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仮面夫婦の残酷な真実 の小説カバー

仮面夫婦の残酷な真実

自身の個展という晴れ舞台で、主人公の琴莉は婚約者と親友による裏切りを目の当たりにする。絶望に暮れる彼女を救い、妻として迎え入れたのは大学の先輩である一朗だった。しかし、彼の献身的な優しさはすべて、ある凄惨な計画を遂行するための偽装に過ぎなかった。一朗の真の目的は、密かに愛し続けている琴莉の親友の卵子を用いた「代理出産」であり、琴莉が身ごもった子供を出生時に死産と偽り、親友に受け渡すことだったのだ。書斎から漏れ聞こえてきたのは、琴莉の芸術への没頭を利用し、子供を奪っても容易に欺けるという一朗の冷酷な本音だった。さらに衝撃的なことに、彼女の実の両親までもがこの非道な企てに加担していた。信頼していたすべての人々に裏切られ、自らの体が計画の道具として利用されていたことを知った琴莉。愛という名の仮面を被った夫、そして血の繋がった家族への復讐を誓った彼女は、偽りの絆と、彼らの欲望の結晶であるお腹の子を捨てる決断を下す。これは、自分を嘲笑い利用した者たちへ、奈落の底から突きつける宣戦布告である。
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3

琴莉 POV:

「そうか, 良かった. 心配したよ」

一朗は, 安堵したように息をついた.

彼の表情は, 私には読めない.

本当に私を心配しているのか, それとも演技なのか.

しかし, 今の私にとっては, どちらでも良いことだった.

「ねえ, 一朗. 明日は私の実家に帰らせてもらってもいいかしら? 」

私は, 平静を装って尋ねた.

「最近, あまり顔を出せていなかったから」

母と父の顔が, 脳裏に浮かぶ.

彼らもまた, この裏切りに加担していることを, 私は知っていた.

一朗の顔に, わずかな動揺が走ったように見えた.

「実家か…もちろん構わないが, 体調は大丈夫なのか? 」

彼は努めて冷静を装っている.

私は, 彼の心の奥底にある不安を, 敏感に感じ取っていた.

彼は, 私が実家で何かを嗅ぎつけることを恐れているのだろう.

「ええ, 大丈夫よ. 少し気分転換になるかもしれないし」

私は, 笑顔で答えた.

「それに, 藍も妊娠しているのよね. 母も喜ぶと思うわ」

わざと, 藍の名前を出した.

彼の顔が, 一瞬にして強張る.

「ああ, そうだな. 藍も喜ぶだろう」

一朗は, ぎこちなく答えた.

彼の視線が, 私の腹部に向けられる.

私は, 彼の視線の意味を, 痛いほど理解していた.

彼は, 私が彼の計画通りに, 子供を産むことを期待しているのだ.

「分かった. 無理はするなよ. ゆっくり休んでくるんだ」

一朗は, そう言って私の頭を優しく撫でた.

その手つきは, 本当に私を愛しているかのようだった.

彼の演技は, 完璧だった.

私は, 彼に感謝の言葉を述べた.

「そういえば, 琴莉. これを君に」

一朗は, ポケットから小さな箱を取り出した.

中には, まばゆいばかりのダイヤのネックレスが収まっている.

それは, 藍が身につけていたものと, 全く同じデザインだった.

私の心臓が, ドクンと音を立てた.

「ありがとう, 一朗. とても綺麗だわ」

私は, 震える声で言った.

しかし, その心は, 冷たい怒りで満たされていた.

彼は, 私をどこまで愚弄すれば気が済むのだろうか.

彼は, このネックレスを, 私と藍, 両方に贈るつもりだったのだろうか.

それとも, 藍に贈るはずだったものを, 間違って私に渡したのだろうか.

「琴莉には, 本当に良く似合うよ. 僕の選んだものは, 間違いないな」

一朗は, 満足げに微笑んだ.

その笑顔が, 私の目には, ひどく醜く映った.

私は, 彼に首筋にキスをされて, 身震いした.

私の心は, もう彼を拒絶している.

私は, そのネックレスを, そのまま身につけて実家に向かった.

手術の前日だ.

この家には, もう戻らない.

私は, この偽りの家族と, 永遠に決別するつもりだ.

実家のドアを開けると, リビングから母と父, そして藍の声が聞こえてきた.

私は, 足音を忍ばせ, リビングのドアの陰に身を潜めた.

彼らの会話が, 私の耳に飛び込んでくる.

「琴莉は, 本当に厄介な子だわ. いつになったら, 私たちから離れてくれるのかしら」

母の声が, 私の胸を深く突き刺した.

「そうよ, お母様. 琴莉のせいで, 私の計画が台無しになるかと思ったわ」

藍の声には, 苛立ちと, 私への憎しみが込められている.

「あの女, いつまで経っても, 一朗を諦めないんだから」

私は, 耳を疑った.

彼らは, 私のことを, 一体何だと思っているのだろう.

「大丈夫だ, 藍. 一朗も, 琴莉が邪魔だと言っていた. 心配するな」

父の声が, 私をさらに絶望の淵に突き落とす.

「琴莉は, 藍のためなら, どんなことでもすると言っていたからな. まさか, あんなことになるとは思わなかったが」

彼らは, 私を利用することしか考えていなかったのだ.

私の心の中で, 何かが音を立てて砕け散った.

「そうよ, お父様. 一朗も, 琴莉がもうすぐいなくなるって言ってたわ. そうすれば, 晴れて私と一朗の子育てができるものね」

藍の声には, 歓喜が満ちている.

「琴莉は, 私たちにとって, ただの道具でしかないのよ」

私の両親は, 藍を溺愛し, 私を犠牲にすることを厭わなかった.

彼らは, 私を愛していなかった.

私は, その場に立ち尽くした.

私の心は, 冷たい怒りで満たされていた.

私は, 彼らが私に贈ったネックレスを, 引きちぎるように外した.

ダイヤの石が, 床に落ち, 音を立てて砕け散る.

私の心も, このネックレスのように砕け散った.

その音に, リビングのドアが開いた.

父が, 驚いた顔で私を見つめている.

「琴莉, お前, いつからそこにいたんだ! 」

彼の顔は, 恐怖に歪んでいた.

私は, 冷たい視線で彼らを見つめた.

その瞬間, 私のスマートフォンが鳴り響いた.

一朗からの電話だった.

私は, 着信を無視した.

しかし, 彼は諦めずに何度もかけてくる.

彼の声が, 私の耳に届く.

「琴莉! どこにいるんだ! なぜ電話に出ないんだ! 」

彼の声は, 焦りと怒りに満ちていた.

私は, 冷たい笑みを浮かべた.

「一朗, 私, 今, 病院に向かっているわ」

私の声は, ひどく冷たかった.

「病院? 何のことだ! 琴莉, まさか…」

彼の声が, 突然途切れた.

電話の向こうから, 秘書の慌てた声が聞こえてくる.

「夏目社長! 牧野様のカルテに, 堕胎手術の予約が…」

私は, 彼の顔が, 完全に凍りついたのが分かった.

「琴莉! 待て! 何をしようとしているんだ! 」

一朗の悲鳴のような声が, 電話から聞こえてくる.

彼の声は, 絶望に満ちていた.

私は, 冷たく言い放った.

「もう, あなたたちの計画通りにはならないわ」

「琴莉! やめろ! 頼む! やめてくれ! 」

彼の叫び声が, 私の耳に届く.

しかし, 私の心は, もう彼には届かない.

私は, 電話を切った.

そして, スマートフォンの電源を落とした.

これで, 彼らとの関係は, 完全に終わりだ.

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