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イカした恋とイカレた妖刀の冒険譚 の小説カバー

イカした恋とイカレた妖刀の冒険譚

武芸の道に全てを捧げ、ストイックに己を磨き続けてきた傭兵時代。しかし、待っていたのは無慈悲な敗北と挫折の記憶だった。そんな過去を持つ主人公が流れ着いたのは、巨大なカイザード帝都。そこで彼は、捨て犬のような境遇からボトマーズギルド・ハニカムに拾われることになる。かつての面影はどこへやら、現在の姿は「怪人イカ男」と呼ばれるイカの姿をした異様な怪人。さらには、何事にも無気力で面倒を嫌い、金欠に喘いでは物事が裏目に出るチンピラのような男へと転生を遂げてしまっていた。本作は、そんな風変わりな主人公を中心に、物語の語り手が次々と入れ替わる独創的な構成で描かれる新感覚のファンタジー・アクションだ。イカした風貌のイカれた妖刀使いが、混沌とした帝都を舞台にどのような冒険を繰り広げるのか。先の読めない展開と独特の語り口が、読者を不思議な世界観へと引き込んでいく。かつての挫折を胸に秘めた男の、斜め上を行く新たな人生が幕を開ける。
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3

俺の現在地‥‥異世界の名も無き大陸にある、カイザードという名の新興帝国。

 叡智王を冠し、一代にして軍事帝国を築き上げた傑物[魔導皇帝アル・カイザード]よって支配されている。

 主に中世ヨーロッパやギリシャ神殿のような石材建築、所々に和風の木造建築。

 そして、未来の研究所のような鉄材建築が入り混じった和洋折衷の街並み。

 様々な人型種族が棲んでいて、コミュニケーション可能な種族の総称として[人間]という代名詞が使われている。

 四方を風水的に守護された地形の帝都は、堅固な城塞都市だ。

 周辺の領土は、農地開拓が進んでいる。

 それに加え、そこかしこに迷宮が点在していて、迷宮を中心に集落が存在する。

 そこでは犯罪者すれすれのアウトロー[最底辺者=ボトマー]達が、剣や魔法を駆使して、迷宮探索で生計を立てている。

 帝都のメインストリートから離れ、入り組んだ路地の先。

 人通りの少ないアーケード商店街の片隅に、ひっそりと存在する建物のひとつ。

 六角形を組み合わせたデザインに[ハニカム]と書かれている看板が出ている。

 時は、カイザード帝国暦十年、弥月25日・風曜。季節は初春だ。

 先ほどから降り始めた激しい雷雨。

 いつもは日光を燦々と取り入れる天窓を強い雨が叩き、暗めの店内。

 木製の丸テーブルと椅子が並び、奥には複数の個室扉と二階への階段。

 あらくれ者が集まる[ボトマーズギルド]と呼ばれる酒場兼宿屋。

 客は、俺独り‥‥再び、カウンターで突っ伏した。

 初めて鏡で自身を見た時にも思ったが、なかなか奇抜な姿をしている。

 それもそのはず、俺は[カラス]という種族に転生していた。

 まず、全身が濃い灰色、ほぼ黒と言って差し支えない。

 黒っぽい三角帽子からは、手入れの行き届いていない伸び放題の黒髪が覗く。

 気怠そうな着流し姿。

 心なしか、周囲の雰囲気まで、どんより重い。

 俺の周囲だけ、暗いモノトーン調になってやがる。

 そして、着流しから複数本ハミ出した謎の物体がデローンと床に垂れている。

 それには、整然と並ぶ吸盤模様。

 黒い鳥のカラスが一瞬浮かぶが、俺は[カラス賊]。

 この賊は誤植ではない。

 漢字に変換してみれば、その種族性が見えてくる。

 [水の民カラス賊]と呼ばれ、水辺を縄張りとする水賊種族。

 体色は主に白や緑が多いらしい。

 ある海洋生物を彷彿とさせる容姿‥‥烏賊から進化した人型種族って何だよって話さ。

 そこで稲光、俺の体が鈍く光を反射した。

 遅れてゴロゴロと雷鳴。

 俺のボディは生身ではなく、長身痩躯のサイボーグ。

 頭部だけが生身だったって訳よ。

 眩しくて、反対を向いた。

 眠そうな、丸く少し垂れ気味の目と腑抜けた顔をしてる事だろう。

 抜き身のまま、包帯を巻いた刀を二本。

 クロスして背負っている。

 俺の年齢は、現在18歳らしい。

 だが、溌剌とした若さは感じられないだろうぜ。

 転生当初、傭兵として最強の剣豪になるべく武者修行していた頃の面影は、もう無い。

 人相風体を一言で表すならば[怪人イカ男]‥‥これがピッタリ当てはまるのさ。

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