私を捨てるなら、全部持って行っていい の小説カバー

私を捨てるなら、全部持って行っていい

8.8 / 10.0
『私を捨てるなら、全部持って行っていい』は、裏切られた妻が自立し、真の愛と成功を掴む姿を描いた現代のromanceストーリー。夫の不倫を知り、慰謝料すら捨てて離婚を決意した唐澤晚香。元夫が後悔し跪く一方で、彼女はテクノロジー企業のトップとして再起する。そんな彼女を独占しようとするのは、世界を牛耳る大富豪の御曹司だった。billionaire romance novelsの中でも、自立した女性の逆転劇と権力者との情熱的な恋が楽しめる一冊。人気のwebnovelで、執着と野心が交錯するドラマチックな展開を今すぐチェック。
「私を捨てるなら、全部持って行っていい」のあらすじ
結婚から三年間、唐澤晩香は夫の岩田皓輝が仕事に励んでいると信じ、夜の営みがない生活も耐えてきた。しかし最愛の母を亡くした日、夫から突きつけられたのは浮気による離婚宣告だった。驚くべきことに、皓輝は新婚初夜から晩香の義妹・依奈と不貞関係にあったのだ。裏切りを知った晩香は、一切の未練と優しさを捨て、慰謝料すら受け取らずに家を出る決断を下す。周囲は「お嬢様気取りの強がりだ」「すぐに泣きつくはずだ」と彼女を嘲笑した。しかし、自立したテクノロジー企業のトップという真の姿を持つ彼女が、後悔に暮れることはなかった。やがて立場は逆転し、雨の中で跪き「行かないでくれ」と縋り付く皓輝の姿が世間を騒がせる。復縁を問う記者に対し、晩香は「自分を愛さない相手しか愛せない困った人」と冷ややかに一蹴した。そんな彼女を背後から抱き寄せたのは、表裏の両社会を支配する真の大物だった。「俺の妻を狙うなど、できるものならやってみろ」と彼は独占欲を露わにする。裏切りから始まる、華麗なる逆転劇が幕を開ける。
もっと見る

私を捨てるなら、全部持って行っていい 第1章

「……私、結婚してるんです」

闇の中で、唐澤晚香は壁際に押しつけられていた。鋼のような腕が逃げ道を塞ぎ、首筋を熱い息がなぞる。身体が、びくりと震える。

男は彼女の腰を掴み、鼻で笑った。「結婚してるくせに、まだこんな『仕事』続けてんのか?……旦那、知ってんの?」

その一言が、胸を鋭く刺した。

一時間前、彼女のスマホに一本の動画が届いた。

――夫・岩田皓輝と、異母妹の依奈。互いに裸同然の姿で、ベッドの上で絡み合っている。

晚香は裏切りの証拠を押さえるため、指定されたホテルへと向かった。

だが、部屋番号を確認する間もなく、背後から現れた男に、力ずくで部屋に引きずり込まれた。

「今さら清純ぶるな」 男は彼女を抱き上げ、ベッドに叩きつけた。ネクタイを裂き、手首を縛り、唇を奪う。呼吸ができない。

「既婚者なら、慣れてるんだろ?」嘲り混じりの声とともに、布地が次々と破かれていく。

「私、まだ……っ!」言いかけた声が喉で詰まる。

結婚して三年。彼女は、まだ誰のものにもなっていなかった。

けれど、それを口にしたところで、誰が信じる?

