フォローする
共有
彼の裏切り、そして彼女の揺るぎない愛の物語 の小説カバー

彼の裏切り、そして彼女の揺るぎない愛の物語

22歳の誕生日に手にしたのは、全財産を投じて掴み取ったケンブリッジ大学特別研究員という輝かしい未来だった。しかし、実の兄たちはその希望を無残に打ち砕く。彼らは私の資金をすべて奪い、義妹・美咲の「緊急」だという美容整形の費用に充ててしまったのだ。正当な権利を主張する私を、兄の大和は冷酷だと罵り、家から追い出す。血の繋がった妹の夢よりも、彼らは義妹の偽りの涙を優先したのだ。兄たちが美咲を連れて豪華なハワイ旅行を楽しむ中、一人残された私は、自分の将来が彼女の整形と娯楽に消えた現実を突きつけられる。絶望の淵にいた私に届いたのは、外部との接触を一切断つ極秘の長期医学研究プロジェクトへの招待だった。それは世間から隔離される過酷な道だが、今の私にとっては唯一の救いとなる。私はカバン一つで家を出る決意を固める。テーブルの上には、美咲の嘘を暴く決定的な証拠を残して。家族との絆を自ら断ち切り、私は二度と戻ることのない新たな人生へと踏み出した。
共有

