
余命66日の妻を裏切った夫
章 2
私たちの子狼は月の女神の祝福を受けたが、父親の愛情を得ることはなかった。
窒息しそうな感覚が、一気にこみ上げてくる。
気を失いかけたその時、甲高い音が突然鳴り響いた。
私の携帯電話が、一通のメッセージを受信したのだ。
目に飛び込んできたのは、女の裸体と、その体に顔を埋める男の姿だった。
それがアレクサンダーであることは、一目でわかった。
彼は私たちの車の中で、初恋の相手であるセレーナにオーラルセックスをしていた。
「彼の犬みたいな舌は、相変わらず器用ね」
その瞬間、まるで千本の針で全身を同時に突き刺されたかのようだった。
痛い、心が、あまりにも痛い!
アレクサンダーは本当に浮気していたのだ。
なのに、なぜ先ほどは何も感じなかったのだろう。
床に倒れ込んだ剎那、下腹部に生暖かいものが流れ出るのを感じた。
私たちの子が、私から離れていこうとしているのがわかった。
だめ、行かないで!
最後の力を振り絞り、アレクサンダーに電話をかける。
家にある唯一の車は彼が乗って行ってしまった。今はただ、彼が戻ってきて病院へ連れて行ってくれることを祈るしかない。
どうあっても、この子も彼の子なのだ。必ず私たちを助けに戻ってきてくれるはずだ。
私は心の中でそう自分に言い聞かせた。
しかし、立て続けに13回電話をかけても、応答はなかった。
下腹部の痛みは次第に増していき、私は思わず体を丸めた。
仕方なく、法外な料金を払って救急車を呼んだ。
しかし、2時間経っても救急車はまだ来ない。
「車の中でセックスしている者がいまして」
救急隊員から電話があった。「ここは道が一本しかなく、狭くて通り抜けられないんです」
同時に、一本の動画が送られてきた。
動画の中では、大柄な男が裸の女を庇うように立ち、冷酷な声で救急隊員に警告していた。
「誰を助けに来たか知らんが、今すぐ失せろ……」
「アルファ? あなたのルナから緊急の連絡を受けて……」
救急隊員が焦ってそう言うが、アレクサンダーは言葉を遮った。
「あいつに緊急の用などあるものか。 俺の気を引きたいだけだろう」
「今になって俺の邪魔をするとは、ルナ失格の証拠だ」
「言ったはずだ、すぐに失せろと……」
結局、救急隊員は迂回を余儀なくされた。
さらに4時間が経過し、ようやく救急車が到着した。
その頃には、私の全身は冷や汗と血でびっしょりと濡れていた。
涙が頬を伝い、私は心の中で何度も月の女神に祈った。どうか、私たちの子が無事でありますように、と。
しかし、私の体はますます重くなっていく。
手から携帯電話が滑り落ちそうだった。
だが、意識を失う直前まで、私はまだ子供のかすかな心音を感じ取ることができた。
しかし、私が目覚めた時、あのかすかな心音は、完全に消え失せていた。
医師は私を見つめ、深いため息をついた。
「お子さんは……助かりませんでした」
「もし我々がアレクサンダー氏に遭遇しなければ……」
「彼は、あなたと番になった時の誓いを裏切ったのです」
「もしかしたら、お子さんはその命をもって、あなたに真実を伝えようとしたのかもしれません」
私の頭の中は真っ白になった。
涙が目尻から流れ落ち、心臓を鷲掴みにされたかのようだった。
私のアルファ、私の愛する人が、私たちの子を死なせたのだ。
私たちの子が死にかけているまさにその時、その父親は別の女を抱いていた。
あの二人が、私の子を殺したのだ!
苦しい息をつくと、突然、腹部に鋭い痛みが走った。
それに呼応するように、私の中の狼も哀れな叫びを上げた。
感じる。今この瞬間も、あの二人が体を重ねているのを。
目の前が暗くなる。だが同時に、一つの疑問が頭の中を満たしていた。
なぜ、私は彼の裏切りを感じ取れなかったのだろう?
なぜ、私の体は今になってようやく痛みを感じているのだろう?
おすすめの作品