怒りが、腹の底からこみ上げた。もう、どうでもよかった。

痛みも、屈辱も。全部、燃やしてやる。

唇を噛みしめると、尖った犬歯が皮膚を裂く。血の味が、口いっぱいに広がった。

三年間、守ってきた夜を。夫のために、大切にしてきたものを。こんな形で、知らない男に奪われるなんて。

顔すら知らない、名前も知らない相手に。

……

翌朝。スマホの振動で、晚香は目を覚ました。病院からの着信だった。

『唐澤さん!すぐ帝都病院へ!お母様が――!』

背後から、低い声が落ちた。「……旦那からの『お目覚めコール』か?」昨夜の男、まだベッドにいた。

その嘲りを無視して、晚香は散らばった服を掻き集める。「昨夜のことは、忘れてください」小さくそう言い残し、俯いたまま身を翻した。

昨夜の過ちは、報復。そう言い聞かせるしかなかった。

男は半裸のまま、薄く笑った。

「思ったより奔放だな。旦那がいても外で遊んで、終われば知らん顔か」

何も言い返さず、晚香はドアを叩き開けた。母の元へ、一刻も早く行かなくては。あの男と関わる気など、もう一切なかった。

――そして、ドアが閉まる。静寂の中、秘書の佐々木直樹がノックとともに入ってきた。「加賀社長……その、昨夜の件ですが……」

加賀律真はこめかみを押さえ、深いため息を吐いた。「俺のベッドに女を放り込んだのは……婆さんか?」

佐々木は肩をすくめ、こくりと頷く。

(やっぱりな。大奥様の差し金か。)律真は舌打ちした。

帝都第一財閥の総帥にして、A国最大の上場企業のトップ――その俺が、よりによって既婚女に『初夜』をくれてやるとはな。

昨夜、あれほど激しく抱いたのに、あの女は一度も声を上げなかった。泣きも、喘ぎもせず。……まるで、何も感じていないみたいに。「冷たい女だ」だが、不思議と記憶に残る。

朝の、あの虚ろな目。俺を見もしないで去っていった姿。

婆さんも、どこからあんな女を見つけてきたのか。

昨夜、酒にさえ酔っていなければ……

ふと、視線がシーツに落ちた。

白い布に、赤い点が散っていた。律真の眉が、僅かに動く。

(……既婚、じゃなかったのか?)

出て行く時、彼女の唇が切れて血が滲んでいた。

だが、もしも、あれが、そういう意味だったとしたら、昨夜の俺の行為は……

タクシーの車窓から、灰色の空が流れていく。

病院のロビー。そこに立つ二人の姿が、晚香の足を止めた。――皓輝と、異母妹の依奈。依奈が夫の腕に絡みつき、勝ち誇ったように笑う。

晚香の目が、充血する。「……あなたたち、いつから?」

依奈は甘えるように皓輝の肩に顔を寄せた。「あんたが結婚した、その日よ。義兄様は、私のベッドに来たの」

「三年経っても『処女』なんて、 笑えるわよね?」

依奈の甲高い笑い声が、病院の白い空間に響き渡った。

頭の中で、何かが壊れた音がした。氷水を注がれたような静けさが、晚香の心を満たしていく。

この三年間、晚香は、良妻賢母を絵に描いたように生きてきた。朝に弁当を作り、夜は夫の帰りを信じて待つ。その繰り返しの中で、彼だけを愛してきた。なのに、彼は。あの新婚の夜から、ずっと依奈と……。

結婚してから、一度も皓輝は晚香に触れなかった。「仕事が忙しいから」そう信じて疑わなかった。けれど、本当は、最初から別の女を抱いていたのだ。それも、自分の妹を。

目尻がじわりと赤く染まる。

どうして、気づかなかったんだろう。

子どもの頃から、依奈は何でも欲しがった。玩具も、服も、友達も。そして今度は――男まで奪った。

「晚香、離婚だ」皓輝の声は氷のように冷たかった。 「何も持たずに、この家から出ていけ」

心臓を、鋭い刃で抉られたようだった。

三年間、尽くしてきた結果が、これだ。

「皓輝。……私が、お金目当てだったとでも?」

彼女は金のために結婚したわけじゃない。母は名家の出で、家の資産も十分にある。少なくとも、金に困ったことなんて一度もなかった。

「まだお嬢様気取りか?」皓輝は鼻で笑った。 「お前の母親が死ねば、お前なんて乞食同然だ」

その言葉に、晚香の体がびくりと震えた。「……どういうこと?」

「病室、行ってみたら?」依奈が唇を歪める。「今なら、お母様の『最期』に間に合うかもね?」 紅く艶めいたその唇が、血のように見えた。

悪い予感が背中を突き動かす。晚香は無我夢中で病室へ駆け込んだ。

「唐澤清子、手首を切って自ら命を絶ち、享年四十八歳」

医師の冷たい声が、鈍器のように頭を打った。

「……嘘、です。母はずっと意識が……はっきりしない状態だったのに……自殺なんて、するはず……!」 涙が頬を伝う。

だが、医師は淡々と答えた。 「搬送されたとき、お母様は意識がはっきりしていました」

理解が、追いつかない。

十年以上も意識が混濁していた母が、なぜ、今になって?

