フォローする
共有
捨てられ妻、敵の将に奪われて の小説カバー

捨てられ妻、敵の将に奪われて

敵対する部族のアルファに捕らえられたその瞬間、かつての夫は運命の番とともに美しい日の出を眺めていた。私の窮地を知らされても、彼は冷淡な声で「拘束しておけ」と言い放つ。少しばかり苦痛を味わえば、自分に縋りつくこともなくなるだろうと突き放したのだ。生死の境に立たされ、逃げ場を失った私は、生き延びるために敵の将へと縋りつくしかなかった。「殺さないで。何でも言う通りにするから」と震える声で懇願し、自らの身を差し出したのだ。時が経ち、ようやく彼が私の存在を思い出した頃には、すでに状況は一変していた。敵方のアルファは、隣で安らかに眠る私の横顔を愛おしげに見つめ、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。かつての夫に向かって、彼は静かに告げた。「来るのが遅すぎたな。今の彼女は、もうお前のもとへ帰れるような状態ではないのだから」と。捨てられた妻が敵の腕の中で新たな運命に翻弄される、愛と執着の物語。
共有

3

私は一切の躊躇なく、玄関へ駆け寄ると自分の荷物をかき集め始めた。

かつてロックが贈ってくれた品々、私の服やアクセサリーが、すべて無造作に玄関に山積みされていた。

一つひとつ手にとって整理していると、涙が不意に頬を伝った。

ロックはしばらく後ろで黙って見ていたが、やがてためらいがちに近づき、私の腕を掴んで引き起こした。

「片付けるな。新しいものは、いくらでも買ってやる」

「デビーが子を産めば、彼女は俺の伴侶となる。だが、君との関係が変わるわけじゃない」

私は愕然とした。 「私に、あなたの日陰の恋人になれとでも言うの!?」

彼は屁理屈をこねる。「俺たちは愛し合っている。一緒になるのは当然のことだろう。そんな言い方はないんじゃないか」

私は彼を突き放し、黙々と荷物の整理を続けた。

もしロンとの約束がなければ、このタイミングで戻ってくることなど決してなかっただろう。

彼と言葉を交わすたび、胃の腑が煮えくり返るような思いがするからだ。

彼の言葉のすべてが、私の自尊心を容赦なく踏みにじっていく。

だが、荷物をすべて改めたというのに、あの指輪だけが見つからなかった。

「ロック、私が昔あなたにあげた指輪はどこ?」

ドアに寄りかかっていたデビーが、すっと自分の手を持ち上げた。「これのこと?」

エメラルドが陽光を浴び、きらりと妖しい光を放った。

私は矢のように駆け寄り、指輪を奪い返そうとした。

しかし、デビーの指に触れるよりも早く、彼女はわざとらしく後ろへ倒れ込んだ。

「きゃっ! ジュリー、どうして私を押すの!」

「押してない――」

言葉を言い終える前に、私はロックに荒々しく突き飛ばされた。

昨日殴られた背中の傷が開き、床に長い血の痕を引いた。

昔は、私の指が少し切れただけで狼狽したロックが、今はこの惨状を一瞥だにしない。

彼は壊れ物を扱うかのように優しくデビーを支え起こした。「大丈夫か?」

その声音は水のように優しく、先ほどまでの私に対する凶暴な形相とはまるで別人だった。

「わざとはめたわけじゃないの。ただ、綺麗だと思って……」

彼女は指輪を外そうとするふりをしながら、涙声で言った。「ごめんなさい。今すぐ返すから、叩かないで」

彼女が哀れに見えれば見えるほど、ロックの私に対する怒りは増していく。

彼はデビーの手を固く握った。「これは彼女が俺に贈ったものだ。どうしようと俺の勝手だろう」

「君にやると言ったんだ。なら、これは君のものだ!」

「ロック――」私の弱々しい声が、彼の注意を引き戻した。

地面に蹲って起き上がれない私と、床に広がる血痕が、彼の目に焼き付いた。

「なぜ、こんなに血が……?」

見間違いだっただろうか。彼の瞳の奥に、一瞬だけ痛みの色がよぎった気がした。

