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炎の病室、夫の冷酷な瞳 の小説カバー

炎の病室、夫の冷酷な瞳

炎と煙が渦巻く病室。妊娠中の「私」は、唯一の希望である夫の助けを必死に待っていた。しかし、ようやく姿を見せた夫は、助けを求める私を無情にも無視し、義理の妹である琴璃だけを抱きかかえて救出する。「お腹の子を見殺しにするの?」という私の悲痛な叫びに対し、彼は「本当に僕の子かどうかも分からない」と冷酷な言葉を投げつけた。その言葉を最期に、私は愛する我が子と共に業火に飲み込まれ、命を落としてしまう。幽霊となった私は、自分の死を信じようとしない夫の姿を傍観することになった。彼は私の死さえも自分を惹きつけるための芝居だと決めつけ、さらには私の実の弟との不貞まで疑うという暴挙に出る。しかし、変わり果てた私の遺体と対面した瞬間、夫はついに残酷な真実を知り、絶望のどん底へと突き落とされる。隠されていた嘘がすべて暴かれ、彼は罪を償うために妹と共に自らの命を絶った。死してなお私に許しを請い続ける夫。そんな彼に対し、私は永遠の決別を告げるのだった。
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2

私の魂は, 慶佑と琴璃に引き寄せられるように, 病院の廊下を浮遊していた.

慶佑は琴璃を抱え, 最上階の特別病室へと向かう.

琴璃はベッドに横たわり, 酸素マスクをつけていた.

その顔は蒼白で, 見るからに弱々しい.

私は, あの病室に置き去りにされた時のことを思い出した.

私のお腹の中にも, 命があったのに.

慶佑は, この子を助けてはくれなかった.

私にとって, かけがえのない命だったのに.

私は, 怒りに震えた.

琴璃の弱々しい姿を見るたびに, 私の怒りは燃え上がる.

怨霊となって, 二人を呪い殺してやりたい.

そんな黒い感情が, 私の魂を蝕んでいく.

「慶佑, ごめんなさい... 私, また迷惑かけちゃって」

琴璃が, 弱々しい声で慶佑に詫びた.

その声はか細く, 罪悪感に苛まれているかのようだった.

慶佑は琴璃の髪を優しく撫でた.

「大丈夫だよ, 琴璃. 君は悪くない」

彼の声は, まるで壊れ物を扱うかのように丁寧だった.

その優しさが, 私の心を深く切り裂いた.

「朱莉があんなことをするからだ」

慶佑の言葉は, 私の魂を打ち砕いた.

「彼女は, 君を妬んでいたんだ. 君が僕に愛されているから」

彼は, 私を, 私の死を, 琴璃への嫉妬のせいにするつもりなのだろうか.

彼は, 私の死を, 私への罰だと思っている.

私への罰?

私は, ただ彼を愛しただけなのに.

彼に愛されることを望んだだけなのに.

私は, 慶佑と琴璃の出会いを思い出した.

幼い頃, 慶佑はいつも私をからかっていた.

でも, その眼差しは優しく, 私は彼に片思いをしていた.

慶佑の父親が病院長になり, 琴璃が松橋家に引き取られたのは, 慶佑が高校生の頃だった.

琴璃は慶佑の父の愛人の子で, 心臓を患っていた.

それ以来, 慶佑は琴璃に過剰なまでに尽くすようになった.

琴璃の心臓が発作を起こすたび, 彼は医師を目指すようになった.

私は, そんな彼を遠くから見つめていた.

慶佑に告白したのは, 一度や二度ではない.

そのたびに彼は, 私を振り向くことなく, ただ「友達としてしか見られない」と告げた.

琴璃への彼の感情は, 単なる妹に対するものとは違う気がしていた.

「琴璃ちゃんのこと, 本当は好きなんでしょ? 」

私は, 一度だけ彼に尋ねたことがあった.

彼は笑って, 私の頬をつねった.

「まさか. 琴璃は妹だよ」

その言葉を, 私は信じていた.

琴璃が海外留学する前夜, 慶佑は泥酔して私の部屋に来た.

そして, 私にキスをした.

そのキスは, 私にとって初めての, 甘く切ないキスだった.

私は, 彼が私を愛しているのだと信じた.

「責任を取るよ」

翌朝, 彼は私にそう告げた.

その言葉は, 私の心を深く突き刺した.

彼に愛されているのではなく, ただ責任を取っているだけなのだと.

私たちの結婚式は, 簡素なものだった.

指輪の交換も, 誓いのキスも, まるで義務のように淡々と行われた.

私は, いつか慶佑が私を本当に愛してくれる日が来ると信じていた.

結婚すれば, 夫婦になれば, きっと.

しかし, 現実は冷酷だった.

彼は私に触れることはなく, 私たちは別々の部屋で眠った.

慶佑は, 私を妻として見ていなかった.

それが私の結婚生活だった.

二年後, 留学を終えた琴璃が帰国した.

慶佑は, 琴璃の帰国を心待ちにしていた.

琴璃は帰国後すぐに妊娠した.

慶佑は琴璃の妊娠を知った途端, その顔は喜びで輝いていた.

琴璃の体に触れる彼の指は, まるで琴璃を宝物のように扱っていた.

彼は琴璃の妊娠を, 自分のことのように喜んでいた.

私の妊娠が発覚したのは, その数ヶ月後のことだった.

彼は, 私の妊娠を喜んではくれなかった.

「慶佑! 琴璃ちゃんが妊娠したことを, なんでそんなに喜んでるのよ! 」

私はつい, 彼に声を荒げてしまった.

「あなたと琴璃ちゃんは, 兄妹じゃない! まさか... 」

私の言葉に, 慶佑は激高した.

彼は私の腕を掴み, 強く押し倒した.

私が床に倒れ込んだ時, 琴璃が部屋に入ってきた.

琴璃は, 私が床に倒れているのを見て, 驚いた表情を浮かべた.

「慶佑さん, 朱莉さん, どうしたの? 」

琴璃の声は, 震えていた.

私は, 慶佑に手を引かれてその場を立ち去ろうとしたが, 琴璃に止められた.

「朱莉さん, どこに行くの? 慶佑さんと喧嘩したの? 」

琴璃は, 私の腕を掴んで離さなかった.

「ごめんなさい, 私がいなければ... 」

琴璃はそう言って, 泣き崩れた.

私は, 琴璃の言葉に, 何も言えなかった.

その夜, 慶佑は私に冷たく当たった.

彼は, 私を妻として見ようとしなかった.

琴璃は, あの後も家に居続けた.

「琴璃ちゃん, ごめんなさい... 」

私は, 琴璃に謝った.

琴璃は, 私の言葉に, 笑みを浮かべた.

しかし, その目には, 憎悪が宿っていた.

その数日後, 私は階段から転げ落ち, 流産した.

琴璃が, 私の後ろを歩いていた.

彼女の足が, 私の背を, 強く, 押しやったように感じた.

私の体は, 重力に逆らえず, 階段を転がり落ちていった.

私の意識は, そこで途絶えた.

そして, あの火災で, 私の命は完全に終わった.

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