暴君CEOのヒミツのカルテ の小説カバー

暴君CEOのヒミツのカルテ

8.3 / 10.0
天才泌尿器科医の彼女が診察室で暴いたのは、街を支配する財閥御曹司・藤堂卓海の致命的な弱点だった。冷酷な商界の帝王という表の顔を持つ彼と、病を隠す患者という裏の顔。二人は秘密を守るため契約結婚を交わすが、偽装のはずの絆が次第に狂い始める。冷徹な暴君CEOが愛に溺れ、屈辱に染まりながらも妻に縋る姿を描く、刺激的な現代Romance。本作はbillionaire romance novelsの中でも、権力逆転と執着が渦巻く至高の物語。人気のromance novelを今すぐチェック。
「暴君CEOのヒミツのカルテ」のあらすじ
雲崎市の経済を支配する藤堂財閥の御曹司、藤堂卓海。冷酷無比な帝王として畏怖される彼には、誰にも言えない致命的な秘密があった。その隠された弱点を、泌尿器科の天才医師であるヒロインに暴かれたことから、二人の運命は激変する。絶対的な権力者だったはずの男の生殺与奪の権を、一介の医師である彼女が握ることになったのだ。二人はある契約を交わし、互いの思惑を秘めたまま偽装結婚へと突き進む。結婚前、彼は「分を弁えろ」と氷のような冷徹さで彼女を突き放していた。しかし、形だけの夫婦生活を続けるうちに、強固だったはずの彼のプライドは崩れ去っていく。かつての傲慢な態度は影を潜め、ついには屈辱に耐えながらも「俺への情はないのか」と彼女の愛を乞うまでに変貌してしまう。対する彼女は、あくまでビジネスライクな関係を貫こうと、本気になり始めた彼を冷ややかに一蹴する。主導権が逆転した二人の関係は、偽りの誓いを超えてどこへ向かうのか。契約に縛られた孤独な王と、秘密を握る天才医師が織りなす、波乱に満ちた現代ロマンス。
もっと見る

暴君CEOのヒミツのカルテ 第1章

雲崎市、第一総合病院。

三階の泌尿器科診察室。

篠崎杏奈がデスクの前に腰を下ろした途端、ドアが押し開けられた。

逆光の中、高くそびえるような人影が室内へ踏み込んできた。

男は濃いグレーのスーツを纏っていた。広い肩幅に引き締まった腰、すらりと伸びた脚。その一歩一歩が、見る者を圧倒するようなオーラを放っている。

男が明かりの下まで歩み寄り、その顔が露わになると、多くの男を見てきた杏奈でさえ、思わず息を呑んだ。

(なんて、いい男なの……)

彼女の視線は男の顔に二秒ほど留まったあと、ゆっくりと下方へ移る。スーツのズボンに包まれた長い脚をなぞり、やがてある重要な部位で止まった。

(残念ね。)

顔はいいのに、あちらの方はダメなのかもしれない。

杏奈は視線を戻すと、軽く咳払いをして隣の診察台を指差した。平坦な口調で告げる。「そこに横になって、ズボンを脱いでください」

あまりにも淡々とした要求に、藤堂卓海は言葉を失い、ただ沈黙で応じた。

一瞬にして、診察室の空気が凍りついた。

彼の瞳は刹那のうちに氷のように冷たくなり、目の前のあまりに若い女を、値踏みし、疑うような眼差しで射抜いた。

白衣を纏い、有能そうに髪を高い位置でポニーテールにまとめ、化粧気のない素顔を覗かせていた。

その顔は、せいぜい二十代前半、卒業したての研修医にしか見えない。

「柳沢先生はどこだ?」卓海の低い声は冷たく、明らかな不快感を滲ませていた。

「柳沢先生は、急患の手術で席を外しています」 杏奈は臆することなく彼の視線を受け止め、胸元の名札を彼に見えるように掲げた。

そこには、太字のゴシック体ではっきりと書かれている――主治医:篠崎杏奈。

杏奈は顎で診察台を指し示し、言葉を継ぐ。「私は篠崎杏奈。本日、柳沢先生の代理で診察を担当します。 藤堂さん、私の時間は限られています。早く横になって、検査を始めさせてください」

