フォローする
共有
身籠ったのは、元カレの叔父でした。 の小説カバー

身籠ったのは、元カレの叔父でした。

新婚初夜、信じていた夫の裏切りを知った彼女は、失意のあまり泥酔し、見知らぬ男の寝室へと迷い込んでしまう。そこで交わされた狂乱の一夜が、彼女の運命を大きく変えた。腹に宿った新しい命。その父親は、京城の頂点に君臨する絶対権力者であり、あろうことか裏切った元夫の「叔父」だったのだ。恐ろしさのあまり逃亡を図る彼女だったが、冷酷な支配者が放つ執拗な包囲網からは逃げられない。一方、身勝手な未練を抱く元夫は、再び彼女に復縁を迫るという愚行に出る。そんな元夫に対し、彼女は背後に立つ最強の庇護者を見据え、冷徹に言い放った。「復縁したいなら、あなたの叔父様に許可を取ってみて」と。衆人環視のなか、女嫌いとして知られる冷徹な男が彼女の腰を強く抱き寄せ、隠しきれない独占欲を露わにする。「これからは彼女を叔母上と呼ぶがいい」――。その一言に、元夫は絶望し言葉を失う。権力者の歪んだ愛と復讐が交錯する、衝撃のロマンスが幕を開ける。
共有

1

清水汐里は妊娠していた。

――だが、その子は、夫の子ではない。

診察室を出た彼女は、妊娠検査の紙を強く握りしめたまま、足元がふらついて思わず立ち止まった。あまりに突然の出来事に、頭が追いつかない。まさに晴天の霹靂だった。

つい最近、五年間付き合ってきた恋人と結婚式を挙げたばかりだ。しかし新婚初夜、彼女は知ってしまった。夫の裏切りを。彼のスマートフォンには、見知らぬ女との親密な写真が、これでもかというほど並んでいた。

胸が張り裂けそうになり、汐里は酒に溺れた。そして、ふらふらと歩いた先で、彼女は誤って別の部屋に足を踏み入れてしまった。

そこで出会ったのは、見ず知らずの男だった。その夜のことを、彼女ははっきりとは覚えていない。ただ、男の放つ圧倒的な存在感。やけに広い部屋。そして、息が詰まりそうになるほどの重圧だけが、今も身体に焼きついている。

翌朝、彼女は相手の顔をきちんと見る勇気もないまま、逃げるように部屋を後にした。

まさか、あの一夜の過ちが、こんな形で現実になるなんて――。

汐里はどうすればいいのか分からず、焦りと不安に心をかき乱されていた。

そのとき、新婚の夫からメッセージが届く。

「汐里、もう病院の外に着いた。待ってるよ」

画面を見つめたまま、汐里は何も返さず、静かにスマートフォンをポケットにしまった。そして、そのままエレベーターへと向かう。

ここ数日、食欲がなく、めまいも続いていた。耐えきれず受診しただけだったのに、まさか妊娠だなんて。

病院の正面玄関を出ると、汐里は一目で伏見彰人の黒いベンツを見つけた。

胸いっぱいに息を吸い込み、彼女は足早に車へと向かう。

彰人は車を降り、彼女のためにドアを開けた。仕立てのいい黒いスーツに身を包み、その姿は相変わらず端正で、どこか知的な雰囲気すら漂わせている。

「先生は、何て言ってた?」

「胃の調子がよくないって」

「君、普段から辛いもの好きだろ。これからは少し控えないと。胃を悪くしたら大変だ」

汐里は軽く、曖昧に相槌を打った。車に乗り込んだ瞬間、ふわりと鼻をかすめる香りがあった。ごく淡い、女物の香水の匂い。彰人は、車内に香水を置くのを嫌う人だった。つまり――この香りは、別の女が残していったものだ。

