アルファの王の禁断の愛、秘めたる復讐 の小説カバー

アルファの王の禁断の愛、秘めたる復讐

9.7 / 10.0
最強のアルファである黒崎戒のルナとして過ごした三年間。私は贅沢な品々に囲まれながらも、彼からの愛を一度も感じたことはなかった。彼の瞳が捉えていたのは私ではなく、常に背後に潜む誰かの影だったのだ。父が危篤に陥った際、私は運命の番である彼に必死に助けを求めたが、無情にも拒絶されてしまう。父の最期に立ち会うことも叶わず絶望する中、私に届いたのは、パリで叔母の莉央を慈しむように抱きしめる彼の姿だった。帰国した彼は通信の不具合だと平然と嘘をつくが、書斎に隠された日記が残酷な真実を暴き出す。私との出会いも救出劇も、すべては愛する叔母の身代わりを手に入れるための巧妙な罠だった。私はただの器に過ぎず、宿した新しい命さえも偽りの愛の産物でしかなかったのだ。裏切りを知った私は、彼を欺いて妊娠を隠す儀式の承諾書と白紙の離縁状に署名させる。長老会へ書類を提出し、私は決然と新大陸行きの船へと乗り込んだ。彼の手の届かない場所で、私という存在を永遠に葬り去るために。

アルファの王の禁断の愛、秘めたる復讐 第1章

三年間、私は強大なアルファ、黒崎戒(くろさきかい)様のルナだった。

彼は私に湯水のように贈り物をくれたけれど、愛情だけは一度もくれなかった。

彼が私に触れる時、その瞳は私を通り抜け、私には見えない誰かの幻影を探していた。

人間の父が死にかけている時、私は神聖な念話で彼に助けを求めた。

運命の番(つがい)である彼の慰めが欲しかった。

でも、彼は私を拒絶した。

父が独りで死んでいく間、私は九十九回、彼を呼び続けた。

二日後、ベータである橘さんから、戒様がパリにいる映像が送られてきた。

そこには、私には一度も見せたことのない優しさで、叔母の莉央(りお)を抱きしめる彼の姿があった。

帰国した彼は、大陸間では念話が途切れるせいだと、いとも簡単に嘘をついた。

真実は、彼の書斎に隠されていた。

そこは、叔母への愛を祀る神殿だった。

彼の日記がすべてを暴露していた。

私たちの最初の出会いも、はぐれ狼の襲撃から私を救ってくれたことも、すべては彼が本当に愛する女の代用品を手に入れるための、仕組まれた嘘だったのだ。

私はただ、叔母の血筋を引く器にすぎなかった。

そして、私のお腹に宿った子狼も、その嘘から生まれた命だった。

だから私は、彼を騙して二つの巻物に署名させた。

一つは、私の妊娠を魔法のように隠すための古い儀式の承諾書。

もう一つは、白紙の離縁状。

それに署名し、長老会に提出した後、私は新大陸行きの船に乗り込んだ。

彼の世界から、永遠に私という存在を消し去るために。

第1章

エララ視点:

