愛を殺した、彼の後悔 の小説カバー

愛を殺した、彼の後悔

8.4 / 10.0
法医の久我修二は、恋人の必死の救助要請を嘘だと断じ、幼馴染を優先した。爆死した彼女の遺体をそれと知らずに解剖した彼は、事件の黒幕がその幼馴染だと知り、復讐の化身と化す。『愛を殺した、彼の後悔』は、裏切りと執着が交錯する衝撃のmodernなromance novel。愛する者と我が子を失った男が、結婚式という最高の舞台で仕掛ける残酷な報復とは。緻密な伏線が光る人気のmystery storyを今すぐチェック。
「愛を殺した、彼の後悔」のあらすじ
体に時限爆弾を仕掛けられた私は、絶望の中で恋人の法医学者・久我修二に助けを求めた。しかし彼は、幼馴染の落とし物を探すことを優先し、私の必死の訴えを狂言だと切り捨てて電話を断つ。その数分後、私はお腹の子供と共に爆死した。皮肉にも、変わり果てた私の遺体を解剖したのは修二だった。彼は目の前の焼死体がかつての恋人であることに気づかず、私が大切にしていた彼からの贈り物を「身元不明者の安物」と蔑み、証拠品袋へ投げ入れる。両親の捜索願すら家出だと嘲笑う彼が真実を知ったのは、数日後のことだった。誘拐犯から「お前が解剖したのは自分の女と子供だ」と告げられ、修二は奈落の底へ突き落とされる。さらに一年後、事件の黒幕が、あの日優先した幼馴染だったことを突き止めた彼は、ある凄惨な復讐を決意する。二人の結婚式の打ち合わせの場で、修二は微笑みを浮かべながら彼女を椅子に拘束した。その胸元には、かつて私を奪ったものと同じ爆弾がセットされていた。
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愛を殺した、彼の後悔 第1章

体に時限爆弾を巻き付けられ, 震える手で恋人の法医・久我修二に助けを求めた.

しかし彼は「幼馴染のピアスを探すのに忙しい」と, 私の必死の懇願を「気を引くための嘘」だと断じ, 電話を一方的に切った.

数分後, 私はお腹の子と共に爆死した.

皮肉にも, 私の黒焦げの遺体を解剖したのは修二だった.

彼は目の前の肉塊が, かつて愛した女だとは露知らず, 私が大切にしていた彼からのプレゼントを「身元不明の安物」として証拠品袋に放り込んだ.

「妊娠3ヶ月. 母子ともに即死か, 気の毒に」

彼は淡々と死因を告げ, 私の両親からの捜索願いさえも「ただの家出だ」と鼻で笑い, 幼馴染の元へと急いだ.

彼が真実を知ったのは, 私が死んでから数日後.

誘拐犯が嘲笑いながら告げたのだ.

「お前が解剖したあの焼死体こそが, お前の女と子供だ」と.

そして一年後.

すべての黒幕が, 彼が優先した幼馴染だと知った修二は, 彼女との結婚式の打ち合わせの場で, ある「復讐」を実行する.

彼は微笑みながら幼馴染を椅子に縛り付け, その胸に爆弾をセットした.

第1章

奈緒 POV:

久我修二が私の必死の叫びを「またか」とばかりに切り捨てた時, 私の人生は燃え尽きる廃工場よりも早く崩れ落ちた.

私は白川奈緒, 26歳. 幼稚園の先生.

そして, 今まさに爆弾を体に巻き付けられ, 死を待つ身.

誘拐犯は沼田信和. かつて久我が逮捕に導いた放火犯だ.

彼は, 私の恋人である久我修二への復讐を誓っていた.

薄暗い廃工場.

鉄骨が絡み合い, 錆びた機械が不気味に佇んでいる.

沼田は私の胸に巻き付けられた時計仕掛けの爆弾を指差し, 歪んだ笑みを浮かべた.

「俺を刑務所送りにした久我修二のおかげで, お前も地獄行きだ」

彼の目は狂気に染まっていた.

恐怖で心臓が喉まで競り上がってくる.

沼田は私の携帯電話を奪い取った.

乱暴に久我の番号をダイヤルし, 私に押し付けた.

