フォローする
共有
ゴミ夫に捨てられた3秒後、世界最強のシスコン・ロイヤルファミリーに拾われました。 の小説カバー

ゴミ夫に捨てられた3秒後、世界最強のシスコン・ロイヤルファミリーに拾われました。

結婚から3年、安藤咲良を待っていたのは愛のない孤独な日々だった。夫の伊藤景丞からは家柄を蔑まれ、義母からは心ない言葉を浴びせられる。さらに愛人の妊娠を機に離婚を突きつけられた彼女は、未練を断ち切り家を出る決意をした。しかし、離婚した瞬間に彼女の運命は激変する。実は彼女、世界最強の王室の血を引く令嬢だったのだ。再会した国王夫妻からは王位継承権を託され、規格外な兄たちからも過保護なほどの寵愛を受ける。武器商人の長男は莫大な富を、天才外科医の次男は復讐の技術を、そしてアクションスターの三男は圧倒的な武力で彼女を守り抜く。立場が逆転し、咲良の真の価値を知った元夫が必死に復縁を迫るが、時すでに遅し。女王として君臨する彼女の傍らには、王室が認めた完璧な騎士が控えていた。冷遇された過去を捨て、最強の家族と共に最高の人生を切り拓く、華麗なる逆転劇が幕を開ける。
共有

3

景丞の胸が、どくりと揺れた。まさか妻の口から、ここまで突き放すような言葉が出るとは思っていなかった。

だが、すぐに考えを打ち消した。咲良は、八年間も自分を愛してきた女だ。 強がってみせることはあっても、本気で離れたことなど一度もない。

それに、これは“形式上の離婚”だ。ただ一枚、離婚届が増えるだけで――二人の関係が変わるわけじゃない。

「……いい子だ、俺はもう疲れてるんだ。少しは分かってくれ」 疲れを滲ませた声でそう言い、彼は手を伸ばして、咲良の頭を軽く撫でた。どこか甘やかすような、柔らかな仕草。「サインしたら、もう寝ろ。……今夜は戻らない」

その言葉を聞いた瞬間――咲良の怒りは、逆にすっと引いていった。代わりに残ったのは、冷え切った静けさだけ。

「……触らないで」嫌悪を込めて、その手を払いのけた。そして、書類の横に用意されていたペンを手に取り――迷いなく、自分の名前を書き記した。

その様子に、景丞はほっとした。泣きも騒ぎもせず、素直に従う。――彼が好む、いつもの咲良だ。 だが同時に、胸の奥に言いようのない不安がじわりと広がった。

その感覚が気に入らず、彼はすぐにポケットから一枚のカードを取り出し、咲良へ差し出した。「……これを使え。暗証番号はお前の誕生日だ」

「……私への“ご褒美”?」咲良は、くすりと笑った。そして――そのカードを、何の躊躇もなくゴミ箱へ放り投げた。「使えないカードなんて、見せられても気分が悪いだけ」

景丞が彼女の手首を掴み、厳しい声で尋ねた。「……どういう意味だ?」

咲良は、強く腕を引き抜いた。擦れて痛みが走っても、一切ためらわない。

「――あなたのいいお母様に聞いてみれば?」 冷たい声で言い放った。「あなたのカードはね、あの人の手を通した瞬間、残高がゼロになるの」 一歩、距離を取りながら、皮肉げに微笑んだ。「……不思議でしょ?」

そう言い捨てると、咲良は振り返りもせず客間へ向かった。

手術を終えたばかりの身体は、もう限界だった。これ以上の無理はきかない。今はただ、休まなければならない。

その背中を、景丞はしばらく黙って見つめていた。やがて、傍らに控えていた執事に、軽く指を動かして合図した。「……そのカード、残高を確認しろ」

咲良は、このまま一晩中眠れないと思っていた。けれど、景丞が去ったあとは、不思議なほど静かに眠りに落ちた。

人は、失うかもしれないときこそ苦しむものだ。本当に失ってしまえば――かえって、楽になる。

ただ、胸の奥がぽっかりと抉り取られたように痛んでいた。

翌朝、五時半。いつものように、規則正しいノックの音が響いた。

「咲良、起きて。大統領閣下のコーヒーを淹れる時間よ」 それが、彼女に課せられた仕事だった。

けれど、奥枢邸の小林官長は三度呼びかけても咲良が出てこないのを見て、苛立ったようにそのまま部屋のドアを開け、ずかずかと中へ入ってきた。そして、彼女の布団を容赦なく剥ぎ取った。

