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100年越しの月下美人 の小説カバー

100年越しの月下美人

古くから続く陰陽師の名門に生まれた御子柴聖は、幼少期から類いまれなる才覚を発揮し、一族の期待を一身に背負っていた。しかし七歳の頃、伝説の大妖怪・八岐大蛇が一家を襲撃。一族は無残に惨殺され、聖自身も右脚を失うという悲劇に見舞われる。さらに彼女の身には、持ち主の命を糧として吸い尽くす「月下美人の呪い」が刻まれてしまった。絶望の淵に立たされながらも、聖は生き延びるために過酷な運命と対峙し続ける。惨劇から十年の月日が流れ、十七歳へと成長した彼女は、自らの命を蝕む呪縛を解き放つため、そして一族の仇を討つために、再び立ち上がることを決意する。彼女の前に立ちはだかるのは、闇夜を跋扈する恐るべき百鬼夜行の軍勢。失われた右脚と呪いの痛みを抱えながら、聖は凄絶な戦いの中へと身を投じていく。死と隣り合わせの激闘を繰り広げる彼女を待ち受けているのは、果たして救済か、それともさらなる絶望か。命を削る月下美人が咲き誇る時、宿命の歯車が大きく動き出す。
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隔離姫と下僕の少年

 御子柴聖 七歳 あたしの家は明治時代から歴史のある御子柴家の末裔。

 代々古くから伝わる陰陽師一家。

大妖怪八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を封印し続けている。

屋敷の地下に岩に封じ込めた八岐大蛇が眠っている。

札と縄が部屋中に巻かれている。

あたしは一族の中でも逸材だったらしく、あたしの存在を外に漏らさないように御子柴家の別荘地の古屋に隔離されていた。

 3つ下の弟、御子柴楓(みこしばかえで)が居たけれど中々会わせてもらえなかった。

 鉄格子から見える太陽と月だけが部屋を明るくする。

 部屋にはお札と妖怪退治専用の武器だけ。

部屋の扉は鍵が何重にも巻かれ分厚い扉。

ある時、楓が鍵を開けてくれて外に出た事があった。

 御子柴家の敷地内にある花畑で遊んでいた事がお婆様にバレてしまい、楓がこっ酷く怒られ一週間水業の罰が与えられた。

 あたしは楓を庇ったけど聞き入れてくれなかった。

両親でさえも弟を庇おうとしなかった。

御子柴家党首の御子柴陽毬(みこしば ひまり)父型の祖母には誰も逆らえ無かった。

 陰陽師としも活躍していた祖母は御子柴家の子供達を陰陽師として育てる為に厳しい教育をあたし達にしてきた。

 才能が無いと見出された子供は親共々、御子柴家から追放されていた。

そんな祖母に誰も逆らおうとしなかった。 両親はあたしの部屋に一度も顔を見せに来なかった。

 顔を見せにくるのは弟の御子柴楓(みこしばふうと)とあと1人…。

コンコンッ 。

「お嬢、起きてますか?」

布団に入って眠っていたあたしはドアのノック音で目が覚めた。

 「お嬢、開けますよ。」

 ガラガラ 声の主が何重にも巻かれた鍵を開け重たい扉を開けた。  

茶髪に白い肌、紫の瞳の男の子。

 「蓮(れん)!!どうしたの?お仕事だったんじゃ無いの?」

 「今帰りました。お嬢にお土産です。」

 そう言って蓮はあたしに綺麗な枝付きの桜の花を渡した。

 「折ったら駄目なんだよ?」

 「拾い物だから大丈夫ですよ。」

 蓮はあたしに優しい笑顔を見せてくれた。

そう、もう1人とはこの本城蓮(ほんじょうれん)だ。

 代々御子柴家の護衛をしている本城一族の本家の次男坊だ。

蓮と契りを交わしたのは今から二年前の事だ。

 本城家は御子柴家の手となり足となり、主従関係を結ぶのが敷きたりであった。

