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俺の妻はそっけない女 の小説カバー

俺の妻はそっけない女

「お前は名義上の妻に過ぎず、俺が愛することなど一生ない」――。政略結婚を強いられたエドアードは、デイジーに対して非情な言葉を突きつけた。互いの家族の強欲な思惑に翻弄され、犠牲となった二人。愛のない冷え切った関係のまま、彼女は彼の前から姿を消した。それから六年の月日が流れ、デイジーは軍隊で「鉄の意志を持つ大佐」としてその名を轟かせるほどの強靭な女性へと成長を遂げていた。再びエドアードの前に現れた彼女は、かつての面影を覆すほど凛々しく、彼の心を激しく揺さぶる。一変した彼女の姿に、エドアードはこれまでにないほどの恋心を抱き、惹かれていく。しかし、過去に深く刻まれた心の亀裂は、そう簡単に埋まるものなのだろうか。冷遇されていた過去を持つデイジーは、果たして彼の愛を受け入れるのか。そして、二人の間に生まれた息子の存在は、離れ離れになっていた夫婦の絆を再び繋ぎ止める鍵となるのか。すれ違う二人の運命と、再生へと向かう愛の行方を描いた物語。
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エドワードは、目の前の小さな男の子を眺めながら、椅子にじっと座っていた。 エドワードによく似た小さな顔にその年齢に相応しくない落ち着きがみえ、小さな黒い瞳はまるでエドワードの心を見透すように彼を見ていた。

少年は相手の出方をじっと窺っていた。 ジャスティンは軍人の中で育ち、 ひたすら軍の規則にさらされてきたので、幼いながらもこのような場合の戦い方をよく心得ていた。 相手は他でもない、彼の父親だ。 そして今、父親が彼を見つめている。今の状況に驚愕しているのか?それともただ息子の存在が気に入らないのか?

「おチビちゃん、名前は何ていうの?」 先制はエドワードだ。彼はジャスティンの隣にしゃがみ込み囁いた。 この子は本当に俺の息子なのか? そうに違いない! そうでなければ、あの女はこの子をここに連れては来なかっただろう。

「僕はおチビちゃんじゃないよ。 ちゃんと名前があるからね」 ジャスティンは目の前の男をうっとうしそうに見つめた。

「じゃ、 君の名前を教えて?」 エドワードは面白がって微笑んだ。 「ジャスティン・ムー」 言い終わると男の子はエドワードを見た。エドワードは小さな男の子の振る舞いに気恥ずかしさを感じた。   だが、その小さな男の子の威張り腐ったような表情がとても可愛かった。

「ジャスティン・ムー」 あの女性は彼の素性を隠し通すつもりではなかったようだ。 それを知って彼の怒りは薄れていった。 たった一晩で赤ちゃんが産まれるなんて一体誰が想像できただろう。

「俺があなたのパパということは知っている?」

「はい、ママから聞いています」 ジャスティンは体勢を変えるために椅子の上で動いた。 彼は少し疲れていた。 早朝に陸軍基地からここに来て もうそろそろ正午を回るところだった。少しお腹も空いてきたのだ。

「じゃあ、どうしてもっと早くパパに会いに来なかったの?」 それこそがエドワードが知りたかったことだ。 また、デイジーがどのような経緯で軍の将校になったのか、それにも興味を持っていた。 他に彼女について知らなかったことは… この瞬間、エドワードは自分のいわゆる「妻」について殆ど何も知らなかったことに気が付いた。 彼女の生業さえも知らなかった。

「ママはパパがとても忙しい人って言ってるよ。だから邪魔したらダメって」 ジャスティンは一生懸命に説明しながらも、威張りくさった表情は変わらなかった。 年相応の可愛らしい態度にもかかわらず、その顔には彼の年齢よりもずっと大人びた悲しさがあった。

「ママがそう言ったの? 俺は忙しい、って?」 エドワードは動揺した。 確かに、彼は忙しかった。ただし、色々な女性たちといちゃつくのにな。 まさか一夜限りの妻と子供ができたなんて思ってもいなかった。 それに、彼女も一度も連絡しなかったし、もはや妻の存在をきれいさっぱり忘れてしまっていたのだ。 なんせ結婚した日の翌朝彼女を捨てて出て行ったのだから。  この結婚生活の為に、彼は毎年送金するよう秘書に指示をしただけだった。 もし今日、彼女の予期せぬ現れがなかったら、彼の人生にこの女が存在したことはもとより、自分が既婚男性ということすら忘れてしまったんだろう。

「そう、パパと他の女の人たちのことは、ママと一緒に毎日テレビで観てるから」 ジャスティンはこの場に慣れてはきたものの、父親に対して少しぶっきらぼうで歯に衣着せぬ物言いをした。 ママはパパが一緒に住んでいないのには理由があると言っていたが、それでもただの一度もママと自分に会いに来なかったのはおかしいと思っていた。

「どうやら君たちは、パパのことに対してとても関心を持つようだね」とエドワードは言った。 そして、ジャスティンの怒った皮肉っぽい顔を見て、思わず笑いだしてしまった。 エドワードの魅力的な佇まいに、幼いジャスティンさえも唖然とした。

「パパの事なんて別にどうだっていい もしパパがマヌケな笑顔で毎日テレビに出てなかったら、パパに会おうなんて思わなかったんだからね」 ジャスティンは怒っていた。なぜなら、エドワードが別の女性と一緒にテレビに映る度に、ママの目が真っ赤になるから。

「なんだって? マヌケな笑顔?」 どんな美人でも秒殺で虜にできるこの魅力的な笑顔が、どうしてこの少年の目にはマヌケな笑顔に映ったのだろう?

ジャスティンはパパのことを無視して、ふざけてふかふかのソファに飛び込んだ。 何だかんだ言って、まだ遊びたい盛りの小さな子供だったのさ。

「お腹空いてるかい?」 エドワードは時計を見るために腕に視線を落とした。  彼のどんな動作でも優雅そのもので、女性にモテるのも無理はないだろう。

「行こう! ランチに連れて行ってあげる」 エドワードは椅子に掛かったコートを取り、ジャスティンを抱き上げて、外に出て行った。

彼は息子がいるという事実を受け入れようとしていた。 自分の「妻」は今朝、断る隙さえ与えずに息子を預けて去ってしまった。 とはいえ、この少年が愛らしいということは紛れもない事実だ。 驚いたことに、世界がひっくり返るような出来事が起こっているにもかかわらず、自分は却って上機嫌になっている。

3ヶ月? 彼女が3か月後に再び彼を無視するかどうかを見届けるのが楽しみになってきた。 挑戦状を叩きつけられたような気分になったのだ。 追われる恋にはうんざりだが、追う恋には燃えてしまう彼の性だった。

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