初夏の朝はまだ冷える。しかもこの客間は、空調が壊れたままだった。 乱暴に布団を剥ぎ取られた瞬間――咲良の身体がびくりと震え、そのまま上体を起こした。

全身が熱い。明らかに熱がある。力も入らず、今すぐ横になりたい。

それでも、床に落ちた薄い掛け布団を拾おうと手を伸ばした、そのとき――パシンッ!乾いた音とともに、硬い木の戒尺が、彼女の手の甲を強く打った。

それは、奥枢邸の官長に与えられた権限だった。彼らは硬い木製の戒尺を持ち、それぞれの管轄下にある職員を戒め、しつけることが許されていた。

だが――咲良が景丞に付き従ってここに来てからの二年間。その戒尺が振るわれたのは――いつも、彼女だけだった。

女主管は、美咲が送り込んだ腰巾着にすぎなかった。だからこそ、あらゆる場面で咲良にだけ当たりが強かった。

この二年間――彼女の手の甲は、何度も腫れ上がった。それでも景丞は、まるで見えていないかのように何も言わなかった。 それでも咲良は――彼のために、何度も耐えてきたのだ。

「何ぼーっとしてるのよ? 奥枢邸で働けるだけでもありがたいと思いなさいよ!それなのにサボってるなんて、いい度胸ね!」

小林官長は吐き捨てるように罵りながら、再び戒尺を振り上げた――

その瞬間。咲良はその手首を掴み、強引に戒尺を奪い取ると――そのまま、思いきり振り下ろした。

「きゃああっ!!」乾いた音とともに、小林官長の悲鳴が響いた。

逃げようとしたその身体を――咲良は容赦なく髪を掴み、引き戻した。「逃げるな」低く吐き捨てた。そして、さらに強く戒尺を振るった。

あれだけ気持ちよさそうに自分を打っていたじゃない。

今度は、あなたが味わえばいい。

バキッ――

これまで自分が受けてきた仕打ちを、全部そのまま返してやるつもりだった。けれど、あの戒尺があまりに脆く、叩いているうちにぽっきり折れてしまった。

咲良はそれ以上は追わず、手を離した。「……失せろ」低く言い放った。

小林官長は這うようにして客間から逃げ出した。廊下にいた使用人たちは、その惨めな姿をすべて見ていた。 その場で今すぐ咲良を殺してしまいたいほどの憎しみに駆られた。

覚えてなさいよ……美咲お嬢様が来れば……あんたなんて終わりよ!

咲良は、その場に立っているのもやっとだった。熱が、さらに上がっている。喉の渇きに耐えきれず、水を一気に流し込む。そして、震える身体を布団にくるみ、再びベッドへと倒れ込んだ。

――次に目を開けたとき。咲良はすでに、数人のたくましい女中に両脇を抱えられ、引きずられるようにして景丞の前に連れてこられていた。

男はソファに深く腰掛け、冷え切った表情を浮かべている。その隣には――か弱く身を寄せるように、美咲が座り、しくしくと泣いていた。

「……昔から、咲良は私のことを嫌っていて…… それでも、私はずっと我慢してきた。でも……まさか、小林官長が私の推薦で奥枢邸に入っただけで……こんな目に遭わせるなんて……」

涙をこぼしながら、肩を震わせた。「戒尺まで折れるほど打たれて……小林官長、どれだけ痛かったか……っ」

「私の不徳の致すところです」小林官長も、目に涙を浮かべながら頭を下げた。「大統領閣下、山本様……すべて私の力不足です。部下一人、きちんと指導できず……」

今にも抱き合って泣き崩れそうな二人を見て――景丞はそっと手を伸ばし、美咲の肩を引き寄せた。「もういい、泣くな。……体に障る」低く、優しくなだめる声。「子どもに良くない」