卓海は眉間に深く皺を寄せた。

今日、彼がここに姿を現したのは、ひとえに祖父に死を盾に迫られ、承諾せざるを得なかったからだ。

三十歳近くになっても女性に興味を示さない孫を不審に思った祖父が、何か隠れた病があるのではないかと疑い、強引に精密検査を受けさせようとしたのだ。

さらには、担当医の柳沢茂雄は親友だから絶対に秘密は守る、安心しろ、と何度も念を押されていた。

だというのに、その親友がよりによって若い女に代わっているとは。

卓海の忍耐は完全に尽きた。彼は無言のまま踵を返し、ドアへ向かう。

(こんな馬鹿げた検査、誰が受けるものか!)

「藤堂社長!」

ドアのそばで待機していた秘書の桐原淳矢が、素早く卓海の前に立ちはだかった。「大旦那様が…… 大旦那様から、またお電話です。今日中に……検査報告書を受け取ってからでないと帰るなと。さもなければ……」

淳矢は苦しげに唾を飲み込むと、死を覚悟した様子で言葉を継いだ。「さもなければ…… ご自身でこちらにいらして、検査が終わるまで見張っていると……」

(自ら……見張る?)

卓海の端正な顔が、瞬時に歪んだ。

彼はその場に凍りつき、こめかみが激しく脈打つのを感じた。

祖父が大勢のボディガードを引き連れて彼を取り囲み、小さな椅子に腰掛け、慈愛に満ちた顔で検査を見守る――そんな地獄絵図が、ありありと脳裏に浮かんだ。

「……」

卓海は二十八年間生きてきて、ビジネスの場では常に冷徹かつ果断な決断を下してきた。だが、これほど進退窮まる状況に陥ったのは、これが初めてだった。

彼は深く息を吸い込んだ。その息は石のように胸に詰まり、吐き出すことも、飲み込むこともできない。

最終的に、理性がプライドという名の感情に打ち勝った。

卓海はぎこちない足取りで、一歩、また一歩と診察台へ向かう。

その一歩一歩が、砕け散った自尊心を踏みつけるかのようだった。

「横になってください」

杏奈の声が再び響く。そこには一切の感情が含まれていない。

卓海は沈黙したまま、ゆっくりと診察台に横たわった。

スーツの下の筋肉は、極限まで耐え忍んでいるせいで硬く強張っている。

杏奈は手袋をはめると診察台のそばに歩み寄り、まるで無機質な医学模型を見るかのような冷ややかな視線で彼を見下ろした。

「ズボン、もう一度言わせる?」

卓海の顎のラインが固く引き結ばれる。彼は目を閉じ、深く息を吸い込むと、半ば自棄になったような手つきでベルトを解いた。

そして、ファスナーを……。

その間ずっと、彼は顔を横に向け、壁に貼られた男性の生理構造図を凝視していた。まるで、その図を視線で焼き尽くそうとするかのように。

杏奈の視線が彼の上に落ちた瞬間、卓海の体は石のように硬直した。

「リラックスしてください」 杏奈の口調は相変わらず平坦だ。「そんなに力が入っていると、検査結果に影響します」

(リラックス?)

卓海は、危うく息が詰まるところだった。

(今すぐ、この女を殺してやりたいのに、この女はリラックスしろと言うのか?)