1

22歳の誕生日、私は自分の未来をその手に握りしめていた。全財産をはたいて手に入れた、ケンブリッジ大学への名誉ある特別研究員としての道。

だが、兄たちはその未来を、義理の妹である美咲に与えるべきだと決めた。

彼らは私のお金を一円残らず奪い、彼女の「緊急」美容整形手術の費用に充てたのだ。

私が抗議すると、彼らは私を自己中心的で冷酷だと罵った。

「思いやりが持てないなら」と、兄の大和は嘲笑った。「出ていけ」

彼らは、実の妹の夢よりも、嘘つきが流すワニの涙を選んだ。

数日後、彼らがずっと私に約束してくれていた豪華なハワイ旅行に出かけている間、私は写真を見た。

二人の兄に溺愛され、その間で輝くように微笑む、傷ひとつない美咲の姿。

私の未来は、彼女の鼻の整形手術とビーチ旅行に引き換えられたのだ。

その時、電話が鳴った。

極秘の、15年間にわたる医学研究プロジェクトからの誘いだった。

外部との接触は一切禁止。

ある者にとっては終身刑のようなものだろうが、私にとっては、命綱だった。

私はカバン一つに荷物を詰め、美咲の嘘の証拠をテーブルの上に置き、兄たちがそれを見つけられるようにした。

そして、永遠にあの家を去った。

第1章

22歳の誕生日を迎えた夜、佐藤亜希子は自室の静寂の中、ノートパソコンの画面に光るケンブリッジ大学からの合格通知を眺めていた。

それは単なる手紙ではなかった。

パーティーを断り、教科書に埋もれて過ごした、長年の絶え間ない努力の集大成だった。

それは名誉ある研究フェローシップであり、彼女が一つ一つ、血の滲むような思いで築き上げてきた未来へと続く道だった。

奨学金やアルバイトで必死にかき集めた全財産が、この夢のために用意されていた。

階下から笑い声が聞こえてくる。明るく、鈴を転がすような、彼女のものではない声。

それは、小野美咲のものだった。

美咲は、亡き父のビジネスパートナーの孤児で、4年前から彼らと一緒に暮らしていた。

両親を奪った自動車事故以来ずっとだ。

二人の兄、潤と大和は、父のパートナーが父と共に亡くなったことへの罪悪感から、義務感で美咲を引き取った。

最初、亜希子は彼女を歓迎した。喪失の痛みは、彼女にも理解できたから。

しかし、ゆっくりと、気づかぬうちに、美咲は家族という織物の中に自分を巧みに織り込み、同時に亜希子の居場所を解きほぐしていった。

突然訪れた重苦しい沈黙に引かれるように、亜希子は階段を下りた。

長兄の潤が、暖炉のそばに立っていた。その顔は厳格な真剣さで覆われている。

彼は一族が経営する建設会社のCEOであり、感情ではなく、具体的な事実と数字を扱う男だった。

次兄の大和は壁に寄りかかり、腕を組んでいた。その表情には、憐れみと苛立ちが激しく入り混じっている。

彼はいつも感情的で、心がおだてに乗りやすかった。

部屋の中央、真っ白なソファの上には、美咲が座っていた。

顔を両手で覆い、その肩はすすり泣きで震えている。

「どうしたの?」亜希子はそっと声をかけた。

潤の視線が彼女に向けられる。冷たく、突き放すような視線だった。

「美咲が緊急手術を必要としている」

医学生である亜希子は、専門家としての懸念を覚えた。

「何があったの?どんな手術?」

「その…美容整形だ」大和は目を合わせられずに呟いた。「彼女が今まで話してくれなかった古い事故の傷跡があって。それが彼女に深刻な精神的苦痛を与えているらしい」

美咲が、胸が張り裂けるような嗚咽を漏らした。

「ただ、普通になりたいだけなの。鏡を見るたびに、それが見える。失ったものすべてを…思い出してしまうの」

亜希子は眉をひそめた。美咲の顔に、そんな目立つ傷跡など見たことがなかった。

「最高の医者が必要だ」潤は、議論の余地のない声で断言した。「銀座の高名なドクター・アリステアだ。手術は今夜だ」

亜希子の血の気が引いた。ドクター・アリステアは有名で、その料金は天文学的な額のはずだ。

「それって、ものすごくお金がかかるんじゃ…」彼女が言うと、不安の塊が胃の中で締め付けられるようだった。

潤が、ようやく彼女をまっすぐに見た。その目に温かみはなく、あるのは疲れたような決意だけだった。

「ああ、そうだ。だから、お前のケンブリッジの資金を使わせてもらう」

世界が、ぐらりと揺れた。

「え?」その言葉はささやき声となり、だだっ広い部屋に吸い込まれて消えた。

「こんなに急に用意できる現金はそれしかない」潤は、まるで日常的な業務報告のように説明した。「家族のためだ。美咲は家族だ」

「でも…それは私の未来のすべてなのに」亜希子は、潤の動じない顔と、大和の葛藤する顔を見比べながら、言葉を詰まらせた。「そのために何年も頑張ってきたのよ。知ってるでしょ」

大和が壁から身を起こした。彼の顔は怒りで紅潮していたが、その怒りは潤に向けられたものではなかった。彼女に向けられていた。

「少しは思いやりを持てないのか、亜希子?」彼は吐き捨てるように言った。「彼女を見ろ!苦しんでいるんだぞ。父さんだって、俺たちに彼女の面倒を見ることを望んだはずだ。父さんの名誉を守るっていうのは、こういうことだ」

「私の人生を破壊して、父さんの名誉を守るって言うの?」亜希子の声はひび割れ、その不正義が喉を焼くようだった。

「大げさに言うな」大和は嘲笑った。「ただの金だろ。お前は賢いんだから、何か別の方法を見つけられる。でも美咲にはできない。彼女には何もないんだ。誰もいないんだ」

その瞬間、美咲が顔を上げた。その目は赤く腫れ、懇願するように揺れていた。

「ああ、亜希子さん、ごめんなさい。こんなこと望んでなかったの。お願い、潤さん、やめて。私が亜希子さんに嫌われる原因になんてなりたくない」

彼女の言葉は、亜希子を残酷で無慈悲な悪役に仕立て上げる、見事なまでの心理操作だった。

潤の表情がさらに硬くなる。彼は机に向かい、小切手帳を取り出して何かを書き込んだ。ペンの走るカリカリという音は、亜希子の夢が死んでいく音だった。

彼はその小切手を美咲に手渡した。

「行け。ここは俺たちが何とかする」

美咲は亜希子に、勝利の光が一瞬きらめく涙の最後の一瞥を投げかけ、潤の秘書に付き添われて姿を消した。

彼女が残した沈黙は、息が詰まるようだった。

「信じられない…」亜希子は、悲しみと怒りが入り混じった声で言った。

「もっと同情できないなら、お前はここにいるべきじゃないかもしれないな」大和は低く、脅すような声で言った。「ここは俺たちの家だ。この家では家族の面倒を見るんだ。それが理解できないなら、出ていけ」

