番に拒絶され、敵のアルファに奪われる の小説カバー

番に拒絶され、敵のアルファに奪われる

9.5 / 10.0
「銀月の群れ」のルナとして尽くしてきた主人公は、番である桐生蓮に裏切られ、不妊の濡れ衣を着せられて追放される。死の淵で彼女を拾ったのは、敵対する「黒森」の冷酷なアルファ、黒崎巌だった。復讐と生存を懸けたこのwerewolf物語は、絶望から始まるファンタジー。裏切りへの対価と新たな運命を描く人気のwebnovel、待望のromance fiction booksが登場。役立たずと蔑まれた雌狼が、敵の腕の中で真の力を覚醒させる。
「番に拒絶され、敵のアルファに奪われる」のあらすじ
「銀月の群れ」のアルファ、桐生蓮の伴侶として十年にわたり尽くしてきた。本来なら今日は、私がルナとして戴冠する栄光の日になるはずだった。しかし式の直前、私は残酷な真実を知る。蓮は私を「不毛の土地」と蔑み、妊娠した愛人の恵美を新たなルナに据えようと画策していたのだ。公衆の面前で彼は偽の診断書を突きつけ、私の不妊を捏造した。さらに、恵美を傷つけたという濡れ衣まで着せられ、私は絶望の淵に立たされる。蓮のアルファ・コマンドによって屈服させられた私に下されたのは、銀の鞭打ちという無慈悲な刑罰だった。背中を切り裂かれ、死を待つばかりの状態で森に捨てられた私を救ったのは、敵対する「黒森」の群れを率いる冷酷なアルファ、黒崎巌だった。意識を取り戻した私の前に現れた宿敵は、傷ついた私の姿を見下ろし、かつて私が浴びせられ続けた「役立たずの雌狼」という言葉を低く口にする。裏切りと屈辱にまみれた過去を捨て、敵の手に落ちた私の運命は、ここから大きく動き出すことになる。
もっと見る

番に拒絶され、敵のアルファに奪われる 第1章

生涯の伴侶であるアルファ、桐生蓮に十年尽くしてきた。今日という日は、私が「銀月の群れ」のルナとして戴冠するはずの日だった。私の揺るぎない忠誠が、ようやく報われる祝祭。

だが、式の直前、私は聞いてしまった。彼がベータと話しているのを。彼は私のことを「不毛の土地」と呼び、妊娠した愛人の恵美と私を入れ替えると嘲笑っていた。それどころか、私が三日も経たずに泣きついて戻ってくると賭けまでしていた。

群れの全員の前で、彼は恵美を新しいルナとして紹介し、私の不妊を証明するという偽物の診断書を掲げた。私がその場を去ろうとすると、恵美に暴力を振るったと濡れ衣を着せられた。

蓮のアルファ・コマンドが、私に叩きつけられた。抗えない力に、私は膝から崩れ落ちる。「この女は、未来のルナに手を上げた」と彼は宣言した。その瞳には、底なしの侮蔑が宿っていた。

彼の最後の命令は、鞭打ちだった。銀を編み込んだ鞭が私の背中を無慈悲に引き裂き、彼の戦士たちは私をゴミのように森へ放り投げた。死ぬがままに。

痛みと毒で意識を失い、次に目覚めた時、私は再び囚われの身となっていた。私を見下ろしていたのは、敵対する群れ「黒森」の恐るべきアルファ、黒崎巌。彼はボロボロになった私の服と血の滲む傷に目をやり、冷たく問いかけるような低い声で、何年も私を苦しめてきた言葉を繰り返した。

「役立たずの雌狼、か?」

第1章

ユリ POV:

初めて黒崎巌に会った時、私は彼の捕虜だった。その記憶は痛みと恐怖で霞んでいる。頭の中に響き渡った、冷たく明瞭な声とは対照的に。

それは念話(テレパシー)だった。人狼同士の私的な交信。だが、それは強制的な、心をこじ開けられるような不快なものだった。遠雷のように低く唸る巌の声は、私の伴侶に……蓮に語りかけていた。

「手に入れたぞ、桐生。お前の未来のルナをな」

私は木に縛り付けられ、体中が軋むように痛んでいた。だが、私の心を完全に打ち砕いたのは、蓮の返事だった。彼は新しい恋人と共に朝日を眺めていて、その思考は私に向けられた強烈な嫌悪の波となって伝わってきた。