三年間、私はアルファである黒崎戒様のルナだった。

私たちの群れ、黒月(こくげつ)一族は、巨大な同族経営のコングロマリット。

彼はそのCEOであり、王であり、アルファだった。

世間に対しては冷酷な実業家。

一族の者たちにとっては、力と古の血統から生まれた指導者。

そして私にとっては、運命の番。

月の女神様が、私の魂のために創ってくださったはずの、唯一の存在。

彼は私に贈り物の雨を降らせた。

都心を見下ろすペントハウス。

一度も袖を通すことのない服で埋め尽くされたクローゼット。

一度も運転することのない高級車。

女狼が望むものすべてを与えてくれた。

ただ一つ、私が渇望していたものを除いて。

彼自身を。

彼が私に触れる時、それは私に向けられたものではない、絶望的な渇望に満ちていた。

その手が私の肩を掴み、その瞳は私を通り抜けていく。

そして彼の香り――松と冬の霜が混じり合った力強い香りが、私を圧倒する。

それは愛というより、征服に近かった。

まるで、私を抱きしめることで、誰かの幻影を所有しようとしているかのように。

私は自分に言い聞かせた。

これは彼のアルファとしての性質なのだと。

力強く、支配的で、圧倒的。

私は群れで一番幸運な女狼。

皆の羨望の的。

なんて愚かだったのだろう。

真実は、私にしか聞こえない悲鳴から始まった。

人間の父が、死にかけていた。

彼は群れの者ではなかったけれど、私の血を分けた家族だった。

私は戒様に念話を送った。

番とそのアルファを繋ぐ、決して断ち切られてはならない神聖な絆。

「戒様、お願い。あなたが必要なの。父が……逝ってしまう」

沈黙。

私はもう一度、痛みに満ちた必死の叫びを送った。

「戒様!」

分厚い壁が、私の意識の中に叩きつけられた。

冷たく、硬い障壁。

彼は私を拒絶した。

それはあまりにも残酷な断絶で、まるで物理的な一撃のように、私の肺から空気を奪い去った。

私は九十九回、彼を呼び続けた。

そのたびに、私の声は沈黙の壁にぶつかり、消えていった。

父は独りで死んだ。

私も独りで悲しみに暮れた。

静寂の苦しみが二日続いた日、ふと、一つの映像が心に浮かんだ。

戒様からではなかった。

ベータである橘真琴(たちばなまこと)さんからだった。

彼は戒様の右腕で、忠誠心に厚い人だったけれど、その忠誠はまず群れに向けられていた。

真琴さんはずっと、戒様の冷酷さが、いずれ群れを内側から蝕む弱点になると危惧していた。

彼が送ってきた映像は、単なる同情ではなかった。

それは警告であり、行動を促す合図だった。

雨に濡れたパリの街角に立つ、戒様。

その腕には、一人の女性が抱かれていた。

彼は、私が一度も知ることのなかった優しさで彼女を抱きしめ、まるで彼女の魂そのものを吸い込むかのように、その首筋に顔を埋めていた。

私の魂は、氷の洞窟に突き落とされた。

私はその女性を知っていた。

そのシルエットも、その顔の向け方も。

叔母の、莉央だった。

母の妹。

三日後、戒様が帰ってきた。

彼は殺風景で静まり返った我が家に入ってくると、疲れたような心配そうな仮面を顔に貼り付けていた。

「ヨーロッパ支社で緊急事態があってね」

磨き上げられた石のように滑らかな声で、彼は言った。

「大陸間では念話が不安定になるんだ。そばにいられなくて、すまなかった」

その嘘は、あまりにも淀みなく、完璧だった。

私は泣かなかった。

叫びもしなかった。

ただ、胸の中で凍りついた石のようになった心を抱え、彼を見つめた。

「寂しかったです」

空虚な声で、私は言った。

「お詫びの印に、署名してほしい巻物が二つあります。アルファが大事な時に不在だった場合の、群れの古いしきたりなんです」

彼の黒い瞳に、罪悪感がちらついた。

彼は、愛情深い番を演じるためなら何でもするだろう。

「もちろんだ、愛しい人。何でも」

彼は私の後について、大きな樫のテーブルまで来た。

私は古めかしい二つの羊皮紙を広げた。

彼はろくに目も通さず、蝋の封に親指を押し付けた。

彼のアルファの印章が、血のように赤い色で承認の証を刻んだ。

彼は自分が何をしたのか、全く分かっていなかった。

一つ目の巻物は、「子狼生命感応遮断の儀式」。

胎児の生命の兆候を隠し、まるで存在しなかったかのように見せかける、古の薬草師の契約書だった。

二つ目は、白紙の「離縁承諾書」。

すでに私の署名が入っている。

あとは、彼の拒絶の証拠さえあれば、法的な効力を持つことになる。

その夜、私はこれまで決して足を踏み入れなかった場所へ向かった。

彼の私室、アルファの書斎。

彼はいつも、群れの仕事専用だと言っていた。

そこに仕事の書類などなかった。

部屋は、神殿だった。

空気は彼女の香りで満ちていた。

ラベンダーとバニラの微かな香りが、革張りの椅子や重厚なカーテンに染み付いている。

壁は、彼女の肖像画で埋め尽くされていた。

笑っている莉央。

本を読んでいる莉央。

狼の姿の莉央。

机の上には、革装丁の日記があった。

古い狼の言葉で書かれている。

彼の日記。

彼女への愛を綴った、十年にも及ぶ物語。

そして、彼が最後に書いたページに、私の心の最後の欠片を打ち砕く真実があった。

私たちの出会い。

彼が私を救ってくれた「はぐれ狼の襲撃」。

月の女神様が私の英雄を遣わしてくださったと信じた、あの瞬間……。

すべてが、嘘だった。

彼が仕組んだ芝居だった。

彼は、私が彼女に似ているから私を選んだ。

彼は、私が彼女の血を引いているから私に印をつけた。

彼のすべての愛情も、すべての感触も、すべての贈り物も……。

それはただ、別の女性の幻影を見つめる男が映し出す、虚像にすぎなかった。

私は日記を握りしめ、その部屋を出た。

群れの闇の癒し手――秘密と禁断の薬草を扱う老婆――を訪ねた。

儀式を始める時が来た。

嘘から生まれたこの子狼を、本当に望まれていない世界に産み落とすわけにはいかない。

この子はただ……消えるのだ。

そして、私も。

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