その言葉は、物理的な打撃よりも強く彼女を打ちのめした。

彼女は踵を返し、自分の部屋へと逃げ帰った。耳には、自分自身の荒い息遣いだけが響いていた。

数日後、彼らはいなくなった。

家からだけでなく、国から。

彼らは美咲を「療養」させるため、ハワイへの豪華な旅行に連れて行ったのだ。

それは、亜希子が一生夢見てきた旅行だった。兄たちが、彼女が卒業したら連れて行ってやると、いつも約束してくれていた旅行。

彼女はSNSで写真を見た。

太陽が降り注ぐビーチで、二人のハンサムで溺愛する「兄」たちの間に立ち、輝くように微笑む美咲。

手術の痕跡も、包帯も、傷跡もなかった。

ただ、純粋で、混じりけのない幸福だけがあった。

亜希子の未来と引き換えに買われた、幸福が。

その日、電話が鳴った。

国立先端医療研究センターの所長、桐島馨博士からだった。彼女が長年、その研究を崇拝してきた人物だ。

彼は彼女の論文を読み、その可能性を見抜いていた。

彼は彼女に、あるポジションを提示した。

極秘裏に進められ、完全に隔離された医学研究プロジェクト。

目標は、彼らの一族の遠縁の命をも奪った、稀で悪性度の高い癌を治癒すること。

期間は、15年。

外部との接触は一切なし。電話も、インターネットも、手紙も。

ある者にとっては、キャリアの自殺行為であり、終身刑だ。

兄たちも、大学時代に科学的な素養があったため、数年前にこのプロジェクトの候補者リストに載っていたが、家業を継ぐために辞退していた。

人生が燃え尽きるのを目の当たりにしたばかりの亜希子にとって、それは命綱だった。

「お受けします」彼女の声は、はっきりと、そして揺るぎなかった。

彼女はカバン一つに荷物を詰め、ベッドの上にはケンブリッジからの手紙が表示されたままのノートパソコンを残し、もはや家とは呼べない家を後にした。

彼女は、振り返らなかった。

一週間後、潤と大和は日焼けしてリラックスした様子で帰ってきた。

彼らが足を踏み入れた家は…空っぽに感じられた。

彼らは彼女の部屋を見つけた。ノートパソコン以外の私物はすべてなくなっていた。

最初は混乱し、次に苛立った。彼女がかんしゃくを起こしているのだと思った。

その時、郵便物が届いた。

亜希子の丁寧で正確な手書きで、彼ら宛に書かれた、分厚い一つの封筒。

中に入っていたのは、手紙ではなかった。

証拠だった。

美咲が友人と電話で、手術を受けるために「精神的苦痛」を偽ったと笑いながら話している音声録音。

彼女の父親が残した秘密の信託財産を示す銀行の明細書。彼女が決して主張していたような無一文の孤児ではないことを証明していた。

彼女の過去のトラウマについて都合よく「証言」したボーイフレンドとの写真。

最後の証拠は、診断書のコピーだった。

美咲の「緊急」手術は、鼻の整形とヒアルロン酸注入だった。

潤の手は震え、書類を落とした。彼の顔から血の気が引いた。

大和は口をあんぐりと開けて見つめ、顔がみるみる赤くなり、窒息しそうに見えた。

彼は電話に飛びつき、震える指で亜希子の番号をダイヤルした。

留守番電話に直行した。メッセージボックスは一杯だった。

彼はもう一度、そしてもう一度試した。結果は同じだった。

怒りと絶望の発作に駆られ、彼は携帯電話を壁に叩きつけた。電話は粉々に砕け散った。

潤は凍りついたように立ち尽くし、彼らの裏切りの取り返しのつかない重みが、全身にのしかかってきた。

