箱入り姫は悪役にはなりたくない。 の小説カバー

箱入り姫は悪役にはなりたくない。

9.6 / 10.0
大国の姫アデリアは、軟禁生活の中で読んだ小説から自分が「悪役令嬢」の運命にあると悟る。政略結婚の相手である王子には既に恋人がおり、このままでは愛を引き裂く悪役として破滅が待っている。父王の命令に背けぬ絶望的な状況下で、彼女は悲劇を回避し自らの幸せを掴み取れるのか。本作は、運命に抗う王女の成長を描くファンタジー要素満載のromance novelです。人気のfiction fantasy romance booksとして、政略結婚から始まる予測不能な愛の行方を読み進めてください。
「 箱入り姫は悪役にはなりたくない。」のあらすじ
大国の王女アデリアは、後宮の奥深くで軟禁同然の生活を送り、部屋から出ることも許されずに育ってきた。孤独な日々を慰めるのは、趣味の読書。しかし、ある恋愛小説を読んだ彼女は、自分の立ち位置が物語の「悪役令嬢」そのものであると気づいてしまう。運命に抗い、悲惨な結末を回避したいと願うアデリア。そんな折、彼女に政略結婚の話が舞い込む。相手は他国の王子だが、彼にはすでに本国に愛する恋人がいるという。アデリアには二人の仲を裂く意志など毛頭ないが、絶対的な権力を持つ父王の命令に背くこともできない。愛し合う恋人たちの間に割って入る形になれば、自分は間違いなく悪役の道を歩むことになる。破滅の未来を避けるため、そして自分自身の幸せを掴み取るために、箱入りの姫は知恵を絞り、自らの運命を変えようと動き出す。果たして彼女は、悪役になることなく平穏な人生を手に入れられるのか。不自由な環境で生きてきた王女による、未来を切り拓くための孤独な奮闘が幕を開ける。
もっと見る

箱入り姫は悪役にはなりたくない。 第1章

ラヴァール王国。

 地球によく似た地球ではないその星にはいくつか大陸があった。その中の一番大きな大陸の半分以上を領地に持つ巨大なその国は王政で国王が治めている。王の権力は絶対だ。今の国王は暴君と呼ぶほど横暴ではない。たが、自分に刃向かう相手には容赦なかった。

 そんな国王の下、ラヴァール王国は繁栄していた。

 時代的には産業革命前の中世ヨーロッパのような雰囲気だ。火薬が一般的ではなく、剣が力を持っている。武力とは人数の差が大きかった。

 王国の宮殿はとても大きい。その大広間が人で賑わっていた。

 国賓を招いたパーティが年に数回、行われている。いつもはがらんとだだっ広いだけの空間に今日は貴族達がひしめき合っていた。

 普段はパーティには呼ばれないアデリアも参加が義務づけられている。参加している人数はかなり多かった。

 あちこちで、社交という名の人脈作りが行われている。数人で集まって、こそこそと話をしていた。

 だがその輪のどれにもアデリアは入らない。

(皆さん、熱心ですこと)

 心の中で小さく笑った。自分には関係がない。たいして関心もなかった。

 アデリアはこの国に姫として生れた。 

 王子も姫も王にはたくさんいる。アデリアは15、6番目くらいに生まれた姫だ。15番目なのか16番目なのかは聞く人によって答えが違うのではっきりしない。そのくらい姫はたくさんいた。アデリアの下にもまだ弟や妹が居る。

 それらは全て異母兄弟だ。その兄弟姉妹とアデリアはほとんど顔を合わせたことがない。他の兄弟は皆一緒に育てられているが、アデリアは1人だけ後宮の奥で隔離されていた。書斎に寝室、風呂とトイレ。ホテルのスウィートルームを少しこじんまりさせたくらいのスペースがアデリアの世界の全てだ。普段はその部屋にほぼ軟禁状態で暮らしている。勝手に部屋から出ることは禁じられていた。

 だが、国賓が来るパーティにだけは引っ張り出される。大人というのは本当に勝手だとアデリアは思った。

 国賓のためのパーティは12歳以上の兄弟は強制的に参加することになっている。兄弟姉妹はたくさんいるのだから一人くらいいなくてもわからないだろうと思うが、そういう問題ではないらしい。アデリアも必ず引っ張り出された。

 16歳のアデリアはあと2年くらいの間に、どこかへ嫁ぐことになるだろう。政略結婚の駒として政治に利用されるのが姫としての本分だ。国賓のためのパーティに引っ張り出されるのは、その時のための顔見せかもしれないとも心密かにアデリアは考えている。

 人ごみをさけ、アデリアは壁際にいた。部屋から出ることを禁じられているアデリアは人ごみが得意ではない。大勢の人の囲まれるのは苦手だ。人の注目を浴びるのも好きではない。だが、アデリアはどこにいても人の視線を集めた。この国では珍しい黒髪に黒い瞳は目立つ。だがアデリアが軟禁状態で他者との接触を禁じられていることも誰もが知っていた。だから、目立っても近寄ってくる人間は基本的にいない。