その時、病室の入口に二つの影。皓輝と依奈が並んで立っていた。

依奈は笑いながら、一枚の紙を彼女の顔に叩きつけた。「ほら、見なさいよ。お母さんの遺書。自殺だったことも、あんたが相続を放棄するって書いてあるわ」 乾いた紙の音が、静寂を裂く。「さっきお父様から連絡があったの。――あんたは、唐澤家から追放。今日からあんたは、一文無しの乞食よ」

続きを読む

私を捨てるなら、全部持って行っていい 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

アルファの偽りの番、オメガの静かなる戦い の小説カバー
8.7
最下層のオメガである私は、アルファのカイネと「運命の番」として結ばれ、幸せな物語の中にいた。彼の世継ぎを身籠って八ヶ月、その愛を疑うことなどなかった。しかし、偶然見つけた羊皮紙がすべてを覆す。彼は一年前、別の女のために世継ぎを成せぬ体となる儀式を済ませていたのだ。私との日々は、彼とその部下たちが仕組んだ残酷なゲームに過ぎなかった。お腹の子の父親が誰かを賭けの対象にされ、寒い夜には慰みものとして嘲笑われる。さらに彼は私に薬を盛り、最愛の女性であるセイラに私の膨らんだ腹を蹴らせ、意識を失った私の体を部下たちへの褒美として差し出した。信じていた未来は、吐き気を催すほど歪んだ娯楽として踏みにじられた。心も体も無残に引き裂かれた私は、絶望の淵でただ壊れたわけではない。その心は氷のように凍てつき、復讐の炎を宿した。私は禁忌の薬草を煽り、自らの手で胎内の命を断つ。これは絶望による幕引きではない。私を弄んだ者たちすべてを地獄へ引きずり戻すための、孤独で苛烈な戦争の始まりなのだ。
裏切られた妻の覚醒:天才研究者の華麗なる復讐 の小説カバー
8.1
夫の親族が集まる法事の最中、私は夫の暁と未亡人・絢子の不貞を目の当たりにする。私は研究者としての輝かしいキャリアを捨て、妻として彼を支え続けてきた。しかし夫は、私の研究成果を絢子の手柄として横流しし、心臓病を患う娘が発作で苦しむ夜さえも、嘘をつく絢子を優先したのだ。献身を裏切られた絶望と、愛する娘をないがしろにされた怒りが私を突き動かす。降りしきる雨の中、私は決意した。奪われた研究データと娘の親権を必ず取り戻し、二人には相応の報いを受けさせると。どん底に突き落とされた天才研究者による、冷徹で華麗な復讐劇がいま幕を開ける。
元妻の究極の復讐 の小説カバー
8.7
二十年連れ添った夫・神宮寺朔也が自ら命を絶ち、遺した言葉は妻の私ではなく、義妹の鈴原凛に向けられたものだった。夫は最期に、私が心血を注いだIT帝国の全てを、かつて我が子を間接的に死に追いやった憎き凛へと譲り渡したのだ。絶望の淵で人生を終えたはずの私は、気づけば十代の頃、神宮寺家の養子に選ばれる運命の日へと回帰していた。児童養護施設の喧騒の中、私はかつての夫である朔也と再会する。しかし、目の前の彼は驚愕に顔を歪め、私の名を呼んだ。彼もまた、あの凄惨な結末の記憶を抱えたまま過去に戻っていたのだ。「今度こそ君を救う」と、罪悪感に満ちた瞳で誓う朔也。だが、その言葉は空虚に響く。前世で彼の「救済」を信じた結果、私は愛する息子を失い、人生の全てを奪われたのだから。裏切りと後悔に彩られた過去を背負い、二人の二度目の人生が幕を開ける。これは、愛憎の果てに全てを失った女が、運命の歯車を狂わせる男と対峙し、己の矜持を取り戻すための物語である。復讐か、それとも決別か。交錯する記憶の中で、真実の愛の形を問うサスペンス・ロマンス。
