
イカした恋とイカレた妖刀の冒険譚
章 3
俺の現在地‥‥異世界の名も無き大陸にある、カイザードという名の新興帝国。
叡智王を冠し、一代にして軍事帝国を築き上げた傑物[魔導皇帝アル・カイザード]よって支配されている。
主に中世ヨーロッパやギリシャ神殿のような石材建築、所々に和風の木造建築。
そして、未来の研究所のような鉄材建築が入り混じった和洋折衷の街並み。
様々な人型種族が棲んでいて、コミュニケーション可能な種族の総称として[人間]という代名詞が使われている。
四方を風水的に守護された地形の帝都は、堅固な城塞都市だ。
周辺の領土は、農地開拓が進んでいる。
それに加え、そこかしこに迷宮が点在していて、迷宮を中心に集落が存在する。
そこでは犯罪者すれすれのアウトロー[最底辺者=ボトマー]達が、剣や魔法を駆使して、迷宮探索で生計を立てている。
帝都のメインストリートから離れ、入り組んだ路地の先。
人通りの少ないアーケード商店街の片隅に、ひっそりと存在する建物のひとつ。
六角形を組み合わせたデザインに[ハニカム]と書かれている看板が出ている。
時は、カイザード帝国暦十年、弥月25日・風曜。季節は初春だ。
先ほどから降り始めた激しい雷雨。
いつもは日光を燦々と取り入れる天窓を強い雨が叩き、暗めの店内。
木製の丸テーブルと椅子が並び、奥には複数の個室扉と二階への階段。
あらくれ者が集まる[ボトマーズギルド]と呼ばれる酒場兼宿屋。
客は、俺独り‥‥再び、カウンターで突っ伏した。
初めて鏡で自身を見た時にも思ったが、なかなか奇抜な姿をしている。
それもそのはず、俺は[カラス]という種族に転生していた。
まず、全身が濃い灰色、ほぼ黒と言って差し支えない。
黒っぽい三角帽子からは、手入れの行き届いていない伸び放題の黒髪が覗く。
気怠そうな着流し姿。
心なしか、周囲の雰囲気まで、どんより重い。
俺の周囲だけ、暗いモノトーン調になってやがる。
そして、着流しから複数本ハミ出した謎の物体がデローンと床に垂れている。
それには、整然と並ぶ吸盤模様。
黒い鳥のカラスが一瞬浮かぶが、俺は[カラス賊]。
この賊は誤植ではない。
漢字に変換してみれば、その種族性が見えてくる。
[水の民カラス賊]と呼ばれ、水辺を縄張りとする水賊種族。
体色は主に白や緑が多いらしい。
ある海洋生物を彷彿とさせる容姿‥‥烏賊から進化した人型種族って何だよって話さ。
そこで稲光、俺の体が鈍く光を反射した。
遅れてゴロゴロと雷鳴。
俺のボディは生身ではなく、長身痩躯のサイボーグ。
頭部だけが生身だったって訳よ。
眩しくて、反対を向いた。
眠そうな、丸く少し垂れ気味の目と腑抜けた顔をしてる事だろう。
抜き身のまま、包帯を巻いた刀を二本。
クロスして背負っている。
俺の年齢は、現在18歳らしい。
だが、溌剌とした若さは感じられないだろうぜ。
転生当初、傭兵として最強の剣豪になるべく武者修行していた頃の面影は、もう無い。
人相風体を一言で表すならば[怪人イカ男]‥‥これがピッタリ当てはまるのさ。
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