偽りの罪と名ばかりの妻 の小説カバー

偽りの罪と名ばかりの妻

8.5 / 10.0
「偽りの罪と名ばかりの妻」として、夫の久明から虐げられてきた紀枝。母の罪を償うため地獄の生活を耐えていた彼女だが、元恋人の樹栄から衝撃の真実を告げられる。全ての元凶は夫の家族が仕組んだ嘘だった。尊厳を奪われた過去を捨て、紀枝は復讐を誓う。愛憎が渦巻く現代のromance novelとして、真実を暴くスリルが詰まったmystery story。裏切りへの報いと再生を描く、緊迫のweb novelがここに開幕。
「偽りの罪と名ばかりの妻」のあらすじ
「お前の母親が犯した罪を一生かけて償え」という言葉を浴びせられ、紀枝は橋本家で「名ばかりの妻」兼「奴隷」として虐げられてきた。夫の久明は彼女の目の前で愛人と情事に耽り、抵抗すれば容赦ない暴力を振るう。さらに裸の写真を盾に脅迫され、紀枝は尊厳を奪われ絶望の中にいた。しかし、あるパーティーでかつての恋人・斉藤樹栄と再会したことで運命が激変する。樹栄は久明の暴力を阻止し、衝撃の事実を告げた。紀枝の母は無実であり、真の悪党は金を奪い家庭を壊した久明の父だというのだ。七年もの間、地獄のような日々に耐えてきた根拠は、すべて橋本家が仕組んだ卑劣な嘘だった。真実を知り、紀枝の心には復讐の炎が燃え上がる。彼女は樹栄の手を取り、涙を拭って立ち上がった。もはや自分は罪人の娘ではない。人生を狂わせた男たちに相応の報いを受けさせるため、彼女の逆襲が幕を開ける。
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偽りの罪と名ばかりの妻 第1章

「お前の母親が犯した罪を, 一生かけて体で償え」

そう罵られ, 私は橋本家の「名ばかりの妻」兼「奴隷」として生きてきた.

夫の久明は, 私の目の前で愛人と情事に耽り, 少しでも逆らえば容赦なく暴力を振るった.

私の裸の写真を撮り, 「逃げればこれをネットにばら撒く」と脅す彼に, 私は尊厳のすべてを奪われていた.

しかし, あるパーティーで再会したかつての恋人, 斉藤樹栄が私の運命を変えた.

衆人環視の中で私を殴りつけようとした久明の腕を, 樹栄が掴み上げたのだ.

そして彼は, 私の耳元で衝撃的な真実を告げた.

「紀枝, 君の母親は無実だ. 金を奪い, 家庭を壊したのは久明の父親の方だ」

私が7年間, 地獄のような日々を耐え抜いた理由は, すべて久明たちが仕組んだ卑劣な嘘だったのだ.

真実を知った瞬間, 私の中で何かが音を立てて壊れ, そして燃え上がった.

私は涙を拭い, 樹栄の手を強く握り返した.

もう, 罪人の娘なんかじゃない.

私を陥れ, 人生を狂わせたこの男たちに, 相応の地獄を見せてやる.

第1章

私の喉は乾ききっていた. 乾きすぎて, 声が出せなかった.

足元から這い上がる湿気と, 頭上を覆う重い空気.

吐き気がするのに, 吐き出すものもない.

私は, この世の終わりのような, 静寂の家に立っていた.

私が稲葉紀枝.

この橋本家の, 名ばかりの妻.

かつてアパレル業界の名門だった橋本家.

その御曹司, 橋本久明と結婚した.

世間ではそう言われている.

でも, 本当は違う.

私の結婚は, 15年前の「罪」を償うためだった.

私の母が, 久明の父をたぶらかした.

会社の重要顧客リストと資金を持ち逃げした.

橋本家を没落させた.

それが, 久明が私に押し付けた「罪」の物語.

だから, 私は奴隷だった.

久明は私を「罪人の娘」と呼んだ.

私のデザイナーとしての才能は, とっくに封印された.

彼の暴力的な支配.

度重なる浮気.

私はそれに耐え続けた.

誰も知らないところで, 橋本家の家計を支えていた.

彼の会社の雑務と家事を, 一人で全てこなしていた.

その夜も, 同じだった.

久明はいつも通り, 午前様で帰ってきた.

私は彼のために, 遅い夕食を用意していた.

足音が聞こえる.

玄関のドアが開く音.

そして, 女の笑い声.

私の心臓が, 凍り付いた.

