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幽霊は検事の隣で真実待つ の小説カバー

幽霊は検事の隣で真実待つ

産業スパイという身に覚えのない罪を擦り付けられた私は、婚約者である正人の妹・美奈子によって廃墟に監禁されてしまう。薬物で自由を奪われた体で、最後の希望を託して正人に助けを求めた。しかし、電話越しに届いたのは「俺を巻き込むな」というあまりにも非情な拒絶だった。絶望に打ちひしがれる私を、かつて火事から命懸けで救ったはずの美奈子が嘲笑いながら炎の中へと突き落とす。なぜ信じてくれなかったのか、なぜ彼女の嘘を見抜けなかったのか。激しい憎しみと共に命を落とした私は、幽霊となって現世に留まることになった。目覚めた私の目の前にいたのは、皮肉にも私の「自殺」を担当することになった検事の正人だった。死の真相が闇に葬られようとする中、私は彼の傍らで離れることなく真実を見つめ続ける。彼が己の過ちに気づき、真実を知って後悔と絶望に身を焼き尽くされるその瞬間を、特等席で見届けるための復讐劇が幕を開ける。
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2

桜庭心 POV:

「桜庭さんのことは, もういいでしょう. 彼女はいつも, 私を邪魔することしか考えていない」.

正人は, 上司の言葉を遮り, 冷たく言い放った.

私の魂は, その言葉を聞き, 全身に再び氷が流れ込んだように感じた.

彼の顔には, 明らかな不快感が浮かんでいた.

「もう, 桜庭の話はしないでくれ」.

正人の声は, 冷厳で, 私の遺体から目を離さない.

彼の瞳には, 言いようのない嫌悪が宿っていた.

「彼女は, 私にとって, ただの厄介者だ」.

正人は, 吐き捨てるように言った.

「彼女と関わると, 私の評判に傷がつく」.

彼は, そう言って, 私に背を向けた.

傲慢で, 冷酷な言葉.

上司が何かを言おうとしたが, 正人はそれを手で制した.

「私には, たった一人, 愛する妹がいる. 美奈子だけだ」.

正人の言葉が, 私の心臓を深く抉った.

私を愛していると, そう言ったはずなのに.

私の魂は, 彼の言葉に, 深く傷ついた.

美奈子.

そう, 彼女は養子だった.

幼い頃, 火災で両親を失い, 奥村家に引き取られた.

その火災で, 私は美奈子を庇って左腕に深い火傷を負った.

その傷跡は, 今も残っている.

だが, 美奈子は, その火事を「私が起こした」と正人に嘘をついた.

私が, わざと家に火をつけ, 美奈子の両親を殺したと.

正人は, 美奈子の言葉を信じた.

私が, 自分の利益のためなら平気で嘘をつき, 人を裏切る人間だと.

私の誠実な心は, 美奈子の巧妙な嘘によって, 正人の心の中で完全に破壊された.

彼の中で, 私は「嘘つきで信用できない女」になった.

美奈子は, 常に正人の愛情を独占しようとした.

彼女は, まるで天使のような顔で, 正人の前ではいつも可憐な妹を演じた.

私が正人と婚約した時も, 彼女は表向きは祝福してくれた.

だが, その裏で, 彼女は私を陥れるための恐ろしい計画を着々と進めていたのだ.

正人は, 美奈子の言葉だけを信じた.

彼女の嘘に操られ, 私のどんな訴えも, 私のどんな愛も, 彼の心には届かなかった.

「お前は, この家を焼いた放火犯だ」.

かつて, 正人にそう言われ, 私は家を追い出された.

私は, 自嘲の笑みを浮かべた.

もう, 涙も出ない.

ただ, 心が, 凍り付いていく感覚だけがあった.

「あの女は, いつも私の邪魔ばかりする. 昔からそうだ」.

正人の声には, 明確な憎悪が込められていた.

私の魂は, 悲痛な叫びを上げた.

