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冷血御曹司の溺愛包囲網からは絶対に逃げられない。 の小説カバー

冷血御曹司の溺愛包囲網からは絶対に逃げられない。

信じていた真実の愛が残酷な嘘だと知った時、榊原詩織の運命は一変した。婚約者と実の妹は裏で繋がり、彼女の財産を奪おうと画策していたのだ。裏切りの果てに純潔を失った詩織は、復讐を果たすべく、残忍で気まぐれと恐れられる長谷川彰人との婚姻契約に踏み切る。周囲は彼女の破滅を予想したが、聞こえてくるのは彰人からの過剰なまでの溺愛ぶりだった。妹が詩織の過去を罵れば、彰人はその相手が自分であると告げて一蹴し、元婚約者が詩織を見下せば、最高級の宝石を玩具として与え、彼女の価値を証明してみせる。どんな窮地からも守ってくれる彼の献身を、詩織は契約上の演技だと言い聞かせていた。しかし、契約期間が満了し、自由の身になろうとした彼女を待っていたのは、冷徹なはずの男による強引な拘束だった。寝室に閉じ込められ、夜通し愛を刻み込まれた詩織が契約違反を訴えると、彰人は狂気すら孕んだ熱い視線で彼女を見つめる。彼は最初から、一時的な協力関係など望んでいなかった。指先で彼女の唇を辿りながら、彰人は「終身契約」への更新を執拗に迫るのだった。
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2

特別病室の中、机の上のスマホが絶えず震えていた。だが、傍らにいる1組の男女はそれに見向きもせず、激しく口づけを交わしていた。

「明彦お兄ちゃん、またお姉ちゃんからの浮気チェックだよ……私とお姉ちゃん、どっちの方が好き?」

女は色っぽい表情を浮かべていた。なんと彼女は、詩織の異母妹である榊原美咲だった。

有馬明彦は直接スマホの電源を切り、待ちきれない様子で彼女の服の中に手を滑り込ませた。

「もちろんお前に決まってるだろ、ハニー。榊原詩織みたいな退屈な女が、お前に敵うわけない。あいつが将来お前の家の株を手に入れるから付き合ってやってるだけだ」

美咲の目の奥に鋭い光が走った。「あの株は今、あのイカれたお母さんの手にあるの。榊原詩織が結婚したら渡されることになってるけど、榊原詩織は一生あの株を手に入れられないわよ」

明彦は興味津々で尋ねた。「どうしてだ?」

「もし榊原詩織が結婚する前に清原和音が死ねば、株はお父さんのところに戻ってきて再分配されるからよ」 美咲は悪意に満ちた笑みを浮かべた。「清原和音は白血病になったでしょ? 適合したドナーが誰だか当ててみて?」

詩織はドアを押し開けようとしていた手をピタリと止めた。嫌な予感が頭をよぎる。

「そう、私よ!」

美咲は得意げに笑い出した。「榊原詩織のバカは夢にも思ってないでしょうね。自分の母親に骨髄を提供してくれる親切な人の正体が、この私だなんて。私が提供に同意しなきゃ、あの母親はただ死を待つしかないわ。死んだら、お父さんに頼んで株を全部私に譲ってもらうの!」

「ハニー、お前は本当に天才だな!」

明彦は目を輝かせた。「それじゃあ愛しのお姫様、未来の王子様になる栄誉を俺にくれないか?」

美咲は甘えるように彼の胸を軽く叩いた。「私の体は、とっくにあなたのものじゃない。言わなくても分かるでしょ」

2人は情熱的に見つめ合い、抱き合って唇を貪り合った……

ドアの外で、詩織は血走った目で2人を睨みつけていた。喉の奥に血の味がこみ上げてくる。

全部嘘だったのだ!

明彦が口にしていた愛の言葉も嘘!

母が親切な人から骨髄提供を受けられるというのも嘘!すべては計算され、利用されていたのだ!

彼らが思い描く輝かしい未来は、血まみれになった母の屍を踏み台にして成り立つものだった!

絶対に許せない!

必ず代償を払わせてやる!

詩織は憎しみを込めて2人を睨みつけると、音を立てずにその場から離れた。

無菌室は上の階にある。

和音はその中で眠っていた。手の甲には点滴が繋がれている。骨髄破壊が終わった今、彼女の体は極度に弱りきっており、点滴だけで辛うじて生命を維持している状態だった。

詩織は透明な防護ガラス越しに母を見つめた。頭の中では、医師からのメッセージが何度もリフレインしていた。

もし移植ができなければ、和音は1週間もたない。

詩織はためらっている暇などなく、すぐに連絡先に入っている人たちへ電話をかけ始めた。

美咲が提供を続けることなど絶対にあり得ない。そして、頼みの綱だと思っていた明彦は……人間の皮を被ったクズだった。

他の人に助けを求めるしかない。

しかし、これだけ大勢の人がいる中で、和音に適合する骨髄を今から見つけるなど、そう簡単なことではない。

やがて、空が白み始めた。

連絡先の番号すべてにかけたが、詩織は何も得られなかった。

ドンドン。

鈍い音が響き、詩織は顔を上げた。和音はいつの間にかベッドから降りていた。分厚い防護ガラス越しにドアを叩きながら、詩織に向かって口元を吊り上げ、狂ったように笑っている。

ここ数年、周りの人間は和音を頭のおかしい女だと忌み嫌っていた。だが詩織にとって、彼女はずっと優しくて愛情深い母だった。

(でもお母さん、もう私を見ないで。)

(もう、どうにもできないみたい。)

詩織はよろめきながら後ずさりし、母の視線から逃れた。

死角まで下がっても、和音は無理な体勢で首を伸ばして彼女を見ようとした。自分に迫る死の運命など知らず、まるで能天気に笑い続けている。

詩織はもう堪えきれず、壁に寄りかかったまま力なくその場にへたり込んだ。顔を覆い、声を上げて泣き崩れた。

突然、バタバタと乱れた複数の足音が響き渡った。

詩織が涙でぼやけた視界の中で顔を上げると、数人の黒服の男たちが目の前に立っていた。「そこのお嬢さん、うちのボスがお呼びです。ご同行願えますか」

病院の下には、控えめながらも高級感が漂うカリナンが停まっていた。

後部座席には、隙のないスーツを着こなした長谷川彰人が座っていた。冷酷な眉間には怒らずとも人を威圧するオーラが漂い、長い指で時折膝を叩く動作が、今の彼の苛立ちを表していた。

その時、ボディガードが車の窓をノックし、恭しく頭を下げて言った。「旦那様、お連れしました」

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