フォローする
共有
ご近所物語  ハイブラウ・シティ の小説カバー

ご近所物語 ハイブラウ・シティ

西暦2068年、超高齢化の果てに経済が衰退し、治安が悪化した日本。人々の仕事は「ノウハウ」と呼ばれるアンドロイドに奪われ、社会には銃声が響き渡っていた。そんな荒廃した世界で、主人公の夜鶴公は、困窮を極める田舎のA区と富裕層が独占するB区という、極端な格差の板挟みとなって生きている。ある日、B区を追放されA区へと流れ着いた公は、そこで意外な人物と出会う。それは、時の総理大臣の娘であった。この運命的な出会いを機に、二人は周囲の対立に翻弄されながらも、命を懸けた危険な恋へと踏み出していく。やがて彼らの純粋な想いは、国家の根幹を揺るがす巨大な事件「ハイブラウ・シティ」の渦中へと飲み込まれていく。分断された近未来の日本を舞台に、世界の在り方を問う激しいガンアクションと、困難な状況下で育まれるラブコメディが幕を開ける。果たして二人の恋路は、歪んだ社会を是正する光となるのか。おうみ舟氏が表紙を手掛ける、緊迫感溢れるSFロマンス巨編。
共有

2

二年後……

 愛車を駐車場へと止めると、いつも朝の8時だった。ピンク色のクマのキーホルダーのある鍵を茶色のチノパンから取り出し、アパートの105号室を開けた。

傘立てが占める玄関で作業靴を脱いで部屋へと入ると、缶ビールをキッチンの冷蔵庫から取り出し、テレビを点けた。

「お早うござます! 云話事町TVです!」

 いつもの美人のアナウンサーの声を聞き、ニュース番組が始まる。

 背景にはここA区という場所の街並みが見渡せる。

 健やかな日差しが降っている。

「今日は晴れ。昨日の曇り空がまだ残っていますが、きっと晴れるでしょうッス! ところで、今日も云話事町A区にお住まいの云話事町新教会の教祖。藤元 伸二さんです。どうぞ!」

「はい。藤元 伸二です。誰か私と一緒に宗教しましょうよー!!」

 そう叫んだ藤元は20代半ばで、後ろだけ長い黒髪をしている。前髪は均等におでこで真一文字、色白の肌にメガネを掛けた男だ。背格好は小柄に見える。安物の白いTシャツと黒のオーソドックスなズボンに白のスニーカー。

