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ご近所物語  ハイブラウ・シティ の小説カバー

ご近所物語 ハイブラウ・シティ

西暦2068年、超高齢化の果てに経済が衰退し、治安が悪化した日本。人々の仕事は「ノウハウ」と呼ばれるアンドロイドに奪われ、社会には銃声が響き渡っていた。そんな荒廃した世界で、主人公の夜鶴公は、困窮を極める田舎のA区と富裕層が独占するB区という、極端な格差の板挟みとなって生きている。ある日、B区を追放されA区へと流れ着いた公は、そこで意外な人物と出会う。それは、時の総理大臣の娘であった。この運命的な出会いを機に、二人は周囲の対立に翻弄されながらも、命を懸けた危険な恋へと踏み出していく。やがて彼らの純粋な想いは、国家の根幹を揺るがす巨大な事件「ハイブラウ・シティ」の渦中へと飲み込まれていく。分断された近未来の日本を舞台に、世界の在り方を問う激しいガンアクションと、困難な状況下で育まれるラブコメディが幕を開ける。果たして二人の恋路は、歪んだ社会を是正する光となるのか。おうみ舟氏が表紙を手掛ける、緊迫感溢れるSFロマンス巨編。
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3

しばらくして、ゲームの本体を片づけると、友人の鳥田へと電話した。

「おはようっス」

 鳥田がハイテンションで電話に出た。

「なあ夜鶴。今日は何点だ」

「150点。今いいところなんだ。新記録樹立中さ」

「ふえー。俺なんて95点だぜ。よく取れるなー」

 島田も同じゲームをやっている。島田との付き合いは2年前からだ。私がリストラになって、B区から家賃の安いA区の中央部に来た時に、島田が暴漢と揉め合って銃撃戦になっていた時に命を助けた。今では恩を感じてくれて一番の友人となっている。島田は生粋のA区という場所の住人だった。

 年は私と同じく25歳。

「お前も今週の火曜は休みになったのか?」

 私の目線は今やテレビから離れて、膝の上のスケッシーの頭だ。もう今日はこれ以上は暇を潰していても仕方がないと思った。

「へ? 火曜か? 俺は出勤だけど」

「そうか」

「なあ。その日に俺のゴミも捨ててくれないか?」

 島田は私と同じアパートにいた。青緑荘。それが私たちのアパートの名だ。築10年で全体に緑色がかった建物だ。二階建てで一階に私。二階に島田がいる。その他の住人は日勤なのだろう……あまり出会わないようだ。

一階が1Kで二階が2LDKの造りとなっていて。島田は結婚をしているが、子供はいない。妻の名は弥生という。

「ああ。いいよ。丁度暇だし。近所にあるゲームセンターで、ハイスコアを目指していると思うよ」

 島田は笑って、

「いいねー。俺は休日は弥生とゆっくり過ごしたいからな」

 電話を切ると夕方の18時だった。いつもの日課のスケッシーの散歩をしなければ。

 夜はいい。

 9月の半ばの夜は涼しい。 

 日中は27度くらいはあるのだが、夜ではすごしやすい気温になる。

 途中、スケッシーは野良犬のメスの犬とすれ違うとわんわんと吠え尻尾を振る。

 散歩といっても、近所を回るだけ。同じところを3回とぐるぐる。今日はメスの犬には出会わず。スケッシーはがっくりしていた。

「明日は休みか」

 私は近所の十字路の右方向。向かいのコンビニから、奈々川さんから藤元さんの道を歩いて、二本目の電柱で必ずスケッシーが小便をして、先のT字路を左上へとぐるっと回って、淀川さんから山下さんの道を通り、十字路の二本目の電柱でまたぐるっと回り、しばらくするとまた十字路が現れ、それを家の方へとぐるっと回る。それの繰り返しだ。

 距離はまあまあだ。

 スケッシーの散歩が終わると、アパートで支度をして出勤する。今日は銃の手入れはした方がいいのか、しない方がいいのかと思案しながら……。

 職場には私の愛車の(スケッシーの絵がドアにある)で、A区の中央部から国道を通り3時間。B区のところにある。B区は高級住宅や大きな工場やビルディングのあるところで、A区の中小企業や零細企業など農家や商店街などがある下町のようなところと違って金持ちが圧倒的に多かった。

 夜風が気持ちがいいので、窓を半開きにして走行していると、対向車がいきなり罵声を浴びせてきた。勿論、A区から来たからだ。A区とB区はかなりの貧富の差があり、それに関係してか昔から仲が非常に悪いのだ。

 私は今日は運が悪いと諦めた。

 私の職場はB区の少し奥にあって、A区から来たとしれたら大変なところにポツンとある。毎日通っているが、今のところは罵声くらいですんでいる。が、なかには何年か前に職場のA区に住む一人が銃で撃たれて死亡したというニュースを観た時がある。……金のために働いているがやはり身震いする。今では職場にいるA区の人は私と島田だけ。

「お早う御座います!」

 工場に着き。愛車を駐車場の奥の方へと停め、受付にいた仕分けリーダーの田場さんに挨拶をした。

「お早う。今日も頑張れ」

 工場は一階建で、私と島田は一番奥のカットされた肉の選別だ。ベルトコンベアーから流れてきて、それぞれのシューターへと肉を流す作業だった。

 受付は清涼感溢れる白い造りで、右側に事務所があって、左側には着替えをするロッカールームと工場の製品管理部。そして、私と島田が働くベルトコンベアーがある肉の仕分け室が奥にある。

「島田は先に行ったぞ。何でも車で走行中に、B区の若いあんちゃんに火炎瓶を投げられたそうだ」

 田場さんの声に私はびっくりして、

「え!! 島田は大丈夫でしたか? あいつすぐにカッとなるから」

「うん。まあ。ね、多分大丈夫だ。怒ってロッカールームへと行ったから……」

 田場さんは心配な表情というより可笑しいといった顔をする。

 田場さんは私と島田がA区なのを知っていて、田場さんはB区出身なのだそうだ。けれども、人柄がいいのでA区の人でも分け隔てがない。心強いA区の私たちの味方でもある。

 私はロッカールームで青の作業服の上着に着替えると、島田がいるであろう肉の仕分け室へと急いだ。

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