正人さん, お願い, 私を信じて.

私だけが, あなたの真実を知っている.

あなたの愛を, ただ一度だけ, 私に向けてほしかった.

「また私と美奈子の婚約を邪魔しようとしているのだろう」.

正人の言葉は, 私の存在そのものを否定した.

もし, 彼が真実を知ったら, どうなるだろう.

私の魂は, 正人の顔を見つめた.

彼は, 私の死を喜ぶのだろうか.

全身が, また冷たくなった.

上司は, 正人の腕を掴み, 彼に語りかけた.

「奥村検事, 君は桜庭さんを誤解している. 彼女は, 君が思っているような人間ではない」.

上司の顔には, 明らかな不満が浮かんでいた.

「桜庭さんは, 君の父の会社のデータ流出事件でも, 必死に君のために動いていた. 君のために, どれだけ努力していたか, 君は知らないだろう」.

正人は, 嘲笑した.

「全ては, 彼女の演技だ. 私を欺くための」.

「違う! 彼女は, 心から君を心配していた. 君が多忙で過労死寸前だと知って, 何も言わずに君の弁当を作って届けたり, 君が体調を崩した時は, 一晩中看病してくれたんだ! 」.

上司の声が, 次第に大きくなる.

「そんなことを, 彼女は君に一度も言わなかっただろう? 」.

正人は, 頑なに首を横に振った.

「私は, 美奈子の言葉しか信じない」.

彼は, 上司から目を背けた.

「もういい. この話は終わりだ」.

正人は, そう言って, 会話を打ち切った.

上司は, 諦めたようにため息をついた.

その時, 正人が, 何かを思い出したように言った.

「ところで, 大規模な失踪者報告は上がっていないのか? 」.

「今のところ, そのような報告は入っていません」.

検事助手は, 首を横に振った.

「身元不明の遺体が出て, 誰も騒がないのか」.

正人の声には, 苛立ちが混じっていた.

私の魂は, 正人さんが, 私のことを心配してくれているのかと, 一瞬だけ, 期待した.

だが, その感情はすぐに消えた.

彼は, ただ, 事件の状況を憂いているだけなのだ.

「よし, 昼食休憩にする」.

正人は, そう言って霊安室を出て行った.

上司は, 正人の背中を見つめながら, 独り言のように呟いた.

「桜庭さん... あの子, 最近やけに様子がおかしかったな... 」.

私の魂は, 上司の言葉に反応した.

彼は, 私の異変に気づいていたのだろうか.

「何かありましたか? 」.

検事助手が, 上司に尋ねた.

「いや, ただ... 最近, 桜庭さんが, やけに奥村検事を気にかけているようなことを言っていたんだ. まるで, 何かを予感しているかのように... 」.

上司の言葉が, 私の心を締め付けた.

その時, 正人が廊下から戻ってきた.

彼の顔には, 不機嫌そうな表情が浮かんでいる.

「また桜庭が, 私を困らせるような嘘をついているのか」.

正人は, そう言って, 上司を睨みつけた.

「奥村検事! 君は, いつまでそんなことを言うつもりだ! 」.

上司の声が, 怒りに震えた.

正人は, 冷たい目で上司を見つめた.

「桜庭さんが, 君にどんなに尽くしてきたか! 君の妹, 美奈子さんとは違うんだ! 」.

「やめろ! 」.

正人が, 上司の言葉を遮った.

「あの女は, 私に助けを求める電話をかけてきて, いつも私を困らせていた. 嘘ばかりついて」.

正人の声には, 明らかな嫌悪が込められていた.

「それは... ! 」.

上司が, 何かを反論しようとした.

「黙れ! 」.

正人の声が, 霊安室全体に響き渡った.

その時, 正人の携帯が鳴った.

彼の顔から, 一瞬で不機嫌な表情が消えた.

私の魂は, 不穏な予感に襲われた.

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