その一言に、美咲の涙はさらに勢いを増した。

「……私、小林官長一人すら守れないのに……どうやってこの子を守ればいいの……? いっそ、このまま……」

立ち上がると、ふらりとテーブルへ向かった。そこに置かれていた果物ナイフへ手を伸ばした。

「やめろ!」景丞の顔色が変わった。慌ててその手を掴み、そのまま強引に引き寄せると――彼女の身体を抱きしめた。「馬鹿なことをするな。落ち着け」

「……景丞、放して…… 咲良が見てるわ……また怒らせちゃう……」

美咲は、彼の腰にしがみつくように腕を回す。そのまま、彼の胸に身を預けた。 その唇の端には、かすかな笑みが浮かんでいた。潤んだ瞳が、咲良をかすめる。――その奥にあるのは、あからさまな挑発。

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
全編を読むには、moboreaderで「95QDS」を検索してください。
コードをコピーし、Moboreaderアプリで検索して続きをお楽しみください。
95QDS
コピー
公式サイトを開く

おすすめの作品

アルファの隠し子、奪われた私の特効薬 の小説カバー
8.2
毒に侵され、三年にわたり死の淵を彷徨っていた私にとって、夫である首領・城島譲は唯一の希望だった。献身的な伴侶を演じる彼を信じ、解毒薬「月華の霊薬」を待っていたが、運命の絆を通じて残酷な真相を知ってしまう。譲は群れの癒し手に、貴重な霊薬を愛人の母親へ与えるよう命じていたのだ。「玲奈が息子を産んでくれた」――彼には隠し子がおり、私への看護はすべて、死を待つための偽装に過ぎなかった。彼は私の両親が遺した神聖な家を愛人との生活で穢し、群れには霊薬が盗まれたと嘘をつき、私の死を自らの利益に利用しようと画策していた。病に伏す私を「病気の雌狼」と蔑み、使い古しのスープを差し出す夫。しかし、彼は気づいていない。虐げられた私がどれほどの怒りを宿したかを。その夜、私は身を引き裂くような痛みに耐え、彼との運命の絆を自ら断ち切った。結婚指輪を捨て、嘘に満ちた家を後にする。私は決して屈しない。裏切り者の世界が燃え尽きるその日まで、執念で生き抜いてみせる。
神になる の小説カバー
8.3
雲上の高みから転落し、卑しき奴隷の身へと零落したゼン。しかし、自らの肉体を武器として錬成するという数奇な転機を経て、彼の運命は激動の渦中へと投げ込まれる。神器に匹敵する強靭な身体と、何事にも屈しない不撓不屈の信念を武器に、彼は再び頂点へと這い上がるための歩みを始めた。各地の豪傑たちが覇権を巡ってしのぎを削り、一刻一刻と情勢が変転する乱世において、ゼンの出現は巨大な抗争の幕開けを告げる。あらゆる強敵をその身一つで圧倒し、打ち破ることを誓った彼が真に目覚めたとき、比類なき伝説が静かに、そして力強く動き出す。これは、過酷な境遇から這い上がり、己の力ですべてをねじ伏せていく男の軌跡を描いた壮大な冒険譚である。神のごとき躯を持つ彼が歩む道の先には、果たしてどのような結末が待ち受けているのか。周囲の思惑をよそに、ゼンはただ己の道を突き進んでいく。新たな時代の覇者となるべく、伝説の第一章が今ここに刻まれる。
蹂躙された七年婚〜私を戦場に置き去りにした男〜 の小説カバー
9.6
