女神からの贈り物である思念感応は、本来なら安らぎの源であり、群れの仲間との繋がりを感じるためのもの。

今夜、それは私が断ち切ろうとしている命綱のように感じられた。

私の母、銀月の一族のルナ・セラフィナは、即座に応答した。

彼女の精神的な声は、月光と古の力が合わさった、心を落ち着かせる軟膏のようだった。

「やっとね、可愛い子。心配していたのよ。あの子、ダミアンは…その野心は、彼の縄張りよりもひどい匂いがするわ。赤石の一族は、脆い土台の上に築かれている」

「わかってる」

私はそう返信し、安堵の波が押し寄せるのを感じた。

がっかりされるのが、とても怖かったのだ。

「ただ…彼が運命の人だと信じたかった。女神様の贈り物だって」

「女神様が私たちに与えるのは選択肢よ、エレナ。鎖じゃないわ。私たちはあなたを待っている。一族が待っている」

私はリンクを切った。

頭の中の突然の静寂は、空虚であると同時に解放感に満ちていた。

私は大広間の冷たい石造りのアーチに寄りかかった。

薄いドレスを通して、冷気が染み込んでくる。

ここ、影に隠れていれば、すべてが見えた。

私の番、私のアルファ、ダミアンが部屋の中央に立っていた。

彼は赤ん坊を抱いていた。

まだ生後一ヶ月にも満たない仔が、赤石の一族の儀式用の毛皮に包まれている。

そして彼の隣には、まるで世界の女王にでもなったかのように輝くリラがいた。

一年前に彼が私たちの縄張りに連れてきた、はぐれ者の女狼。

群れのメンバーは歓声を上げていた。

彼らはダミアンに、仔に、リラにグラスを掲げた。

それは命名式。群れで最も神聖な儀式の一つ。

アルファの後継者のための祝宴。

そして、彼の真の、運命の番であり、正当な後継者を妊娠四ヶ月の私が、ただ一人、招待されていなかった。

群れの全員が知っていた。

彼らの共有された思考は、私の感覚の端で感じられる低い興奮のざわめきとなっていたが、彼らは皆、共謀して私に隠していたのだ。

苦い記憶が蘇る。

美術大学でダミアンに出会った日。

彼は自然の力そのもので、その野心は山火事のように燃え盛るアルファだった。

最初に私を打ったのは彼の香り――雷雨の後の松と、豊かで暗い土の香りが入り混じった、めまいがするような香り。

それは私の魂が即座に認識した香りだった。

心臓が肋骨に打ち付けられ、狂ったようなドラムのビートを刻み、原始的で独占的な咆哮が私の存在の最も深い部分で響き渡った。

「私のもの!」

私の内なる狼が叫んだ。

彼もそれを感じていた。

溶けた金色の彼の瞳が私を捉え、一瞬、世界が消え去った。

月の女神が私たちを祝福してくれたのだ。

そう、思っていた。

今、彼が他の女とその子供と一緒にいるのを見ていると、その記憶は残酷な冗談のように感じられた。

ダミアンのベータ(副長)から、思念感応を通じて不安の波紋が広がった。

集中すれば、公衆回線を傍受できる。

「アルファ、彼女はまだあなたの番です。こんなことを…」

ベータの思考には心配が滲んでいた。

ダミアンは振り向きもしなかった。

彼自身の精神的な声は鋭く、冷たかった。

「彼女は最近リラに敵対的だ。ただの儀式だ。彼女が知る必要はない」

「もし知られたら?」

返答は、鋭く、残酷だった。

私たちをまだ繋いでいる絆を突き刺す氷の破片のようだった。

「できるだけ隠す。いざとなったら、正式に彼女を拒絶するだけだ」

息が漏れ、私は口を手で押さえた。

私を拒絶する?

女神様自身から贈られた神聖な絆を、彼が断ち切るというの?

彼らのために?

リラの周りにいる群れのメンバーは、彼女におべっかを使っていた。

「私たちのアルファはなんて慈悲深いの。哀れなはぐれ者とその孤児の仔を引き取ってくださるなんて」

と、ある女狼が甘い声で言った。

別の女が笑った。

「エレナのことは心配いらないわ。たとえ知ったところで、どこへ行くっていうの?妊娠したオメガがアルファの保護なしで生き残れるわけがない。彼女は絶対に彼から離れないわ」

冷たく、硬い決意が私の胸に宿り、失恋の痛みを何か別のものへと固めていった。

もっと強い何かに。

彼らは皆、自分たちがいかに間違っているかを、もうすぐ知ることになる。

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