
傷ついたルナの秘めたる復讐の誓い
章 3
月島 玲奈 POV:
翌朝、私は誰よりも早く組織の医療センターにいた。信頼できる後輩の治癒師に、血液検査を頼んだ。患者のものだと嘘をついて。
一時間後、彼女は目を丸くして戻ってきた。
「筆頭治癒師、ホルモン値は決定的です。患者は妊娠六週目です」
妊娠。その言葉が、静かな診察室に響き渡った。子供。別の家族を持つ男の子供。彼が、いらないと私に告げたばかりの子供。
冷たい絶望が私にのしかかり、息もできないほど重かった。この子は私の一部、私の魂の一部。しかし、それは私の信頼を粉々にした男との繋がりでもあった。
私は呆然とクリニックを出て、どこへ行くともなく長老会の議事堂に向かって歩いた。角を曲がった時、声が聞こえた。宗佑の、低く、なだめるような声。
「沙耶、落ち着け」
私は大きな石柱の陰に身を隠した。人目につかない窪みに立つ二人が見えた。沙耶は泣きじゃくり、宗佑の胸に顔をうずめていた。
「いつなの、宗佑さん?」
彼女は嗚咽した。
「いつ私をあなたのルナにしてくれるの? あの女はただの治癒師じゃない! 私はあなたに息子を、跡継ぎを産んだのよ!」
宗佑は彼女の髪を撫でた。彼の声は固かったが、疲れたような愛情の響きがあった。
「言っただろう、玲奈を拒絶するつもりはない。絆は神聖な義務だ。彼女は俺の責任だ」
責任。彼の愛ではない。彼の魂の伴侶ではない。彼の義務。
彼が彼女を抱きしめていると、沙耶の目が彼の肩越しに上がり、私の目と合った。勝ち誇った、悪意に満ちた笑みが彼女の顔に広がった。彼女は私がそこにいることを知っていたのだ。これもまた、私のために仕組まれた芝居だった。
私の中にあった最後の希望の光が消えた。私は飾り物。彼の本当の人生のための、都合のいい、体裁の良い隠れ蓑。
私は背を向け、静かな足取りで歩き去った。自分のオフィスに戻り、二つの電話をかけた。一つ目は、儀式の日程を決めるため。母親から胎児への月のエネルギーの流れを断ち切り、事実上妊娠を終わらせる、恐ろしく、痛みを伴う儀式。
二つ目の電話は、親友の亜紀に。
「亜紀」
私は、感情のない声で言った。
「書類を作成してほしいの。正式な『番関係の解消合意書』を」
それは、拒絶に向けた最初の法的な一歩だった。
彼女が何かを尋ねる前に、宗佑からの念話が私の思考を遮った。それは要求ではなかった。彼のアルファとしての権威の、否定できない力が込められた命令だった。
『今夜の組織の年次祝賀会には必ず出席しろ。未来のルナとして、俺の隣に立つんだ』
アルファの命令が私の骨の髄まで響き渡った。組織のメンバーなら誰も簡単には逆らえない力。彼はそれを、自分の番に使い、私を茶番劇に強制的に参加させようとしていた。
『ええ、参りますわ』
私は、冷たく、脆い精神的な声で返信した。
彼は最後の夜、完璧なルナを手に入れるだろう。彼の頭上に、どんな嵐が吹き荒れようとしているのか、彼は知る由もなかった。
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