彼らは彼女のお金を渡しただけではなかった。

彼らは彼女を追い出したのだ。

彼らは、聡明で献身的な妹を、一つの嘘と引き換えたのだ。

その夜、彼らの心の中の嵐を映すかのように外で嵐が吹き荒れる中、彼らは国立先端医療研究センターから、暗号化された公式の電子メールを受け取った。

それは標準的な通知だった。

佐藤亜希子がプロジェクト・キマイラに正式に配属されたことを知らせるものだった。

彼女の以前の連絡先や記録はすべて、国家安全保障プロトコルの下で封印された。

事実上、彼女は消えたのだ。

15年間。

その認識は、突然の衝撃ではなく、ゆっくりと忍び寄る冷気となって、彼らの骨の髄まで染み渡った。

その冷気は、次の15年間、消えることはなかった。

彼らに残されたのは、幽霊と、空っぽの部屋と、そして、生涯続く、打ち砕かれるような後悔だけだった。

おすすめの作品

裏切りの果て、私は医師となる の小説カバー
9.3
婚約者の樹世は、元カノである雅美の「余命わずか」という卑劣な嘘を鵜呑みにし、私を無残に裏切った。彼は私の大切な祖母の形見である秘伝のレシピノートを雅美に譲り渡し、私との婚約を一方的に破棄して彼女と結婚することを誓ったのだ。樹世の蛮行はそれだけに留まらず、私が雅美を突き飛ばしたという無実の罪を着せ、さらには彼女が私の亡き父の墓を破壊する光景を黙認し続けた。「君を愛している、信じてくれ」と彼は身勝手な叫びを上げるが、裏切りの連続によって私の愛情は冷酷な灰へと変わり、その言葉が心に響くことは二度とない。すべてを捧げた男に踏みにじられた私は、かつて志した医学の道へと戻ることを決意する。本作は、愛する男にすべてを奪われた女性が、過酷な戦地の医師として再起を遂げ、自分を陥れた者たちに容赦のない報いを与えるまでの軌跡を描いた復讐と再生の物語である。凄惨な裏切りの果てに、彼女が掴み取る未来とは。
「役立たず」と売られた私が、最強の座を奪うまで の小説カバー
7.9
古川詩鈴は、かつて斉藤景吾の命を救うために視力を失った。しかし、献身的な愛の結末はあまりに無惨なものだった。結婚式を翌日に控えた夜、斉藤は彼女の視覚障害を逆手に取り、借金の返済代わりとして彼女を松岡家へ売り飛ばしたのだ。嫁ぎ先は、北瑛市で「無能な放蕩息子」と蔑まれる御曹司のもと。世間はこの悲劇的な縁談を嘲笑し、盲目の少女の末路を冷ややかに見守っていた。だが、彼らはまだ知らない。「憐れな犠牲者」に見えた詩鈴の真の姿を。彼女は千年に一度の才能を持つ調香師であり、世界を股にかける天才ハッカー、伝説的なレーサー、さらには国際的な秘密組織のトップという、驚愕の顔を隠し持っていたのだ。隠された正体が次々と暴かれ、街中が驚天動地の騒ぎに包まれる中、彼女を捨てた斉藤は絶望の淵に立たされる。かつての婚約者が手にした栄光と権力を前に、彼はメディアの前で醜く泣き崩れた。自らの愚かな選択を悔やみ、彼女を松岡に譲ったことを激しく後悔するが、もはやその声が彼女に届くことはなかった。
離婚届と黒いグローブ の小説カバー
9.3
