炎に消えた家族、残されたのは叔父の腕だけ の小説カバー

炎に消えた家族、残されたのは叔父の腕だけ

9.2 / 10.0
一族が炎に消えたあの日、少女が掴んだのは父の親友である叔父の手だった。『炎に消えた家族、残されたのは叔父の腕だけ』は、過酷な運命に翻弄される兄妹と、彼らを守り抜く男の絆を描くmodernなmystery物語。財産を狙う親戚から逃れ、叔父の庇護下で育った彼女の目には、次第に彼だけが世界の全てとして映り始める。これは家族の死に隠された真相を追うadventure storyでもあり、執着と献身が交錯するromance novelです。失われた過去と、叔父が隠し持つ秘密の先に待ち受ける真実とは。free book online実とは。彼女が選ぶのは愛か、それとも復讐か。
「炎に消えた家族、残されたのは叔父の腕だけ」のあらすじ
将来を占う誕生日の儀式。邸宅に並ぶ金銀財宝には目もくれず、幼い少女がその手を伸ばしたのは、父の親友である「叔父」だった。周囲は微笑ましい光景に、叔父は一生彼女の面倒を見る運命になったと囃し立てる。しかし、幸せな時間は一転、凄惨な炎が一族を襲った。火の海に消えた家族の中で生き残ったのは、長兄と妹の二人だけ。財産を狙う親戚たちが飢えた狼のように群がる中、叔父は自らの手で二人を救い出す。彼は片方の手で兄を国外へと逃がし、もう片方の手で幼い彼女を抱き寄せ、その後の人生を捧げて育て上げた。あの日、彼を選んだ瞬間から、彼女の世界には叔父という存在だけが唯一の光として刻まれることになる。過酷な運命に翻弄されながらも、二人の絆は血縁を超えた深い執着と愛情へと変貌していく。燃え盛る炎の中で失われた過去と、残された叔父の腕の中で育まれる現在。家族を失った孤独な少女にとって、彼は救世主であり、世界のすべてとなった。ミステリアスな過去を背負いながら、歪で純粋な愛の物語が幕を開ける。
もっと見る

炎に消えた家族、残されたのは叔父の腕だけ 第1章

名家である夏家が、愛娘・夏語棠の一歳の誕生祝いに行った「選び取りの儀式」でのこと。

無数の金銀財宝が並べられる中、

彼女は黄金や宝玉には目もくれず、父の年の離れた友人である江逾白の手を掴んだ。

周囲の大人たちは「それなら、この叔父さんが一生面倒を見てやらないとな」と笑って囃し立てたものだ。

後に、夏家はすべてを焼き尽くす大火に見舞われ、一家は炎に呑まれた。

ただ、長男の夏知曜と幼い娘の語棠だけが残された。

一族の者たちは、二人の子供を食い物にしてやろうと、虎視眈々と狙っていた。

そんな中、江逾白は夏知曜を修行のために海外へ送り出し、語棠は自身の手元に引き取って養育した。

あの日から。

夏語棠の世界には、江逾白という「叔父さん」ただ一人だけが存在するようになった。

1.

都大路のプラタナスの葉が、秋風に舞い上げられる。

夏語棠はスマートフォンの画面に映る兄、夏知曜の顔を見つめながら、胸の奥からこみ上げる切なさを感じていた。

ビデオ通話の向こうの兄は、オーダーメイドの高級スーツを身に着けている。その瞳に浮かぶ憂いは、十年前、空港で目を赤くして旅立っていった時のものと寸分違わなかった。

「語棠、来月のフライトはアシスタントに手配させた」

「君が気に入っていたあの別荘も、リノベーションさせてある。以前、君が話していたフレンチスタイルにしたから、きっと気に入るはずだ」

夏語棠は無理に笑おうと口角を引きつらせたが、うまくいかない。

「お兄ちゃん、そんなに気を遣わなくていいのに」

「何を水臭いことを言うんだ」夏知曜は眉をひそめた。「この数年、君が国内でどれだけ辛い思いをしてきたか。もう十分だろう。 夏家の事業も、今や欧米で完全に軌道に乗った。君が芸術系の大学に行きたいと言っても、世界一周旅行がしたいと言っても、兄さんがすべて叶えてやる」