 片手に神社なんかでお祓いをする棒(大幣 だいへい)を持っている……。

「はい! 信者の勧誘はそこまでです!」

 美人のアナウンサーが眉間の皺を気に出来ないほどに微笑む。

「だって、誰も入ってくれないだもん。僕の宗教……そんなに不気味?」

 藤元は頭を垂れる。

 後ろにはちょっとした人だかりが出来ていて、その中から笑い声がする。

「そんなことより!!」

 アナウンサーは一変し微笑みながら。

「今日のお天気は!!」

「きっと、晴れですね。お日様見えますから……」

「今日の運勢は!!」

「はい。昨日の夜空に凶星が有りました。それは、1000年に一度しか見えない星です。みなさん……とても大変な日になります。気を付けて下さい……」

「え!?」

「財布を落としたり……ドブに靴を落とさないようにしましょう」

「小さい!!」

 美人のアナウンサーが手に持ったマイクで、藤元の頭を叩く……。

 テレビを消すと、自然と疲れがでてきてベットへとダイブしに寝室へと行く。

 目覚まし時計を17時にセットする。朝食と昼食は取らない。

「今日もお疲れ様」

そう自分に言い聞かせた。

「わん!」

 スケッシーの頭を撫でる。年中発情期な特殊な犬だった。道端でメスとじゃれ合って空腹で倒れていたところを私が助けた。

 以来、私に懐いている。

「わん! わん!」

 スケッシーが空腹を訴える。

「もうこんな時間か」

 私は格安で購入した黒のパイプベットから起き上がり、目覚まし時計を見た。

 時間は17時少し前だ。

「腹減ったな」

 私は目覚まし時計を消してキッチンへと行き。今朝買ったコンビニ弁当を広げた。

「今日はパスタ」

 スケッシーが尻尾を振って私にまとわりつく。

「うん。うまいな」

「わんわ。わん」

 スケッシーが床に置いてある。ドックフードの塊に顔を埋める。

 いつものテレビゲームをやるため座って本体の準備をした。その間、スケッシーは、テレビに向かって胡坐をしている私の膝の上に寝そべる。

 今日は昨日よりもハイスコアを狙いたい。

 テレビ画面に見入っていると、電話がなった。

「もしもし」

 私は電話の受話器を持ち、片手で銃の形をしたコントローラーを操作した。勿論目線はテレビ画面だ。

「やあ。夜鶴くん。明日の火曜日は休んでくれないか」

 工場リーダーの田場さんだ。

「ええ。いいですよ」

 私は二つ返事で答えた。当然目線はテレビ。頭の半分はテレビゲームの(ガンシューティングだ)スコアが埋める。

「その日は丁度ゴミの日ですし」

「そうか。我々夜勤隊の天敵はそういったものだよな」

「ええ。毎回苦労しますよ」

「本当にな。でも、やっぱり給料がいいから仕方のないことだよ。じゃ、よろしくね」

「御疲れ様でした」

 私は電話を切ると、丁度テレビゲームのスコアが昨日よりも少し上がっているところだった。

おすすめの作品

裏切りの愛、復讐の旋律 の小説カバー
7.8
重い血液疾患を抱えながらも、夫・秀夫への献身的な愛を貫いてきた主人公。彼女は奇跡的に子宝に恵まれるが、その命は病に伏せる妹・心歌穂への骨髄提供を強いるための残酷な道具として利用される。夫にとって妻の命は何の価値もなく、ただ妹を救うためだけの存在に過ぎなかった。秀夫に突き飛ばされ、下腹部の激痛と出血に苦しむ彼女に対し、彼は「自分を悲劇のヒロインに見せかける芝居だ」と冷酷な言葉を投げかけ、嘲笑いながら妹の元へと去ってしまう。愛も、未来も、そして宿ったばかりの小さな命さえも踏みにじられた絶望の淵で、彼女の心には冷徹な決意が宿る。彼らが最も欲しがっているものを、自らの手で永遠に奪い去るという復讐の誓いだ。彼女は一人、中絶手術を受けるために病院の予約を入れ、冷たい手術台へと向かう。すべてを捧げた愛は憎悪へと反転し、残酷な裏切りに対する凄絶な報復の幕が今、静かに上がる。
裏切られた令嬢の華麗なる復讐:元夫よ、もう遅い の小説カバー
8.4
結婚記念日の夜、西園寺静が目にしたのは、残業と偽り義妹や見知らぬ少女と家族同然の睦まじい時を過ごす夫の姿だった。絶望の中で交通事故に遭った彼女は、病室で夫が漏らした「技術さえ手に入ればあんな女は捨てる」という卑劣な本音を知る。退院後、家は既に義妹たちに占拠されており、母の形見を取り返そうとした静を待っていたのは夫からの無情な暴力だった。実父までもが夫の虚言を信じ、静を会社から追放しようと画策する。四年間の献身が資産奪取のための踏み台に過ぎなかったと悟った時、彼女の悲しみは冷徹な復讐心へと変貌を遂げた。「本当のショーはこれからよ」と告げた静は、父に一億円を要求して取締役を辞任。長年隠し持っていた天才研究者としての才覚を解き放ち、裏切り者たちの会社を内部から徹底的に崩壊させるための緻密なプロジェクトを開始する。全てを奪われた令嬢による、華麗で容赦のない反撃がいま幕を開ける。