愛を欺いた男に、最後の裁きを—— の小説カバー
9.3
見知らぬ女に肉体を乗っ取られた私は、絶望の淵に立たされていた。その女は私の人生を蹂躙し、愛する両親と絶縁させただけでなく、最愛の兄を事故に遭わせ、植物状態へと追いやったのだ。すべては一人の身勝手な男を追い求めるための暴走だった。長い歳月を経てようやく自身の体を取り戻した私は、人生を狂わせた男への復讐を誓う。華やかな大スターの仮面を剥ぎ取り、社会的地位を失墜させた私に、男は涙ながらに縋りつく。だが、私の怒りは収まらない。あえて離婚を拒み、男を追い詰めると、彼は私を殺害するために刺客を放った。張り巡らされた幾重もの罠が交錯するなか、男の真の正体と罪状が暴かれ、彼は富も名誉もすべてを失って終身刑の判決を受ける。ついに私の意識を侵食し続けていた女の存在も消え去り、忌まわしい過去から解放された。奪われた時間と絆を取り戻すため、私は静かに、そして力強く新たな人生の一歩を踏み出す。愛と憎しみの果てに掴み取ったのは、真実の裁きと平穏な未来だった。
ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない の小説カバー
8.8
幼い頃に全てを奪われ、孤独の中で育った池田新奈。彼女はかつて自分から母や居場所を奪った者たちへ復讐し、本来あるべき権利を取り戻すため、再び上京市へと足を踏み入れる。しかし、世間は彼女を「落ちこぼれの不良娘」と蔑み、冷酷な視線を向けるばかりだった。そんな中、街を牛耳る権力者・横山宴之介が彼女を妻に迎えると宣言し、周囲は「正気か」と騒然となる。だが、宴之介だけは新奈の真の姿を見抜いていた。彼女は伝説の神医、世界屈指のハッカー、そして王室すら畏敬する天才調香師という、世界を揺るがす複数の顔を持つ実力者だったのだ。夫の執拗なまでの溺愛に戸惑いながらも、新奈は彼の手を借りずとも圧倒的な力で敵を追い詰めていく。会議中であっても彼女を離そうとしない宴之介の過保護ぶりに周囲が呆れる中、新奈の隠された正体が次々と暴かれていく。かつて彼女をゴミのように扱った人々は、そのあまりに強大な真実に直面し、絶望と後悔に震えながら跪くことになる。愛と復讐が交錯する中、最強の令嬢による華麗なる逆襲劇が今、幕を開ける。
二度目の人生、姉の踏み台にはならない の小説カバー
8.8
実家の破産をきっかけに、私は姉の学費を捻出するため芸能界へと身を投じた。過酷な接待や不本意な仕事に耐え、心身を削りながら金を稼ぐ日々。しかし、清廉潔白を装う姉は、私の献身を「名誉欲に駆られた卑しい行為」と蔑み、私が苦労して得た金を他人の支援に充てて善人面をした。姉を画壇の寵児にするため、私は泥を被りライバルの醜聞を暴いたが、彼女はその恩恵を享受しながらも私を「心根の腐った人間」と非難し続けた。やがて私は姉の宿敵から報復を受け、全てを失い巨額の負債を抱える。絶望の中で姉に助けを求めたが、彼女は「自業自得の報いだ」と冷酷に突き放した。姉の踏み台として利用され、絶望の果てにビルから身を投げた私。だが、目を覚ますとそこは芸能界に入ったばかりの過去だった。自分を犠牲にしてまで姉を支える道はもう選ばない。二度目の人生、私は自分の尊厳を守り、偽善に満ちた姉に依存される未来を拒絶することを誓う。今度こそ、私は私自身のために生きる。
今すぐ読む
共有