私は, 息を潜めて, 書斎のドアの隙間から覗いた.

光の筋が, 薄暗い廊下に伸びていた.

そこに映し出されたのは, あまりにも醜悪な光景だった.

久明が, 見知らぬ女と抱き合っていた.

女は, 久明の腕の中で, 媚びるような声を上げていた.

その声が, 私の耳の奥で, 粘りつくように響いた.

女の体は, 久明の腕の中に完全に収まっていた.

薄いシルクのドレスが, 肩から滑り落ちている.

肩が露わになり, 久明の指がその滑らかな肌をなぞっていた.

女は首筋に顔を埋め, 陶酔したように目を閉じていた.

その姿は, 私に向けられたことのない, 甘美なもので, 私の胃が収縮した.

久明の顔には, 私が見たことのない, だらしない笑みが浮かんでいた.

彼は女の髪を弄び, その指先が, 女の背中をゆっくりと滑り降りていく.

女は嬌声を上げ, 久明の唇が, 彼女の耳元で何かを囁いた.

その瞬間, 女は身をよじらせ, 久明の首筋に深い口紅の跡を残した.

私の胸が, 鉛のように重くなった.

喉の奥から, 苦いものが込み上げてくる.

久明は女の顎を掴み, 無理やり顔を上げさせた.

女は笑っていた.

私の目には, その笑みが, 久明への支配を誇示しているように見えた.

久明は, 私に向けた時と同じ, 冷たい目で女を見ていた.

だが, その視線の奥には, 飢えた獣のような欲望が宿っていた.

女は, 私の存在に全く気づいていなかった.

久明の腕の中で, 甘えたような仕草を繰り返す.

その背後で, 私の心は, 音を立てて砕け散った.

久明の指が, 女の肌に吸い付くように動き, そのたびに, 女は小さく喘いだ.

私の心臓が, 脈打つのを忘れたかのように, 静かになった.

私は, もう何も感じなかった.

怒りも, 悲しみも, 絶望も.

ただ, 空っぽだった.

私の頬を流れる涙が, 冷たく感じられた.

指先が震え, その震えが, 全身に広がっていく.

私は, その場で, 崩れ落ちそうになった.

「久明さん... 」

私の声は, か細く, 自分でも聞き取れないほどだった.

しかし, その声は, 書斎の中の二人の耳には届いたようだった.

久明と女は, ハッと顔を上げた.

女の顔から, 血の気が引いた.

久明の顔色は, 一瞬で, 冷酷なものに変わった.

久明は, 女を突き放すように手で制した.

女は混乱したように, 身につけていた薄いドレスの肩紐を慌てて引き上げた.

彼女の目は, 私を捉え, 驚きと恐怖に満ちていた.

久明は, その女を庇うように, 私の前に立ちはだかった.

彼の目は, 私を責めるように, 鋭く光っていた.

私の視線は, 女の足元に落ちた.

散らばった口紅と, 乱れた髪.

そして, その首筋に残された, 久明の赤い痕.

それは, まるで私の存在を嘲笑うかのように, 鮮やかだった.

私の心臓が, 再び激しく鼓動を始めた.

しかし, それは痛みだけを伴うものだった.

私は, 口を開こうとした.

しかし, 言葉が出なかった.

喉の奥が張り裂けそうなくらい, 痛かった.

息が詰まるような, 苦しい沈黙が部屋を支配した.

私の目から, 止めどなく涙が溢れ出した.

その涙は, 私の頬を伝い, 床に落ちて, 小さな染みを作った.

「あなた... 」

私がようやく絞り出した声は, 震えていた.

久明の顔は, さらに冷たくなった.

彼は, 私の問いかけを無視するかのように, 女に向かって手を上げた.

女は, 震える手で, 服を直していた.

その姿が, 私の心をさらに抉る.

「何を見てるんだ, 紀枝」

久明の声は, 氷のように冷たかった.

その声には, 一切の感情が込められていなかった.

彼は, まるで私が, この場にいてはいけない存在であるかのように, 私を睨みつけた.

私の心臓が, 再び凍り付いた.

この男は, 私を, 人間として見ていない.

「あなたが... 」

私は, 言葉を続けることができなかった.

久明は, 私の言葉を遮るように, 鼻で笑った.

その笑い声が, 私の耳の奥で, 悪魔の嘲笑のように響いた.

私の心は, 彼の冷酷な言葉によって, さらに深く傷つけられた.

「お前に, 何がわかる」

久明は, 私を見下すように言った.