結婚七周年を迎えたその日、平穏な日常は一瞬にして崩れ去った。大使館から届いたのは、滞在先のA国で武力衝突が始まるという緊急の退避勧告。パニックに陥る街で、私は夫からの「階下で待て」という指示を信じ、救急キットを手に必死の思いで駆け出した。しかし、約束の時間を過ぎても夫は現れない。戦火が迫る恐怖の中でようやく繋がった電話の向こうから聞こえてきたのは、あまりに無慈悲な言葉だった。「機密書類で車が一杯だ。それに、戦争を怖がるあの子を優先して避難させる」。愛するはずの夫は、私を戦場へ置き去りにすることを選んだのだ。大使館のバスに乗れと冷たく言い放つ彼の声に、七年間積み上げてきた愛情は粉々に砕け散った。絶望の淵に立たされた私は、もはや彼に縋ることをやめる。轟音と火の海に包まれる街で、私はただ一人、生き延びるために救急キットを背負い直した。裏切りという名の消えない傷を胸に刻み、赤く染まった戦地の中を、私は自らの足で歩き始める。
死亡フラグを物理で叩き割ったら、家族全員がホームレスになりました。 の小説カバー
9.3
水無瀬時雨は、婚約者の手によってトラックの前に突き飛ばされた。彼が守りたかったのは時雨ではなく、使用人の娘だったのだ。死の淵から生還した時、彼女の心に宿っていた献身的な愛は完全に消え失せていた。時雨は、自分を裏切った婚約者や恩知らずな三人の兄たちとの決別を決意し、復讐を開始する。当初、兄たちは彼女が気を引こうとしているだけだと楽観視していたが、その傲慢さはすぐに絶望へと変わる。時雨が資金を引き揚げたことで長兄の会社は倒産に追い込まれ、代筆を拒まれた次兄の才能は偽りだと暴かれた。さらに三兄も彼女のサポートを失い、レース界から追放される。すべてを失い、ホームレス同然となった兄たちは、かつての妹に泣きついて許しを請うが、もはや手遅れだった。圧倒的な権力を誇る新たな婚約者の傍らで、時雨は冷徹に絶縁状を叩きつける。かつての優しさは消え、彼女は自らの手で運命を切り拓いていく。裏切り者たちに用意されたのは、救いのない破滅という結末だけだった。
Death Real ~現実での女子高生は憂鬱すぎるので、ゲームの世界でPKしまくります!~ の小説カバー
8.7
革新的なオリジナリティを追求し、世界中から熱い視線を浴びる最新のVRMMORPG「Beyond Ideal Online」。通称「BIO」と呼ばれるこの仮想現実の世界に、突如として正体不明の最凶プレイヤーが姿を現した。その人物は、情け容赦のないプレイヤキラー(PK)として瞬く間に悪名を轟かせ、全ユーザーを恐怖に陥れていく。本名はおろか、その素顔や目的さえも一切が謎のベールに包まれており、プレイヤーたちの間では様々な憶測が飛び交っていた。しかし、血も涙もない残虐なプレイスタイルを貫くその正体は、現実世界では誰もが羨むような完璧な美貌を持つ17歳の女子高生、柏崎葵であった。清楚な外見からは想像もつかないが、彼女は日々の鬱屈した現実を忘れるかのように、ゲーム内での殺戮行為に歪んだ悦びを見出していたのだ。「キルたのちい」と独りごちながら、彼女は今日も仮想世界で獲物を狩り続ける。美しき女子高生による狂気的なPKライフが、今幕を開ける。
血に染まる羽衣 の小説カバー
9.6
世間では美談として語り継がれる、天上の仙女と人間の皇帝による愛の物語。しかし、その裏側に隠された凄惨な真実を、娘である阿狸だけは知っていた。母は法力の源である羽衣を奪われ、父によって無理やり人間界に繋ぎ止められていたのだ。七歳の夜、阿狸が目にしたのは、皇帝の腕の中で屈辱に耐え、心身ともに衰弱しきった母の姿だった。母は死の間際、娘の身を案じて「早く逃げなさい」と告げ、自らの命を賭して阿狸に自由を託す。血に染まりながらも、最後には呪縛から解き放たれたような晴れやかな笑みを浮かべて息を引き取った母。その冷たくなった亡骸を抱きしめ、阿狸の手には一本の小刀が固く握りしめられていた。母を苦しめ、その尊厳を蹂躙し続けた者たちへの激しい憎悪が、彼女の心に消えない復讐の火を灯す。母が命を懸けて切り拓いてくれた孤独な道の先で、阿狸は誓う。母を虐げたすべての人間に、必ずや死の報いを受けさせることを。悲劇の連鎖を断ち切るため、彼女は修羅の道へと足を踏み出す。