「好きにしろ」

蓮の声は、何の温かみもなく、念話を通して私の心を切り裂いた。

「そいつに灸を据えてやれ。どうせ役立たずの雌狼だ」

あれはフラッシュバック。悪夢だ。

そして今日、私が初めて彼に身を捧げてから十年。本来なら、私が「銀月の群れ」のルナとして正式に認められる戴冠式の日だった。誰もが、それはただの形式的なものだと言っていた。十年の献身を祝うための、ささやかな儀式だと。

私が間違っていた。

私はアルファの私室にいる蓮を探しに向かっていた。胸には緊張で微かな高鳴りを感じながら。ドアが少しだけ開いていて、そこから彼の声が聞こえてきた。念話ではなく、彼の本当の声。何年もの間、私が気づかないふりをし続けてきた、残酷さを帯びた声だった。

彼はベータの健司と話していた。

「あいつ、本気で今日が自分のための日だと思ってるんだぜ」

蓮は嘲笑った。その声は、私の魂に氷水を浴びせかけるようだった。

「哀れなもんだ」

「どうなさるのですか、アルファ?」

健司が尋ねた。

「何年も前にやっておくべきだったことをするだけだ。この群れに世継ぎをもたらせるルナを発表する。恵美は多産だ。ユリはただの不毛の土地にすぎん」

蓮は低く、醜悪な声で笑った。

「三日やる。三日で奴は泣きついて戻ってくるさ。俺が投げ与えるどんな屑にでも、乞食みたいにすがりついてくる。賭けるか?」

私の心臓は、ただ壊れただけではなかった。塵になった。

儀式用の白いドレスに着替える気にもなれなかった。私は簡素なジーンズと薄手のセーターのまま、式典が開かれる広大な空き地へと向かった。群れのメンバーは全員そこにいて、期待に満ちた顔で私を見ていた。

蓮は私に気づくと、その顔を憤怒の仮面へと歪ませた。彼のアルファ・コマンドが、下位の狼を従わせる力が、私に叩きつけられた。

「どういうつもりだ、ユリ?俺に恥をかかせたいのか?」

彼の声は低い唸り声で、その背後にある力が私の膝を折らせ、謝罪させようとしているのを感じた。だが、胸の痛みは彼の命令よりも強かった。私は、その場にしっかりと立ち続けた。

彼は私の瞳に宿る反抗心を見て、表情を硬化させた。そして、手札を切ることに決めたようだ。

「我が群れの者たちよ」

彼の声は、静まり返った群衆の中に響き渡った。

「十年もの間、我々は世継ぎを待ち望んできた。月の女神様の祝福の証を。だが、女神様が我々のために別の道を用意されていることが、今や明らかとなった」

彼が脇を示すと、若いオメガの恵美が前に進み出た。彼女は輝いており、その手は僅かに膨らんだお腹を庇うように置かれていた。

「月の女神様は、私に多産な伴侶を祝福してくださった!恵美が、お前たちの新しいルナとなる。そして彼女は、この群れの未来をその身に宿しているのだ!」

彼は一枚の紙を掲げた。診断書。安っぽい偽造品だ。群衆は息を呑み、それからゆっくりと、数人のおべっか使いが拍手を始めた。

私は泣かなかった。叫びもしなかった。ただ、冷たく、空虚な虚無感だけがそこにあった。

私は彼に、そして今や囁き合いながら私を指さす群れに背を向け、歩き去った。

「三日だ、ユリ!」

蓮の嘲りが、私を追いかけてきた。

「泣きついて戻ってくるのを待ってるぜ!」

空き地の端で、恵美が私の前に立ちはだかった。彼女は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、お腹を撫でた。