彼の言葉は, 私を否定し, 私の存在価値を奪い去るものだった.

私は, 彼の言葉に, 何も言い返すことができなかった.

ただ, 彼の冷たい視線を受け止めるしかなかった.

私の脳裏に, これまでの日々がフラッシュバックした.

久明との結婚生活は, 常にこんなものだった.

彼は私を所有物として扱い, 私に感情を抱くことを許さなかった.

私は, 彼の命令に従い, 彼の期待に応えることだけを求められた.

私の感情は, 彼の前では, 何の価値も持たなかった.

私たちの関係は, 15年前の「事件」によって始まった.

私の母, 稲葉美枝子は, 橋本家の財産を奪い, 久明の父を裏切った.

そう, 久明は私に言い聞かせた.

その「罪」を償うため, 私は橋本家に入った.

まるで罪を背負うかのように.

私がこの家に来た時, 橋本家はすでに傾いていた.

久明の父は, 病床に伏し, 会社は借金まみれだった.

久明は, その全てを私の母のせいにした.

そして, 私を「罪人の娘」として, この家に縛り付けた.

私は, 彼の言うことを全て信じていた.

私の母が, 橋本家を破滅させたのだと.

あの頃, 私はまだ幼かった.

母が去った後, 私は一人で生きていくしかなかった.

孤児になった私を, 久明の父が見つけ出した.

彼は私に言った.

「お前の母の罪を償うため, 橋本家に来い」と.

私は, 他に選択肢がなかった.

久明の怒りを受け止めることが, 私の宿命だと思った.

私は, 久明からの仕打ちに耐え続けた.

罵倒され, 無視され, 存在を否定されても, 私は黙っていた.

家政婦のように働き, 彼の会社を影で支えた.

彼のプライドを傷つけないよう, 常に一歩引いた場所にいた.

それは, 私の母の罪を償うためだと, 自分に言い聞かせた.

私は, 彼に「もし私が死んだら, 少しは気が晴れますか」と尋ねた.

久明は, 冷たい目で私を見つめ, 何も答えなかった.

その沈黙が, 私をさらに絶望させた.

ある日, 久明の父, つまり私の義父が, 私を呼び出した.

彼は私に, 久明との結婚を提案した.

私は驚いた.

「私が久明さんと結婚すれば, 橋本家は救われますか? 」

私は尋ねた.

義父は, うつむいたまま, 何も言わなかった.

ただ, その目に, 深い悲しみが宿っていた.

私は, その悲しみに, 何か救いの糸を感じた.

「私が, 橋本家を救います」

私は, そう言った.

しかし, 久明は違った.

彼は私の提案を, まるで汚物を見るかのように, 吐き捨てるように拒絶した.

「お前なんかが, 俺の妻になれるわけないだろう. 醜い罪人の娘め」

彼の言葉は, 私の心を深く切り裂いた.

私は, それでも諦めなかった.

「私が, あなたの会社の再建を助けます. 私が, 橋本家のために尽くします」

私の必死な訴えにも, 彼は耳を傾けなかった.

そして, その夜, 久明は私を襲った.

それは, まるで獣のような行為だった.

私は, 彼の腕の中で, もがいた.

「やめて... 久明さん... 」

私の声は, 彼の耳には届かなかった.

彼は, 私の体に触れ, 私を辱めた.

私の心は, その夜, 完全に死んだ.

私は, 翌日, 久明の父に, 結婚の意志を伝えた.

義父は, ただ悲しげに頷いた.

結婚の準備は, 久明の父が進めてくれた.

久明は, 私との結婚に, 最後まで抵抗した.

しかし, 彼の父の強い意志に, 逆らうことはできなかった.

結婚式は, 簡素なものだった.

家族と, ごく親しい友人だけが参列した.

久明の顔は, 終始, 不機嫌そのものだった.

彼は, 私を, まるで厄介な荷物のように扱った.

結婚の夜, 久明の父は, 私を呼び出した.

彼は, 私に言った.

「紀枝, 久明を支えてやってくれ. そして, この橋本家に, 新しい命をもたらしてくれ」と.

その言葉は, 私に, 重い責任を課した.

私は, その夜, 久明の寝室に向かった.

私の心は, 冷え切っていた.

しかし, 私は, 橋本家の再建のために, この体を捧げるしかなかった.

私が, 彼の寝室のドアを開けた時, 久明は, すでにベッドに横たわっていた.

彼は, 目を閉じていた.

その顔には, 深い疲労の色が浮かんでいた.

私は, 震える足で, ベッドに近づいた.

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