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『軍神』の身代わり~手柄泥棒の妹に全て譲って、私は残虐な「廃皇子」を愛します~ の小説カバー

『軍神』の身代わり~手柄泥棒の妹に全て譲って、私は残虐な「廃皇子」を愛します~

前世で国のために五年も戦い抜きながら、その軍功を実の妹に横取りされた挙句、冷酷な婚約者の裏切りによって雪夜に命を落とした将軍の娘。死の淵から現世へと返り咲いた彼女は、己を陥れた者たちへの復讐を誓う。家族や元婚約者が白々しく振る舞う中、彼女はすべての栄誉を捨て去り、周囲が「生き閻魔」と恐れる車椅子の廃皇子・蕭執との婚姻を願い出た。誰もが彼女の正気を疑うが、彼女だけは蕭執の内に眠る真の才知を見抜いていた。二人は互いの目的のために手を組み、彼女は彼の不随の足を癒やし、彼は彼女の最強の後ろ盾となる契約を交わす。偽りの手柄で威張る妹や陰謀を企てる母を余所に、彼女は誉王と共に着実に権力を掌握していく。かつて泥を塗られ、捨て駒にされた二人が手を取り合い、再び戦場に名を轟かせ、朝廷の頂点へと昇り詰める逆転劇が幕を開ける。真の将軍の印が掲げられ、万軍を平伏させるその時、世界はかつて見放した二人が天下を統べる存在となったことを知るのだ。
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宮中の宴は煌びやかで、杯を交わす音が絶えず響き渡っていた。

蘇楹(ソ・エイ)は大殿の片隅にひとり腰を下ろし、蘇霊児(ソ・レイジ)が軽やかな足取りで御前へ進み、封賞を受けるさまを、どこか冷ややかに見つめていた。

慶帝(ケイテイ)の眼差しには、隠しきれぬ称賛がうかがえる。その声は威厳を帯びつつも寛く、「蘇愛卿は大功を立てた。望む褒美があれば申してみよ」と響く。

「陛下、恐れ入ります!私めには他に望みなどございませぬ」蘇霊児は膝をつき、深く頭を垂れた。一見謙虚でありながら、その口元には勝ち誇る影がかすかに浮かぶ。「ただ一つ――鎮北侯(チンボクこう)の世子、秦崢(シン・ソウ)様との婚姻をお許しいただきたく存じます」

言い終えるや否や、秦崢が進み出て、蘇霊児の傍らにうやうやしく跪いた。「陛下、臣(しん)と霊児は深く想い合っております。どうか、この一途なる願いをお聞き届けくださいますよう!」

蘇霊児へ向けられた眼差しは、水のごとく柔らかく、情愛に満ち満ちていた。誰が見ても、天が結びし良縁と讃えるであろう。

慶帝はそれを聞き、わずかに眉を寄せ疑念を滲ませる。「朕の記憶に違いなければ、秦世子と蘇家(ソけ)の長女には、かねてより婚約があったはずであろうが……?」

秦崢の顔色がさっと変わった。彼は慌てて弁じる。「陛下、ご明察にございます!蘇楹との婚約は、長老たちの命による形ばかりのもので、情愛など微塵もございませぬ。臣の真心は、ただ霊児ひとりに……」

「陛下!申し上げたき儀がございます」 凛とした声が、秦崢の言葉を鋭く断ち切った。 闇の奥より歩み出た蘇楹へ、大殿の視線が一斉に注がれた。

「早々に下がらぬか!聖駕を驚かせて申し開きができると思うてか!」 蘇東成(ソ・トウセイ)は恐怖に顔面を蒼くし、立ち上がって激しく叱りつけた。

傍らの許氏(キョし)は生きた心地もなく、必死に目配せして彼女を黙らせようとした。

秦崢と蘇霊児も同時に振り返り、驚きと疑念の入り混じった目で彼女を見つめ、眉を固く寄せた。

だが蘇楹はそれらを意に介さず、静かな足取りで御前へと進み、深く拝礼した。 「陛下、確かに私めと世子の間には婚約がございました。しかしながら今、世子と愚妹(ぐまい)は深く想い合っております。私めは自ら身を引き、二人の仲を取り持ちたく存じます」

その言葉に、場内はざわめき立った。

秦崢は弾かれたように顔を上げ、信じ難いという表情を浮かべる。蘇楹が怒りに任せて軍功の真実を暴くとばかり思っていたのだ。まさか自ら退こうとは夢にも思わぬことであった。

慶帝は目を細め、跪く女子を鋭く見据える。「その言葉、偽りはないな?」

「陛下を欺くなど、滅相もございませぬ」 蘇楹はゆるやかに顔を上げた。額の朱砂が燭火に照らされ、息を呑むほど艶やかに揺らめく。「ただ、恐れながら陛下にお願いの儀がございます」

「ほう?」 慶帝は興味深げに声を落とす。「申してみよ」

衆人が息を呑む中、蘇楹は白い腕をゆるりと上げ、玉の指先を高官の列を越えて──大殿の片隅へと差し向けた。

「誉王(ヨオウ)殿下との婚姻を、賜りたく存じます」

その一言は、深淵に巨石を投じたかのごとく、場内に激震を走らせた。

誰もが驚愕と困惑を隠せない。

誉王――蕭執(ショウ・シツ)だと? 両足は不自由、性情は陰険、すでに廃人とみなされているあの王に、嫁ぎたいと申すのか?

宮廷の内外で、誉王邸(ヨオウてい)は竜の棲む深淵と恐れられ、嫁いだ女子が無事に老いを迎えた例はないというのに。

この蘇家の長女は、ついに気が触れたのではないか?

慶帝の目にも驚きが広がる。蘇楹の沈着な面差しをしばし見つめたのち、殿奥の闇と一体化するかのように佇む黒衣の影へと視線を移した。心中には複雑な思いが渦巻く。

この第七皇子が、かつてどれほど才気煥発であったか! 少年のころから頭角を現し、文武に優れ、群を抜いていた。

三年前、天子に代わりて遠征を担い、意気軒昂として北蛮(ホクバン)を一掃せんと誓った。

だが鷹愁峡(ヨウシュウキョウ)の戦いで重囲に陥り、将兵を率いて血路を開いたものの、落馬して両脚の自由を失い、以後は廃人と呼ばれるようになった。

その日を境に性情は激変し、深く屋敷に籠って人を遠ざけている。

慶帝も妃を迎えさせようと考えた時期があった。だが京城の令嬢たちは誉王の名を聞いただけで戦慄し、本人も固く拒んだため、婚姻は果たせず、長年の心痛となっていた。

今――これほどの公衆の面前で、降嫁を望む女子が現れたのだ。喜びと安堵があって当然であった。

なにしろ第七皇子はすでに三十に近い。他の皇子なら子が学問を始める歳であるのに、いまだ独り身のままなのだ。

親として、孤独な背を案じぬ日はなかった。

蘇楹の真意が何であれ、破談になったばかりであろうと、彼女が嫁ぐと言うのなら、慶帝にとっては些事(さじ)に等しい。

「良かろう!そなたの決意が固いのならば、朕は――」

「待たれよ。余は問いたい」凍てつく泉のごとき冷ややかな声が、慶帝の言葉を断ち切った。 「蘇家の長女は、なぜ余のような廃人に嫁ごうとするのか?」

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