杏奈は卓海の内なる怒涛など意にも介さず、診察を始めた。

その手つきはプロのそれで、キレがあり、一切の迷いも感じられない。

指先は的確に彼の体を押さえ、異常がないかを確認していく。

杏奈にとって、これはごく日常的な仕事に過ぎない。

だが、卓海にとって、この一秒一秒は耐え難い拷問だった。

さらに彼を打ちのめす出来事が、この後に待っていた。

杏奈は診察を続けながら、定型的な問診を始める。「普段の生活は規則正しいですか?」

「……ああ」卓海は奥歯を噛み締めながら、その一言を絞り出した。

「朝立ちは?」

卓海のこめかみが激しく脈打つ。

その質問に、卓海の端正な横顔は瞬時に赤く染まったが、それでも歯を食いしばって応じた。「……ある」

杏奈は小さく頷くと、淡々と質問を重ねた。「最後に性交渉があったのはいつですか?」

続きを読む

暴君CEOのヒミツのカルテ 目次一覧

Ch. 1 Ch. 2 Ch. 3
Ch. 4
Ch. 5
Ch. 6
Ch. 7
Ch. 8
Ch. 9
Ch. 10
Ch. 11
all

おすすめの作品

新着リリース小説

婚約者を断捨離しよう!~馬鹿な子ほど可愛いとは言いますけれど、我慢の限界です~ の小説カバー
9.7
王家と公爵家の結びつきを強めるための政略結婚。その重要性を理解せず、些細な理由で何度も婚約破棄を突きつけてくる婚約者に、私はほとほと困り果てていました。国家間の契約が個人の我が儘で解消できるはずもないと説得を続けてきましたが、彼は一向に態度を改めようとしません。どれほど愚かな振る舞いを繰り返されても、根は素直な人なのだと自分に言い聞かせ、親から厳しく叱責される姿を不憫に思っては、これまで懸命に耐え忍んできました。しかし、あろうことか今度は別の女性との浮気が発覚したのです。身勝手な言動を繰り返す彼に対し、注いできた慈悲も、積み重ねてきた忍耐も、ついに限界を迎えました。これ以上、この無意味な関係を維持する必要はありません。バカな子ほど可愛いなどという言葉では到底許容できない裏切りを機に、私はついに決断を下します。これまで大切に守ってきた婚約という名の鎖を自らの手で断ち切り、自分勝手な婚約者を人生から「断捨離」することを。我慢の袋の緒が切れた令嬢による、毅然とした反撃が今ここから始まります。
偽装結婚のはずでした の小説カバー
9.1
十ヶ月の妊娠期間を経て帰郷した彼女を待っていたのは、父の無惨な死という絶望的な現実だった。さらに、裏切り者の婚約者と義妹が共謀して彼女を家から追放してしまう。それから三年後、彼女は父の形見である別荘を取り戻すべく、再びこの地へと舞い戻った。目的を果たすため、彼女は到底手の届かない存在である高潔な男に接触を図るが、逆に彼から逃げ場のない隅へと追い詰められてしまう。男は熱を帯びた視線を向け、「私を誘惑するつもりか」と問い詰める。彼女は震えながら弁明するが、偽装結婚という契約の関係だったはずの彼は、容赦なく彼女の心へと踏み込んでくる。顔を赤らめる彼女に対し、男は「子持ちの身で何を今さら」と不敵な笑みを浮かべるばかり。そんな二人の足元では、愛らしい息子が彼女の手を引き、「早く弟を産んでよ、一緒に遊びたいんだ」と無邪気な瞳を輝かせていた。復讐と再起を懸けた偽装結婚の裏で、男の執着と親子の絆が複雑に絡み合い、彼女の運命は予想もしない方向へと動き出していく。
籠の中の身重な鳥、冷酷な御曹司の甘い束縛 の小説カバー
9.5