「聞こえるか? お前の男に助けを求めろ. 命乞いしろよ」

震える手で携帯を耳に当てた.

数回のコール音の後, 聞き慣れた, しかし今は恐ろしいほど冷たい声が聞こえた.

「もしもし」

「修二…! お願い, 助けて…! 」

私の声はか細く震えた.

涙が溢れて止まらない.

「奈緒? なんだ, こんな時間に」

久我の声はひどく不機嫌そうだった.

「今, 恵梨子と一緒なんだ. 彼女の大切なピアスが公園でなくなって, 探してあげてるんだよ. 仕事じゃないんだから, 邪魔するな」

彼の言葉に, 私の心臓が凍りついた.

「違うの…私, 誘拐されたの! 沼田信和っていう男に…爆弾も…」

言葉が途切れ途切れになる.

沼田が私の背後に立ち, 携帯を奪い返そうと手を伸ばした.

「嘘じゃない! 本当に危ないの! 修二, 聞いて…」

私は必死で叫んだ.

沼田は横から携帯を掴み, 私の言葉を遮った.

「おっと, そこまでだ」

沼田は携帯を耳から引き剥がし, 私から離れた.

久我の声は私の耳には届かなくなった.

遠くから, 久我の声が聞こえる.

「奈緒! また恵梨子のことか? いい加減にしろ. お前はいつも俺の気を引こうとする. 芝居はもうたくさんだ」

はっきりと, 彼の不満が伝わってきた.

「もし恵梨子のペットに何かあったら, お前を許さないからな! 」

ペット? 恵梨子の?

私の命がかかっているのに, 彼は恵梨子のペットの心配をしているのか.

沼田が私の胸の爆弾を指差した.

残り9分50秒.

冷たい汗が背中を伝った.

その時, 久我の携帯から, 恵梨子の甘ったるい声が聞こえた.

「修二, 早く戻ってきてよ. もうピアスは見つかったみたい. 早くこっち来て, 私を安心させて」

その声は, 私の命の終わりを告げる鐘のように響いた.

「分かった, 恵梨子. すぐ行く」

久我の声は, 一瞬で優しいものに変わっていた.

そして, ブツン, と通話が切れた.

私の世界は, 音を失った.

沼田は私を見て, 嘲るように口元を歪ませた.

「おいおい, お前の男, つまんねぇな. 人を間違えたかと思ったぜ」

沼田は携帯を床に投げ捨て, 倉庫の奥へと消えていった.

私は独り, 爆弾を抱えて取り残された.

涙がとめどなく溢れ, 視界が滲む.

爆弾のデジタル表示が, 無情にもカウントダウンを続ける.

残り8分.

修二.

私は, 死の間際になってようやく気付いた.

貴方にとって, 私は一体何だったのだろう.

私が恵梨子の存在を修二に尋ねた時, 彼は「恵梨子は幼馴染で, 妹みたいなものだ」と笑った.

その言葉を, 私はあの時信じた.

信じようとした.

でも, 違った.

恵梨子は, 修二にとって, ただの妹ではなかった.

いつも恵梨子からの呼び出しを優先した.

私が熱を出して寝込んでいても, 私の両親との食事をキャンセルしても, 恵梨子の「ストーカー被害」と「なくしたピアス」の電話一本で, 彼は飛んでいった.

私が寂しいと訴えれば, 「そんなことだから, 恵梨子にまで心配されるんだ」と呆れた顔をした.

結婚の話を切り出した時もそうだ.

「もし奈緒が嫌なら, 結婚しなくてもいい. 恵梨子が隣にいてくれれば, 俺はそれでいい」

そう言った修二の横顔は, 本気だった.

それでも, 私は彼を愛していた.

彼が私を愛していると, どこかで信じていた.

愚かだった.

恵梨子の声が, 修二の優しい声が, 今も耳に残っている.

彼にとって, 本当に大切なのは恵梨子だった.

私は震える指で, 久我にメッセージを送った.

「修二, さようなら. この世界で, あなたと二度と会いたくない」

これが, 私の最後の言葉.

私の魂は, 炎の中で, ようやく解放されるだろう.

さようなら, 修二.

どうか, 来世では私を見つけないで.

私の心は, 本当に死んだのだから.

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