彼は少し間を置いてから、口調を和らげた。「子供の頃、フランスで音楽会を聴きたいって、よく言っていただろう?覚えているか?」

もちろん覚えている。

まだ八歳だった彼女は、江逾白の膝に乗り、ヨーロッパの音楽祭のドキュメンタリーを見ていた。そして画面を指さし、いつか必ず生で聴きたいと言ったのだ。

江逾白はそれを聞くと、彼女の髪を優しく撫で、穏やかな声で言った。「語棠が大きくなったら、叔父さんが連れて行ってあげよう」

周りの人々は皆、江逾白が彼女を天にも昇るほど可愛がっていると言った。

星をねだれば、月さえもついでに摘んで与えるだろう、と。

過去が蘇り、

心臓を何かに鷲掴みにされたような痛みが走る。

夏語棠は、涙がこぼれて兄に心配をかけまいと、慌てて俯いた。

「覚えてる」 声がくぐもった。

画面の向こうの夏知曜が、数秒間黙り込み、言葉を選んでいるのがわかった。

「語棠」彼はついに意を決したように切り出した。その声には、慎重な探りを入れるような響きがあった。「君と、叔父さんのことだが……。 君がこの数年、辛い思いをしていたのは知っている」

夏語棠は反射的に拳を握りしめた。爪が手のひらに食い込み、無数の痛みが走る。

兄がどれほどやるせなく、心を痛めているか、想像に難くない。

あの日の大火は、夏家の屋敷だけでなく、彼女の憂いのないはずだった子供時代をも焼き尽くした。

全身傷だらけの彼女を抱いて火の海から救い出してくれたのも、一族の圧力に屈せず兄と彼女の相続権を守り抜いてくれたのも、そして、手ずから書物や文字を教えてくれたのも、すべて江逾白だった。

だが、その感謝の念は、いつからか密かに変質していた。

十五歳で熱を出したあの夜、徹夜で看病してくれた彼の温かい手首に、偶然触れてしまった時だろうか。

それとも、十八歳の誕生日に贈られたチェロを手に、彼が「語棠の音色は、いつか世界中に届く」と言ってくれた時だろうか。

もう、忘れてしまった。

恋心がいつ芽生えたのかは分からない。ただ、気づいた時には、どうしようもなく深く惹かれていた。

「お兄ちゃん」夏語棠は深く息を吸い、平静を装って言った。「言いたいことは分かってる」

「叔父さんが俺たち兄妹にしてくれた御恩は、一生忘れない」 夏知曜の声が重くなる。「だが、感情は別だ。恩返しのために無理をする必要はない。 彼は君を姪として、保護すべき子供として見ている。君は……」

「無理なんかじゃない!」 夏語棠は狼狽し、思わず声を荒げた。だが、すぐに自分の失態に気づき、慌てて声を潜める。「……分かってる、お兄ちゃん」

「ここを出ていくことは、私から直接、叔父さんに話す」

窓の外で舞い落ちるプラタナスの葉を眺めていると、不意に目の奥が熱くなった。彼女は鼻をすすり、スマートフォンの画面に向かって笑顔を作る。「お兄ちゃん、約束する。来月、必ずそっちへ行く。 その時は……ニューヨークで一番美味しいステーキ、ご馳走してくれなきゃ嫌だからね」

「ああ、もちろんだ」夏知曜もようやく笑みを返した。「君が食べたいだけ、いくらでも注文してやる」

ビデオ通話を終えると、部屋は静寂に包まれた。

夏語棠はゆっくりとうずくまり、膝の間に顔を埋めた。こらえていた涙が、堰を切ったように溢れ出す。

兄が自分のために言ってくれていることも、江逾白への想いが、恩義を愛情と錯覚しているだけかもしれないことも分かっている。それでも、恋心は蔓草のように狂おしく育ち続け、