秘書として、そして妻として二年間、三谷美月は冷徹な夫・鷹司彰のために尽くし続けてきた。しかし、彼が心に抱くのは初恋の女性・佐野佳世への想いだけであり、美月の献身が報われることはなかった。佳世の帰国を機に二人は離婚。その半年後、美月は予期せぬ妊娠に気づく。彼女は長年の片思いに終止符を打ち、お腹の子を守るために誰にも告げず遠くへ姿を消した。彰と佳世の幸福な知らせを耳にするたび、美月は静かに彼らの幸せを願っていた。ところが、平穏な日々は出産という人生の転機に一変する。佳世と再婚するはずだった彰が、突如として美月の産室の前に現れたのだ。彼は再び共に歩みたいと切実に訴えかける。美月は「この子はあなたとは無関係」と拒絶するが、彰は「たとえ誰の子であろうと、二度と離さない」と強引なまでの執着を見せる。一度は壊れたはずの絆が、赤ん坊の誕生をきっかけに歪んだ愛へと形を変え、美月を再び甘く冷酷な束縛の中へと引き戻していく。
突然舞い降りた妹!三人の最強兄たち、溺愛モード全開! の小説カバー
8.4
5年もの間、鈴木家のために献身的に尽くしてきた瑠香。しかし、義妹の卑劣な策略によって、彼女の日常は一瞬で崩壊する。偽の令嬢という汚名を着せられ、婚約者からは見捨てられ、信頼していた兄たちからは「田舎の親元へ帰れ」と冷酷に家を追われてしまったのだ。絶望の淵で鈴木家と決別した瑠香だったが、再会した実の家族は、想像を絶する大富豪・一条家だった。一夜にして立場は逆転し、彼女は三人の最強の兄たちから至高の寵愛を受ける本物の令嬢へと返り咲く。億万長者の長男、天才科学者の次男、世界的音楽家の三男が、全ての仕事を放り出して妹のために集結。彼女を蔑んだ者たちへの報復が始まる中、かつての家や婚約者は後悔に震え、必死に彼女を取り戻そうと縋りつく。そんな騒乱の最中、首都最高位の権力を持つ加藤家の御曹司が、婚姻届を手に瑠香の前に現れた。偽りの令嬢から、世界を震撼させる真の令嬢へ。彼女の新たな逆転劇が幕を開ける。
春はあけぼの の小説カバー
8.3
在位二年目を迎えた領主・宗明は、窮地に立たされていた。弟に恋心を抱く妻の佳枝が、宗明は酒色と女色に溺れていると実父である国主に虚偽の進言をしたのだ。これを受けた国主により退位を命じられた宗明は、無用な争いを避けるため、世間の噂を逆手に取って隠居生活を送る決意をする。彼は身分を問わず美しい女を屋敷に集めるよう通達を出した。一方、貧困に喘ぐ春吉の家族は、類まれなる美貌を持つ姉の園を宗明の元へ送り出そうとする。しかし、見分に訪れた宗明が心を奪われたのは、姉ではなく弟の春吉であった。宗明は春吉の家族全員を召し抱える代わりに、春吉に姉の身代わりとなって寝所へ上がるよう命じる。女装して園として振る舞いながらも、宗明と過ごす時間に戸惑いを隠せない春吉。偽りの関係から始まった二人だったが、共に過ごすうちに春吉もまた、宗明という人物に強く惹かれていく自分を自覚し始める。運命に翻弄される二人の、密やかで危うい恋の行方を描いた物語。
昨夜の相手は、/義兄でした。 の小説カバー
8.0
婚約者の不貞に傷ついた彼女は、衝動的に見知らぬ美貌のモデルを自宅へと連れ込んだ。しかし、悪夢は翌日の家族の集まりで幕を開ける。目の前に現れたのは、昨夜を共にしたあの傲慢な男だった。動揺し逃げ出そうとする彼女を、男は「義妹殿、どこへ行く?」と冷ややかな笑みで遮る。彼は一族の四男であり、義理の兄となる人物だったのだ。その後、彼女の部屋へ頻繁に出入りする彼の姿に周囲は困惑するが、本人は「ただの遊びだ」と鼻で笑い、周囲も次第に二人の潔白を信じるようになる。だが、真実は彼女だけが知っていた。彼は降り注ぐ銃弾の中を潜り抜け、ただ彼女の結婚式を阻止するためだけに現れたのだ。純白のウェディングドレスを纏った彼女を壁際へと追い詰め、血走った瞳で執着を剥き出しにする。彼は逃げ場を奪うように問い詰めた。「本当に、俺の弟と結婚するつもりなのか?」と。偽りの平穏の裏で、義兄による狂おしいほどの独占欲が静かに燃え上がっていく。
章
今すぐ読む
共有