「彼はもう私のもの。ルナの称号も、未来も、全部私のものよ」

numbnessを突き破って、生々しい怒りの火花が散った。私は彼女を脇に突き飛ばした。強くではなく、ただ通り過ぎるために。

「我々のルナに手を上げたぞ!」

誰かが叫んだ。

蓮は一瞬で私の隣に現れ、鉄のような力で私の腕を掴んだ。彼はそれを、未来の世継ぎへの攻撃と見なしたのだ。

彼のアルファ・コマンドが、絶対的で残忍な力となって私に降りかかった。

「跪け!」

私の体は裏切った。足の力が抜け、私は土の上に崩れ落ちた。その屈辱は、どんな肉体的な痛みよりも熱く燃え盛った。蓮は私を見下ろし、その瞳には侮蔑が満ちていた。

「この女は、未来のルナと、我がまだ生まれぬ子に手を上げた。罰を与えねばならん」

彼は戦士たちに頷いた。

「鞭だ。銀を編み込んだやつをな」

その夜、鞭が私の背中を引き裂いた後、彼らは私を放り出した。追放され、打ちのめされた私は、我々の土地との境界にある古の森をよろめきながら進んだ。傷口に染み込んだ薄められた銀は、ゆっくりと作用する毒となり、視界を揺らし、足を震わせた。

私は落ち葉の山に倒れ込み、意識を失った。

目覚めた時、それは記憶の冷たい反響の中だった。私は崖の端にある木に、今度は縛り付けられていた。背の高い、威圧的な人影が私の前に立っていた。そのシルエットは、淡い月明かりを背に黒く浮かび上がっていた。

敵対する「黒森の群れ」のアルファ。黒崎巌だった。

彼の声は、あの最初の悪夢で聞いた時と同じくらい、冷たく鋭かった。彼は私を値踏みするように見下ろし、その視線はボロボロの服と血の滲む傷口に留まった。そして、何年も私を苦しめてきた言葉、蓮が言った言葉を繰り返した。

