
裏切りの婚礼と魂の行方
章 3
沢村莉紗 POV:
純斗は, 両親が楓枝を偏愛し, 私に不公平な扱いをしてきたことを知っていたはずだ. 彼は, 私の苦しみを理解していたはずなのに, なぜ私を裏切ったのか? 私を愛していると, 何度も言ってくれたのに.
私は, 彼が私を選んでくれることを, 心から願っていた. 楓枝の病気が嘘だと知っても, 彼は私を選んでくれると信じていた. しかし, 彼は楓枝の救世主となる道を選び, 私を捨てたのだ.
私の書斎は, 完全に楓枝の衣裳部屋へと変貌した. 私の思い出は, 一つ残らず消え去り, そこには楓枝の派手な服やアクセサリーが所狭しと並べられていた. 私の夢は, この部屋と共に, 完全に消滅したのだ.
その日, 純斗は, 私の書斎だった場所から, 一枚の写真を拾い上げた. それは, 私が笑顔で写っている社員証の写真だった. 彼は, その写真をポケットにしまい込んだ.
翌日, 純斗は会社に出勤した. 彼がオフィスに入ると, 同僚たちがざわついていた.
「黒川さん, 沢村さんって, いつから休んでるんですか? 」同僚の一人が尋ねた.
純斗は, 一瞬言葉に詰まった. 「莉紗…? ああ, 彼女は, しばらく休むことになったんだ」
「でも, 連絡が全く取れないんですが…」別の同僚が言った.
純斗は, 苛立ちを隠せない様子で, 私の携帯電話に電話をかけた. もちろん, 電源は入っていない. 彼は, 何度もリダイヤルしたが, 繋がることはなかった.
「もういい! 沢村莉紗は, 今日付けで解雇する! 」純斗は, 突然怒鳴りつけた. オフィスの空気が凍りついた. 誰もが, 彼の突然の豹変に驚きを隠せないようだった.
「そして, 後任には, 楓枝が就任する! 」彼は, そう言い放った.
私は, 彼の言葉に, 激しい嫌悪感を覚えた. 私を解雇し, 楓枝を私のポジションに就かせる. これほどまでに, 私を侮辱するのか.
その夜, 純斗はオフィスで楓枝といた. 楓枝は, 私の椅子に座り, 得意げな顔で純斗を見つめていた. そして, 二人は人目をはばかることなく, オフィスで抱き合った.
私は, その光景を見て, 激しい吐き気を催した. 彼らの裏切りは, 私をここまで追い詰めたのだ.
その瞬間, 私の体の奥で, かすかな鼓動を感じた. それは, 私の中に宿っていた, 小さな命の鼓動だった. 私は, 妊娠していたのだ.
私は, 純斗との間に, 子供を授かっていた. その子は, 私と共に, この世を去ってしまったのだ. 私は, 二重の悲劇に打ちのめされた.
純斗は, 私の死後も, 私に何度もメッセージを送っていた. 「莉紗, どこにいるんだ? 早く帰ってきてくれ. 君がいないと, 僕は…」
彼のメッセージは, 私には届かない. 彼の後悔は, もはや私には関係ない.
ある日, 純斗が楓枝と話しているとき, 楓枝が言った. 「純斗さん, 私, お腹に赤ちゃんがいるみたい」
純斗は, 驚きと喜びの表情を浮かべた. しかし, 私の魂は, 激しい皮肉を感じた. まさか, 楓枝も妊娠しているとは. 私の子供は死んだというのに.
楓枝は, 幸せそうに微笑んでいた. 純斗も, 彼女の妊娠を心から喜んでいるようだった. 彼は, 楓枝の嘘に, 完全に騙されているのだ.
しかし, その夜, 純斗は楓枝の首元に光るものを見て, 顔色を変えた. それは, 私が大切にしていた, 純斗が贈ってくれたネックレスだった.
「楓枝, そのネックレス…どこで手に入れたんだ? 」純斗の声は, 冷たく響いた.
楓枝は, 少し慌てた様子で言った. 「ああ, これ? たまたまお店で見かけて, 可愛いから買っちゃったの」
私は, そのネックレスの思い出を思い出した. 純斗が, 私の誕生日に贈ってくれたものだ. 彼は, 私のために, この世に一つしかないデザインをオーダーしてくれたのだ.
「嘘だ. そのネックレスは, 莉紗にしか似合わない」純斗は, 怒りを露わにした.
楓枝は, 純斗の怒りに怯えたように言った. 「そんなことないわ. 私だって, 似合うわよ」
楓枝は, 話題を変えようと, 純斗を夕食に誘った. 「純斗さん, 今夜は美味しいものを食べに行きましょう? 私の妊娠のお祝いも兼ねて」
私は, 楓枝の言葉に, 嫌悪感を覚えた. 彼女は, 私の死の影で, 自分だけの幸せを築こうとしている.
私は, あのネックレスが, 楓枝の手に渡ったのは偶然ではないと確信した. 楓枝は, 何らかの形で, 私の死に関与している. 彼女は, 私を殺した男と共謀していたのではないか?
夕食の席で, 両親は楓枝の妊娠を心から喜んでいた.
「これで, 沢村家も安泰だわ」母は, 得意げに言った. 「楓枝は, 本当に私たちに幸せをもたらしてくれる」
彼らの言葉は, 私の魂を深く傷つけた. 彼らは, 私という存在を完全に忘れ去り, 楓枝だけを愛している. 私は, 彼らにとって, 何だったのだろう?
純斗は, 複雑な表情をしていた. 彼は, 楓枝の妊娠を喜んでいるようにも見えたが, どこか深い闇を抱えているようにも見えた. 彼の心の中には, まだ私への思いが残っているのだろうか?
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