
君を奪う計画は、3年前から始まっていた
章 2
家に戻った彼女が最初にしたのは、陽菜が作品を盗用した証拠をすべて整理することだった。
撮影のために移動した時に使った航空券。数え切れないネガフィルム。
それらは紛れもない証拠だった。
瑠衣はそれらを一つにまとめ、迷うことなくネットへ投稿した。
一瞬でネット中が騒然となった。そして画面のコメント欄には、瑠衣の胸を抉るような言葉が並んだ。
だが、投稿から10分も経たないうちに、すべてが削除され、アカウントごと凍結された。
404のエラー画面を見つめながら、瑠衣は拳をぎゅっと握りしめた。
蒼空は、ついに、あの女のためにここまでやるのか。
凍結されたIDを凝視しながら、思考は真っ白になった。
だが、すぐに理解した。今日は、陽菜が写真界の最高峰の賞を受け取る祝賀の日。蒼空が、自分に邪魔をさせるわけがない。
その時、外から突然エンジン音が響き、玄関のドアが乱暴に開いた。
振り返ると、 蒼空が険しい表情でまっすぐに歩み寄り、瑠衣の手首を掴んだ。
嵐の前の海のような彼の威圧感が、瞬時に室内を支配した。
「俺の言ったことを忘れたのか」
もしアシスタントがすぐ知らせてくれなかったら、今頃ネットは炎上して、陽菜の始まったばかりのキャリアは大きな傷を負っていたはずだ。
それでも瑠衣は一歩も退かなかった。「言ったでしょ。私の命を削って作り上げた作品を、あなたが他人に渡すなんて、絶対に許さないって!」
それが、彼女にとって初めての反撃だった。
蒼空は思わず目を見張った。
(いつもは俺を気遣う優しい女なのに。どうしてこんなふうに変わった?)
瑠衣は袖をぐいっとまくり上げ、並んだ傷跡と消えきらない注射痕を見せつけた。
「見える?この写真のために、私がどれほど犠牲を払ったか。
蒼空、私はあなたに対等な愛なんて求めてない。でも、最低限の尊重くらいはしてくれてもいいでしょ!」
長い間押し込めてきた感情、恨み、悔しさ――そのすべてが堰を切ったようにあふれ出した。
目元は赤く染まっていたが、涙はこぼれない。ただ燃えるような怒りだけが宿っていた。
蒼空の視線はさらに鋭くなり、静かに彼女を見下ろした。その瞳には、ほのかな嘲りが浮かんでいた。 「それは、お前が自分で招いた結果だろ。嘘から始まった結婚に、幸せな結末なんてあると思ったか?」
その瞬間、瑠衣の力は一気に抜け落ちた。
彼女は目を固く閉じる。「好きに言いなさい。でも、私の目的は一つ。離婚よ!」
蒼空は見下ろしたまま、皮肉を滲ませて言った。
「本気なんだな?」
瑠衣の手はすでに固く握りしめられていた。爪が手のひらに深く食い込んでいた。
実家が破産した時、救ってくれたのは蒼空だった。母の高額な医療費を肩代わりしてくれたのも彼だ。
その感謝が、彼への愛をより強くしていた。
だから数年もの間、彼のどんな要求にも応えようと努力してきた。
――ただ、今回だけは限界だった。自分の作品を譲れと言われたのだ。
蒼空は表情一つ変えずに電話をかけた。『瑠衣の母親の治療措置を、すべて停止しろ』
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