デビーが彼の腕にしがみつく。「ロック、全部私が悪いの。やっぱり一度、自分の家に戻るわ」

ロックは我に返ると、彼女を安心させるように強く抱きしめた。「去るべきは、君じゃない」

私はようやく床から体を起こし、ふらつく足で二人の前に立った。

「ロック、私は出て行くわ。だから、お願い。指輪を返してくれない?」

「あれは……両親が遺してくれた、たった一つの形見なの。お願い」

これほどまでに、自分が卑屈になったことはなかった。

「指輪を返してくれるなら、部族での特権はすべて放棄する」

私は歯を食いしばった。「私は……ローグにだってなるわ」

「正気か!」

ロックは信じられないというように吼えた。「そんな言葉、軽々しく口にしていいと思っているのか!」

だが、彼の言葉はもう私の耳には届かなかった。私はただ、指輪を返してほしいと懇願し続けた。

ついには、地面に膝をついて。

ロックは、私の額から流れる真っ赤な血の筋に視線を落とすと、舌打ちし、指輪を私の目の前に叩きつけた。

「消えろ!二度と俺の前に顔を見せるな」

失われたはずの指輪を握りしめると、荒れ狂っていた心が不思議と静まった。

立ち上がったとき、先ほどまでの脆さや懇願は跡形もなく消え失せていた。

「ロック。これで、私たちにはもう何の関係もない」

「後悔しないでね」

続けて視聴する!
物語はいよいよ佳境へ!アプリに切り替えて続きを読む
全エピソードをロック解除
公式サイトを開く

おすすめの作品

棄てられたLunaの逆襲:最強の息子と共に、偽りの狼王を裁く の小説カバー
7.9
妊娠五ヶ月の身でありながら、彼女は最愛の番から屈辱的な命令を下される。母の命を救うため、道化として酒を煽り、泥を啜るような宴の余興に耐え忍んだ。しかし、そこで突きつけられたのは、母は三ヶ月も前に彼の手で葬られていたという残酷な真実だった。裏切りと絶望の果て、彼女は衆人環視の中で伴侶の契約を断絶し、身籠ったまま夜の闇へと姿を消す。残された男は狂乱し、血を吐く思いで五年の歳月を費やして彼女の行方を追い続けた。そして五年後、彼女は伝説の「最高位魔薬師」として華麗なる帰還を果たす。その傍らには、男の面影を色濃く残す毒舌な息子の姿があった。再会したかつての傲慢な狼王は、土砂降りの雨の中で跪き、卑屈なまでに許しを請い縋りつく。だが、冷徹にその行く手を阻んだのは幼き息子の容赦ない一言だった。「おじさん、下手な芝居はやめて。死んだ元カレだけが、唯一の良い元カレだってママが言っていたよ」。偽りの愛を掲げた狼王への、母子による壮絶な逆襲劇が今幕を開ける。
アルファ・キングの消されたメイト の小説カバー
8.9
最強のアルファであるリアムは、かつて私との絆を「月の女神が授けた至高の愛」と謳った。しかし、その言葉が残酷な虚飾に過ぎなかったことを私は知る。彼にはすでに身ごもった愛人が存在し、あろうことか公衆の面前で彼女を自らの女王として遇していたのだ。愛人は、私に贈られたはずの神聖な番いの証である首飾りを誇示する写真を送りつけ、執拗に私を追い詰める。群れの者たちも、愛人が世継ぎを産めば、血統に問題のある私は排除される運命だと冷酷に囁き合っていた。裏切りに満ちた日々に終止符を打つため、私は二人の記念日に特別な贈り物を用意する。箱の中に収めたのは、署名済みの離婚届と、運命の絆を断ち切る公式な離縁状。愛という名の幻想を捨て去った私は、彼らの前から永遠に姿を消す決意を固めた。信じていた番いへの未練を断ち切り、自分自身の尊厳を取り戻すための逃避行が今始まる。裏切りのアルファ・キングと、運命に抗い自由を求めたメイトの愛憎劇。
アルファの王の禁断の愛、秘めたる復讐 の小説カバー
9.7