気づけば彼女を窒息させようとしていた。

彼女はそっと自分の唇に触れる。つい昨夜、彼女はまるで他人の幸福を盗み出す泥棒のように、

禁断のときめきを味わってしまったばかりだった。

一ヶ月後にここを去ること。それが本当に最善の選択なのだろうか。

夏語棠には分からなかった。

ただ、叔父さんのそばから離れることを想像するだけで、心臓の一部をえぐり取られたかのように、激しく痛むことだけは確かだった。

階下で玄関のドアが開く音がした。夏語棠は慌てて涙を拭い、傍らに用意してあったコーヒーを手に取ると、階段を駆け下りた。

そして、その光景を目にした瞬間、夏語棠は雷に打たれたかのように、その場に凍りついた。

続きを読む

炎に消えた家族、残されたのは叔父の腕だけ 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

冷酷な夫に捨てられて――義兄と禁断の再出発 の小説カバー
9.5
夫から冷遇され続けてきた彼女にとって、離婚の申し出はすでに九十九回を数えていた。しかし、最愛の女性から連絡を受けた夫は、非情にも彼女を車から突き飛ばして言い放つ。「頭を冷やして家に戻れ。これが最後のわがままだと思いたい」と。彼は、彼女が自分なしでは生きていけないと傲慢に確信し、本命の女性を守るために何度も彼女を傷つけ、その尊厳を奪ってきたのだ。だが、夫が知らないところで事態は静かに動き始めていた。夫が想いを寄せる女性の兄が、密かに彼女へと近づいていたのである。彼は裏で彼女を巧みに誘い出し、冷酷な夫との縁を完全に断ち切らせるべく、国外への脱出を計画していた。捨てられた妻と、その夫の義兄。禁断の協力関係によって、彼女の人生は予期せぬ方向へと舵を切る。信じていた支配が崩れ去るとき、夫は自らの過ちに気づくのか、それともすべてを失うのか。執着と策略が渦巻く中で、虐げられてきた彼女の切なくも激しい再出発が、今ここから幕を開ける。
もう冷めたの、あなたのこと の小説カバー
7.8
結婚生活が5年目を迎えた頃、夫の不倫が発覚した。その相手は、世間でも名を知られたインフルエンサーだった。裏切りを知らぬふりをして過ごしていたある日、私は夫が友人と交わす冷酷な本音を耳にする。「もし浮気がバレて離婚を迫られたらどうするんだ」という問いに対し、彼はタバコの煙を吐き出しながら、余裕の笑みでこう言い放ったのだ。「あいつが俺から離れられるはずがない。自分からしがみついてきた女なんだから、絶対に無理だ」と。彼は、私が自分を愛し抜いていると過信し、高を括っていた。しかし、私が決然と離婚届を突きつけた瞬間、立場は逆転する。余裕を失い、涙を流して必死に縋り付いてきたのは夫のほうだった。かつての情熱は消え去り、私の心はすでに氷のように冷え切っている。一度冷めてしまった酒は再び温めることができても、一度死んでしまった愛が元に戻ることは決してない。裏切りの代償と、壊れた夫婦関係の終焉を描く愛憎の物語。
元恋人の花嫁は、私の妹でした の小説カバー
8.6
跡継ぎの男子を望み、娘ばかりを産み続けた両親。その果てに家計は破綻し、私を含む姉妹全員が売られることになった。過酷な運命の中、幸運にも私は良き主人のもとで刺繍の技術を学び、職人として名を成すまでになった。そこで出会った一人の男性に心を奪われ、彼が科挙に合格して高官になる日を夢見て、献身的に支え続けた。彼は「合格したら君を正妻に迎える」と約束してくれたが、見事に三位で及第した途端、その誓いは裏切られた。彼は名門の令嬢に一目惚れしたと言い放ち、私に別れを告げたのだ。出世した彼にとって、今の私は恥ずべき存在でしかないことを悟り、絶望が胸をよぎる。しかし、彼が夢中になっているその「高貴な令嬢」の正体を知り、私はさらなる衝撃を受ける。彼の心を奪った花嫁候補は、かつて私と同じように売られ、生き別れになった実の妹だったのだ。家族の絆と恋慕が複雑に絡み合う、裏切りと再会の物語。