夫は姉を殺した女の味方でした の小説カバー
8.7
マフィアの闇取引という危険な現場に足を踏み入れてしまった姉は、一人の女の手によって無残に命を奪われた。しかし、最愛の家族を失った私に突きつけられたのは、あまりにも残酷な現実だった。私の夫はあろうことか、姉を殺害した犯人を擁護し、彼女の偽証を全面的に支援したのである。それどころか夫は、亡き姉が精神を病んでいたという虚偽の事実を捏造して辱め、私に対して犯人への謝罪声明に署名するよう冷酷に迫った。姉の唯一の形見を守り抜くため、私は煮え湯を飲まされるような屈辱に耐え、その書面にペンを走らせるしかなかった。愛していたはずの男に裏切られ、理不尽に姉を奪われた私の心は、激しい憎悪と復讐の炎に包まれる。もはや慈悲の心など残っていない。姉を死に追いやり、その尊厳を泥にまみれさせた彼らに対し、私は自らの手で報いを受けさせることを固く決意した。流した涙は冷徹な殺意へと変わり、彼らの血をもって姉の魂を弔うまで、私の戦いは終わらない。この命を賭して、必ずや地獄を見せてやる。
離婚した妻は"第7の顔"の持ち主でした~首都圏壊滅級のざまあ、元夫の復縁を意に介さず~ の小説カバー
9.6
ある事故を縁に、天野汐凪は黒崎家の傲慢な御曹司・瑛斗と結婚した。植物状態となった瑛斗を三年にわたり懸命に治療し、献身的に支え続けた汐凪だったが、意識を取り戻した彼が選んだのは、帰国した初恋の女性だった。冷酷に離婚を突きつけられた汐凪は、男という存在が自身の歩みを止める足枷に過ぎないと悟り、未練を断ち切って本来の姿へと戻る。実は彼女、天野家から失踪した長女であり、世界を震撼させる七つの顔を持つ伝説的な人物だったのだ。最強の傭兵たちが跪く「姐さん」であり、医界の権威が仰ぐ名医、さらには伝説のハッカーやレーサーとしての顔が次々と露わになっていく。かつての妻が持つ圧倒的な正体を知り、瑛斗は己の過ちに気づく。誇り高き黒崎社長の面影はなく、埃にまみれ涙を流しながら、彼は汐凪の裾に縋り付いて許しを請う。しかし、かつて月のように彼を照らしていた彼女の心は、もう手の届かない場所へと去っていた。
死罪判決は嫌なので逃亡しながらダンジョン攻略します の小説カバー
8.0
落雷事故で命を落とした加藤佑真は、異世界へと転移を果たす。誰もが憧れるチート能力を駆使したハーレム生活を夢見ていたユウマだったが、現実は無情だった。身に覚えのない痴漢の冤罪から、挙句の果てには国家反逆罪という身に覚えのない大罪まで着せられてしまう。気づけばギロチン台に拘束され、死罪を待つ絶体絶命の窮地に立たされていた。そんな彼を救い出したのは、パーティー仲間の少女アリスだった。彼女の助けで九死に一生を得たユウマは、不条理な裁きを下そうとする国を捨て、敵対する隣国へと逃亡することを決意する。指名手配犯として追われる身となりながらも、再び冒険者として生きる道を選んだユウマ。行く先々では、ゴブリンからの求愛や強力な守護者との死闘、さらには身体の一部を損なうような凄惨な試練が彼を待ち受けていた。特別な能力も持たず、ステータスも平凡な一般人に過ぎないユウマは、逃亡者の証を刻まれながらも、過酷な運命に抗い真の自由を掴み取ることができるのか。波乱に満ちた逃亡劇とダンジョン攻略の旅がいま幕を開ける。
血に染まる羽衣 の小説カバー
9.6
世間では美談として語り継がれる、天上の仙女と人間の皇帝による愛の物語。しかし、その裏側に隠された凄惨な真実を、娘である阿狸だけは知っていた。母は法力の源である羽衣を奪われ、父によって無理やり人間界に繋ぎ止められていたのだ。七歳の夜、阿狸が目にしたのは、皇帝の腕の中で屈辱に耐え、心身ともに衰弱しきった母の姿だった。母は死の間際、娘の身を案じて「早く逃げなさい」と告げ、自らの命を賭して阿狸に自由を託す。血に染まりながらも、最後には呪縛から解き放たれたような晴れやかな笑みを浮かべて息を引き取った母。その冷たくなった亡骸を抱きしめ、阿狸の手には一本の小刀が固く握りしめられていた。母を苦しめ、その尊厳を蹂躙し続けた者たちへの激しい憎悪が、彼女の心に消えない復讐の火を灯す。母が命を懸けて切り拓いてくれた孤独な道の先で、阿狸は誓う。母を虐げたすべての人間に、必ずや死の報いを受けさせることを。悲劇の連鎖を断ち切るため、彼女は修羅の道へと足を踏み出す。