私の吐息を奪って の小説カバー

私の吐息を奪って

8.0 / 10.0
billionaireの夫カルロスは、妻デビーの正体を知らずに冷酷な仕打ちを繰り返していた。しかし、彼女が真の妻であると判明した瞬間、態度は一変し溺愛が始まる。本作は、すれ違う二人の関係と予測不能な運命を描く人気のromance novelです。甘い日々が続く中、なぜ二人は離婚の道を選んだのか。愛と裏切りが交錯するこのweb novelで、衝撃の結末を目撃してください。
「私の吐息を奪って」のあらすじ
大富豪のカルロスは、目の前の女性・デビーの正体を知らぬまま「この女を追い出せ」「海に捨ててしまえ」と非情な言葉を投げつけ、冷徹に突き放していた。しかし、傍らにいた秘書から告げられたのは、彼女こそがカルロスの妻であるという衝撃の事実だった。真実を知った瞬間、カルロスの態度は一変する。なぜもっと早く教えなかったのかと秘書を激しく責め立てるほど、彼は自身の過ちに動揺した。それからというもの、かつての冷遇が嘘だったかのように、カルロスはデビーに対して底なしの寵愛を注ぎ、彼女を甘やかす日々が始まる。周囲の誰もが、二人の絆は揺るぎないものであり、このまま幸福な結婚生活が続いていくものだと信じて疑わなかった。しかし、運命は予測不能な方向へと動き出す。深い愛情に包まれていたはずの二人が、まさか離婚という選択をすることになるとは、この時はまだ誰も予想だにしていなかったのである。現代を舞台に、冷徹な富豪の豹変と、甘くも切ない愛の行方を描くドラマチックなロマンス。
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私の吐息を奪って 第1章

「フィリップ、お願いがあるわ。 この離婚協議書にもう署名したので、 チャールズ・フオに渡してくれない?」

デビー・ニアンは勇気を振り絞って、フオ家の執事であるフィリップ・ズオに、離婚協議書を手渡した。

フィリップは文書に目を通すと、ため息をついて、顔をしかめた。 「デビー! これがどれだけ愚かなことか分かっているのですか? 旦那さんと離婚したい気持ちは分かります。 何しろ、 この3年間、旦那さんと一度も会っていないのですよね。 しかし、どうして慰謝料を要求しないのですか?」

デビーはまだ二十歳の現役大学生だ。 親はとっくに亡くなった。 そんな彼女が慰謝料無しで離婚を選んだのは、とても賢明な判断ではないとフィリップは思った。

デビー・ニアンは恥ずかしそうに頭を掻いた。 フィリップがいつも、自分を娘のように接してくれていたことをよく分かっていたので、彼に隠し事をしたくないんだ。 「私…… 学校を中退したいの」とどもりながら言った。

「何だって? なぜ急に学校を辞めたくなったのですか? 何かあったのですか? いじめられているとか?」 彼は驚いて目を見開いた。

「違う、違う、そんなことはないよ! 大げさよ、フィリップ。 あなたはすでに知っているように、私、私は勉強するのが好きじゃないの。 だから、大学で時間を無駄にしたくないのよ」とデビーが説明した。

が、学校中退の話も、本当はただの言い訳にすぎない。 自分が離婚したい本当の理由は誰にも話すつもりがないの。

明日は21歳の誕生日とともに、 結婚3周年記念日を迎えることになる。

私はまだ若い… 本当の愛を追求するために、もうこの空虚な結婚に邪魔されたくないの。

今日までは、夫のチャールズ・フオに会ったことさえなかった。 この結婚も、 父が勝手に手配したものだ。 デビーはこの3年の生活を振りかえて、そう思った。

フィリップはデビーが本音を吐くつもりはないことを察して、「…分かりました。 もう決めたなら、 私……明日離婚協議書を旦那様に渡します」 と深いため息をつきながら言った。

「どうもありがとう、フィリップ!」 デビーは大きな安堵のため息をついて、可愛く微笑んだ。

フィリップは彼女をじっと見て、どうしようもなかった。 「デビー、 フオ旦那はいい人です。 あなたとは完璧にお似合いだと思いますので、よく考えて、考え直してみてくださいね。 もし気が変わったら、いつでも電話してください」と心を込めて言った。

完璧にお似合い? 彼は結婚式にも現れなかったのよ! その男はその時、 外国人大統領の食事会に参加していたのよ。 結婚証明書の写真さえフォトショップで加工されてたのよ。

この3年間で、彼はどれほど私を嫁にしたくないのはよく分かったよ。 それでも私たちが完璧にお似合いだと言える? デビーはムカついて、怒りをどうしても鎮めることができなかった。

ようやく正気に戻って、彼女は深呼吸をしてまた話し始めた。 「もう決めたの」と言うつもりだったが、自分のことを心から心配してくれているフィリップを心配させないために、「うん、わかったわ」と口にした。

フィリップは、彼女の気が変わるかもしれないと考え、次の日の午後まで待ってたが、 残念なことに、デビーはずっと電話をかけてこなかった。 しかたなく、携帯電話を取り出し、番号を押した。 「旦那様。 あなたの署名が必要な書類があるのですが」

