見捨てられし愛玩、マフィアの女帝 の小説カバー

見捨てられし愛玩、マフィアの女帝

9.7 / 10.0
8歳の冬、燃え盛る炎の中から私を救い出した黒崎龍司は、絶大な権力を握る裏社会の支配者だった。それから10年、私は彼を唯一無二の守護者として、神のごとく崇めて生きてきた。しかし、二つの組織を統一するという野望のため、彼は他家との婚約を一方的に発表する。家に連れてこられた婚約者は、周囲の目の前で私に安物の金属製首輪をはめ、「ペット」と呼び捨てて嘲笑った。龍司は私が金属アレルギーであることを知りながら、冷徹な視線でそれを受け入れるよう命じる。その夜、壁越しに聞こえてくる二人の情事の気配に、私は幼い日の約束がすべて偽りだったことを悟った。私は家族ではなく、ただの所有物に過ぎなかったのだ。10年に及ぶ献身的な愛は、絶望の中で完全に灰へと帰した。彼の誕生日、新たな門出を祝う宴の裏で、私は黄金の鳥籠を抜け出す決意をする。用意されたプライベートジェットは、私を真の父親のもとへと運んでいく。それは、龍司にとって最大の宿敵である男だった。

見捨てられし愛玩、マフィアの女帝 第1章

八歳の冬、黒崎龍司は、私の家族を殺した火の中から私を救い出してくれた。

それから十年、絶大な力を持つ裏社会のボスは、私の守護者であり、私の神様だった。

だがある日、彼は二つの裏社会帝国を統一するため、他の女との婚約を発表した。

彼はその女を家に連れて帰り、彼女こそが黒崎本家の未来の奥様だと紹介した。

皆の前で、彼の婚約者は安物の金属の首輪を私の首にかけ、「ペット」と呼んだ。

龍司は私がアレルギー持ちだと知っていたのに。

ただ冷たい目で見つめ、それを受け入れろと命じた。

その夜、私は壁越しに、彼が彼女をベッドに連れ込む音を聞いた。

子供の頃に彼がくれた約束が、嘘だったとようやく悟った。

私は彼の家族なんかじゃなかった。

彼の所有物だったんだ。

十年間の献身の末、彼への愛は、完全に灰になった。

だから私は彼の誕生日、彼が新しい未来を祝うその日に、彼の黄金の鳥籠から、永遠に飛び立った。

プライベートジェットが、私を迎えに来ていた。

私の実の父親――彼の最大の敵のもとへ、私を運ぶために。

第1章

美月 POV:

