ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない の小説カバー

ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない

8.8 / 10.0
母を奪われ捨てられた池田新奈は、奪われた全てを取り戻すため上京市へ帰還する。「無能」と蔑まれる彼女だが、その正体は伝説の医師や天才ハッカーという顔を持つ世界的権力者だった。独占欲の強い billionaire 横山宴之介に溺愛されながら、正体を隠し復讐を果たす現代 romance。この web novel では、周囲の嘲笑を圧倒的な実力でねじ伏せていく爽快なサクセスストーリーが描かれる。正体が露見した時、世界は彼女の真の姿を知ることになる。
「ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない」のあらすじ
幼い頃に全てを奪われ、孤独の中で育った池田新奈。彼女はかつて自分から母や居場所を奪った者たちへ復讐し、本来あるべき権利を取り戻すため、再び上京市へと足を踏み入れる。しかし、世間は彼女を「落ちこぼれの不良娘」と蔑み、冷酷な視線を向けるばかりだった。そんな中、街を牛耳る権力者・横山宴之介が彼女を妻に迎えると宣言し、周囲は「正気か」と騒然となる。だが、宴之介だけは新奈の真の姿を見抜いていた。彼女は伝説の神医、世界屈指のハッカー、そして王室すら畏敬する天才調香師という、世界を揺るがす複数の顔を持つ実力者だったのだ。夫の執拗なまでの溺愛に戸惑いながらも、新奈は彼の手を借りずとも圧倒的な力で敵を追い詰めていく。会議中であっても彼女を離そうとしない宴之介の過保護ぶりに周囲が呆れる中、新奈の隠された正体が次々と暴かれていく。かつて彼女をゴミのように扱った人々は、そのあまりに強大な真実に直面し、絶望と後悔に震えながら跪くことになる。愛と復讐が交錯する中、最強の令嬢による華麗なる逆襲劇が今、幕を開ける。
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ゴミ扱いされた私が、実は世界的権力者だなんて言えない 第1章

夜の上京市、郊外。

「ドボン!」

暗闇の中、重い水音が響き、静寂を破った。

川辺で休んでいた池田新奈は、その水しぶきを全身に浴びた。

ふと、鼻をついたのは鉄錆の匂い。

彼女にとって、それは嗅ぎ慣れた匂い。

血の匂い。

(水に落ちたのは人間。しかも、傷を負ってる)

その推察を裏付けるかように、ほど近い茂みから、押し殺したようなの声が聞こえてきた。

「続けろ!」

「どんな些細な手がかりも見逃すな!」

「生かして帰すな!」

ほどなくして、複数の乱れた足音が耳に迫ってきた。

新奈は咄嗟に身を起こし、その場を離れようとしたが、何かに足首を強く掴まれた。

「助けてくれ……何でも言うことを聞く……」男の声は弱々しく、今にも消え入りそうだ。

その直後、足首を掴む力はふっと抜け落ち、男は動かなくなった。

どうやら、気を失ったらしい。

医者として、目の前の命を見捨てるわけにはいかない。

(これも何かの縁。ならば、救っておくか)

新奈はそう思案しながら、静かに手を動かした。

ウエストポーチから小瓶を取り出し、暗闇の中、指先の感触を頼りに薬を一粒、男の口へと押し込んだ。

足音がじりじりと近づき、揺れる微かな光がこちらを窺い始めた。

彼女は息を殺し、水へと身を沈めた。そして、男の体も水中に押し込み、気配を絶った。

ほどなくして数人の黒服の男たちが現れたが、川面はすでに静まり返っていた。

一行はあたりをしばらく探していたものの、手がかりを得られず、そのまま足早に立ち去った。

人影が完全に遠のいたのを確認すると、彼女は水面から姿を現し、男の身体を引きずって岸へと上げた。

夜の川の水は骨身に染みるほど冷たく、思わず小さなくしゃみが漏れた。

一息つく間もなく、彼女は素早く男の状態を確かめる。

まだ息があるのを確かめると、間髪入れずに心肺蘇生を施した。

どれほどの時間が経っただろうか。男は突然激しく咳き込み、大量の水を吐き出した。

新奈は男の鼻先に手をかざし、かすかな呼吸を感じ取ると、ようやく安堵の息を漏らした。

雲間から月が顔を出し、柔らかな光が辺りを照らし出す。

新奈の目に、男の彫りの深い顔立ちが映った。

なんて綺麗な人。

その時、横たわっていた男の身体がわずかに動いた。

男はかすかに瞼を持ち上げると、ぼやけた視界に少女の姿を捉えた。

月明かりに照らされた、少女の鎖骨。その上に浮かぶ黒い三日月のタトゥーが、鮮烈に目に焼き付いた……。

横山宴之介は視線を上へと滑らせ、少女の顔を確かめようとしたが、瞼は鉛のように重い。

意識は遠のき、再び深い闇へと沈んでいった。

彼女はその様子を見届けると、さらに一粒の薬を男の口に含ませた。

月明かりを頼りに濡れた身体を調べると、腰のあたりに傷が見つかった。

傷口は深く、今なおじわりと血を滲ませている。

だが、幸い急所は外れおり、過度な失血が意識を奪ったのだろう。

彼女は男の服を引き裂いて傷口を洗い、手早く止血の薬を塗り込んだ。

手当てを終えると、彼女は悪戯心に、男の整った顔をつまんだ。

「命拾いの薬、一気に二粒も飲ませたんだから。あなたのその命、結構高くついたわよ」

ひとまず命を救い出すと、新奈は自身の持ち物を確認し、その場を後にしようとした。

だがその時、男の言葉が脳裏をよぎり、彼女は思わず足を止めて男の全身を観察し始めた。

やがて彼女の視線は、首元で揺れる宝石のペンダントに吸い寄せられた。

全体が透き通るような赤色を帯びたそれは、月光を浴びて、息を呑むほどに妖艶な美しさを放っていた。

「求めることは特にない。でも、こういう珍しい物は好きなのよ」

そう呟くと、彼女は身を屈め、そのペンダントをさっと抜き取った。

「命を助けた代わりに、このペンダントはもらっていくわよ。これでチャラね」

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