彰人は何も知らない顔で彼女の頭に手を伸ばし、優しく撫でる。「今日は家まで送るよ。ゆっくり休んだほうがいい。俺はそのあと会社に戻らないと」

「うん」

車は信号待ちで止まり、彰人は電話に出た。

その間、汐里は無意識に身体を動かし、座席に手を伸ばす。指先に触れたのは、柔らかな布地。――ピンク色のシルクのスカーフだった。

汐里はそれを手に取り、目を伏せた。見覚えがあった。はっきりと。

通話を終えた彰人が、こちらを向いて穏やかに言う。「汐里、家に送ったら、そのまま会議で――」

彼女はスカーフを持ち上げ、低い声で遮った。「……これ、誰の?」

一瞬、彰人の瞳が揺れた。ほんの一瞬だけ。だがすぐに、気まずそうに笑みを浮かべる。「今朝の取引先の人じゃないかな。車に忘れていったんだろ。明日、返しておくよ」

彰人が手を伸ばしてスカーフを取ろうとした、その瞬間――汐里はさっと身を引き、彼の手を避けた。「彰人……私たち、離婚しましょう」

車内の空気が、一気に張り詰める。「汐里、たかがスカーフ一本だろ?なんでそんなに大げさにするんだ。離婚なんて、そんな軽々しく言うものじゃない」

「……ふふ」汐里は乾いた笑いを漏らした。「いつまで、私を騙すつもりだったの?新婚初夜、あなたが外に出て行ったのも――あの女のところだったんでしょう?」

それまで平静を装っていた彰人の表情が、わずかに崩れた。焦りが、隠しきれずに滲み出る。「違う。あれは急な打ち合わせが入っただけだ。君が思ってるようなことじゃない」

汐里は、もうそれ以上聞く気にもならなかった。彼は裏切った。そして自分は、別の男の子を宿している。この結婚が、もう続けられないことなど、考えるまでもない。

「……長い付き合いだったんだから。せめて、きれいに終わりましょう」 そう言い残し、彼女はドアを押し開け、車を降りた。

後部座席に取り残された彰人は、呆然としたまましばらく動けずにいたが、やがて苛立ちを爆発させるように、ハンドルを強く叩いた。

汐里はタクシーを拾い、ひとりで家へ戻った。玄関を開けた瞬間、目に飛び込んでくるのは、まだ色褪せない祝祭の名残。部屋中に飾られた、赤や白の装飾。リビングの中央には、幸せそうに笑う二人のウェディングフォトが飾られている。――あまりにも、皮肉だった。

新婚初夜のあの晩、彼女のもとには、彰人が小林穂香と関係を持っている証拠の写真が、次々と届いた。目を背けたくなるほど、露骨で、不快なものばかりだった。

あんなことを、平然とできる人だったなんて。そう思うたびに、胸が締めつけられる。怒りと悲しみがない交ぜになり、込み上げてくる。五年間――彼に捧げた青春は、全部が笑い物に終わった。

汐里は、その場に崩れ落ちるように膝をついた。両手で胸元を強く掴み、息が詰まるのも構わず、必死に耐える。積もり積もった屈辱と痛みが、この瞬間、堰を切ったように溢れ出していった。

涙は、切れた数珠のように、止めどなく頬を伝って落ちた。

どれほど泣き続けたのか、自分でも分からない。気づいたときには、身体の奥まで力が抜けていた。

深夜になって、彰人が車で帰ってきた。

汐里は新婚の寝室のベッドに、静かに横たわっていた。背中に、広い胸板の温もりが触れたとき、彼女はゆっくりと目を閉じる。

彰人の身体は、外の夜気をまとってひんやりとしていた。布団越しに彼女を抱き寄せ、低い声で囁く。「汐里……もう、喧嘩はやめよう。今日のことは、俺が悪かった。謝る。もう二度と、あんなことはしない。……愛してる」