「どんな書類だ?」 チャールズは 冷たく答えた。

フィリップは少し躊躇した後、「離婚協議書です」と答えた。

チャールズがその言葉を聞いたとたんに、 書類にかけていた手が止まった。

「ああ、俺には妻がいるんだ」 フィリップがかけてきた電話で、チャールズはやっと自分が結婚して妻がいることを思い出した。

「まあ、俺のオフィスに置いといてくれ。 数日後にはY市に戻ってくる」

「はい、旦那様。かしこまりました。 」とフィリップは答え、電話を切った。

一方、Y市のブルーナイトバーでは、薄暗い照明のなかに人が溢れていた。

若い男女が、町の中でその特に人気の場所に集まっていた。

501号室内のテーブルには、ビール、ワイン、シャンパン、さらに様々なおつまみで散らかっていた。

その部屋は誕生日パーティーの会場だった。 その日21歳になったデビーが祝われていた。

同級生から「おてんば娘」と呼ばれていたデビー・ニアンは、今ではピンクのレースのドレスを着ていた。 いつものジーンズやシャツではなく、珍しく女性らしい格好をしていた。 女性客の中には、デビーと自撮りするために携帯電話を取り出した人もいた。

みんなで写真を撮った後は、同級生たちとお酒を酌み交わして楽しんでいた。 部屋の片隅には、デビーが友人やクラスメートからもらったたくさんのプレゼントが積み上げられていた。

少しほろ酔い気味のジャレド・ハンは、別の少年の肩に腕を回して大声で歌い出した。 「入ってきたときから、 危険な人だと思ってた……」

その声は耳障りで、多くの女の子たちが耳を塞ぎ、うめき声をあげた。

「ねえ、ジャレド! 歌うのをやめて。 ゲームをやりましょうよ」 ジャレッド・ハンにそう声をかけたのは、デビーのルームメイトの一人、ケイシー・ゼンだった。

彼女は自信に満ち溢れた明るい女の子で、いつも周りの注目を集めていた。

彼女の提案で、部屋はやっと静かになった。 部屋にいた全員はテーブルを囲み、彼女の指示を待つように、ケイシー・ゼンに目を向けた。

ケイシーはパーティー好きとして知られており、クラスメイトの間で人気者だった。

いたずらっ子のような目でをみんなを見て、 ケイシー・ゼンは「真実か挑戦かゲームをやりましょう!」と言った。

それを聞いて、皆が渋い顔をして彼女を軽蔑の眼差しで見ていた。 「ケイシー、そのゲームは最悪だ!」 金持ち二世のジャレドが彼女に言い返した。 彼は、つまらないゲームだと思っていたので、呆れて目を丸くした。

ケイシーは不満でジャレドを睨み返し、「今日はデビーの21歳の誕生日だから、ゲームをもっと盛り上げましょう!」と言い、 悪戯っぽい笑みを浮かべた。

パーティーに参加していた人たちは全員学生だったので、まだ純真無垢な人が多かった。 彼らはこのゲームをよく知っていて、挑戦の結果は大抵、マライア・キャリーの「Loving You」の高音を歌ったり、部屋の中で一番重い男を運んだり、異性とのデュエットを歌うと言うものだった。

しかし、ケイシーはデビーのためには別のことを考えていた。 シャンパンとワインの飲みすぎで、祝う人たちの頬はすでに紅潮していた。 第一ラウンドが始まると、ケイシーはほかの人にウインクをした。するとみんながすぐに彼女が何を企んでいることに気づいた。

「このラウンドの敗者はドアから出て右に曲がり、最初に出会った異性の人に唇にキスをしなきゃいけない。 この結果をスキップすることを選択した場合、代替案がある。 それはワインを10杯飲まなきゃならないということ」とケイシーは宣言した。

するとみんながそのゲームに興奮した。 みんな最初の敗者が誰になるのかを知りたがっていた。 この時、ジャレドは鼻を鳴らしたが、何も言わなかった。 彼はすでに結託があることを知っていたのだ。

じゃんけんをした後、みんなは唖然としているデビーを見つめた。

チョキを出した自分の手とグーを出したケイシーの手の交互に視線を移し、 デビーは目を見開き、顎が緩んだ。

「ああ、あんたが憎いよ、ケイシー!」 デビーは泣きそうに叫んだ。 彼女はすでに酔っ払っていて、 あと10杯のワインを飲む余裕がなかったのだ。

勇気を振り絞って、デビーはドアを開ける前に何度か深呼吸をした。

指示に従って、彼女は右に曲がった。

廊下に立っていたのは、パリッとした白いシャツに黒いズボン、黒い革靴を履いた男だった。

彼は20代半ばで、身長は約180cmぐらいだった。 彼の顔は、額から頬、顎のラインまで、すべて整っていた。 見た目は群衆の中で目立つタイプだった。

しかし、彼の目はあまりにも冷たく、彼と目が合うと、デビーは震えずにはいられなかった。

「わぁ、イケメンだね! おてんば娘、さあ急いで! 私たちはあなたを見てるわよ」とケイシーは大声でささやいた。 デビーは一瞬凍りついて、 「何となく見覚えのある人だな」と気がした。

どこで彼に会ったことがあったかしら?

ケイシーの声でデビーの思考が途切れたので、深呼吸をしてさらに勇気を振り絞った。

それでも「前にも会ったことがあるような気がする」と、うずうずしていた。 「気にしないで! 早く終わらせた方がいいわ」と自分を励ましたデビーだった。

勇気を出して、彼女はその男に歩み寄り、甘い笑みを浮かべ、つま先立ちをした。 すると、彼の香水が彼女の鼻に伝ってきた。

チャールズは電話をかける静かな場所を探していたところ、廊下で少女に呼び止められた。

近づいてきたデビーを見て、彼は迷惑そうに顔をしかめた。

ただ…… 何で彼女はあんなに見覚えがあるんだ? 特に その目は......

チャールズが考え込んでるうちに、デビーは彼の唇に柔らかなキスをして、彼の注意を奪った。

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