 アデリアは壁に凭れ、手にしたグラスに入った果実のジュースを口に運んだ。社交に勤しむ人々を他人事のように眺める。

 この国の人の髪色はたいてい明るい。瞳も青か緑がメジャーだ。黒髪に黒い瞳は海を渡った異国から嫁いできた王妃の国の特徴で、王妃と彼女が自国から連れてきた侍女の数人しかこの国にはいない。母は王妃の侍女だとアデリアは聞いていた。生まれて直ぐに引き離されたので、母の顔をアデリアは知らない。肖像画みたいなものもないので知る術がなかった。今、その人はこの国にはいない。

 それは特別なことではなかった。国王の子供を産んだ女はもれなく、国に帰される。王妃以外、例外は1人もいない。

 国王には多くの女性が献上された。国王の寵愛を受ければ恩恵は大きい。国王は献上された女は断わらなかった。ただし、愛しはしない。義務のように子供を作り、無事に生れたら役目は終わったと言わんばかりに持参金を持たせて女を国に帰した。生まれた子供は国に残す。全ての子供は王妃の元で育てられた。そこはまるで孤児院のようになっている。年が近しい大勢の子供が王妃を母として育っていた。それがわかっていても、国王に女を献上する国は後を絶たない。国王と親族になれるのは美味しかった。自分たちの血を引く子供が次の王になる可能性だってある。

 だが、その考えは甘いとアデリアは思っていた。

 全ての子が王妃を母として育っているのには理由がある。どの子も母として王妃を慕っていた。産みの母に対する思慕はほぼないだろう。そうなるように、国王夫妻は子供達を育てていた。生みの母やその国に融通を利かせるような子はほぼいないだろう。いたとしても、その子は王位継承からは確実に外される。

