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ヒロインのゴミ箱から最強のイケメン獣人を錬成するお仕事。 の小説カバー

ヒロインのゴミ箱から最強のイケメン獣人を錬成するお仕事。

星間獣人世界で「無能な偽令嬢」の星野千夏に転生した主人公。彼女を待つのは、本物の令嬢が帰還した後に追放され餓死する悲惨な未来だった。運命を変えるため、千夏は残された2年で自立を目指し、ヒロインに切り捨てられる運命の「当て馬」たちを保護し始める。奴隷に堕ちた狼族の少年・蒼真、虐待で心を閉ざした天才治療師・蒼汰、金づるにされていた狐族の拓海。さらには連邦の捨て駒や宇宙海賊の首領まで、ゴミ箱に捨てられるはずだった彼らを救い出し、自らの陣営へと引き入れた。しかし、救済したはずの彼らは千夏に異常な執着を見せ始め、冷徹な義兄・凛太朗の視線までもが熱を帯びていく。やがて千夏は帝国唯一の「SSSランク」へと覚醒し、国交樹立や海賊の統率を成し遂げ、帝国の命運を握る存在へと成長を遂げた。ついに帰還した本物の令嬢がシステムを駆使して男たちを奪おうとするが、千夏の傍に集う最強の獣人たちには一切通用しない。自ら育て上げた夫たちに囲まれ、愛の重さに悲鳴を上げながらも、千夏は運命を覆した新生活を突き進んでいく。
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夜の奴隷市場は、底なしの欲望と強欲が渦巻いている。

奴隷商たちは興奮を隠しきれず、我先にと群がってきた。

この第三皇女殿下が、Cランクのメスで精神力は哀れなほど弱いにもかかわらず、湯水のごとく金を使うことは誰もが知っていた。

わざわざこんなうらぶれた小さな市場に足を運んだのだから……

オスの奴隷を品定めして、持ち帰って嬲るつもりなのだろう。

星野千夏はそれを聞いて、目元を引きつらせていた。

彼女がこの星間獣世界に転生してきて、今日で3日目になる。

前世は身を粉にして働く社畜で、会社のデスクで突然死した。しかし目を覚ますと皇女に生まれ変わっており、当時はその場でくす玉を割って祝いたいほど歓喜したものだ。

だが、この身体の記憶と完全に融合したあと、彼女は沈黙した。

なんと、小説の中に入り込んでしまったのだ。

前世で読んだことのある本だった。内容はこうだ。中央帝国から行方不明になっていたSランクのメスである本物の皇女が、家に戻ったあとに二人の兄に溺愛され、両親にも 大切に育てられる。さらに十数人の優秀なオスたちと甘い駆け引きを繰り広げ、最後は全員と結ばれてハッピーエンドを迎える、というものだった。

当時は夢中で読んでいた。優秀な男たちがヒロインを巡って嫉妬し合い、火花を散らす様を見るのは痛快だったからだ。

しかし、彼女が転生したのはヒロインではなかった。

ヒロインの引き立て役である偽物の皇女、星野千夏だったのだ。

本を読んでいた当時から、自分と同姓同名のこのキャラクターには嫌悪感を抱いていた。

特別に悪辣だったわけではない。すぐ薬を盛ったり暗殺者を雇ったりする典型的な悪役令嬢に比べれば、元主は大きな罪を犯してはいなかった。ただ少し男好きで、わがままで、精神力が低かっただけだ。

だが、作者はこのキャラクターにすべての悪意を注ぎ込んでいるようだった。

本物が戻ってきた途端、可愛がってくれていた両親は彼女を家を乗っ取った詐欺師扱いした。かばってくれていた兄たちは、妹のすべてを奪ったのだと彼女を嫌悪した。想いを寄せていたオスからは暴言を吐かれ、貴族の社交界で群がっていた者たちも手のひらを返して彼女を嘲笑した。