その言葉に、胸がざわついた。汐里は、彼の腕の中にいること自体が耐えがたく、わざと内側へと身をずらす。

彰人は小さく、くすりと笑った。衣擦れの音がして、彼はさらに距離を詰めてくる。

「今夜、ちゃんと夫婦になろう。もう、気分は落ち着いたんだろ?」

おすすめの作品

囚人番号309番の私を、世界的富豪が買い占めた夜。 の小説カバー
8.5
看護師の長谷杏奈は、夫・和夫が起こした交通事故の身代わりとして三年間服役する。獄中で人命を救い減刑された彼女は、家族との再会を夢見て予定より早く出所するが、そこで待っていたのは残酷な裏切りだった。和夫は杏奈の親友である聡子と不倫に耽り、育児放棄によって愛娘の莉々を死なせていたのだ。さらに、夫が身代わりをさせた事故の真相は口封じのための殺人であり、出所後の杏奈に保険金をかけ殺害する計画まで進んでいた。愛する娘を失い、献身を蹂躙された杏奈の心は深い絶望に染まる。しかし、かつて彼女が命を救った世界的富豪・有馬康太の手が差し伸べられたことで運命は一変する。康太の圧倒的な支援を得て新たな身分を手に入れた杏奈は、過去を捨てて上流社会へと華麗に転身。自分を陥れた者たちへの壮絶な復讐劇を開始する。それはやがて、正義と真実の愛を取り戻す戦いとなり、彼女は巨大なビジネス帝国を導く伝説の存在へと登り詰めていく。裏切りに塗れた過去を清算し、自らの手で新たな栄光を掴み取る波乱の物語。
クズ夫に復讐!離婚後、世界一の大富豪と結婚!? の小説カバー
8.4
極秘結婚から三年、曽根明里は待ちに待った結婚式を目前に控えていた。しかしその前夜、長年尽くしてきた夫から放たれたのは、別の女性と結婚するという非情な宣告だった。「彼女は命の恩人なんだ。今度は僕たちが彼女を支える番だろう?」という夫の身勝手な理屈に、明里の愛は完全に冷め切ってしまう。これ以上、日陰の身として耐え忍ぶ必要はない。形だけの偽装離婚のはずが、明里にとっては未練を断ち切る真の決別となった。自由を手にした彼女の前に現れたのは、冷酷非道と恐れられる世界一の大富豪。彼は明里を力強く抱き寄せ、彼女に固執する元夫を冷徹な眼差しで見下ろす。「勘違いするな。今、明里は俺の女だ」と。一方、離婚後に初めて彼女の価値に気づいた元夫は、狂おしいほどの後悔に苛まれていた。必死に復縁を乞う元夫だったが、明里の隣にはすでに、圧倒的な権力を持つ新たな伴侶がいた。裏切りから始まった第二の人生で、彼女は真の愛と至高の幸福を掴み取っていく。
初恋の身代わりを辞めたら、私にすがりつく狂犬に変貌。 の小説カバー
8.2
極秘結婚から5年。星野凛音は、夫の桐生蒼真が初恋の女性とホテルへ入る場面を目撃し、自身が単なる身代わりに過ぎなかったという残酷な真実を知る。絶望した彼女は蒼真を欺いて離婚届に署名させ、決別の言葉を突きつけた。愛に依存していた過去を捨て、自立した女性として歩み始めた凛音は、仕事で目覚ましい成功を収め、会社を上場間近まで成長させる。一方、彼女を失って初めて執着に似た愛に気づいた蒼真は、後悔に苛まれる狂犬へと変貌していた。ある祝賀パーティーの夜、別の男性と親しげにする凛音の姿に激しい嫉妬を覚えた彼は、更衣室で彼女を待ち伏せ、壁際に追い詰める。「俺は後悔している」と涙を流しながら、かつての冷徹な態度は影を潜め、強引かつ必死に再婚を請う蒼真。身代わりとしての役割を終え、一人の女性として輝き始めた凛音に対し、エリート社長による猛烈な求愛が幕を開ける。一度壊れた関係の行方と、立場が逆転した二人の愛の葛藤を描く現代ロマンス。
虐げられた天才令嬢は、闇の底で最強の伴侶に出会う の小説カバー
8.3
凄惨な事故が神崎結月の運命を暗転させた。最愛の恋人は記憶を失い、あろうことか彼女の従姉と恋に落ちる。さらに父の暗殺、母の急死によって家門は崩壊。全てを失った結月は、九条家の「忌み子」と蔑まれる男のもとへ厄介払いとして嫁がされた。盲目で歩行不能、残忍かつ狂暴と噂されるその男との初夜を、周囲は彼女が生き延びられるはずもないと冷笑した。しかし、結月には隠された真の姿があった。建築界のカリスマであり、先端IT企業の創設者、さらには天才的な創薬者という顔を持つ彼女は、夫と共にA市を震撼させる。夫の正体もまた、街の富を支配する無慈悲なカジノ王であった。かつて彼女を虐げた伯父一家は、二人の圧倒的な力の前に絶望し、膝をつくことになる。一方、記憶を取り戻し後悔に苛まれる元恋人は、財宝を手に許しを乞うが、九条家の覇王はそれを冷酷に一蹴した。数年後には愛娘を授かる未来を見据える夫婦にとって、裏切り者の執着など、もはや視界に入る価値すらなかったのである。
離婚を求めた天才外科医:もうあなたには戻らない の小説カバー
9.1
慶應病院で心臓外科医として働く私は、西園寺財閥の総帥を夫に持つ。しかし、病院の駐車場で目撃したのは、内科医の高橋とその子供を慈しむように抱きしめる夫の姿だった。彼は愛人と隠し子のために、彼女を隣室へ住まわせ、さらには職務上のミスまで権力で隠蔽する。実の両親から暴力を受け、顔から流れる血を拭いながら助けを求めた夜、夫は電話越しに彼女の子供と笑い合い、「自分で何とかしろ」と冷たく突き放した。愛する家族が別にいるのなら、なぜ私が提出した離婚届を破り捨て、私をこの理不尽な婚姻関係に縛り付けようとするのか。絶望の淵で私の心は完全に冷め、彼への未練は消え失せた。私は病院への異動を決め、弁護士を通じた委任状を彼に突きつける決意を固める。もう二度と、この男の支配に怯える日々には戻らない。自らの足で歩み出すため、私は長すぎた悪夢に終止符を打つ。
すでに別の男の妻なのでお構いなく の小説カバー
8.6
結城紗良は、相沢蓮司という男を盲目的に愛し続けてきた。蓮司の心には常に別の女性の影があり、一年の大半を海外にいる彼女に捧げ、挙句の果てにはその女性との間に子供まで授かっていた。それでも紗良は彼への想いを捨てきれず、卑屈なまでに愛を乞い、ついに結婚の約束を取り付ける。しかし、入籍当日。海外から戻った想い人のもとへ向かった蓮司は、役所に姿を現さなかった。この裏切りによって、紗良が七年間抱き続けた未練は完全に潰える。彼女は彼との連絡を断ち切り、思い出の街を去る決意をした。蓮司は「どうせすぐに泣きついて戻ってくる」と高を括っていたが、再会した紗良は、見知らぬ男性と共に婚姻届を手にしていた。形勢は逆転し、今度は傲慢だった御曹司の蓮司が、なりふり構わず彼女を追い回すようになる。「俺が愚かだった、やり直してくれ」と必死に縋り付く蓮司。だが、冷徹な視線を向ける紗良の口から出たのは、拒絶の言葉だった。「いい加減にして。私はもう、別の人の妻なの」