結婚式で僕を捨てた君へ の小説カバー
8.5
人生で最も幸せな瞬間であるはずの結婚式。その最中に、新婦は「初恋の相手が不治の病に倒れた」という報せを受け取った。彼女は取り乱し、あろうことか式場から逃げ出してしまう。ひとり残された僕は、無残に打ち捨てられた披露宴の後始末をすべて引き受けることになった。せめて式だけでも完遂してほしいと切実に訴えたが、彼女は冷ややかな視線で僕を拒絶した。「彼はもう長くないの。そんな彼と自分を比べるなんて、あなたはどういう神経をしているの?」と。その残酷な言葉を受け、僕は彼女への執着を完全に捨て去る決意を固めた。それから数年。僕は死に物狂いで働き、やがて巨大企業を築き上げるまでに成功を収める。そして、かつて自分を裏切った彼女の元へ一通の離婚届を突きつけた。すべてを失う覚悟で初恋を選んだはずの彼女は、僕が提示した決別の意志を前にして、今さら激しく動揺し始めるのだった。これは、愛に絶望した男が頂点へと昇り詰め、過去を断ち切るまでの物語である。
別れたのに、なぜか彼がしつこい件 の小説カバー
9.8
かつての恋人と再会したとき、二人の立場はあまりにかけ離れていた。彼は誰もが憧れるトップスターへと上り詰め、一方で私は、今も変わらず田舎の村でガチョウを追いかける平凡な毎日を送っている。ある日、周囲から私との関係を問われた彼は、地面にいる私を冷たく見下ろしながら「連絡など取っていないし、親しくもない」と言い放った。三年前、彼は私の執着に愛想を尽かし、「もう一緒にはいられない」と告げたのだ。その言葉を受け入れた私は、彼に関するすべてを捨て去り、二度と関わらないと決めて背を向けた。彼は今でも、あの頃抱いていた嫌悪感を持ち続けているのだと信じて疑わなかった。しかし、事態は予想外の方向へと動き出す。彼が人気恋愛リアリティ番組への出演を決めた裏には、隠された真意があった。冷淡な態度とは裏腹に、彼がそのステージに立った真実の目的は、他でもない「私」だったのだ。別れたはずの彼がなぜ執着を見せるのか。過去の拒絶と現在の行動が交錯し、止まっていた二人の時間が再び動き始める。
醜い妻は死んだ、今、貴方を支配する の小説カバー
9.4
病に侵され容姿が変わっても、セリーナは夫ジュリアンへの献身を忘れたことはなかった。結婚記念日の夜、彼を喜ばせようとケーキを手に駆けつけた彼女が耳にしたのは、残酷なまでの本音だった。夫にとって自分は「醜い生き物」に過ぎず、この結婚も遺産目当ての「ただの契約」だったのだ。信じていた愛が無惨に踏みにじられた瞬間、彼女の心は冷たく凍りついた。セリーナは即座に離婚を決意し、彼から与えられた贅沢品をすべて捨て去る。スーツケース一つで家を出た彼女は、もはやかつての従順な妻ではない。偽りの愛に縛られた屈辱の三年間を清算するため、彼女は封印していた過去の繋がりへと手を伸ばす。電話の相手は、闇の世界に君臨する「ゴッドファーザー」。自らを嘲笑った夫への復讐と、真の自分を取り戻すための新たな人生が今、幕を開ける。捨てられた女が選んだ道は、かつての夫を支配し、その傲慢さを打ち砕くことだった。氷のような決意を胸に、彼女は華麗なる転身を遂げていく。
章
今すぐ読む
共有