私の人生は終わった。

黒崎龍司が、他の女との婚約を発表した日に。

それは、広大で空虚な黒崎邸の廊下で囁かれた噂話なんかじゃなかった。

真夜中の静寂の中で打ち明けられた告白でもない。

それは、見出しだった。

大理石のカウンターの上で、死にかけの虫みたいにスマホが震え、その画面に、冷酷な黒い文字が浮かび上がった。

『黒崎組会長・黒崎龍司、五十嵐組令嬢・五十嵐玲奈と婚約。二大裏社会帝国、統一へ』

文字が滲む。

私の世界は、手の中のスマホだけに狭まった。

その冷たい重みが、信じられないという感情の海の中で、突然、衝撃的な錨になった。

何かの間違いだ。

権力争いのための駆け引き。

敵を燻り出すための嘘。

本気のはずがない。

だって、龍司は私のものだったから。

八歳のあの日から、ずっと。

火事を覚えている。

煙と恐怖の、鼻を突くような匂いが肺を満たした。

赤城組――私の家族は引き裂かれ、私は置き去りにされたただの巻き添え被害だった。

その時、彼が炎の中から現れた。

十六歳の少年。

彼が支配する世界そのもののように、暗く、容赦のない瞳をしていた。

彼は私の上に覆いかぶさり、その体で、壁に飛び散る熱と血から私を守ってくれた。

彼は私の髪に顔を埋め、荒々しくも、落ち着いた声で囁いた。

「もう安全だ。お前はもう、黒崎の人間だ」

この十年、その約束は私の信仰そのものだった。

大理石の床と、静かに見張るボディガードたちに囲まれたこの黄金の鳥籠の中で、龍司は私の神様だった。

十歳の頃、悪夢が止まらない私にナイトライトを買ってくれたのは彼だった。

柔らかく、揺るぎない光を放つ、小さな猫の陶器。

「これで化け物は来なくなる」

彼はそう言って、大きな手で優しくコンセントに差し込んだ。

もちろん、彼自身が化け物だった。

それは私も知っていた。

世界中が知っていた。

でも、彼は私の化け物で、他のすべての化け物を遠ざけてくれた。

そして、十七歳の誕生日。

私は、自分の立場にいる少女がしでかす最も愚かなことをした。

彼に手紙を書いたのだ。

不器用で、心のこもった文章で綴られた告白。

十代の少女らしいドラマチックな演出で、一滴の血まで垂らして。

愛している、と伝えた。

その手紙は、彼の書斎の外のゴミ箱で、粉々に引き裂かれているのが見つかった。

その夜、私は図書室で彼に追い詰められた。

革張りの本が並ぶ棚に体を押し付けられ、身動きが取れない。

彼の瞳は、私に向けられたことのないほどの怒りで燃え上がっていた。

「俺を愛するな、美月」

彼は低く、危険な唸り声で言った。

「お前が俺を愛せば、死ぬことになるぞ。分かったか?」

分かった。

でも、信じなかった。

それは試練だと思った。

私を守るための、また別の歪んだやり方なのだと。

今、彼の隣で微笑む五十嵐玲奈の顔を見つめながら、彼女の手が独占欲たっぷりに彼に腕に置かれているのを見て、私は知った。

あれは試練なんかじゃなかった。

予言だったのだ。

その晩、彼は彼女を屋敷に連れてきた。

二人が入ってきた時、私は大階段の上に立っていた。

玲奈は、私が持っていないものすべてを持っていた――背が高く、落ち着きがあり、戦いを予感させるような鋭い美しさ。

彼女は、まるでここが自分のものだとでもいうように振る舞った。

龍司の目が私を捉えた。

温もりも、謝罪もない。

ただ、平坦で、冷たい命令だけがあった。

「美月」

彼の声が、だだっ広い玄関ホールに響き渡る。

「こちらは玲奈さんだ。これからは、黒崎本家の未来の奥様とお呼びしろ」

その言葉は、物理的な一撃だった。

奥様。

それは、本来なら……。

玲奈の微笑みは武器だった。

「龍司さんが大事に鳥籠で飼ってる、可愛いカナリアちゃんにやっと会えたわ」

私の手は冷たくなった。

すべての組員、すべての使用人の視線が私に突き刺さるのを感じた。

私は血筋では赤城、情けで黒崎。

彼が敵の残骸から拾ってきた野良犬。

そして今、真の女王が玉座を主張するためにやってきたのだ。

その夜、自室に閉じこもり、私は鏡の中の自分を見つめた。

亜麻色の髪が、腰まで流れ落ちる。

龍司はいつも私の髪を愛でていた。

かつて、彼の世界で唯一清らかなものだと言ってくれた。

私はバスルームに入り、庭の花を切るための剪定ばさみを見つけ、その清らかで、黄金色の髪の太い束を手に取った。

ザクッ。

それは死んだもののように、冷たいタイルの床に落ちた。

ザクッ。ザクッ。ザクッ。

耳の周りで不揃いに、ギザギザに切り刻まれるまで、私は手を止めなかった。

私は野性的で、見る影もなくなった。

私はバルコニーに出て、新しく晒された首筋に冷たい夜気が突き刺さるのを感じた。

ジャケットの隠しポケットから、組員の一人から盗んだ煙草を取り出した。

火をつける手が震え、慣れない煙の刺激が喉の奥を襲う。

咳き込み、目に涙が浮かんだ。

私はもう清らかじゃない。

私はもう彼のものではない。

私は何者でもない。

そして、何も持たない人間は、失うものも何もない。

私はもう一度煙を吸い込み、その煙で自分を満たしながら、容赦のない東京の夜景に誓いを立てた。

ここから出ていく。

それが無理なら、死んでやる。

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