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この夏、私は家族の命綱にはならない の小説カバー

この夏、私は家族の命綱にはならない

記録的な猛暑が予想される夏、義姉の強引な提案で家族は避暑地へと向かう。異変を察した私は早期帰宅を促すが、義姉と母は聞く耳を持たず、私を罵倒するばかり。現地では理不尽なトラブルに巻き込まれ、支払いを押しつけられた。やがて磁場の乱れにより、避暑地は逃げ場のない灼熱地獄へと変貌する。空港は閉鎖され民泊に孤立する中、外出禁止令を無視して海へ向かった義姉が危機に陥る。その瞬間、兄は義姉を救うための「踏み台」として私を海へ突き落とした。熱湯のような海水にのまれ、命を落とした私。しかし、実の娘を冷酷に見捨てた家族への怒りと絶望の中で意識が途絶えたはずが、次に目を開けると、あの忌まわしい旅行の計画が始まった瞬間に戻っていた。家族の命綱として理不尽に搾取され、最期は生贄にされた前世。今度はもう、身勝手な彼らの盾になるつもりはない。凄惨な死の記憶を糧に、私は自分一人の命を守り抜くため、破滅へと突き進む家族との決別を決意する。運命を塗り替えるための、孤独で熾烈な戦いが幕を開ける。
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3

昨夜のうちに、友人の許歓に頼んで、手頃な価格帯のスイートルームを用意させておいた。

部屋自体は決して悪くない。だが、彼らが夢見ていたであろう豪華なプレジデンシャルスイートとは天と地ほどの差があった。

前の人生では、許歓は私の顔を立てて最高級のスイートを半額で提供してくれた。

それでも義姉は満足せず、不満をまくし立てたものだ。

「一生に一度のハネムーンなのに、あなたの妹ときたらなんてケチなのかしら!自分の義姉にこんな安部屋をあてがうなんて、どういう神経してるの?」

「こんなに安い部屋がいいわけないじゃない。あの子、お金を使いたくないだけでしょ」

いくら説明しても無駄だった。私が意地悪で安い部屋を選んだと、義姉は決めつけて譲らなかった。

結局、母に泣きつかれ、私はさらに数ヶ月分の給料をつぎ込んで部屋をアップグレードする羽目になった。

だが、今回は違う。友人と示し合わせて、交換できる部屋などないことになっている。それどころか、料金も大幅に吊り上げておいた。

どうせもうすぐ死ぬのだ。立派な部屋など必要ない。腐りかけの肉塊など、どこに転がしておいても同じことだ。

案の定、義姉が理不尽な要求を突きつけてきたが、許歓は動じることなく冷静に対応した。

「あいにく、現在は満室でして。これも夏夏のお顔を立てて、なんとかご用意した部屋なんです。料金も二割引きにさせていただいております」

兄は納得いかない顔でスマートフォンを取り出し、ネットで料金を検索する。すると、表示された一泊十六万円という数字に、みるみる顔色を失っていった。

兄の月給は、わずか十万円なのだ。

これより安い民宿となると、十数キロも離れたA市まで行かなければならない。

アップグレードしようにも空き部屋はなく、彼らは歯を食いしばってその部屋に泊まるしかなかった。

荷物を置いて間もなく、義姉が食事に行こうと騒ぎ出した。

「三亜に来たからには、海鮮を食べなきゃ。獲れたてが一番よ」

その言葉に、兄は舌なめずりをし、目を貪欲に光らせた。

「悪いけど、私はやめておくわ。海鮮アレルギーだから。二人で行ってきて」

私がそう言うと、義姉は侮蔑の視線を向けてきた。「海鮮も食べられないなんて、やっぱり貧乏性なのね。じゃあ、来なくて結構よ」

私は心の中で冷笑した。食べる時はさぞ楽しいだろうが、会計の時に地獄を見るがいい。

三亜の海鮮市場は、悪質な店が紛れ込んでいることで有名だ。「自分の車で行ったはずが、ぼったくられてタクシーで帰る羽目になる」とまで言われている。

前の人生で、彼らはただ「食事に行く」としか言わなかった。

店に着いて、私は唖然とした。兄と義姉が、テーブルに乗り切らないほどの海鮮料理を注文していたのだ。アレルギー持ちの私が頼んだのは、店主に無理を言って作ってもらったチャーハン一杯だけだったというのに。

そして、その店は悪質なぼったくり店だった。会計は、合計で十八万円にも上った。

店側と一触即発の雰囲気になり、入り口ではナイフを手にしたチンピラが見張っている。

身の危険を感じた私は、仕方なくその代金を支払った。

だが今回は、私という金づるはいない。あのチンピラが振りかざす刃が、果たして兄の腹を貫くのかどうか。じっくり見物させてもらうとしよう。

二人が出かけるのを見届けると、私はすぐに友人の元へ向かった。

許歓は学生時代からの親友だ。高校から大学まで、同じクラスで寮の部屋も一緒だった。長年、私たちは深い友情で結ばれている。

私は彼女にすべてを打ち明けた。

前の人生で起きたこと、自分がどんなふうに殺されたのか。そ

して、この三亜の気温が、やがて摂氏七十度という異常な領域に達することも。

許歓は、異常気象の話に衝撃を受けるだろうと私は思っていた。

しかし彼女は、ただ私を強く抱きしめて泣き、母と兄を獣のように罵った。

「クソッ……あいつら、二人とも人でなしよ!」

「死ぬ時、すごく……苦しかったでしょう?」

その言葉に、堪えていたものが堰を切ったように溢れ出した。生まれ変わって以来、

私の心は鉄壁になったはずだった。だが、こうして優しさに触れると、いとも簡単に武装が解かれてしまう。

血縁は、情の証にはならない。共に過ごした時間と、寄り添う心こそが、本当の絆を育むのだ。

私たちは部屋で今後のことを語り合い、迫り来る熱波への対策を練った。

すべてを決め終えた、ちょうどその時だった。私のスマートフォンが鳴った。母からの着信だ。

「佳佳、早く来てちょうだい! あなたのお兄さんが、刃物で斬られたの……!」

「わかった。すぐ行く」

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