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出来損ないの娘が死んだ日 の小説カバー

出来損ないの娘が死んだ日

ゴミの山から発見された無惨な腐乱死体。現場に駆けつけた刑事の父と監察医の母は、その遺体を「汚らわしい」と蔑み、顔をしかめた。二人は、目の前で横たわる無残な骸が、自分たちが「出来損ない」と冷遇し続けた実の娘、栞であることに全く気づいていない。母は栞の指から、かつて自分が誕生日に贈った手作りの指輪を無造作に引き抜き、安物だと嘲笑う。解剖中も、二人の口から出るのは優秀な養女である妹への称賛ばかり。魂となった私は、両親にとって自分が死してなお「処理すべきゴミ」でしかない現実に絶望していた。しかし、胃の内容物から見つかった一枚のレシートが、平穏な日常を地獄へと変える。鑑識の結果、被害者が実娘であるという残酷な真実が突きつけられた瞬間、父の顔は土気色に変わり、母の悲鳴が解剖室に虚しく響き渡った。ゴミ溜めの中で再会し、実の親から汚物として吐き捨てられたあの瞬間こそが、私と彼らの最後の対面となったのだ。皮肉な運命が、親子の絆を無慈悲に暴き出していく。
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2

春樹兄さんが留学先から電話をかけてきた. 「栞, お父さんとお母さんは, 本当は君のことを一番愛しているんだよ. 萌は養女だから, 少しでも自分たちの愛情を疑われないように, 必死になっているだけなんだ. 」

兄さんはいつもそう言っていた. でも, 私にはそれが信じられなかった. 誘拐から戻ってきた私にとって, 家は安らぎの場所ではなかった. 私はまるで, 他人の家庭に不法侵入したかのような居心地の悪さを感じていた.

鑑識作業が終わり, 父が現場報告を済ませて戻ってきた. 父は母に尋ねた. 「どうだった? 遺体の状態は? 」

母は手袋を外し, 疲れたようにこめかみを揉んだ. 「おそらく二十代前半の女性. 死因は失血死. 全身を激しく殴打された痕跡がある. 生前に長時間にわたる暴行を受けていたようだ. 」

父は顔を歪めた. 「なんて残忍な手口だ. 社会に与える影響も大きいだろう. 早急に犯人を捕らえなければ. 」

父は懐からタバコを取り出し, 一本咥えた. マッチを擦る音が, 重苦しい空気に響いた. その一瞬の沈黙の中で, 私は思った. 私が死んだことで, また父と母に迷惑をかけてしまったと.

鑑識のチーフが父に声をかけた. 「梅田さん, 犯人はまだ捕まっていない. ご家族にも注意喚起を. 特にご自宅には確か, 娘さんが二人いらっしゃいましたよね? 夜間の外出は控えるように伝えてください. 」

母はチーフの言葉に, わずかに苛立ちを滲ませた. 「萌は心配ないわ. あの子は賢いから. それに, 栞は…あの子は本当に手に負えない. いくら言っても聞かないし, どこで何をしているかも分からない. もう何日も家に帰っていないのよ. 」

鑑識のチーフは父の古い友人だった. だから, 私たちの家庭事情もよく知っていた. 彼は父の右肩を軽く叩いた. 「仁翔, 疲れているんじゃないか? 少し休んだ方がいい. 」

父は首を横に振った. 「いや, 大丈夫だ. 」

「肩が凝っているように見えるが. 前にも言っただろう, 無理はするなと. 」チーフが心配そうに言った.

父は私を振り返るように, 天井を見上げて呟いた. 「ああ, そういえば栞が, 肩こりに効く湿布をどこかでもらってきていたな. 」

一瞬の沈黙. 父の顔に, 何とも言えない表情が浮かんだ. 私はその時, 父が, ほんの少しだけ, 私のことを考えてくれたのだと感じた. 私が彼らの健康を気遣っていたことを, 思い出してくれたのだと.

チーフは父の背中を軽く叩き, 静かに言った. 「仁翔, 栞ちゃんを大切にしてやれ. 結局のところ, 血の繋がった実の娘なんだからな. 」

父はまた首を横に振った. 「あの子は, 本当に問題児なんだ. 電話にも出ないし, メッセージも返さない. 萌はあの子が試合に来てくれないと, がっかりして3位に終わってしまった. 本当に, 何日も家に帰ってこないんだ. 」

父の言葉は, まるで氷の刃のように私の心を裂いた. 「あいつがどこかで死んでいても, 俺たちには分からないだろうな. 本当に, 育て方を間違えたのか. 」

私の心は, 冷たい氷でできた塊になったようだった. 私は叫びたかった. 「お父さん, お母さん, 私はここにいる! あなたたちの目の前にいるのよ! 」

でも, 私の声は届かない. 私はもう家に帰ることはできない. 萌のピアノコンクールの日, 私はもうこの世にいなかったのだから. 私の体は, 今, 彼らの目の前で横たわっているのに.

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