結婚七周年を迎えた記念すべき日、子作りに対する価値観の相違から陸原湊と激しい口論になり、二人の仲に亀裂が入った。その直後、彼の幼なじみがSNSに投稿した写真には、サーキットで親密に微笑み合う湊と彼女の姿があった。周囲も二人を公認のカップルのように扱う。この七年間、危険だからという理由で一度もレース場に招かれなかった自分とは対照的に、彼の傍らには常に彼女がいたのだ。かつては優しかった湊の言葉も、今では義務的な拒絶にしか聞こえない。彼が本当に大切に想っていたのは私ではなく彼女だったのだと悟り、私は結婚指輪を外して湊に離婚を突きつけた。悲しみに暮れる暇はない。私は長年封印していたガラスケースの中の黒いグローブを再び手に取る。時速三百キロの世界を危険だと決めつけ、私を遠ざけた彼への答えは、ハンドルを握るこの手で証明する。愛を捨て去った元妻が、かつての情熱を取り戻して再起する物語。
追放されたら、私が億万長者の万能チートだった件! の小説カバー
7.9
20年間、名家のお嬢様として育てられた清辞だったが、DNA鑑定で血縁がないと判明した途端、婚約破棄と追放の憂き目に遭う。SNSで嘲笑され実家を追い出された彼女を待っていたのは、想像を絶する「真の実家」だった。ハスキーボイスが魅力的な実父に加え、金融界の天才やトップ俳優、医学界のエースに敏腕社長という、妹を溺愛する4人の兄たちが彼女を迎え入れる。しかし、清辞自身もただ守られるだけの存在ではない。伝説のハッカー、フォーミュラカー開発者、ダンス界最年少審査員といった驚愕の裏の顔を次々と露わにし、世界を震撼させていく。かつて彼女を蔑んだ元家族が「名前を出すな」と吠えれば、電話一本でその供給網を壊滅させ、浮気した元婚約者が新しい恋人を自慢すれば、京の街を支配する絶対的権力者が彼女の夫として立ちはだかる。偽物という汚名を返上し、圧倒的なスペックと権力で敵を徹底的にねじ伏せる、最強お嬢様の逆転劇が幕を開ける。文句がある奴は全員、その実力で黙らせるのみ。
十万の軍勢でプロポーズされ、逃げ場のない溺愛檻 の小説カバー
9.5
神崎雲英は交通事故に遭った夫を三年かけて完治させたが、彼は愛人を呼び寄せ彼女を冷酷に捨てた。愛想を尽かした雲英は離婚を決意し、名門から追放された哀れな女と嘲笑される。しかし、彼女の正体は伝説の神医、天才レーサー、そして一流デザイナーという輝かしい顔を持つ超エリートだった。元夫が彼女の再婚は不可能だと罵る中、予想外の男が現れる。それは元夫の叔父であり、軍を統べる統帥だった。彼は十万の軍勢を引き連れて凱旋し、彼女に跪いてプロポーズする。「私は決して裏切らない忠犬だ。私を選んでくれないか?」と。逃げ場のないほどの執着と溺愛が、ここから始まる。
異世界移転した僕たちだけど僕のスキルだけファンタジー感が足りない気がする の小説カバー
8.3
平凡な中学生だった宇美矢晴兎は、ある日突然、クラスメイトたちと共に未知の異世界へと召喚される事態に見舞われる。周囲の仲間たちが勇者や聖女、賢者といった、まさにファンタジーの王道とも言える強力な希少職や伝説級の能力を次々と発現させていく中、晴兎に授けられた力はそれらとは一線を画す異質なものだった。ファンタジーの世界観にはおよそ似つかわしくない、あまりにも現実的で場違いなその能力に、彼は困惑を隠せない。剣と魔法が支配する過酷な新天地において、華やかなスキルを持つ友人たちと対照的に、地味で特殊な力を手にした晴兎の運命はどう転んでいくのか。異世界召喚という非日常の渦中で、一人だけ毛色の違う能力を与えられた少年の葛藤と、その独自の力を駆使して切り拓く冒険の幕が上がる。定番の英雄譚とは一味違う、異色の異世界サバイバルが今ここに始まる。果たして彼は、ファンタジー感の欠如したそのスキルを武器に、この世界の荒波を生き抜くことができるのだろうか。