その後の展開で、元主は第二次覚醒を果たして精神力が飛躍し、帝国でも稀少なSランクのメスになるのだが、それでもヒロインの補正に押しつぶされて死んでしまう。

最終的にすべてを奪われ、辺境星へ追放されて餓死するのだ。

その頃、ヒロインは逆ハーレムの男たちといちゃついているというのに。

千夏は怒りを覚えつつも、まさか自分がその世界に入り込む日が来るとは夢にも思っていなかった。

だからこそ、転生してから必死に考え抜き、あることに気がついた。

まだ物語の序盤だ。助かる見込みは十分にある。

本物が戻ってくるまで、まだ2年の猶予があるのだ。

そして彼女の精神力はまだ第二次覚醒しておらず、Cランクのままである。

今できることは、本物が戻ってくる前に自分の身を守る手段を用意することだ。

金か?

元主は精神力が弱いため、劣等感を隠すために散財する癖がついていた。毎月の生活費は少なくないはずなのに、口座を調べると、こいつは毎月使い切るタイプだったのだ。

権力か?

元主はメスとはいえ精神力が絶望的に弱く、おまけに皇女として甘やかされて育ったため何もしたがらなかった。そのため帝国での役職は一切なく、ただのお飾りにすぎない。

一晩中考え抜いた末、最終的に「人」に狙いを定めるしかなかった。

ヒロインから男を奪い取ることにしたのだ。

もちろん、ヒロインに心底惚れ込むメインのオスたちではない。狙うのは、作中でヒロインの目に留まらなかったものの、そこそこ重要な役割を持つキャラクターたちだ。

要するに、ヒロインの釣り堀にいる稚魚たちである。

たとえば、のちにヒロインの最も忠実な護衛となる黒木蒼真だ。

蒼真は罪人の末裔だ。2年前に実家が没落し、一族は処刑か追放の憂き目に遭い、彼は奴隷に身を落として市場へと流れ着いた。

ヒロインが現れたとき、彼はこの地獄のような場所で丸4年も痛めつけられ、虫の息になっていた。ヒロインが彼を買い取って傷を治し、見返りとして彼の絶対的な忠誠を手に入れたのだ。

今、自分が2年早く来て、彼に忠誠の対象を変えさせればいい話ではないか。

千夏はそう考えながら、市場の奥へと進んでいった。

原作の描写によれば、彼は狼族で、顔に「罪人奴隷」を意味する刺青が彫られている。

10分ほど歩き回ったが、条件に合う奴隷は見当たらなかった。

横では奴隷商がまだぺちゃくちゃと売り込みを続けていたが、彼女は冷淡に遮った。

「罪人奴隷はいるか? できれば狼族がいい」

奴隷商は一瞬きょとんとした。

横でずっと輪に入れずにいた別の奴隷商が、目を輝かせた。

「います!殿下、私のところに一人いますよ!」

千夏は眉をピクリと動かし、顎でしゃくった。「案内して」

奴隷商は慌てて頷き、彼女をさらに奥へと案内した。

やがて、彼らはひとつの檻の前で足を止めた。

檻は狭く、上から分厚い黒布が被せられており、まるで大きな犬小屋のようだった。

奴隷商はへつらうような笑みを浮かべながら、黒布をめくった。

「この奴隷はまだ完全に飼い慣らされてはいませんが、身体が頑丈で打たれ強く、若くて回復も早い……」

檻の中で、蒼真は黙って自分の「長所」を聞いていた。

彼は鉄の鎖で縛られた自分の手足を一瞥し、口にはめられたマズルを強く噛んだ。

(誰だろうか。)

(誰でもいい、ひと思いに楽にしてくれ。)

(これ以上、痛めつけないでくれ。)

光が差し込み、彼は一瞬目を開けられなかった。

ぼやけた視界の中に、華奢なシルエットが檻の外に立っているのが見えた。

心地よい香りが、この場の腐ったような不快な血の匂いを一瞬で切り裂き、彼の鼻腔をくすぐった。

彼は目を細め、顔を上げてその輪郭を見極めようとした。

逆光の中で、彼に見えたのは一瞬で輝きを放った双眸だけだった。

そして、凛とした明るい声が耳に届いた。

「こいつにするわ!」

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