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白いスープと雲の街 の小説カバー

白いスープと雲の街

照りつける太陽が眩しい夏の日のこと。裏手の畑で静かに日々を過ごしていた「ぼく」は、平穏を切り裂くような凄惨なバラバラ殺人事件を偶然にも目の当たりにしてしまう。その凄まじい光景に衝撃を受けながらも、純粋な子供たちの未来を守るため、ぼくはたった一人でこの不可解な事件の真相を突き止めることを決意する。しかし、それは想像を絶する恐怖の始まりに過ぎなかった。犯人を追ううちに、少年はやがて街の深淵に潜む、おぞましく巨大な闇へと引きずり込まれていく。本作は、残酷な事件の謎を追うミステリー要素と、背筋も凍るようなホラー、そして幻想的な世界観が複雑に絡み合うホラーファンタジーである。凄惨な殺害現場の描写や、生理的な忌避感を呼び起こすグロテスクな表現、そして精神を追い詰めるような恐怖演出が随所に散りばめられている。孤独な戦いに身を投じた少年が、呪われた街の真実を前に何を見るのか。残酷さと美しさが同居する物語の幕が今、静かに上がる。
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僕はそれらを観察し、他の部分の土を掘り起こすと、同様のものがでてきた。二つの綺麗な顔と三つの精工な人形のような手足。陶器のように真っ白な四つの胴。それらが生きている。そう、動いているんだ。

 目は空を見つめ。何か言いたそうな口が少しだけ開閉している。手は握ったり開いたりして、胴体は呼吸をしているかのようにゆっくりと起伏をしていた。肉の切断面には赤黒い塊が所々に付着している。

 やはり、微かな腐臭が漂っている。

「石井君。こっちにスイカがありそう? 石井君どこにいるの?」

 遠くの篠原君が右に振り返っていた。目隠しをしているから僕が何をしているのかは解らない。

「石井君。足でスイカをふんじゃったよ。ちゃんと声を出してよ」

 そんな友達の声が僕の耳に響いた。

 ここから3メートル先の藤堂君は目隠しを取ろうとしていた。

 僕はハッとして、素早くそれらを土に埋めて何事もなかったように、藤堂君と篠原君のところへと走って行って。もう遅いから帰ろうとだけ言った。

 西の方の空には真っ赤な夕焼けができていた。

 杉林の暗闇から男が一人こちらを見ていた。

 僕の家はこの裏の畑に面している。

 二階建てで、真っ白いペンキの家だったのだけれど、父さんが急に白い家だと金持ちだと思われるからと緑色のペンキを塗ったんだ。

 白い家のほうが清潔でいいんだ。けれど、汚れが目立ってくるからけっこうペンキを塗り重ねしないといけないし。と、父さんが言っていた。

 僕は藤堂君と篠原君と別れると。玄関を開けて真っ直ぐに二階へと駆け上がった。僕の胸にはざわざわとした捉えどころのない靄がいっぱい詰まっていた。吐き気や心臓の鼓動は何故か緩やかな波のようで、大して気にしなかった。

 階段を上がって二階には四つの部屋がある。右側には二つの部屋があって、一つは妹の部屋。一歳年下の亜由美の部屋だ。もう一つは八畳間の和室になっていて、おじいちゃんの部屋だ。

 左側にも二つ部屋があって僕の部屋と父さんと母さんの部屋がある。父さんと母さんの部屋には一度も入ったことがない。多分、そこも和室になっている。

 おじいちゃんは昔、将棋の県大会で6年連続優勝をしていた。

 僕は何か解らないことがあると、決まっておじいちゃんに話していた。

「よお。こんなに遅くにまで遊んでいたのかい?」

 皺だらけで、ずる賢さが見え隠れしている顔の大柄のおじいちゃんは、ずる賢い顔を引きつって猿のように笑っている。薄い紫色の胸元を開けたポロシャツ。上質な鼠色のズボンを履いていた。真夏を過ごす恰好をしている。相手の幸助おじさんと、部屋の隅っこで将棋を打っていた。

 和室にパチンと音がすると、幸助おじさんが唸りだす。

 幸助おじさんは、いつも仕事帰りのようでお侍のような恰好をしていた。

 そうだ幸助おじさんは隣町で剣術の師範をしているんだ。

 僕はいつもの日常に、不思議と心のざわざわとした靄がなくなりだした。緩やかな吐き気や心臓の鼓動はぱたりとなくなっていた。

「……う……う、う」

 幸助おじさんはまだ唸っている顔をして将棋盤に集中していた。

 そんな唸り声を聞いていると、まるで石でできたような溝が深い顔の幸助おじさんが僕に首を向けた。

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