彼は首を傾げ、低い、問いかけるような声で呟いた。

「役立たずの雌狼、か?」

---

続きを読む

番に拒絶され、敵のアルファに奪われる 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

愛妻の命を抜く男〜本命のための生贄結婚〜 の小説カバー
7.8
雪崩に巻き込まれ、絶体絶命の窮地に陥った私。夫は十指から血を流しながら十時間も雪を掘り続け、私を救い出してくれた。献身的な愛に感謝し、一命を取り留めたことを喜んだのも束の間、病室で意識を取り戻した私は衝撃の事実を耳にする。夫と医師が交わしていたのは、私の手足の切断だけでなく、造血幹細胞まで全て抜き取るという戦慄の計画だった。「この女を生かしてきたのは俺の慈悲だ。愛する彼女を救うための代償として、命で借りを返させる」――夫の冷酷な言葉が、かつての愛の誓いを無残に打ち砕く。私を妻に迎えた真の目的は、心から愛する後輩の命を繋ぎ止めるための「生きた血液バンク」として利用することだったのだ。信じていた絆が、ただの生贄を得るための手段に過ぎなかったと知った時、絶望の淵で私の心は静かに冷え切っていく。夫が望む残酷な結末を前に、私はある決意を固める。愛と裏切りが交錯する中、献身という名の仮面を剥ぎ取った男への、命を賭した報復が今始まる。
あの人の未来に、私はいない の小説カバー
8.0
神崎夕凪が布川グループの御曹司、布川和馬と夫婦の契りを交わした日、一族からの祝福は皆無だった。唯一、布川家の老婦人から届いたのは、冷徹な賭けの提案だった。「三年の月日が流れても二人の愛が変わらぬなら、一族に君を認めさせよう。だが、もし愛が潰えたなら、潔く和馬の前から姿を消しなさい。その時は、私が彼に相応しい家柄の伴侶を改めて選ぶ」という過酷な条件だ。和馬は家族との縁を切り、命を懸けてまで夕凪への愛を貫いてくれた恩人でもある。そんな彼を支え続け、添い遂げる決意を固めた夕凪は、その挑戦を毅然と受け入れた。彼との絆があれば、三年の歳月など容易に乗り越えられると信じて疑わなかった。しかし、運命は残酷な結末を用意していた。約束の三年目を迎えたその時、あろうことか最も信頼していた布川和馬自身が彼女を裏切ったのである。家柄の壁を越えた純愛の末に待ち受けていたのは、あまりにも切ない裏切りの真実だった。
私の40年を、今日捨てます。 の小説カバー
9.6
還暦を迎えた誕生日の宴席。主役である私が挨拶を終えた瞬間、無愛想だった夫が突如として涙を流し始めました。その涙は息子夫婦や孫にまで連鎖し、一家全員が泣きながら私の方へと歩み寄ってきます。予期せぬ感動的な光景に戸惑いながらも、私は家族を迎え入れようと両手を広げました。しかし、夫たちは私に見向きもせず、その横を通り過ぎていったのです。夫が震える手で縋り付いたのは、私の背後にいた一人の女性でした。息子は彼女を「おばさま」と呼び、嫁や孫も再会を喜ぶあまり、私の存在など視界に入っていない様子です。この家のために尽くしてきた四十年間は何だったのか。帰還した「本命」の女性を前に、私の献身は無慈悲に打ち砕かれました。アルツハイマーで記憶が十八歳に戻ったという彼女が、不思議そうに私の正体を尋ねると、家族は一斉に私を敵視するような視線を向けます。そのあまりの豹変ぶりに、私は乾いた笑いを浮かべるしかありませんでした。長年守り続けてきた場所が、一瞬で他人のものへと変わったのです。私は、この家で過ごした歳月のすべてを捨てる決意を固めました。
執着の影武者 の小説カバー
8.9
孤高の億万長者・神崎圭の専属画家として雇われた私は、孤独を抱える彼に惹かれ、いつしか恋に落ちていた。しかし、その想いは残酷な真実によって打ち砕かれる。彼は私との情事を密かに記録し、最新技術で私の顔を義理の妹・玲奈に書き換えていたのだ。私は愛されていたのではなく、彼の歪んだ執着を埋める身代わりに過ぎなかった。玲奈が私に暴行の濡れ衣を着せると、圭は冷酷な本性を現す。彼の指示で私は暴行を受け、画家にとって命とも言える右手を粉々に砕かれた。さらに彼は玲奈の結婚を優先し、私を「飽きた玩具」と切り捨てて拘置所へ送り込んだ。心身ともに破壊された私に手を差し伸べたのは、かつて私を捨てた義父だった。母の遺産と引き換えに、障害を持つIT界の御曹司・真木啓介と結婚せよという提案。私はその取引に応じ、自分を地獄へ突き落とした男から逃れるため、見知らぬ男の妻になる道を選んだ。過去を捨て、新天地へと向かう飛行機の中で、私は再生を誓う。
魂だけが知る残酷な真実 の小説カバー
8.2
意識が肉体を離れ、幽体となった私は、手術台に横たわる無残な己の姿を見下ろしていた。執刀医としてメスを振るうのは、かつて愛を誓い合った男、光登。彼は最愛の女性を救うという名目のもと、私の腎臓を冷酷に抉り出していく。その作業の最中、彼は私のお腹に宿る小さな命の兆しに気づいた。それは紛れもなく、彼との間に授かった新しい命だった。しかし、光登の瞳に慈悲の色はない。彼は「残りは処分しろ」と吐き捨てると、まだ温かみの残る私の体を硫酸が満ちたプールへと容赦なく投げ込んだのだ。かつて彼が病に倒れた際、自らの腎臓を一つ捧げて命を繋ぎ止めたのは誰だったのか。その身に彼の子供を宿し、誰よりも彼を愛し抜いたのが私であることに、彼は最後まで気づくことはなかったのだろうか。裏切りと残酷な殺意の果てに、魂だけが知るあまりにも悲劇的な真実が浮き彫りになっていく。愛した男の手によって、母子ともに闇へと葬られた女の怨嗟が、静かに、そして深く響き渡る。
 ボクたちの言葉が忘れられるこの世界は間違っている の小説カバー
9.4
かつて異世界から島ごと転移してきたシェオタル王国は、十数年前に勃発した戦争によってその歴史に幕を閉じた。敗戦した王国は極東国の占領下となり、現在は「瀬小樽県」という名で統治されている。極東資本による大規模な開発が急速に進む一方で、土地に根付いていた独自の文化は消え入り、公用語である極東語の浸食によって、彼らが受け継いできた大切な言語までもが失われようとしていた。そんな時代の荒波の中で、少年ヴェルガナフ・クランは亡き姉との約束を胸に、自国の言葉を独り守り続けていた。周囲が過去を捨て去っていく中、頑なに母国語を使い続ける彼の日常は、ある日、極東本土からやってきた一人の転入生の少女と出会ったことで大きく動き出すことになる。失われゆく言葉と、変わり果てた故郷。支配と同化が進む世界に抗いながら、少年は自らのアイデンティティを模索していく。異世界と現代的な価値観が交錯する中で描かれる、言葉と絆を巡る切なくも力強いファンタジー。
章
今すぐ読む
共有