 それに父は親族になったからといって手加減するような人ではない。子供達にさえ優しい言葉は滅多にかけない人だ。そういうのは王妃の担当だと役割分担が決まっている。

 アデリアはとても冷静に父王夫妻のことを分析していた。

続きを読む

箱入り姫は悪役にはなりたくない。 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

アルファの望まぬオメガの妙薬 の小説カバー
8.5
アルファのカイレンと過ごした三年間、私は彼の「銀毒の呪い」を癒やす唯一の存在として影から彼を支えてきた。二十五歳の誕生日までに運命の番が見つからなければ私を選ぶという彼の約束を信じていたが、その日に彼が連れ帰ったのは別の女、リラだった。カイレンは冷酷にも別れを告げ、これまでの献身を金で片付けようとする。さらに、狡猾なリラが仕組んだ数々の罠によって、私は身に覚えのない罪を着せられていく。かつて私を守ったカイレンはリラの言葉に盲信し、病床の母を脅しの道具に使い、群れの前で私を屈辱に陥れた。呪いが再発した際も、彼は私を強引に求めておきながらリラの前では私を悪女として非難したのだ。愛が憎しみへと変わったその日、私は彼との絆を永遠に断ち切る決意を固める。向かった先は、敵対するライバルの群れ。そこには、六年の時を経て昏睡から目覚めたばかりの幼馴染が待っていた。彼こそが、私にとって真の再会を果たすべき運命の相手だったのだ。裏切りに満ちた過去を捨て、私は新たな運命へと足を踏み出す。
強制離婚したら、オレ様社長の子供を拾ってしまいました! の小説カバー
9.2
不妊という現実に直面し、四年間に及ぶ結婚生活を強制的な離婚という形で終えた清水瞳。深い傷を負った彼女は、平穏を求めて移り住んだ地方の町で、予期せず一人の赤ん坊を拾うことになった。孤独な心を埋めたいという願いから、瞳はその子を自らの手で育てる決意を固める。それから四年後、穏やかに暮らす彼女の前に、突如として高級車の車列を連ねた傲慢な社長、天草蓮が現れた。彼は瞳に対し、四年間息子を養育した報酬として四千万円のカードを突きつけ、子供を連れ去ろうとする。必死に我が子を守ろうと「この子は渡さない」と抵抗する瞳だったが、そんな彼女の態度を見た蓮は、不敵な笑みを浮かべて驚くべき提案を口にする。「ならば、大きいほうの貴様もまとめて連れて行くだけだ」と。拾った子供との縁が、かつての絶望を塗り替える波乱に満ちた新たな運命の幕開けとなる。
炎上したら、イケメンから詐欺師扱いされました の小説カバー
9.0
自身の美しさを際立たせる一枚の写真をSNSに投稿した。それは、どこにでもある日常の些細な行動のはずだった。しかし、一人のユーザーが放った「詐欺師」という辛辣な一言が、穏やかな日常を一変させる。最初は単なる悪質ないたずらだと楽観視していたが、次にアプリを開いたとき、画面には信じがたい光景が広がっていた。止まることのない通知の嵐、数百人からの執拗なメンション、そしてダイレクトメッセージには「金を返せ」という身に覚えのない脅迫めいた言葉が並ぶ。混乱に陥りながらも原因を突き止めるべくコメント欄を辿ると、そこには驚愕の事実が記されていた。大量の返信の中で最も注目を集めていたのは、ある一人の男性に関する噂話だ。その内容は、端正な容姿を持つ「おバカなイケメン」が、ネット恋愛を通じて美女に騙され、16万円もの大金を奪われたというものだった。全く面識のないはずの詐欺事件の犯人として、私はネットの海で炎上の標的となってしまったのだ。見知らぬイケメンの被害と私の投稿が結びつけられたとき、逃れられない疑惑の連鎖が幕を開ける。
もはやエイプリル・メイヨーではない:令嬢の帰還 の小説カバー
8.6
財閥令嬢としての地位を捨て、愛する男と息子のためにささやかな幸せを選んだ私。しかし七年後、その平穏は残酷な裏切りによって崩れ去った。経営統合を口実に浮気を繰り返す男は、権力のために家族を切り捨てたのだ。彼の母親は愛人の妊娠を盾に、私をメイドとして扱い、息子を単なる養子に格下げすると宣告する。かつてのパートナーは沈黙を貫き、冷徹に私たちを見放した。絶望の淵で、五歳の息子が放った悲痛な問いが私の心を粉々に砕く。さらに息子の誕生日、男はあろうことか実の子を突き飛ばし、血縁さえも否定してみせた。息子が恐怖に震えながら実の父を「旦那様」と呼ぶ屈辱に耐えた瞬間、私の中の何かが死に、真の覚醒が訪れる。私は息子の手を取り、偽りの愛に満ちた生活と決別した。そして、かつて背を向けた強大な「帝国」へと一本の電話を入れる。世界が私の真の名を、そして本物の令嬢の帰還を知る時が来たのだ。失った尊厳を取り戻し、裏切り者たちに報いを受けさせるための逆襲が今、幕を開ける。
捨てられた「沈黙の妻」は、元天才弁護士でした。 の小説カバー
9.4
5年前、法曹界で頂点を極めた天才弁護士の彼女は、窮地に立たされた貧しい医学生の彼を救うため、自らの輝かしいキャリアをすべて投げ打った。国際的な巨大企業の不当な告発から彼を守り抜いた代償は、権力者による報復の毒で声を失うという残酷なものだった。二度と法廷に立てぬ身となった彼女は、才覚を隠し、医学界の権威へと登り詰めた彼の傍らで静かに寄り添い続けてきた。しかし、彼が向ける眼差しはかつての愛を失い、氷のように冷徹なものへと変貌していた。世話の焼ける病人など不要だと突き放され、献身を「足手まとい」と断じられた彼女は、絶望の淵に立たされる。そんな折、かつての同僚から届いた一通のメールが、残酷な真実を告げる。なぜ無名の学生を陥れるために巨額の金が動いたのか。彼女が命懸けで守った愛の物語は、実は最初から周到に仕組まれた欺瞞に満ちた詐欺劇だったのだ。失った声と裏切られた愛情、そして隠蔽された陰謀の全貌を暴くため、沈黙を強いられた元天才弁護士の逆襲が今、静かに幕を開ける。
最凶の狂犬令嬢と、猫かぶりな摂政王様 の小説カバー
9.4
京都の街で「不吉」の象徴と蔑まれる侯爵令嬢。実母の死を招き、継母を病ませ、最後には賊に捕らわれるという悲惨な運命を辿る彼女だったが、その絶望の淵で劇的な変化が訪れる。彼女の肉体に宿ったのは、現代で最強の名を欲しいままにした「特級工作員」の魂だった。もはや以前のような、他者に蹂躙されるだけの儚い少女ではない。冷酷な実父や呪詛を吐く継母、そして裏切りに耽る婚約者と義妹。家族という名の敵たちが渦巻く中、彼女は工作員としての卓越した戦闘技術と冷徹な知略を武器に、クズ揃いの一族を完膚なきまでに叩き潰していく。しかし、そんな苛烈な彼女の前に、冷徹さで知られる摂政王が立ちはだかる。なぜか彼は執拗に彼女を見つめ続け、ついには「救われた恩を返すため、この身を捧げる」と忠誠を誓い始めた。復讐に燃える最強令嬢と、裏の顔を持つ摂政王。運命が交錯する中、彼女の新たな戦いが幕を開ける。圧倒的な力で理不尽を粉砕する、痛快な逆転ファンタジーが今始まる。
章
今すぐ読む
共有