最強のアルファである黒崎戒のルナとして過ごした三年間。私は贅沢な品々に囲まれながらも、彼からの愛を一度も感じたことはなかった。彼の瞳が捉えていたのは私ではなく、常に背後に潜む誰かの影だったのだ。父が危篤に陥った際、私は運命の番である彼に必死に助けを求めたが、無情にも拒絶されてしまう。父の最期に立ち会うことも叶わず絶望する中、私に届いたのは、パリで叔母の莉央を慈しむように抱きしめる彼の姿だった。帰国した彼は通信の不具合だと平然と嘘をつくが、書斎に隠された日記が残酷な真実を暴き出す。私との出会いも救出劇も、すべては愛する叔母の身代わりを手に入れるための巧妙な罠だった。私はただの器に過ぎず、宿した新しい命さえも偽りの愛の産物でしかなかったのだ。裏切りを知った私は、彼を欺いて妊娠を隠す儀式の承諾書と白紙の離縁状に署名させる。長老会へ書類を提出し、私は決然と新大陸行きの船へと乗り込んだ。彼の手の届かない場所で、私という存在を永遠に葬り去るために。
アルファの偽り、オメガの蜂起 の小説カバー
8.0
治癒院での過酷な連続勤務を終えた私は、愛する伴侶、神楽湊の喜ぶ顔を思い浮かべながら帰路を急いでいた。しかし、彼がいたのは縄張りの外れにある別邸。そこには見知らぬ女性と幼い男の子と共に、幸せそうに微笑む湊の姿があった。潜伏して耳にしたのは、あまりに非情な真実だ。湊は私を「繋ぎのオメガ」と蔑み、政治的利用価値がなくなれば捨てる駒だと断じた。私を育てた現アルファ夫妻さえも、この欺瞞に加担していたのだ。運命の絆さえもが仕組まれた嘘だと知った直後、彼から届いた「会いたい」という甘いテレパシーが、私の悲しみを冷徹な怒りへと変えた。彼らは来る晩餐会で、私を公衆の面前で追放し、辱める計画を立てている。だが、私も相応の報いを用意した。彼の息子の誕生日を祝うパーティー、その最中に届くのは、彼らの醜い裏切りと秘密をすべて暴くデータクリスタルだ。偽りの愛に溺れたアルファに、絶望という名の贈り物を。復讐の幕が今、静かに上がる。
イカした恋とイカレた妖刀の冒険譚 の小説カバー
9.2
武芸の道に全てを捧げ、ストイックに己を磨き続けてきた傭兵時代。しかし、待っていたのは無慈悲な敗北と挫折の記憶だった。そんな過去を持つ主人公が流れ着いたのは、巨大なカイザード帝都。そこで彼は、捨て犬のような境遇からボトマーズギルド・ハニカムに拾われることになる。かつての面影はどこへやら、現在の姿は「怪人イカ男」と呼ばれるイカの姿をした異様な怪人。さらには、何事にも無気力で面倒を嫌い、金欠に喘いでは物事が裏目に出るチンピラのような男へと転生を遂げてしまっていた。本作は、そんな風変わりな主人公を中心に、物語の語り手が次々と入れ替わる独創的な構成で描かれる新感覚のファンタジー・アクションだ。イカした風貌のイカれた妖刀使いが、混沌とした帝都を舞台にどのような冒険を繰り広げるのか。先の読めない展開と独特の語り口が、読者を不思議な世界観へと引き込んでいく。かつての挫折を胸に秘めた男の、斜め上を行く新たな人生が幕を開ける。
~八歳の王女~不死鳥のごとく甦る の小説カバー
8.2
前世で最も高貴な嫡流皇女として生きた彼女は、家族や夫の愛を一身に浴び、傲慢な性格を募らせていた。しかし、その幸福は全て「母」が仕組んだ罠だった。夫と姉の裏切りを知り、最愛の息子が夫の手で殺害される惨劇を目の当たりにした彼女は、毒杯を煽り、深い怨恨を抱いたまま命を落とす。だが、次に目覚めた時、彼女は八歳の幼き皇女へと転生を遂げていた。その愛らしい体には、前世の悲劇で磨かれた狡猾な野心が宿っている。鳳凰が炎の中で再生するように、彼女もまた美貌と権謀術数を武器に、自分を貶めた者たちへの千倍の復讐を誓う。二度目の人生では国を掌握し、裏切り者を完膚なきまでに叩き潰すと決意したのだ。そんな彼女の前に、圧倒的な武勲を誇り、並ぶ者なき美貌を持つ大国の親王が現れる。当初はこの世に自分と釣り合う女などいないと断じていた彼だったが、無邪気な仮面の下に冷徹な計略を秘めた幼い皇女に、いつしか翻弄されていく。最強の親王をも従わせる彼女の覇道が、今ここから幕を開ける。