 人を信用しなかったあたしは蓮の事を拒否していた。

 だけど蓮は何度もあたしに会いに来て信用を築こうとしてくれたそれが何より嬉しかった。

 あたしの誕生日の日に蓮と契りを交わした。

 弟以外に心を開いた相手だった。

「今日はどんなお話聞かせてくれるの?」

 「そうですね…今日は…。」

蓮はこうやって本城家を抜け出してあたしに会いに来てくれる。

 蓮と他愛の無い話をするのが嬉しかった。

「そうなんだぁ!!いいなぁ…あたしも普通の生活したいな…。」

「お嬢。僕はお嬢を此処から連れ出したいよ。」 そう言って優しく手を握って来た。

 「蓮…。」

 「お嬢にこんな場所は似合わないよ。」

 「ありがとう蓮。だけどお婆様には逆らえないよ。蓮が酷い事されちゃうよ。」

「お嬢…。」

「いつかあたしを連れ出してね?」

「約束します。必ず…。」

 蓮と指切りをした。

 お婆様に逆らったら蓮が酷い目に合う。 楓の時に思い知らされた。

 あたしが我慢すれば良い…。

 蓮が帰った後にまた扉がノックされた。

 「聖様。出陣のご用意を。」

あたしは寝衣の服を脱ぎ、巫女服を身につけお札と部屋に置いてあった武器を手に取った。

 「準備は出来ている。」

 あたしがそう言うと重たい扉が開かれた。

何人かの使用人があたしに跪いていた。

「今日は何体だ。」

「はい。三体程。」

 廊下を歩きながら妖怪の数や特徴を聞いた。

 「何級クラスだ。」

「弐級で御座います。」

「分かった。」

あたしを車に乗せ妖怪が出没した場所に向かった。 到着すると人間を無差別に襲い喰っていた。

 お寺に続く道が血に染まり、倒れている人は頭を無理矢理引き抜かれた者や、目玉を抉り取られた者に体の中身が出てしまっている者も居た。

 「おいおい!!子供が居るぜ?」

 妖怪の一人があたしを見つめて興奮していた。 「子供の血肉は美味いんだよぁ。」

「俺が先に行くぜ!!」

 涎を垂らしながら一体の妖怪が向かって来た。

あたしは空中に自分の札を浮かせ札から沢山の刃を出し向かって来た妖怪の体を串刺しにした。 「ギャァァァァォァ!!!」

妖怪が呻き声を上げる。

 「おいおい…このガキ…。」

 「普通のガキじゃねぇ!?」

 「五月蝿いな…今すぐ送ってやるよ。」

 そう言ってあたしは手を素早く動かした。

 「式神破軍。」

白い狼と黒い狼を召喚した。

「「主人よ御命令を。」」

「シロ、クロ。あの二体を喰らえ。」

 「「御意」」

そう言ってシロとクロは残り二体の妖怪に噛み付いた。

 あたしは札を一枚取り出し星の円を空中で描いた。

星の円から無数の光の玉が現れ串刺しにされている妖怪の体を光の玉が貫く。

 「ギャァァァァ!!」

 光の玉が当たった部分が灰になり体の一部が剥がれ落ちた。

 そして持って来た日本刀を抜き妖怪の頭を切り落とした。

 「な、なんだよ…。強すぎだろ…!?」

 シロとクロは妖怪の体を喰らい尽くす。

妖怪がシロとクロに攻撃をしても微動だにしない。 「っこの狼、全然離れねぇ!!」

 「アンタ達よりこの子達の方が強い。」

 あたしはそう言って妖怪達の額に札を貼り付けた。

そして口に人差し指を付け唱えた。

 「急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)。」 ブジャァァァァ!!!

妖怪達の頭が弾け飛び血が噴き出した。

 「流石で御座います。」

使用人があたしに駆け寄る。

 そしてまたあの隔離部屋に戻される。

 御子柴家の中であたしはこう呼ばれている。

 "隔離姫"(かくりひめ)と…。

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