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幽霊は検事の隣で真実待つ の小説カバー

幽霊は検事の隣で真実待つ

産業スパイという身に覚えのない罪を擦り付けられた私は、婚約者である正人の妹・美奈子によって廃墟に監禁されてしまう。薬物で自由を奪われた体で、最後の希望を託して正人に助けを求めた。しかし、電話越しに届いたのは「俺を巻き込むな」というあまりにも非情な拒絶だった。絶望に打ちひしがれる私を、かつて火事から命懸けで救ったはずの美奈子が嘲笑いながら炎の中へと突き落とす。なぜ信じてくれなかったのか、なぜ彼女の嘘を見抜けなかったのか。激しい憎しみと共に命を落とした私は、幽霊となって現世に留まることになった。目覚めた私の目の前にいたのは、皮肉にも私の「自殺」を担当することになった検事の正人だった。死の真相が闇に葬られようとする中、私は彼の傍らで離れることなく真実を見つめ続ける。彼が己の過ちに気づき、真実を知って後悔と絶望に身を焼き尽くされるその瞬間を、特等席で見届けるための復讐劇が幕を開ける。
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3

桜庭心 POV:

正人の携帯画面に表示された名前を見た瞬間, 彼の表情は, 一瞬で柔らかなものに変わった.

こんな顔, 彼が私に見せてくれたのは, もう何年も前のことだ.

「もしもし, 美奈子? どうしたんだ? 」.

彼の声は, これまでに聞いたことのないほど優しく, 愛に満ちていた.

私の心臓は, ナイフで抉られたように痛んだ.

「大丈夫か? 何かあったのか? 心配だよ」.

正人は, 美奈子に, 私が決して見ることのできなかった優しい笑顔を向けた.

美奈子.

彼女は, 私の全てを奪っていった.

正人の愛も, 私の信用も, そして, 私の命も.

彼女の名前を聞いただけで, 私の魂は全身が凍り付いたように感じた.

私の心臓は, きりきりと音を立てて締め付けられ, 息ができない.

「すぐに会いにいく. どこにいるんだ? 」.

正人は, 美奈子に, 優しく語りかけた.

「まさか, あの女がまたお前を傷つけようとしたんじゃないだろうな? 」.

彼の目は, 私の遺体安置室の方向を鋭く睨んだ.

「もしそうなら, 絶対に許さない」.

正人の声は, 怒りに満ちていた.

「必ず, あいつを消してやる」.

彼の言葉は, 私に向けられた明確な脅迫だった.

私の魂は, 深い絶望に包まれた.

彼は, 本当に私を排除したがっている.

「心配するな. 私が全て解決するから」.

正人は, 再び優しい声で美奈子に語りかけた.

私の魂は, 自嘲の笑みを浮かべた.

彼は, 私の死を, 今, この場で宣言しているのだ.

彼は, 本当に, 私が死んでほしいと願っているのだろうか.

その思いが, 私の心を深く深く抉った.

「愛しているよ, 美奈子」.

正人の言葉が, 私の魂を打ち砕いた.

私の心は, 完全に死んだ.

全身に, 冷たい水が流れ込んでくるようだった.

彼から, 愛されていると感じたことなんて, 一度もなかったのに.

「ええ, 私もよ, 兄さん」.

電話の向こうから聞こえてきたのは, 美奈子の甘く, しかしどこか悪意に満ちた声だった.

私の魂は, その声を聞いた途端, 全身が震え上がった.

美奈子.

私は, 必死に声を上げようとした.

「正人さん, 美奈子に騙されているのよ! 」.

だが, 声は出ない.

私の叫びは, 誰にも届かない.

私の存在は, 正人にも, 美奈子にも, 見えていない.

彼女の声は, 甘美な毒薬のように, 私の魂を蝕んでいく.

正人は, 電話を切ると, 満足そうな笑みを浮かべた.

「美奈子が心配している. 桜庭の安否を確認してきてくれ」.

正人は, 上司に向かって言った.

彼は, 私の遺体安置室に向かおうとした.

「奥村検事! 」.

上司が, 慌てて彼を呼び止めた.

「桜庭さんの携帯, 繋がらないんです」.

上司の顔には, 真剣な心配の色が浮かんでいた.

「どうせまた, 私を困らせるための狂言だろう」.

正人は, 冷たく言い放った.

「違います! 桜庭さんは, そんなことをする人では... 」.

上司が, 反論しようとした.

「もういい」.

正人の言葉が, 上司の言葉を遮った.

正人は, 再び霊安室を出て行こうとした.

その時, 正人の携帯が, 再び鳴った.

彼の顔から, 不機嫌な表情が一瞬で消えた.

私の魂は, またしても, 不穏な予感に襲われた.

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